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神聖ローマ皇帝を書いた勢いの勢いの勢いで

2011-08-11 14:32:44 | Weblog
 ギルは人の目を避けて宮殿を歩いた。ここは異教徒ばかりだ。


 ギルにとって直接の上司は総長だがそのずっと上に教皇様がいる。
 『私たちは生まれが特別だから2種類の上司がいるのだよ』
ヨハネお兄ちゃんが言っていた。お兄ちゃんは教皇様以外にフランス王も上司として敬っている。
どんなに嫌でも神聖ローマ皇帝フリードリッヒ2世は自分の上司だ。敬わなければいけない。
わかっているけど「いやだ」フランス語でつぶやく。
皇帝はアラビア風の宮殿を建て、アラビア美女を満載した後宮で遊んでいるという。
後宮で遊ぶというのがどんなことなのか幼いギルにはわからない。
でもユーグあにきが吐き捨てるように言ったから、きっと良くないことなのだ。

幼い外見にはそぐわない重いため息をついて、ギルは足を止めた。いつの間にかさっきの大広間からずいぶん離れている。一人では戻れそうにない。
今いるところはアラビア風の豪奢な装飾の回廊。
大広間の場所を聞こうにも誰一人通らない。
ギルの銀の瞳にみるみる涙があふれてくる。
プロイセン時代を知る人が見れば信じ難いだろうが、幼いギルはよく泣いた。特にヨハネと引き離されてからは涙だけがギルの友達だった。


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