金属中毒

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印象

2012-09-29 04:41:29 | Weblog
島左近

本田とアルフレッドは偶然ヨーロッパで出会った。別にめずらしいことではない。ともに商用がらみだ。
せっかくだから、ドイツさんのお顔を見ていきます。そういう本田にアルフレッドも、俺もギルベルトと遊びたいと同行した。たとえ予定に無くても友好国同士は会うことを奨励される。この行動はふつうである。
 まずは連絡をしてご予定を確認してからと携帯を取り出した本田を、アルフレッドは抱えあげるように、実際に抱え上げてドイツ宅に走った。

 国民の一人として祖国の腰を心配する。入力者注

 さて、着いてみるとドイツは不在、その上ギルベルトもいなかった。そのまま帰ろうとした二人だが、ドイツ政府が二人の行動に気が付いていた。そりゃ、気が付くだろう。10キロの道を猛スピードで、子供(本田)を抱えて走る金髪青年は。
 本田はともかくアメリカを挨拶も無しに帰したとなると、ドイツの沽券に関わる。
ところが、不運な事にそういうときに代行する事の多いザクセンもハンブルグも不在であった。
どうしようと、考えた政府はある存在を思い出した。この50年は確実に公式の場に出ていないあの男を。

 島左近。本田の最初の印象はなぜだか、自分の国のいにしえの武将であった。身長は高い。あるいはドイツより高いかもしれない。体格はゲルマンらしくがっしりしているがドイツと異なり、筋肉の重みを感じさせない。本田は心のなかで目の前の彼を桂離宮に置いた。違和感は無い。東洋人にもめったに無いだろう漆黒の髪。それが肩を超えている。
 ずいぶん前、まだプロイセンに師事していた頃、聞いた事がある。「ブランデンブルグ。俺の大事なやつ。ゲルマンの母なる森の騎士。」
今にして思えばあれはプロイセンの自慢であり、無意識ののろけだった。
 深い。そう感じた。その感じが島左近を連想させたのだと本田は思った。島左近を深山の沼と例えたのは誰だっただろう。
 そんなことを考えていたせいか差し出される大きな手、その手を本田は思わず両手で掴んでしまった。
しまったと思ったがもう遅い。どうやってごまかそうと必死に頭をめぐらす本田にブランデンブルグは微笑した。そのまま彼の大きな手が本田の手をもう一度包み込む。
 傍目には両手を握り合わせて、友好を確かめ合うようにしか見えない。
本田がブランデンブルグを見上げると、身長差のせいで絶対見上げる事になる、わずかに片目をつぶった。その顔がプロイセンと重なる。あ、かわいい、と本田は思った。



ここまでで、切れました。