明日は統合幕僚学校で講義

これで4年目となる自衛隊の統合幕僚学校での講義を明日に控え、準備に追われています。

明日は、奇しくも「911」5周年。
そして、私の小選挙区敗戦1周年でもあります。

昨日も今日も、地元で講演をさせていただきましたが、アメリカの対外政策が、911ショックによって大きく動揺し、イラク戦争によって取り返しのつかないほど歪んでしまいました。大げさではなく、確実にヴェトナムの二の舞を踏んでいます。これは、世界の平和と安全にとってきわめて深刻な事態です。「アメリカが馬鹿なことをしでかして」などと突き放すことは簡単ですが、それでは何の解決にもなりません。

つまるところ、イスラエルとアラブ諸国との真の意味の共存共栄を実現できなければ、テロとの戦いは根絶できないでしょう。それは、5000年もの歴史を遡らなければならない気の遠くなるような作業です。しかし、現代世界でその中心的な役割を果たせる実力を持っているのは、じつはアメリカしかいませんでした。1993年のオスロ合意はノルウェイが仲介しましたが、両者にその実行を迫れるのはアメリカだけでした。しかし、それには、実力と共に国際的な信頼性(キッシンジャーが著書『外交』で繰り返し強調していた「国際的リーダーシップの正統性」)が絶対的に必要です。深刻なことは、イラクでの選択を誤ってしまったことにより、アメリカがこれまで培ってきた信頼性や正統性を一気に喪失してしまったことにあります。

そんなアメリカの戦後の安全保障戦略の変遷について講義するのは、いささか気が重い作業です。ご参考までに、明日のレジュメを掲載しておきます。

統合幕僚学校2006年度講義
『米国の安全保障戦略の変遷』

イントロダクション
「米国」は一つではない
力の源泉:特別の使命感と世論の復元力
米国の安保観3つの系譜(2つの現実主義vs理想主義)

I. 戦後(冷戦期)の安全保障戦略
ヤルタ体制(米ソ協調による連合国支配の模索)
朝鮮戦争とNSC-68(反共ロールバック戦略の発動)
ヴェトナム戦争とデタント(Nixonによる古典的現実主義への回帰)
アフガン侵攻と新冷戦(Reaganによるロールバック戦略)
冷戦終結と「平和の配当」(理想主義の振り子)

II. ポスト冷戦の安全保障戦略
BURからQDR(国防予算削減と2MCRの呪縛)
NDP(トランスフォーメーションの提唱)
国防改革と古典的現実主義外交の模索(Bush政権の船出)

III. ポスト9.11の安全保障戦略
ユダヤ・ロビーとネオコン(古典的現実主義の退潮)
イラク政策の失敗(中東民主化構想の挫折・・・ロールバック戦略の崩壊?)
古典的現実主義への揺り戻しの予感(2008年大統領選の行方)

IV. 日米同盟へのインプリケーション
米軍再編と同盟変革
「普通の同盟」を構築できるか
(現実的)野党の使命:国防体制の変革が急務
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