こども・子育て「非常事態宣言」
「保育園落ちた、日本死ね!!!」・・・たった一人の母親の叫んだたった一言が、日本全国に共感のうねりを起こし、永田町を揺るがしています。「日本死ね」というギョッとするような表現をめぐっては、常軌を逸しているのではとの批判が巻き起こりました。それでも、認可保育園をいくつも落ちて仕事を続けられず、孤独な育児と日々格闘している女性の悲痛な叫びは、SNSを通じて瞬く間に全国に広がり、日本全体が改めて少子化問題に正面から向き合うことになりました。そして、ついに国会をも動かすことになったのです。
保育や幼児教育を担う人材確保は、ほんの第一歩
3月24日、民進党は他の野党と共同で「保育人材の確保法案」を衆議院に提出、保育士や幼稚園教諭の給与を5万円引き上げることにより、保育園という「箱モノ」ではなく、保育や幼児教育の「担い手」を確保することを通じて効果的な待機児童対策を講ずる方向性を鮮明に打ち出しました。政府与党も、緊急対策本部を立ち上げ、対応に追われています。
しかし、保育や幼児教育を担う人材の確保は、我が国のこども・子育てを取り巻く環境を改善するためのほんの一歩に過ぎません。私は、昨年の川崎市で起こった中学一年生の少年殺害事件にショックを受けて以来、日本の子供たちにいったい何が起こっているのかを知るために、関連する書籍を読みあさり、専門家の話を聞き、現場に足を運び、私なりに真剣に取り組んできました。
こどもの貧困が招く悲劇をこれ以上許さない!
その結果、こどもの貧困(16.3%)、それもひとり親家庭のこどもの貧困の深刻さ(54.6%は、先進国中最悪!)、にもかかわらず現行制度の綻びや社会の対応の遅れが、あまりにひどい状況であることに愕然とさせられました。「少子化」が叫ばれて約20年。すでに10年前から人口減少が始まった日本で、さらに深刻なのは、「貧困の連鎖」によってせっかく生まれてきた子供たちを家庭が、社会が育て切れていないという現実です。幼児虐待が年8万件(15年前の8倍!)を超え、虐待死が3日に一人。子供の自殺は1日に1.4人に上ります。最近も神奈川県相模原市で、児童養護施設への入所を訴えていた中学1年の男児の声を児童相談所が取り合わず、自ら尊い命を断ってしまう悲しい事件が起きました。
「学ぶ機会の保障」こそ、国を挙げて取り組むべき国家百年の大計
就学前の幼児期における保育や教育の在り方が、その後の人生や社会全体にとり決定的に重要であることは、国連をはじめ世界の識者が認めるところです。したがって、先進国では、家庭の経済事情に左右されないよう、幼児教育の無償化が必然の流れとなっています。加えて、ますます知識(情報)集約型の産業構造にシフトして行く中で、高等(専門)教育の重要性が認識される時代にあって、欧州では高等教育の無償化や米国をはじめ奨学金制度の拡充が図られ世帯収入の多寡に関係なく、子供たちが自らの能力を磨き、開花させ、社会により大きな貢献を果たす充実した人生を自由に選択できるよう国を挙げて取り組んでいます。
しかし、翻って我が国の現状はどうでしょうか。義務教育となっている小中学校は約9割を公的支出で賄っていますが、就学前の幼児教育段階では約半分が家計負担、高等教育段階では家計に2/3もの負担が重くのしかかっているのです。「資源のない日本は、人材こそ最大の資源」などと言われながら、GDPに占める教育費は5.1%に過ぎず、これは先進34カ国中27位で、公財政支出3.6%は最下位という不名誉な実態なのです。
「過去との闘い」から、「未来をつくる闘い」へ!
そのため、親の年収によって大学進学率に30%以上も差がついてしまっています。私は、すでに民主党政権下で実現させた「高校の無償化」に加えて、幼児教育の無償化、大学や専門学校における給付型奨学金の拡大などをベースに、「こども・子育て・教育」環境の劇的な改善をもたらす包括的な政策を策定し実現することを、改めて誓う所存です。7年前の年金記録の回復を目指した私たちの取り組みは、いわば「過去との闘い」でした。これに対して、私が全身全霊全力で取り組む課題は、「未来をつくる闘い」です。皆さん、一緒に「未来に誇れる日本」をつくって参りましょう!
衆議院議員 長島昭久