正念場の日本経済、正念場の日本外交

いざ、第187回国会(臨時国会)へ!

 第二次安倍政権の内閣改造に合わせて、私も民主党「次の内閣」の外務大臣に就任しました。それに伴い衆議院では、これまで務めてきた安全保障委員会から外務委員会の筆頭理事へ異動。この臨時国会では、2年近くにおよぶ安倍外交に対する中間総括を行うこととなります。実際、安倍首相は、これまでに49カ国を歴訪し、150回近くの首脳会談を行い、「積極的平和主義」に基づく戦略的な外交を精力的に展開してきました。

「偉大なロシア」復活を目論むプーチン大統領に警戒を緩めるな

 しかし、ここへ来て安倍外交には明らかに変調が見られます。まず、就任以来5回の首脳会談を重ねプーチン大統領との信頼関係を深めてきたロシア外交がウクライナ問題によって困難に直面しています。エネルギー経済外交を推進することによって北方領土問題の解決に道筋をつけるべく新設のNSC(国家安全保障会議)をフル回転させ、森喜朗元首相に親書を託すなど努力を重ねてきたにもかかわらず、7月のマレーシア航空機撃墜事件に端を発して、対ロ制裁を強化する米欧との溝が深まりかねない情勢です。このまま対ロ関係だけに目を奪われて外交を進めて行けば、「偉大なロシア復活」を旗印に深謀遠慮をめぐらすプーチン大統領の術中にはまる可能性もあるのみならず、同盟国である米国との関係をも悪化させかねません。急がば回れ。ロシア経済の脆弱性に鑑み、時間的優位性は我が国にあることを自覚しここは静かに時機を待つことが賢明です。

拉致問題解決を急ぐとともに、核やミサイル問題解決の道筋を世界に示せ

 つぎに、これも政権発足以来、最重要課題として取り組んできた日朝交渉が暗転しています。実務レベルの日朝(秘密)交渉を重ねた結果、一時は悲願の拉致問題解決に向けた大きな前進が見られるのではと首相官邸も色めき立ち、国民も大いに期待を寄せたのですが、ここへ来て日朝の思惑に深刻なすれ違いが存在することが明らかになって来ました。拉致問題と共に(あるいはそれ以上に)核やミサイル問題の解決を重視する米韓をはじめとする国際社会との溝も拡大しつつあります。もともと北朝鮮は厄介な交渉相手であり、拉致調査に1年かかることが当初から合意されていたことから、こちらが焦れば焦るほど北に足許を見られることになるでしょう。進展する日朝関係に楔を打ち込もうと、最近になり中国の対北支援が再開されたとの観測も伝えられます。ご高齢の拉致被害者家族の皆さまを励ましつつ、「行動対行動」の原則に基づき着実に信頼関係を醸成して行く覚悟を決めなければならないと思います。

日中、日韓関係の改善は、基本原則を堅持しつつ柔軟な外交姿勢で臨め

 日露、日朝に加えて、後回しにされてきた感のある日中、日韓の関係にも依然として難しい局面が続きます。安倍政権は、「日韓関係は日中関係の従属変数」との前提で、日中関係の打開を最優先してきました。しかし、皮肉なことに、韓国経済の変調や国内有識者の突き上げで、これまで強硬姿勢を貫いてきた朴槿恵大統領の対日政策に変化が見られるようになって来たのとは対照的に、先行するはずだった日中関係の首脳レベルでの改善にはさらに時間がかかりそうな印象です。先日、仲間の議員と共に北京を訪問し、中国政府や党の幹部、有識者らとの懇談を通じて敢えて挑発的な議論を挑み中国側の本音を探ろうと努めましたが、歴史や領土問題で日本側が譲歩しない限り首脳会談にはそう簡単に踏み切ることはないとの感触を得ました。しかし、国内世論の動向に鑑み安倍政権がこれらの問題で容易に妥協することは考えられず、経済や民間交流、海洋協議など実務レベルで前進はあっても、11月の北京APECでの首脳会談実現の可能性は極めて低いといわざるをえません。

日米防衛協力のガイドライン改定の前に「安全保障基本法」案を審議せよ

 順調と考えられてきた日米関係にも変調の兆しが出てきました。まず、TPP交渉が暗礁に乗り上げてしまいました。やはり4月のオバマ大統領訪日時に思い切った決断をすべきでした。中間選挙の直前の今頃になってカードを切っても手遅れです。さらに、年末を期限としてきた日米防衛協力ガイドラインの改定作業が停滞しています。原因は、与党協議での合意に基づく7月1日の閣議決定をめぐり日米防衛当局者の間で実効性の点で疑念が広がっているようです。日米同盟を支える経済と安全保障の二本柱に亀裂が入ってしまえば、沖縄県知事選挙の結果とも相まって、我が国の外交の土台を揺るがしかねません。ここは、やはり私がかねてから提唱してきたように、安全保障基本法の議論を通じて国民の理解を得て、集団的自衛権の行使範囲(限界や歯止め)を確定し、期日は少し先に延びたとしても堂々とガイドラインの改定に取り組む正攻法で仕切り直しをすべきと考えます。

「政争は水際まで」―外交の鉄則を守りながら、野党外交の先頭に立つ!

 私は、引き続き「外交や安全保障に与党も野党もない、あるのは国益のみ」との信念に基づき、安倍外交について是々非々の立場から、野党の外交責任者として建設的な議論を展開してまいります。

衆議院議員 長島昭久

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