政府よ、責任を米国に転嫁するな!

イラク戦米空母への給油疑惑、官房長官「事実なら違反」
(2007年9月30日21時27分 読売新聞)

 町村官房長官は30日のテレビ朝日の番組で、テロ対策特別措置法に基づきインド洋に派遣された海上自衛隊が補給した燃料が、イラク作戦を目的とした米空母に給油されていたのではないかと指摘されている問題について、「今、改めて日本政府から米政府に事実関係を照会している。もし事実であれば、両国の了解とは違う形で油が使われたということになる」と述べ、事実なら両国の了解や同法の趣旨に反するとの考えを表明した。

 そのうえで、「まず実態を調べた上で、改めて考える」とし、疑惑が事実だと判明した場合、再発防止策など新たな対応を検討する意向も示唆した。

 この問題は、イラク戦争が始まるひと月前の2003年2月に、海自補給艦「ときわ」が米補給艦を経由してイラクの監視活動などに従事していた米空母キティホークに間接的に給油したとされるものだ。

 防衛省では現在、インド洋で海自が行ったすべての給油について、転用の有無を調査している。(後略)
(引用終わり)

町村官房長官のコメントに唖然とさせられる。
政府は、まだ悪あがきを続けるつもりのようだ。
いい加減にしてもらいたい。

前回までのエントリーで、私は、政府は自らのいい加減な答弁によって「給油転用疑惑」を引き起こしたのであって、決して米国からの情報不足や偽情報によって誤った答弁を余儀なくされたわけではないことを繰り返し明らかにしてきた。

したがって、町村官房長官の「今、改めて日本政府から米政府に事実関係を照会している。もし事実であれば、両国の了解とは違う形で油が使われたということになる」とのコメントは笑止千万だ。

彼の言う「両国の了解」や「同法の趣旨」とは何ぞや。
いったい誰が何に違反しているというのか?

「両国の了解」とは、補給活動に当たり両国政府間で交わされた「交換公文」のことを指すのであろう。しかし、この交換公文で合意されたのは、「アメリカ合衆国の軍隊その他これに類する組織以外の者に移転してはならない」という点だけであって、そこには、当然のことながら、アフガニスタンともイラクとも、OEF(不朽の自由作戦)ともOIF(イラクの自由作戦)ともOSW(南部監視作戦)とも書かれていない。アメリカ合衆国の軍隊の中における移転であれば問題ないのである。したがって、米軍は、インド洋で日本の補給艦から給油を受けた米国の補給艦を通じて、ペルシャ湾で作戦行動する米空母に給油したまでだ。そのような可能性の生じることは、日本政府は最初からわかっていたはずだ。

「同法の趣旨」とは、言うまでもなくテロ特措法の趣旨のことである。しかし、こちらにも、イラクとかアフガニスタンとか特定の作戦名などの限定は全くない。とにかく、911米国同時多発テロに関係する国際テロリズムを防止根絶するための国際社会の取り組みに対する支援を目的にしたものであって、アフガニスタンのみならず、イラクやイエメン、さらには、フィリピンやインドネシアに拡散している国際テロリスト掃討作戦にも援用できるような、きわめて大雑把な構成になっているのである。我が国の官僚が考えそうなことではないか。

ところが、イラク戦争に対する国民の評判が余りにも悪いため、政府は、国会答弁を通じてイラク戦争およびその後のイラクでの米軍の作戦に対する補給燃料の転用疑惑を完全に否定してしまったのである。その結果、疑惑が事実であることが判明しつつある今日、辻褄が合わなくなり、窮地に陥っているというわけだ。

自業自得。
繰り返すが、「過ちを改むるに憚ることなかれ」である。
これ以上自縄自縛に陥るよりも、国民に誤った答弁を謝罪した方が潔い。
間違っても、同盟国アメリカに責任転嫁するなどという卑怯な真似はして欲しくない。

(この論点についてのコメントはこれで最後にしたい。ただ、この問題が、テロ特措法をめぐる国会審議の序盤の焦点であることは間違いないであろう。)
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政府の悪あがき、さらに続く

米艦、イラク戦使用の可能性=インド洋の海自給油活動で-自民・福田氏
(9月23日13時1分配信 時事通信)

 自民党総裁選に立候補した福田康夫元官房長官は23日午前のテレビ朝日の番組で、テロ対策特別措置法に基づき海上自衛隊がインド洋で給油した米国艦艇が、イラク戦争に参加した可能性があるとの見解を明らかにした。
 福田氏は「インド洋(で活動する米艦)と思っていたものが途中から『イラクに行ってくれ』ということも、あったかもしれない」と述べ、米国に情報提供を求める考えを示した。
(引用終わり)

・・・派閥の論理で自民党の新総裁に選出された福田氏は、明日にも内閣総理大臣に選出され新政権を担うのであるから、彼の発言は重い。

その福田氏が、昨日のエントリーでも触れたように、03年2月の官房長官記者会見で出た補給量に関する自らのいい加減な発言を棚に上げて、今度はあたかも米国が日本政府を欺いたかのような物言いである。作戦エリアごとに指揮統制が分立すし、その間を艦艇が行き来するという米軍の基本的な運用システムを知りながら(同盟国軍隊の運用システムを知らないとしたら、それこそ統治能力が問われる!)、日本国民向けに出鱈目な答弁を繰り返しておいて、その政府の立場が危うくなると、米国に情報提供を求めるとは! 昨日の繰り返しになるが、米国に責任転嫁する前に政府がすべきは、まず自らの非を認め、過去の政府答弁を撤回修正することだ。

福田氏の言いぶりは、あたかも、日本はアフガン向けと「信じて」燃料を提供したのに、途中で米軍が勝手に艦艇の向きを変えてイラクに行ってしまったのは甚だ遺憾だというように聞こえる。この責任転嫁は、同盟国に対してあまりにも失礼。「日米同盟が重要だ」「民主党では日米関係がおかしくなる」などと言いながら、その実、こういう無責任発言で国民の反米感情を煽るのは姑息。この怪しからん責任逃れを次期首相が平然とやってのけようとするのであれば、私たちは徹底的に真相究明と責任追及をして行くまでだ。敢えて予告させてもらえば、これ以上米国から情報を提供してもらっても、「やっぱりイラク作戦にも日本が提供した燃料は使われていました」という確かな証拠が突きつけられるだけのことだろう。 

もちろん、民主党としても、「反対」の結論を強調してばかりはいられない。今こそ、洋上給油に代わる具体的な代案を提示していかねば、政権担当能力が疑われてる。そこでは、6年間の「テロとの闘い」を総括し、日本としての主体的な「闘い方」を示し、国際社会との協力の進め方についても、原理原則アプローチのみならず現実的なアプローチを踏まえて新たな構想を提示して行かねばならない。その構想は、単に「洋上給油を再開する」だけ(と巷間伝えられる政府与党提出予定の新法)の次元を超えるものとなるであろう。

この間、ワシントンとの情報交換や、米国や欧州から帰国した研究者からブリーフを受ける中で、私はある重要な事実を改めて認識するに至った。すなわち、いったんインド洋から補給部隊を撤退させてしまったら(それは安倍首相の辞任に伴う国会空転で、もはや必至の情勢だ)、単に洋上補給を再開させるだけでは済まされない、という事実だ。それが、国際社会の偽らざる「空気」だというのだ。2日前の国連決議に対するロシアやドイツの反発は、そのことを如実に物語っている。「なんだって?日本は、カナダをはじめ多くの国々がアフガニスタンでのテロとの闘いで夥しい血を流しているのに、戦火から遠く離れたはるか彼方の海の上で安穏とガソリンスタンドをやってきたのか?!」と。

このたび、日本で「謝意決議」といわれる国連決議1776を無理やりもぎ取ったお陰で、かえって日本の足らざるコミットメントが浮き彫りにされてしまったのである。したがって、補給部隊の撤収という「仕切りなおし」に続く我が国の次なる行動を世界は凝視しているのだ。そこで、国連安保理の常任理事国を狙うと公言してきた日本が、洋上ガソリンスタンドの再開でお茶を濁そうとしたら、きっと世界から総スカンを食うであろう。日本は、安倍政権の挫折によって、ここまで緊迫した状況に追い込まれてしまったのである。したがって、民主党の代案も、このような認識を十分踏まえたものでなければならないだろう。これは、「政局」などという中途半端な問題ではないことだけは間違いない。
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政府の悪あがき、続く

「海自給油の目的外使用、考えられず」外務副大臣が会見で
(2007年9月22日11時56分 読売新聞)

 【ニューヨーク=白川義和】小野寺五典外務副大臣は21日、ニューヨークの国連代表部で記者会見し、海上自衛隊が参加しているインド洋上の海上阻止行動「不朽の自由作戦(OEF)」のバーレーンにある司令部を20日に訪問した結果、「海自の給油活動がOEF以外の活動に使われる事態はおよそ考えられないことが確認できた」と述べた。

 副大臣によると、司令部のオペレーション・ルームでは、周辺海域を航行する船舶の位置を常時、確認できるシステムが確立しており、海自が給油した艦船がOEFの作戦海域外に移動すれば、明確に把握できるという。司令部のコズクリフ米第5艦隊司令官やOEF参加各国の連絡官も「海自の任務を認識している」と話していた、という。
(引用終わり)

政府よ、まだそんなことを言い募るつもりなのか!
往生際が悪いというか、余りにも不正直、不誠実である。
小野寺副大臣は、個人的にも親しく尊敬する友人の一人だが、国民をミスリードする発言なので、厳しく反論させていただく。

この点については、前回のエントリーでも指摘したとおり、特定海域ごとに指揮命令系統が分かれている米軍の部隊編成を考えれば、海自の給油活動がOEF以外の活動に使われる可能性は常にあるのだ。すなわち、インド洋上で給油を受けた米軍艦艇は、一義的にはアフガンOEF向け多国籍艦隊CTF-150隷下で活動するはずだが、その同じ艦艇がその後(残りの燃料を使って)ペルシャ湾へ入れば、自動的にCTF-152およびCTF-158隷下に編入されイラク向けの作戦行動に従事することになる。こういった任務をまたぐ米軍艦艇の移動は、イラク戦争開始以来おそらく毎日のように行われてきたに違いない。

したがって、私は、臨時国会でのテロ特措法(現実にはテロ特措新法)をめぐる審議の冒頭で、政府が「対イラク作戦に従事する米軍艦に燃料を補給することはない」との過去の答弁を修正せざるを得ないだろうと踏んでいた。(実際、テロ特措法には、OEFへの補給に限定するとは一言も書いていないから、政府はイラク向けの作戦行動もイラクにおけるアルカーイダなどテロリスト撲滅のためのものだ、と開き直る可能性すらあると読んでいたのだが。)

しかし、である。
外務省は、副大臣をして従来通りの答弁をさらに繰り返すつもりのようだ。

しかも、昨日、防衛省が、NGO「ピースデポ」の指摘を受けて、03年2月に行われた空母キティホークへの間接給油(海自の給油艦から米海軍の給油艦を経由して同空母へ給油)の総量を20ガロンから80ガロンに訂正したばかり。当時の福田康夫官房長官が会見で述べた「キティホークの燃料消費は1日20ガロンで、海自提供の燃料はほとんど瞬間的に消費してしまう。イラク関係に使われることはあり得ない」との発言の信憑性に重大な疑問が投げかけられた矢先である。防衛省幹部は、もはや従来の答弁のラインでは持たないと観念しているに違いない。

過ちを改むるに憚る事なかれ。

政府は、海自の給油が必ずしもOEFに限定されるものではなかったと正直に認め、過去の発言を撤回修正すべきだ。この政府答弁の修正(正確には虚偽答弁の修正)を国民がどのように受け止めるのかは、現時点ではわからない。ようやく、洋上補給活動への国民の理解が進み、各種世論調査の数字が微妙に賛成多数に変化してきた矢先だけに、このモメンタムを失いたくないとの政府与党の気持ちは十分に理解できる。

しかし、嘘はいけない。
給油総量の数字をごまかしたり、虚偽答弁をこれ以上繰り返せば、社会保険庁の二の舞だ。(ちなみに、私の恩師であるジム・アワー教授(元米海軍大佐、国防総省日本部長、現ヴァンダービルト大学教授)は、海域ごとに指揮統制を分ける米海軍の運用の基本に関わる日本政府のいい加減な説明ぶりに激怒していた。)

臨時国会でのテロ特措新法の国会審議を、生産的、建設的なものにするためにも、政府にはこれ以上の「悪あがき」を止め、我が国として「テロとの闘い」をどう進め、国際社会の協力にどう参画すべきか、という本質論を与野党で真剣に討議する環境をつくってもらいたい。私たち民主党も、議論する前から「反対ありき」の後ろ向きの議論をするつもりはない。
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テロ特措法延長問題への代案(イントロ)

安倍首相の突然に退陣により、テロ特措法の期限延長は事実上不可能となった。後継首相は、「インド洋での補給活動の継続は国際公約」との前政権の立場を踏襲する姿勢を見せているが、11月1日の特措法期限切れにより海上自衛隊の補給部隊(護衛艦1隻、補給艦1隻)の活動中断は避けられない情勢だ。

そこで、民主党の立場から、この問題を改めて考え直してみたい。まず、2001年9月11日に勃発した米国同時テロ事件は、日本人24名を含む3000人余の命を奪う未曾有の大惨事であり、翌12日に全会一致で採択された国連決議1368で認定されたように「国際の平和と安全に対する脅威」である。したがって、同決議が確認したように、米国が個別的自衛権の発動で、また他の同盟諸国が集団的自衛権の発動で、同時テロの首謀者であるウサマ・ビンラーディンはじめ国際テロ組織アルカーイダを匿うアフガニスタンのタリバン政権(当時)に反撃を加えることは、当時の状況に鑑み十分理解できることであった。さらに、我が国が、国際社会の責任ある一員として、最大のテロ被害国であるアメリカの同盟国として、国内法制の範囲内でできうる限りの協力を行うことは、同決議のいう「脅威に対しあらゆる手段を用いて戦う」との趣旨に沿ったものといえた。

当時の日本政府は、自衛権行使としてアフガニスタン攻撃を行っている米軍等多国籍軍に対し、(非戦闘地域において直接の武力行使にあたらない)洋上の補給活動をもって後方支援するという重大な政治決断を行った。民主党も、この趣旨には概ね賛同し、戦時の自衛隊海外派遣という前例のない事態に鑑み、「国会による事前承認」を最低条件に緊急立法(特別措置法)を容認する姿勢を見せた。その後、与党内の足並みの乱れから、民主党の要求した「国会の事前承認条項」が斥けられ、特措法案の採決には反対に回らざるを得なかったことは不本意であったが、対応措置をめぐる国会の事後承認の際には、党論をまとめ賛成したのである。

ところで、その際の議論の前提は、あくまでも、米軍等多国籍軍が、同時テロの首謀者であるアルカーイダを根絶するための軍事作戦を一定の国際法上の枠内で遂行し、彼らを「法に照らして裁き」(国連決議1368)、テロの根元を確実に断つ、ということであったはずだ。実際、米軍の軍事作戦は迅速に成果を挙げ、攻撃開始から数週間後にはタリバン政権を崩壊させ、パキスタン国境の山中にテロリストたちを追い詰めた。したがって、我が国が「当面の措置」として2年間の時限立法を成立させたのは妥当であったといえよう。しかし、その後の米国の行動は明らかに常軌を逸したものだった。アフガニスタンでのテロリスト包囲作戦も中途半端に、米国は、テロとの戦いを進める国際協調路線から大きく外れ、戦線をイラクにまで拡大したのである。主要国のうち少なくともロシア、フランス、ドイツなどの反対を押し切り、大量破壊兵器の存在についても不確かなまま、イラク攻撃を開始。その後の泥沼は、4000人を超える米軍犠牲者とともに米国の国際的な威信を大きく傷つけ今日に至っている。

かかる経緯に鑑み、少なくともつぎの3点を指摘せざるを得ない。第一に、米国の単独行動主義が中東の混乱を拡大し、アフガニスタンでの治安回復、復興支援活動の長期化をもたらし、緊急措置としての自衛隊による後方支援活動を今日にまで長引かせてしまったこと。第二に、イラク戦争勃発以降、我が国の補給対象が、なし崩し的にイラク向けの作戦艦艇にまで拡大された可能性が否定できないこと。(このことは、特定海域ごとに指揮命令系統が分かれている米軍の部隊編成を考えれば至極当然である。すなわち、インド洋上で給油を受けた米軍艦艇はアフガン向け多国籍艦隊CTF-150隷下で活動するが、その同じ艦艇がペルシャ湾へ入ればCTF-158隷下に編入されイラク向けの作戦行動に従事する。我が国から供給された油を使って米軍艦艇がイラク向けの作戦に出撃しない保証はどこにもない。)第三に、イラク、アフガニスタンでの混乱が、米国に対しその外交政策の根本的な見直しを迫り、次期政権が民主、共和のいずれであっても、国際協調主義を基調にしたものにならざるを得ないこと。すなわち、今後の米国は、国連をはじめとする国際社会との政策調整により配慮せざるを得なくなるのである。

したがって、テロ特措法をめぐる我が民主党の政策は、(従来の路線を引き摺る政府与党の政策とは一線を画し)これらの客観情勢の変化を先取りするものでなければならない。言い換えれば、インド洋上の補給活動を継続することのみが、あたかも「テロとの闘い」の国際協調における唯一の手段であるかごときの思い込みや、対米関係重視を強調するあまり、中東の安定化に向けた我が国の主体的な構想や戦略あるいは関与のあり方をめぐる議論そのものを避けようとする政府与党の著しく主体性を欠いた議論にお付き合いする必要はないのである。要は、我が国が「テロとの闘い」を目的と手段の両面から改めて捉えなおし、米国はじめ他国からの要請や働きかけに基づいて動くのではなく、主体的に行動すべきなのである

そこで、インド洋上の補給活動の継続に代わる、我が国としての現実的な代案を検討してみたい。キーワードは、国連決議、NATO、「テロとの闘い」の仕切り直し、ということになろう。3度にわたる特措法の延長というこれまでの政府のやり方は、明らかに法の趣旨を歪めるものであった。したがって、突然の首相退陣があろうがなかろうが、そもそも今回の延長には無理があったといえる。では、新法ならばどうか。未だに中身ははっきりしないが、洋上補給の継続に的を絞り、国会関与規定も欠落しているのであれば、議論の対象にすらならない。そもそも、6年間にわたる洋上補給活動の実態を明らかにできない(明らかにできない軍事上の事情等は理解できる)以上、イラク戦争への転用疑惑を払拭することは難しい。むしろ、新法というのであれば、洋上補給の継続に代わる「テロとの闘い」への参加形態を考えるべきだろう。

すなわち、911同時テロ直後の興奮状態から6年が経過したのであるから、改めて、日本の自衛隊が海外活動を行う際の基本原則に立ち返って考え直すよい機会だと思われる。民主党は、『政権政策の基本方針』(06年12月)において「国連の平和活動は、国際社会における積極的な役割を求める憲法の理念に合致し、また主権国家の自衛権行使とは性格を異にしていることから、国連憲章第41条及び42条に拠るものも含めて、国連の要請に基づいて、わが国の主体的判断と民主的統制の下に、積極的に参加する」と定めた。(もちろん、現実の国際政治を考えた場合、国連至上主義には危うい面もある。たとえば、我が国の死活的な国益が危機に瀕した場合でも、5大国(P-5)が一致しなければ国連安保理決議は得られず、国連が機能しない可能性は否定できない。とはいえ、現実に起こった事象に引き摺られるかたちで、憲法や法律の趣旨をなし崩し的に拡大・変更することは、法治国家として許されるものではない。「周辺事態」を超えて、海外において現に武力を行使している外国軍部隊に対して軍事支援を行う(実際、01年11月の補給活動開始から、少なくともラムズフェルド米国防長官が「主要な戦闘が終結した」と宣言するまでの約1年半は、個別的・集団的自衛権を行使する米英軍の戦闘行動に対する補給支援活動であったというのが実態)ことは、戦後の我が国の国内法体系からみて相当無理をした内容であることはいうまでもない。)

さて、民主党の海外協力に関する原則に照らして今日のアフガニスタン情勢を見てみると、01年12月に国連決議1386によって創設されたISAF(国際治安支援部隊)の活動の正当性が際立っていることがわかる。ISAFは、タリバン政権打倒を果たし、タリバンやアルカーイダの残党を掃討する米軍の作戦行動に代わり、新生カルザイ政権を支援するため、アフガニスタンの治安安定化のためにNATOがイニシャティヴを発揮し42カ国の協力の下に展開されてきた。首都カブール周辺から北部へ、西部へ、南部へ、東部へと、そのつど新たな国連決議を採択し、展開地域を拡大して、今日ではアフガニスタン全土を掌握し、治安安定化の国際努力の中核を担っている。このISAFの活動は、パキスタン国境付近の東南部に兵力を集中させ、タリバン・アルカーイダ掃討作戦を展開する米軍による軍事行動の成否に直結するアフガニスタンにとっては死活的に重要性を帯びたものだ。このISAFへの参画こそ、我が国が真剣に検討すべき「テロとの闘い」のための国際協力であろう。それは、また、NATOとの軍事協力という、我が国の外交安全保障政策にとって新たな地平を拓くものといえる意義深いものである。しかも、ISAFは、米国もその一翼を担っており、上述のように米軍の掃討作戦をもサポートするものであるから、日米同盟関係の強化という観点からも意味がある。

 では、具体的に考えられる活動とは何であろうか。・・・ここから先は、今は明らかにすることはできない。もったいぶる訳ではないが、政府与党の出方を見極めたうえで、追々具体案を明らかにして行きたいと思う。

(なお、誤解を避けるため断っておくが、この考察は、あくまで民主党の『政権政策の基本方針』に基づいたいわば原理原則アプローチに主眼を置くものであって、現実論に比重を移せば、私自身としては、インド洋上での補給活動が多国籍艦隊による海上警察行動を通じてテロリストの流入を抑止し、アフガニスタンの治安安定化に寄与していると考えているので、国内法的枠組みを整理し直した上で(ここが一番重要!)、洋上補給活動を再開する選択肢を必ずしも排除するものではない。・・・2007-09-19追記)
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とてつもない「踏み絵」

地元行事の合間に帰宅して、何気なくNHKをつけると、福田康夫元官房長官が演説していた。午後2時10分、すでに自民党総裁選の立会演説会が始まっていたのだ。

やはり気になるもの。
着替えもそこそこに、テレビに釘付けとなった。

福田氏の演説が続く。
息苦しい雰囲気がただよう。
話が要領を得ないのだ。
「都市と地方が話し合っていけるような」などという抽象的な話がだらだらと続き、唯一具体的な政策は「200年持つ住宅を」・・・。聴衆の自民党国会議員たちの間にもおそらく何となく違和感が広がっていたのであろう。福田氏ご本人も途中から話しにくそうな感じに。

私も政治家の端くれだから、この感覚は何度か経験がある。
話が要領を得ない。要領を得ないから聴衆の反応がいまいち。そのいまいちの反応が自分にも伝わってきて、さらに話に精彩を欠く・・・。
そんな感じの20分間だった。

これが総理を狙う自民党総裁候補の演説なのか。
もちろん、演説の巧拙ではない。
中身の問題なのだ。
福田氏ともあろう政治家だから、中身がないわけではないだろう。
致命的なのは、準備不足。
ほとんど準備せずに、ふらりと総裁選挙に出られた。そんな感じだ。

それは、次の麻生太郎前幹事長の自信と覚悟に満ち満ちた演説を観て、いっそう際立った。

麻生氏は、20分演説に合わせて、きちんと原稿を準備していた。しかし、それを棒読みするのではなく、聴衆に訴えるべき点では、身振り手振りを交え、確実にメッセージを聴衆の心に印象付ける。内政で3つ、外政で3つ、具体的に問題点を指摘し、自分が総理大臣としてなにをするか明確に語っていた。

もっとも、これは、総理総裁を目指す政治家の作法としては至極当然のことではある。しかし、異様に映ったのは、一方の福田氏がノー原稿どころが、ノー準備だったこと。官房長官をお辞めになってから約3年間、いったい何をやってこられたのだろうか・・・。政策ブレインも、参謀もおられないのだろうか。疑問は尽きないのだ。

それにしても、両者の立会演説会は、すでに所属国家議員の8割をおさえたといわれている「8派閥連合」の皆さんにとって、とてつもない踏み絵になったのではないだろうか。

福田支持の逢沢一郎代議士が「とても及第点はつけられない。準備不足が露呈した」とインタビューに答えていたが、誠に正直な感想だろう。この明らかに準備不足の総理総裁を、自民党は派閥の論理最優先で平然と選出するのだろうか。自民党の政治家たちは、昨日の立会演説会を目の当たりにしてもなお、派閥方針に唯々諾々と従って福田氏支持を貫くのだろうか。それとも・・・。

菅直人代表代行が、自民党総裁選に関し、「舛添さんあたりを若手が担いで突進してくるシナリオが一番怖かった」と漏らしていたのが印象的だが、ここで圧倒的な劣勢を挽回して麻生氏がメイク・ドラマで新総裁に選ばれたときの自民党は、正直手ごわいと思う。

世間では、民主党との政策協調を最優先に掲げる福田氏の方が差別化しにくく、闘いにくいのではないかといわれているが、私は全く逆だと思う。こういう無気力な総裁選出を派閥の論理一本でやってのける旧体質丸出しの自民党なら誰がリーダーになっても恐るるに足らずだ。我々は、参院選で国民に約束したことを着実に実行するまで。そして、テロ特措法に代わる対案も堂々と示す。
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