長島昭久、フィンランドへ行く!

”Mr. Nagashima Goes to Finland”

 私の大好きな映画に『スミス都へ行く』(”Mr. Smith Goes to Washington” 1939年アメリカ)があります。地方から出てきた、ど素人の新人議員が首都ワシントンの悪と闘い正義を貫くというごく単純なストーリーですが、スミス氏がワシントンで初めて見るもの・聞くものに驚き感動する様子は、今回の私のフィンランド視察と重なるものがありました。




「ネウボラ」はフィンランド国民共通の“3つの理念”に支えられている

  今回の視察の第一の目的は、「ネウボラ」の現場を実際に見聞することでした。

★ネウボラ:妊娠期から小学校へ上がるまでの子どもとその親を含む家族全体の健康と生活を守るため、かかりつけの保健師(助産師)が責任をもって切れ目のない支援につなげる制度。

 もちろん、予想通り、ネウボラという制度、それを支える人材、その人材をサポートする地域の仕組み、どれをとっても今すぐ日本が学ばねばならないものばかりでした。ところが、それ以上に勉強になったのは、ネウボラを生み出したフィンランド建国(独立)の理念です。すなわち、1917年にロシアから独立を果たしたフィンランドが、貧しい中から国の将来を担う貴重な人材を大切に育てるためにつくり上げた「国民的合意」の素晴らしさです。今回の視察における最大の収穫は、ネウボラ制度の根底に次のようなフィンランド国民の確固たる理念が横たわっていることが確認できたことです。


その1:母親は、育児の負担を分かち合う他者の助けを常に必要としている

 第一に、「母親は、育児の負担を分かち合う他者の助けを“常に”必要としている」という紛れもない真実の社会的共有です。日本では、子育てはとかく各家庭の「自己責任」で片付けられてきました。ですから、少子化が叫ばれ始めて20年経った今日でも、待機児童は解消されず、仕事と育児の両立は難しく、ひとり親家庭の貧困は先進国中最悪の状態なのです。こんなにも「子育て」にとって劣悪な環境が放置されてきたことに対し、私自身を含め、政治家は恥じ入るべきです。

 これに対し、「世界一子育てしやすい国」フィンランドでは、子どもを産む母体である母親が必要と感じているあらゆる支援を惜しむことなく社会全体で用意し、ほぼ無償で提供しているのです。その中核がネウボラなのです。ネウボラおばさん(保健師および助産師)が、親子の健康から家族関係、生活環境の隅々まで目を光らせ、早期に問題点を発見し、多機関連携に基づく適時適切な福祉的、医療的支援へとつなげていくというものです。


その2:「3歳までは子どもを家庭で育てられる」という選択肢を用意

 フィンランド国民の間で広く共有されている第二の理念は、「子どもは、なるべく3歳までは家庭で育てる」というものです。欧米の文化では共働きは当たり前で、親が家庭で子どもを育てる習慣は希薄ではないかと思われがちですが、少なくともフィンランドでは、多種多様な子育て政策によって、3歳までは無理なく家庭で子育てができるような現実的な「選択肢」が用意されているのです。たとえば、両親で合計263日間の出産休業制度、母親手当、子どもが3歳になるまでの在宅育児手当、育児休業制度、所得制限なしの児童手当(0-16歳全員が対象で、子どもが増えるごとに加算)、3歳未満と小学1-2年次に親の労働時間を短縮できる部分的ケア手当、などなど。もちろん、保育サービス(幼保一体)も待機児童ゼロ。


その3:子育て支援は、「良き納税者」を育てるため

 このような一見「財源度外視」とも思える手厚い子育て支援を可能にしているのは、「良き納税者を育てよう」とのフィンランド社会の根底を流れる立国の哲学なのです。すなわち、ネウボラの制度目的である「早期発見・早期支援」の背景にある考え方は、子ども達の成育上の課題を早期に発見し、早期に治療・対処すれば、将来(特別な福祉や医療などを通じて)税金を使う側ではなく、健全な納税者をより多く育てることができる、というリアリズムに基づく「立国の理念」があるのです。

 フィンランドでは、ロシアからの独立直後、非常に貧しい時代に国家の独立と安定的な発展のために、男女を問わず猛烈に働かねばなりませんでした。そのため、家庭に残された子どもたちへの支援施策が不可欠となったのです。したがって、次世代の良き国民、良き納税者に育て上げることが立国の本旨であるとの国民的合意が形成されていったというのです。以来約100年、高齢者を含むすべての世代で「子ども投資立国」の理念は浸透し、現にその投資のおかげで今日があるとの実感が社会で広く共有されることとなったのです。


フィンランドに「子育て政策か、高齢者福祉か?」の対立軸はない

 したがって、日本でよくある「子育て政策か、高齢者福祉か?」という対立軸は生まれません。フィンランドの子育て支援は、子ども達が可哀想だからという慈悲心の表れでもなく、「未来への投資」などという抽象論でもない。現実的な国家戦略に基づいて、子育て支援に徹底的な政策と予算を注ぎ込んできたのです。

 この点は、じつは明石市の泉房穂市長の「子育て支援は貧困対策でも弱者救済策でもない。まさしく地方創生戦略なのだ」という哲学と相通ずるものがあるのではないでしょうか。つまり、そのような世代を超えた国民的合意の上にフィンランドのネウボラ制度があるのです。この点をしっかりと踏まえた上で、私は、これから同志の皆さんと共に、日本版ネウボラを中核とした包括的な子育て支援政策の実現に全力を傾けてまいります。


衆議院議員 長島昭久拝





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「未来日本」政治塾、日本版ネウボラのまち明石へ!


 去る8月23日、「未来日本」政治塾で共に研鑽に励む地方議員の皆さん20名と、台風の迫る兵庫県明石市へ視察に行って来ました。結論を先取りして述べるとすれば、日本の将来を憂えている方、とくに政治を志す方は、挙って明石市を訪れていただきたい。これが、明石市視察を終えた私の率直な感想です。

 明石市を「子どもを核とするまちづくり」によって抜本的につくり変えたのが、泉房穂市長(55歳)です。弁護士出身で、同じ民主党で私と衆議院当選同期、同世代。泉市長は、国政を一期で勇退の後、平成22年に明石市市長に当選され、現在2期目です。「全ての子どもを、まちのみんなで、本気で応援」する。なぜなら「子どもは『まちの未来』」だから、と言い切る泉市長のヴィジョンはじつに明快です。


行政窓口、図書館、子どもに関わる様々な施設が入る「パピオス明石」館内を泉房穂市長(右端)にご案内いただく。



「子育て家庭」全体を包摂する子どもの未来保障

 さて、私たち「未来日本」政治塾では、当初、児童虐待の防止(つまり、どのようにして子どもたちを虐待から守るか)を切り口に議論を重ねてきました。その結果、児童相談所の機能強化など虐待への事後的な対処は問題の「川下」対策に過ぎず、より根源的には、家庭において虐待を起こさせないための「川上」対策、しかも包括的な子ども子育て施策こそが、いま求められているとの共通認識にたどり着きました。

 その「川上」政策を考える上において、明石市の取り組みは、待機児童対策を中心とする従来型の子育て支援策にとどまらず、「子どもを核とするまちづくり」を通じて人口問題対策から地域経済の活性化へとつなげ、しかも、持続可能な自治体経営のお手本というべきもので、訪問前に私たちが抱いていた期待や想像をはるかに超える目を見張るような成果を見せつけてくれたのです。

 以下、子どもへの投資が、どのようなリターンを生み出したかを列記しましょう。数字は嘘をつきません。とくとご覧あれ!


子どもへの投資がもたらす大きな収穫

■明石市の子どもへの投資■
①中学生までの医療費(所得制限なしの無料化)
②第2子以降の保育料(所得制限なしの無料化)
③市営施設の子どもの利用料(所得制限なしの無料化)
④保育所受け入れ枠を2年で2000人拡大
→新たに働く保育士に最大30万円の一時金支給、家賃や給料も補助、認可外保育所の利用者に月額2万円、待機児童を在宅で育てる世帯に月額1万円を助成
⑤小学校1年生で1クラス30人以下にする
⑥中学校給食の全校実施
⑦小中学校へのエアコン全校設置
⑧中核市として初の児童相談所設置(来年度から)
⑨28小学校区すべてに「子ども食堂」設置(計37か所)
⑩乳幼児健診で100%の子どもの健康確認.....など。

 投資額、すなわち子ども関連予算は、泉市長就任時の126億円(平成22年)から219億円(平成30年度)へ、じつに74%も増額されました。ここで、注目すべきは、明石市(人口29.3万人)の財政規模です。
 平成30年の一般会計予算は1,094億円で、人口30万人前後の同レベルの他の自治体に比べて、とくに裕福なわけではありません。たとえば、30.4万人の福岡県久留米市の予算規模は1,307億円、28.7万人の青森県青森市では1,227億円に上ります。(「未来日本」政治塾前田晃平事務局長調べ)


子ども達のための大胆な財政の構造改革

 そして、視察に参加した地方議員の目をくぎ付けにしたのが、以下のような子ども関連予算を捻出した財源確保のための努力です。泉市長は、当初、高齢者予算を子どもに回すことを考え、敬老会行脚を繰り返したが総スカンだったと述懐されてました。高齢者も将来不安で余裕がないことを知り、行政の無駄の削減から着手しなければ市民の理解は得られないと悟ったといいます。そこから始まった市長の血のにじむような努力には心底敬服させられます。

■市財政の構造改革■
①市役所の組織再編などで職員数を1割、200人削減
②職員給与も一律4%削減
③公共事業費削減の目玉は、下水道整備計画に基づく予算総額を600億円から150億円に削減
④その他、公営住宅の改修費や各種補助金も次々に凍結

 したがって、当初は、議会も商工会議所も商店街組合も猛反発。議会では自民党から共産党まで全会派一致で「市長に反省を求める決議」を可決されるなど、凄まじい抵抗にあったということで、泉市長自身、最初の5年間は本当に辛かったと真情を吐露されたのが、私たちの魂を揺さぶりました。
 「それにもかかわらず!」泉市長の果敢な挑戦は粘り強く継続され、ついに、ここ3年で目に見える成果、つまり投資に対するリターンを生み出すようになったのです。


「子どもを核とするまちづくり」で活性化する地域経済

 子どもへの投資に対するリターンは、つぎの「5つのV字回復」に顕著に表れています。

交流人口:明石駅前の歩行者通行量は、平成27年10月の19,650人から今や4割増の28,140人(平成29年2月)
定住人口:市長就任時、明石市は毎年平均1000人の人口減が「所与の事実」となっていたものが、平成25年から5年連続で人口増加に転じ、今や297,712人(平成30年8月)と目標の30万人達成は目前。しかも、人口増の中核は、みごとに「子育て中間層」(20代、30代と、その子どもの0-4歳児)の拡大によるもの、
出生数:平成27年から回復に転じ、3年連続で増加。
市税収入:主要税収入、納税者ともに増加をもたらし、昨年までの5年間に約20億円の税収増を実現。
地域経済活性化:たとえば、住宅需要の拡大により、住宅着工件数は過去4年間で約42%増加。商店街のにぎわいも、この2年で来街者は約43%増加し、新規出店も2年後の目標をすでに200%も達成したといいます。

出生数

平成27より3年連続で出生数が増加。【参考:明石市の資料を元に作成】



明石市を豊かにする「子育て中間層」の流入

 このように、明石市では、泉市長を先頭に「子どもを核とするまちづくり」を徹底的に推進した結果、「20-30代の中間層の夫婦が子連れで転入し、2人目、3人目を出産する」というパターンが確立し、それにつれて出生数も回復し、市税収入も、納税者数や住宅需要などの増加により、5年前と比べて約30億円増加する見込みとなったのです。そこには、自治体経営をめぐる冷徹な「戦略性」も見て取れます。それは、前述のとおり、泉市長は、「全ての子どもを、まちのみんなで、本気で応援する」という政策目標を掲げ、全ての子ども施策に所得制限を設けないという方針を貫きました。それは、単なる貧困や弱者対策ではなく、「子育て中間層」に施策の照準を合わせたからなのです。すなわち、従来型の子育て政策が対象とする低所得者層だけでなく、中間層の子育て世帯に恩恵が及ぶようにすることにより、納税者として市の財政を支える中間層を惹きつけ、明石市への転入を促すことを企図したのです。

子育て世代が増加

平成25年1月〜平成29年12月:転入者から転出者を引いた数【参考:明石市の資料を元に作成】



子どもへの投資は、未来への投資

 皆さん、いかがでしょうか。子どもへの投資は、未来への投資です。それも、妊娠期から高校を卒業するまで、一人の子どもも、一つの子育て家庭も、決して置き去りにしないという信念に基づいて、予算も人材も集中させました。その上で、明石市は、民間団体や企業などとの緊密な協力の下で、あらゆる想像力を働かせて「子育て支援ネットワーク」の網の目をきめ細かくしていくことにより、まち全体に≪子ども投資(予算と人材を集中)→サービス向上→人口増→税収増→さらなるサービス向上・・・≫という持続可能な好循環を見事に実現させたのです。


「子どもの成育医療等基本法」で日本版ネウボラを実現しよう!

 それでは、国政ではどのような取り組みが必要でしょうか。先月政府が取りまとめた児童虐待緊急対策(主に「川下」の対策)の実行ももちろん大事ですが、繰り返し述べているように、子どもを虐待から守るためには、その親や保護者、子育て家庭全体をきめ細かくサポートすること(つまり「川上」の対策)が不可欠です。

 その意味で、私が最も力を入れているのが、議員立法で「子どもの成育医療等基本法」案の成立を目指す超党派の議員連盟における活動です。これは、現行の「母子保健法」を発展拡大させて、フィンランドにあるような「ネウボラ制度」(母子だけでなく子育て家庭全体を支援)を我が国にも確立しようというものです。今回視察した地方における明石市の取り組みと、国における子どもの養育と医療をめぐる環境を総合的に整備する取り組みが合体した時、はじめて虐待やいじめ自殺などの要因を社会から一掃し、真の意味で「子どもを産み育てることが楽しいと実感できる」日本が実現すると確信します。

 次回は、9月11日から15日に訪れる予定のフィンランド視察報告をお送りします。乞うご期待。

衆議院議員 長島昭久



*今回、共に明石市を視察した「未来日本」政治塾の前田事務局長のブログはこちら
*ネウボラについて

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「未来日本」政治塾、スタート!




 私が塾長を務める「未来日本」政治塾。
 7月26日、日本が直面する社会課題の解決に燃える30人の地方議員が新宿に結集し、いよいよ開講しました。私たちが最初に選んだテーマは、「児童虐待」。この分野の第一人者である旧知の駒崎弘樹さん(NPO法人フローレンス代表理事)を講師にお迎えし、質疑応答は予定時間をオーバーして白熱しました。




政治塾の最初の課題は「児童虐待」

 6月上旬に大きく報道された目黒区の5歳女児結愛ちゃん虐待死事件をきっかけに、児童虐待問題が改めて深刻な社会課題として国民的議論を巻き起こしました。私も国会に超党派議員連盟「虐待から子どもを守る国会議員の会」(会長:塩崎恭久元厚労相)を立ち上げ、政府に対し緊急要望を取りまとめました。政府も迅速に動き、7月25日に緊急対策を閣議決定しました。

政府緊急対策のポイントは次の4つです。
①児童相談所の増強(2022年までに2000人増)
②自治体間をまたぐ事案の連携強化
③警察との情報共有の強化
④乳幼児健診の徹底

児童虐待問題には、原因と結果の側面がある

 私はかねてから、この児童虐待問題には、(他のあらゆる問題と同じく)「原因」と「結果」の側面があると考えてきました。政府の緊急対策は、主として虐待の結果に対処するものといえます。児童相談所の機能を強化して虐待された子どもの命と健康を守っていこうというのが最大の柱です。これらを専門家の間では、川の流れにたとえて「川下の対策」と呼ばれており、他にも、①一時保護所の環境の改善、②児童相談所が持つ二つの機能(子育て家庭「支援」と子どもの命を守るための「介入」)の調整、③強すぎる親権とこれまで軽視されがちだった子どもの権利との適切なバランス、④一時保護から里親や特別養子縁組へとつなげるパーマネンシー(永続的解決)の確立、など課題山積です。

児童虐待を予防するためには「川上」の対策を

 これに対し、私は、「川上の対策」、すなわち、虐待の原因である保護者による虐待を未然防止(予防)するための方策こそ、児童虐待を根絶するために重要な視点ではないかと考えてきました。つまり、精神疾患や貧困、孤独な育児など様々な原因(要因)で子どもに対し虐待をしてしまう保護者に働きかけること(たとえば、助言や相談に乗ってあげるなど)によって、保護者を追い詰めてしまう要因そのものを除去していく地域や社会の取組みが大事ではないかと考えます。

フィンランドは、なぜ「子育てしやすい国」世界一なのか?

 そう考えていくうちに、私は、フィンランドの「ネウボラ」制度に行きついたのです。ネウボラは、フィンランド語で「ネウボ=助言する」「ラ=場所」を意味し、文字どおり子育て家庭のよろず相談を一手に引き受けてくれる施設です。しかも、妊娠がわかってから小学校に上がるまでの子ども達にとって最も重要な6年間を、原則として一人のネウボラおばさん(保健師)が切れ目なく同じ家庭の面倒を看つづけるという夢のような制度なのです。70年以上続くネウボラは、フィンランドの子育て家庭の98%が利用しているとのこと。こんな仕組みが日本にもあれば、育児に悩む若い親御さんたちにとっては本当に安心ですね。

*フィンランドの子育て支援制度についてはコチラをご参照ください。


日本にもフィンランドに負けない仕組みをつくろう!

 百聞は一見に如かず。私は9月中旬に、実際にフィンランドに行って、このネウボラ制度の実情をつぶさに視察して来ることにしました。その成果を「未来日本」政治塾の塾生たちと共有し、児童虐待の原因を日本社会から一掃するために、ネウボラに負けないような仕組みづくりに役立てていきたいと考えてます。日本にも、子どもに関わる仕事やボランティア活動に従事している大人は沢山います。児童相談所のみならず、保健師、医師、保育園や幼稚園、小中学校関係者、教育委員会、民生・児童委員、地域の子ども会、社会福祉協議会などなど挙げれば切りがないほどです。

「未来日本」政治塾で日本の社会課題を解決しよう!

 「未来日本」政治塾は、そのような日本社会が持つ潜在力をカタチに変える地域の斬新な仕組みづくりを主導していく人材を輩出することを大きな目標として掲げています。そのために、「未来日本」政治塾は、党派を超えた地方議員の研修、連帯の場を提供するものです。したがって、巷によくある選挙に勝つためのノウハウを学ぶような政治塾ではなく、社会課題に取り組む専門家や社会起業家を招き、現場視察などの研修カリキュラムを通じて、政策力を磨き、それを具体的な行動につなげ、さらに改革を推進するための連帯の輪を全国に広げてまいります。

衆議院議員 長島昭久



「未来日本」政治塾の詳細についてはコチラをご覧ください。

第1回「未来日本」政治塾の様子

塾長挨拶


白熱した質疑応答となりました。
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やはり、日本にも「ネウボラ」が必要だ!

 またしても、悲劇が起こってしまった。
 東京都目黒区で、親から虐待を受けた5歳の結愛(ゆあ)ちゃんが尊い命を奪われた。

「もうおねがい ゆるして ゆるしてください」

 覚えたてのひらがなで綴った結愛ちゃんの痛切な言葉に、胸を締め付けられた。この小さな命を、なぜ救えなかったのか?誰しもが思ったことだろう。


 年間の児童虐待通報件数は、この10年上昇の一途。ついに年間12万件を超えた。そのような中、虐待によって命を落とすケースは、年間およそ300件とされる。毎日一人の子どもの命が家庭内虐待によって奪われていることになる。なんということか!
 虐待の通報(通告)は、児童相談所(児相、都道府県を中心に全国210か所)に集まる。だから、虐待問題が発覚するたびに児相は批判にさらされる。
 今回も、香川県で2度も結愛ちゃんを一時保護(そのつど義父は傷害罪で逮捕されている)しながら、なぜ児童福祉司による指導措置を解除してしまったのか?東京都の児相への事案の引継ぎは適切になされたのか?東京都の品川児相はなぜ事案を引き継いで48時間以内に家庭訪問しなかったのか?(実際の訪問は事案引継ぎから9日後、しかも結愛ちゃんを確認できず)・・・など、疑問と批判の声が噴出した。


 じつは、児童虐待が急増する今、児相の現場は火の車なのだ。
 児相職員は一人100件近くの事案を抱え日夜苦闘し、精神疾患で離職する職員も続出している。もちろん、厚生労働省とてこの状況を看過しているわけではない。同省は今、人口4万人に一人の児相職員の配置を目指す取り組みを進めている。わずか数年前まで6万人に一人が目標だったことを考えれば、たしかに政策的努力の跡はうかがえる。
 それでも、人口4万人なら(子どもの数は総人口の約12%だとして)児相職員一人で5000人弱の子ども達を相手にする計算だ。とてつもない数字だ。もっとも、そのうち虐待が疑われる家庭はどのくらいあるのだろうか。


 ここに参考となりそうな数字が二つある。
 一つは「5%」、もう一つは「20万人」。
 前者は、法律で定められた乳幼児健診を受けていない子どもの比率だ。すなわち、我が国では、母子保健法に基づき乳幼児健診が義務付けられている。1歳半と3歳児健診は法的に定められ、その間も必要に応じて健診を推奨されている。ところが、受診率はというと、それぞれ95.7%、94.3%となっている。つまり、約5%の子どもが法律で義務付けられている乳幼児健診を受けていないのだ。この5%の子ども達が、潜在的な虐待、少なくとも「社会的孤立」に陥っている可能性が高いと考えられる。そうだと仮定すると、(もちろん、地域差はあるが)児相職員一人が対象とする潜在的な被虐待児童は、5000人の5%、つまり200-250人となる。さきほどの「一人で100件」という実態のおよそ倍の数字だ。したがって、厚生労働省の人口4万人に児相職員一人という目標では到底追いつかないことは明らかだ。

 もう一つ憂慮すべき数字が「20万人」である。前述の3歳児健診を終えて小学校に入学するまでの3-5歳児のうちで、幼稚園にも保育園にも行っていない子どもがじつに20万人もいるというのだ。3-5歳児の人口は約316万人だから、約16%にも上る。愕然とする数字だ。この数字は、子どもの貧困とじつは合致する。いま貧困の連鎖が問題となっているが、じつは虐待も連鎖しているという。貧困と家庭内虐待は連関しているのかもしれない。


6/21、22に超党派ママパパ議連による児童虐待防止対策に係る緊急申し入れを厚生労働省と法務省に行う。
(写真は、高木美智代厚生労働副大臣へ申し入れを行った際の様子)



 したがって、児童虐待は、単に児童相談所を強化すればいいという話では済まないことが分かる。もちろん、児相の拡充は最低限の対応として予算配分を含め可及的速やかに行わなければならない。警察、医療機関、民生・児童委員、学校や幼稚園、保育園など関係機関の連携もより緊密にしなければならない。さらに、場合によっては親権停止まで含めた虐待対応のルールの明確化も急ぐべきだ。
 しかし、より根本的には、自らの子どもを虐待してしまう親(保護者)を何とかしなければならない。その点で、東京若手議員の会の児童虐待防止プロジェクトチームによる小池百合子東京都知事への緊急提言に書かれているように、保護者が子どもを虐待してしまう背景には、「社会的孤立、経済的貧困、保護者や子どもの疾患、保護者が過去に虐待を受けた経験など様々な要因があり、児童虐待は保護者の『SOS』でもある」という指摘は重い。
 つまり、児童虐待を防止するためには、子どもだけでなく保護者も含めその家庭ごとケアをしてあげなければならないのだ。とくに、「三つ子の魂百まで」といわれるが、就学前の0-5歳の時期は人間形成にとって死活的ともいえる。この時期に、人間の脳が形づくられ、心の在りようが決まり、基礎的な運動能力が身につくといわれているからだ。だから、子どもにとって、0歳から5歳が最大限のケアを要する時期なのである。


 その子ども達にとって最も大切な期間を手厚くサポートできる仕組み。それが、フィンランドの「ネウボラ」*だ。私は、真の児童虐待防止策として、日本にも本格的に「ネウボラ」の導入を図るべきだと改めて提唱したい。3年前に各自治体に開設が(努力)義務付けられるようになった「母子健康包括支援センター」は、ネウボラ類似施設として期待されたが、質量も貧弱だし、何よりも子育て家庭支援の根本的な哲学や理念が日本社会全体で共有されているとはいいがたい。
 この際、妊娠期から小学校へ入学するまでの6-7年間を切れ目なく各家庭を丸ごとサポートする「日本版ネウボラ」を創設しようではないか。人口600万人のフィンランドでは、児童虐待による死亡件数は、年間0.3人だという。つまり、3年に一人なのだ。彼我の差は歴然。彼我の仕組みや制度の差も歴然。私は、子ども達の「未来保障」のために、日本版ネウボラの全国展開を予算措置も含め国家目標として掲げ、政府に対し決断と実行を迫っていく。


*「ネウボラ」・・・フィンランドにおいて、妊娠期から出産、子供の就学前までの間、母子とその家族を支援する目的で、地方自治体が設置、運営する拠点。また、出産・子育て支援制度。

 



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米朝首脳会談、その後

 6月12日のシンガポールにおける米朝首脳会談は、たしかに歴史的ではありましたが、具体的な中身を期待していた人々の間には一様に失望が広がっています。とくに、専門家からは酷評されています。なぜなら、肝心の「非核化」について、会談前にトランプ大統領は、北朝鮮にCVID(完全(Complete)かつ検証可能(Verifiable)で不可逆的(Irreversible)な核廃棄(Denuclearization))を呑ませると豪語しておきながら、共同声明には「完全な非核化」(VとIは欠落!)としか謳われず、非核化の定義も、期限も、検証の枠組みすら示されなかったことから、非核化プロセスを限りなく先延ばししようとする金正恩氏の思うつぼではないかと。おまけに、長年北朝鮮が要求してきた米韓合同軍事演習の中止まで(同盟国に相談もなく)約束してしまったのは、あまりに軽率だとの批判を浴びました。

 私も、米国のシンクタンクで研究員として勤務していた1997年以来、朝鮮半島問題に関わって来た者としても、功名心(11月の中間選挙を有利に進めたいという動機か?)が先に立つトランプ大統領のやり方はあまりにも拙速で、北朝鮮やその背後にいる中国の術中に嵌ってしまうのではないかと憂慮を禁じ得ませんでした。じっさい、欧米の識者の間では、「会談の勝者は中国」だといわれています。中国は、これまで一貫して朝鮮半島の平和的解決を主張。そのためには、北朝鮮による核やミサイル実験の停止と(米国の対北敵視政策を象徴する)米韓合同軍事演習を凍結する(「ダブル・フリーズ」政策)必要がある、と米朝双方に呼びかけてきました。今回の首脳会談の結果は、まさしくその通りになりました。

 しかも、米朝の共同声明によれば、両首脳が合意したのは「朝鮮半島の完全な非核化」でした。国際社会が求める北朝鮮の非核化ではなく、「朝鮮半島」全体の非核化というのには実は、深い意味があります。
今や朝鮮半島の南側(韓国にも、在韓米軍にも)には核兵器は存在しません。にもかかわらず、非核化の対象を「朝鮮半島」全体とするのは、韓国に対する米国の「核の傘」も排除するという意図が潜んでいるからなのです。米国が核の傘を提供する根拠は、ひとえに米韓同盟です。米韓同盟を支えているのは3万余の在韓米軍です。中国の基本戦略は、朝鮮戦争以来一貫して朝鮮半島に対する米国の影響力の排除(換言すれば、中国による朝鮮半島支配の確立)です。今回のトランプ氏の示した方向性は、ずばり中国の思惑と合致するのです。

 そうだとすると、我が国にとっては一大事です。我が国の基本戦略は、戦後一貫して米国による韓国および日本への安全保障のコミットメントをいかに維持、強化していくかにあるからです。米韓合同軍事演習の中止にとどまらず、(将来的な)在韓米軍の撤退にまで言及したトランプ大統領の交渉姿勢を看過することはできません。しかも、我が国最大の懸案である拉致問題についても、トランプ氏が首脳会談の中で繰り返し言及したとされていますが、共同声明にも盛り込まれませんでした。それだけにとどまらず、トランプ氏は、非核化の経費は日本、韓国、中国が負担することになるだろうとも述べました。さらに、懸念されるのは、北朝鮮を真剣な対話のテーブルに向かわせた「最大限の圧力」が、米朝首脳による握手によって溶解してしまう可能性が高まることです。すでに中朝国境の交易は活発に行われているといわれていますし、韓国もロシアも北朝鮮への経済支援に前向きです。

 とはいうものの、すでに「賽は投げられた」のです。たしかに、トランプ大統領のやり方は常識破りです。普通の外交交渉であれば、首脳会談の前に実務協議を重ね議題など詳細を詰めておくものです。しかし、その真逆が「トランプ流」なのでしょう。とにかくトップ同士で握手を交わし、あとは実務者に丸投げ。先行きは不透明ながらも、非核化に向けて物事をスタートさせたことは間違いありません。しかも、ボールは北朝鮮のコートに投げ込まれました。今後は、北朝鮮が「迅速に」非核化のプロセスに入るかどうかが最大の焦点です。専門家の間から譲歩し過ぎだと批判を浴びていますが、米韓合同軍事演習の中止も北朝鮮の行動次第ではいつでも再開できるわけで、逆にこの米国の「善意」を反故にした場合には軍事行動へ転換する口実とすることもできますから、トランプ氏にしてみれば譲歩でもなんでもないということになるのでしょう。

 さて、ここから日本外交はどう進められるべきでしょうか。私は、中長期的な視点が重要だと考えます。当面、戦争の危機が回避できたことは歓迎すべきですが、非核化のプロセスは長く険しいものとなるでしょう。その間に我が国最大の懸案である拉致問題を解決するために、日朝首脳会談を真剣に模索すべきです。その前提として、ストックホルム合意に基づく拉致被害者に関する真の調査報告を求めねばなりません。史上稀に見る警察国家たる北朝鮮においては、(国民であれ外国人であれ)住民の動向は当局が完璧に把握していますから、拉致被害者の安否調査に時間がかかるはずがありません。その上で、非核化支援のための国際的な費用分担には誠実に応じればよいと考えます。

 さらに、中長期的な我が国安全保障の主要課題が、中国の動向であることを忘れてはなりません。過去30年に軍事費を51倍にまで拡大し、近代化された核ミサイル戦力が我が国を射程に収め、東シナ海や南シナ海で強硬姿勢を崩さない中国は、北朝鮮の脅威よりもはるかに強大で複雑です。その中国との関係を安定させるためには、経済的な結びつきの深化と同時に「力の均衡」も不可欠です。そのためには、常識破りの外交を展開するトランプ大統領率いる米国との同盟関係をどう維持、強化していくかが大事なポイントとなります。たとえ北朝鮮の核ミサイルの脅威が首尾よく低減されたとしても、弾道・巡航ミサイルに対する脅威は存在するのですから、それに対する抑止力のカギを握る陸上イージス防衛システムの配備は粛々と進めていくべきでしょう。同時に、できるかぎり「自分の国は自分で守る」だけの独自対処能力を確立するため、効率的な防衛力と多角的な情報収集能力の整備に努めるべきです。

 いずれにせよ、朝鮮半島に平和と安定をもたらすためには、単に南北朝鮮や米朝関係、日朝関係といった二国間関係の改善を図るだけでは足りません。米中や日中、日露、さらには日米間、日中韓関係など重層的な安全保障環境の安定化に向けた不断の努力が必要です。そのための戦略的な日本外交を、引き続き与野党の垣根を越えて提案し実行してまいります。

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