まず憲法96条から改正することの是非を考える

安倍政権の再登場によって憲法改正がにわかに現実味を帯びてきました。これに対して様々な動きが出ています。改憲を目指す勢力は「憲法改正を阻んできた元凶は改正の発議要件を厳しく設定している憲法96条にあり、まずこの条項から改正しよう」と勢いづく。逆に、護憲派の人々は「改憲派の狙いは9条改正にあり、何としても平和憲法を守ろう」と身を固くする。今年の5/3憲法記念日は、例年になく議論が盛り上がりました。そこで、私も改めて憲法改正について自らの考え方を明らかにしておきたいと思います。

時代に合わせて憲法もモデルチェンジが必要

 私は初当選以来、自らの重点公約として憲法改正を主張して参りました。もちろん現行憲法は評価すべき点も沢山あります。しかし、いかんせん戦後の混乱期につくられたこともあり、60年余を経て当時の憲法制定者の予測をはるかに超えた新しい社会状況に対応しきれなくなって来たことは誰の目にも明らかです。したがって、新しい社会状況に鑑み、プライヴァシーの権利や環境権、知る権利、さらには犯罪被害者の人権など、「新しい人権」を憲法の明文規定に加えることにより、憲法の第一原理である基本的人権の保障をさらに深化させて行く憲法改正を否定する方はいないと思います。この点は護憲派の方々にも真剣に考えていただきたいと思います。

解釈による辻褄合わせは憲法の空洞化を招く

 一方、第9条に象徴されるように、憲法条文と現実のギャップがますます拡大し、内閣法制局を中心とする辻褄合わせの解釈改憲によって、かえって憲法が空洞化することに危機感を覚えます。他にも、特に統治機構をめぐる憲法規定には数多くの改善点があると思います。まず、二院制です。現行のように選ばれ方(選挙制度)も役割も同じ衆議院と参議院では、そもそも二院制の意味はなく、審議の停滞を招くばかりです。しかも、衆議院の多数によって内閣を構成する「議院内閣制」は本来は政治を安定化させる仕組みであるにもかかわらず、参議院が強すぎるため、衆議院に対する事実上の拒否権を行使することにより、かえって政治が不安定化する事態を招いています。衆参の役割をガラリと変えるか、一院制にしなければ「ねじれ国会」の弊害は永遠に続くと思います。

地方分権を本気で推進するには憲法改正が必要

 また、地方分権も長らく叫ばれてきましたが、憲法92条以下の規定により自治体の組織も運営も財政もすべて国の法律によってがんじがらめの現状では、分権改革は掛け声倒れに終わってしまいます。今こそ「公共部門が負うべき責務は原則として最も市民に身近な公共団体が優先的に執行するものとする」との欧州自治憲章(欧州30カ国余が批准)に謳われた「補完性の原理」に基づいて憲法改正すべきです。すなわち、自助・共助を補完する公助はまず身近な自治体によって、それでも解決されない問題を広域自治体(たとえば、道州制)で、国は外交安全保障や通貨、教育水準の確保など限定的な役割を担うような真の分権社会を実現させるのです。

なぜ96条改正を先行させるべきか

 最後に憲法改正の進め方について。たしかに憲法改正の手続きを定める96条の規定は高いハードルです。衆参両院の2/3という改正の発議要件を過半数に緩和できれば、憲法改正は現実のものとなるという期待が膨らみます。これには、「通常の法律改正と大差なくなり、政権が変わるたびに憲法が書き換えられてしまう」との批判が改憲派の間にも燻っています(特に、私の学生時代の指導教授である小林節慶應義塾大学教授がその批判の急先鋒で論陣を張っておられます。苦笑、汗)。ただし、法律改正と決定的に異なるのは、憲法改正のためには加えて国民投票が必要である点です。これこそが、改正しにくいという意味での「硬性憲法」たる所以ですから、国民の意思に最終決着が委ねられる点を看過してはならないと思います。私が、一昨年超党派の同志議員と「96条改正議連」を立ち上げた動機は、まさしく国会議員の怠慢によってブロックされてきた憲法改正論議を国民に広く開放し最終的には国民の意思に委ねよう、というものでした。

すべては、国民に開かれた憲法改正論議のため

 とはいえ、率直に言って、中身の議論を棚上げして改正手続から手を付けるやり方は改憲の王道とは言えません。堂々と正面から改正の中身を議論するべきです。そのような中で96条を見直すならば、私はスペインの憲法を参考に、「人権」と「天皇」に関わる条文改正の発議には引き続き2/3の厳しい要件を課し、その他の「統治機構」に関わる条文の改正は過半数か3/5に要件緩和するという「落とし所」を提案したいと思います。これであれば、絶対護憲派はともかく、改憲派や中間派の中にある懸念もある程度払拭できるのではないでしょうか。いずれにせよ、ようやく活性化してきた憲法改正を現実のものとするため、とりわけ国民が参加しやすい環境を整備するため、党内論議に止まらず国会議員として国会の内外で責任ある議論と行動を起こして参ります。
 
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