オバマ新大統領と日本の覚悟

今年最初のエントリー。
以下は、オバマ大統領就任を受けて、地元紙に寄稿したものに若干の加筆修正をしたもの。なお、昨年来の懸案だった海賊対策もほどなく海上警備行動が発令される見通し。時間はかかったものの、これでようやく我が国商船隊は他国艦隊への「フリー・ライド」といった謗りからは解放される。政府が決断した以上、海上自衛隊の皆さんに頑張っていただくしかない。我が党も、野党第一党として、一日も早く党論をまとめて海賊対策の方針を明確にしなければならない。

寄稿文「オバマ新政権と日本の覚悟」

1月20日、厳寒のワシントンでアメリカ合衆国第44代大統領バラク・フセイン・オバマが就任しました。史上最高の200万人が全国全世界から詰めかけ、歴史的な黒人大統領の就任に熱狂しました。奴隷の子孫が大統領へ。まさに革命的な出来事です。1955年、アラバマの小さな町の黒人女性の勇気ある行動に端を発し、キング牧師によって全米に広がった公民権運動。それから半世紀、ついにアフリカン・アメリカンの見果てぬ夢が実現したのです。私は、そこに米国民主主義の底力を痛感しました。解散先送りで混迷する我が国の政治との差は歴然としているといわねばなりません。

しかし、オバマ新大統領を迎える内外情勢は困難を極めます。世界同時不況の引き金を引いてしまった米国。家計も企業も政府も赤字を垂れ流しながら、マネーゲームに狂奔してきた米国経済がついに暗礁に乗り上げたのです。米国民の旺盛な需要に支えられ拡大を続けてきた世界経済も主柱を失い、全世界の企業の株価時価総額は半減してしまいました。一方、イラク戦争とアフガン戦争で累積戦費は1兆ドル。金融機関やビッグスリー救済のために、さらに1兆ドル。総計200兆円を超す財政負担は、経済の足を引っ張りドルの信認を蝕みます。しかも、イラクからもアフガンからも兵力撤退は容易ではありません。少なくとも、オバマ政権一期目の4年間は国内経済の立て直しと戦後処理に忙殺されるということになるでしょう。

それは、我が国にとっても、世界にとっても、しばらくは米国の指導力に期待することができないことを意味します。すでにその兆候は米外交の随所に現れています。北朝鮮政策では、同盟国日本の反対にもかかわらず、肝心の核廃棄をめぐる検証を曖昧にしたまま北朝鮮の「テロ支援国家指定」をあっさり解除してしまいました。グルジア紛争でも、パレスティナ紛争でも、米国はほとんど指導力を発揮することはできませんでした。我が国は、新年早々から、「米国不在の無極化世界」という未体験ゾーンに突入することになったのです。戦後一貫して、経済でも外交でも「アメリカ頼み」でやってきた日本の生き方は、根本的な見直しを迫られるはずです。すなわち、今日ほど、日本および日本人に自立の精神が求められる時代はないでしょう。食料自給率の向上も、化石燃料からの脱却によりエネルギーの中東依存度を減らすという課題も、もはや待ったなし。我が国の存立を賭けた至上命題となったのです。

古くは元寇や黒船来航、現代においても石油ショックや円高ショックなど、幾多の国難を乗り切ってきた日本人の英知と勤勉さと冒険心を、私は信じます。そうです、「Yes, We Can!」。ともに力を合わせて、この未曽有に危機を突破し、明るい未来を切り開いてまいりましょう。
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