テロ特措法への代案、解禁間近!

この間、沈黙を守ってきたが、ISAF参加論でテロ特論議に一石を投じた小沢代表がまったくブレていないことに意を強くしている。

政府与党は、「小沢代表=ISAF参加=武力行使=憲法違反」とのレッテルを貼り、小沢代表のクレディビリティを傷つけることに躍起になってきた。そんな効果もあってか、党内からはそれを不安視する声が上がり、地元後援会の方々も結構心配してくださった。

しかし、動ずることはまったくない。
小沢代表は、1993年のカンボディアPKO派遣以来の国際貢献論の延長線上で、自衛隊派遣の原則論を語ったまで。べつに驚くべき内容は何もない。ISAFと言ったって、武力行使していない部隊が大半だ。武力行使を強いられ、多くの死傷者を出してしまっているのは、米国主導のテロ掃討作戦(OEF)に巻き込まれているアフガン南東部の部隊だ。カナダ軍がその最たる例。国連PKOの伝統国もいまが正念場。尊い犠牲にお悔やみ申し上げるほかない。

我が国として、現実的な選択肢は、原則としてドンパチとは無関係のPRT(地方復興チーム)への参加だ。この(復興支援に当たる)文民と(それを警護する)軍部隊との混成チームは、アフガニスタン復興の要を握っている。ここに我が自衛隊部隊が参加する道を模索できないか、というのが現実的な選択肢なのである。もちろん、まだ党内のコンセンサスが十分に得られたわけではないが、すでに144名の日本人がアフガニスタンで活動していることを忘れてはならない。

ところで、軍閥の武装解除や復興支援や治安部門改革に汗を流している彼らを警護する部隊はいない。ほとんど丸腰状態だ。これは、余りにも無責任ではないか。彼らの善意と勇気に頼りきっている我が国政府や政治全体の無責任をこれ以上続けることがよいのかどうか。今問われていることはそういうことだと思う。

いよいよ火曜日に国際テロ防止特別委員会の質疑に立つ。福田首相入り、NHK入りだ。高村外相にも、石破防衛相にも聞きたいことは山ほどある。

不祥事の山に埋もれた防衛省のトップは、文字通り「針の筵」に違いない。テロの時代にあって我が国の安全保障をいかに確保し、テロと闘う国際社会の一員として我が国がいかなる役割を果たすべきか、とった本質論を議論しながら、一方で、守屋前事務次官の底なしスキャンダルや省内の情報隠蔽、記録破棄などといった後ろ向きの課題にも対処していかねばならない石破大臣の立場は察して余りあるが、私としては、(後者の問題も税金の無駄遣いやシヴィリアン・コントロールの観点から重要問題ではあるものの)、国益を見据えた本質的な議論を構えて行きたいと思っている。

質疑時間は、10月30日(火)15時から約40分。NHK総合テレビがカバーすることに。乞うご期待!
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ようやく議論の土俵ができつつある

小沢氏、アフガンへの陸自派遣「政権取ったら実現したい」
(産経新聞 2007.10.7 19:46)

 インド洋での海上自衛隊の補給活動継続の是非が今国会最大の焦点となる中、民主党の小沢一郎代表が9日発売の月刊誌「世界」11月号に寄稿した論文で、アフガニスタン本土に展開する国際治安支援部隊(ISAF)への参加を「政権を取ったら実現したいと思う」と明言した。政府が提出する新しいテロ対策特措法案に反対する民主党は対案を検討中だが、民生支援にとどまらず、アフガン本土への自衛隊派遣を盛り込むかどうかで党内の綱引きが始まりつつある。小沢氏の持論提起はここへも波紋を広げそうだ。 (斉藤太郎)

■足下から異論

 「党内で議論して決めたという事実は確認していない。私は若干(考えが)違う」民主党の枝野幸男元政調会長は7日、民放テレビの報道番組で小沢氏のISAF参加論に異議を唱えた。

 さらに枝野氏は、石破茂防衛相が憲法違反との懸念を指摘したことに、「国連軍(への自衛隊派遣)なら国の主権を離れる。だが(ISAFのような)国連のオーソライズに基づくものは、(憲法が放棄した)国権の発動(たる戦争)の側面も残る。石破氏の言う通りだ」と語った。

 アフガン本土への自衛隊派遣は、党内リベラル派や旧社民党を中心に「戦争でテロはなくならない。アフガン国民からの信頼も失う」(幹部)と拒否感が強い。枝野氏はこうした意見を代弁し、「政権を取ったら本当に自衛隊派遣に動きかねない小沢氏にブレーキをかける」(若手)ねらいもあるようだ。

 一方、菅直人代表代行は7日のフジテレビ「報道2001」で、「テロリストがいそうだからと武力攻撃を加えるところに、自衛隊を出すのは無理だと思う」としつつ、「麻薬対策や人道支援といった分野でやれる範囲が一切ないとは思わない」と、慎重な言い回しに終始した。

■派遣積極論も

 民主党のテロ新法への対案づくりでは、政府開発援助(ODA)や文民を活用した医療や食糧、教育などの民生支援の強化については、保守系も含め異論はない。

 だが保守系議員は「丸腰の文民だけ派遣し、他国に守ってもらうのはおかしい」(中堅)と、アフガン本土への自衛隊派遣を加えようと動き始めた。「民主党が補給活動継続反対でテロとの戦いに背を向けている印象」(若手)を国際社会に与えつつあるのを危惧(きぐ)するからでもある。

 検討中の具体案は、ISAFと密接な関係にある軍民共同のPRT(地方復興支援チーム)で、医療支援やインフラ整備にかかわる日本人文民の警護や、ISAFへの後方支援のための自衛隊派遣だ。ただ、実現には特措法や停戦合意など参加原則を定めた国連平和維持活動(PKO)協力法の改正、自衛隊派遣の恒久法のいずれかの法整備が必要になる。

 保守系議員の1人は「政府・与党はテロとの戦いと言うが、インド洋が比較的安全だから出しているだけだ。諸外国のようにリスクを負ったアフガン本土での活動の方が貢献度ははるかに高い。国連のオーソライズもある。(本土への)派遣を避けてはいけない」と語る。小沢氏の持論展開については「早期の政権獲得を目指しているのだから、今度の対案の段階から入れておくのが当然だ」と、“追い風”として歓迎する。

 一方、民主党幹部からは「小沢氏はなぜ、テロ新法の審議も始まらないタイミングで、ISAF参加を言ったのか」と困惑の声も漏れている。
(引用終わり)


ようやく、議論の土俵が整ってきた。
争点は、ずばり「テロとの闘いで日本の果たすべき国際責務は何か」である。

補給燃料の転用疑惑について、日米政府がどのような回答を準備しているのか興味深いところだが、これは話の本筋ではない。政府の誠実な姿勢に期待したい。

さて、小沢代表のISAF発言が与野党の政治家からの批判にさらされている。10数年前の政治改革論議で見せて以来の久々の直球勝負といえる。断っておかねばならないのは、小沢代表がISAF参加と言っているのは、あくまで理念型の話。国連決議があって(つまり、国際的な合意が形成されて)、世界38カ国が参加しているISAFこそ、平和主義と国際協調主義を基本原理とする我が国憲法の理念にも合致する有意義な国際平和構築活動ではないか、と言ったまでだ。

この理念型の問題提起に噛み付いている与野党政治家は、90年代以来のPKO(平和維持活動)をめぐる議論の積み重ねをまったくご存じないのだろうか。石破防衛大臣がご存じないはずがないのだが・・・。湾岸戦争で轟々たる国際非難にさらされた日本は、その後、1993年のカンボジア国連PKOへの自衛隊派遣を皮切りに、危険を覚悟の上で(また、危険なるがゆえに民間人に代替させることはできないとの理由で)、ルワンダやゴラン高原、東ティモールなどのPKOミッションに参加してきたのである。

今回のISAF参加をめぐって、「危険だから自衛隊派遣は無理」との理屈は通るまい。これまでも、カンボジアで警察官が、民間ボランティアが命を落とし、イラクでは外交官が命を落とした。すなわち、危険かもしれないけれど、日本国として国益にかない、相応の国際的責務を果たすために、ベストの人材を政府の責任で派遣する意思があるかないか、がいま問われているのだ。この「ベストの人材」から自衛官だけを排除する道理はない。

しかも、OEF(不朽の自由作戦)と混然として戦闘行動を余儀なくされているアフガニスタン南東部に展開するISAFに参加しろ、とは誰も言っていない。ISAFには、武力行使を伴うことが国連決議に明記されている(つまり、これは国連が認めた武力行使である。・・・ちなみに、戦争および武力行使を違法化した国連憲章では、武力行使について、自衛権行使と国連の集団的措置という2つの例外があることを認めている。ISAFは、後者の事例)ことも、十分認識している。だから、石破大臣が、「ISAFで武力行使するのは違憲」というのは、批判になっていない。誰も、「ISAFに参加して武力行使しろ」とは言っていないのだから。

ようやく議論が高まってきたので、そろそろ封印してきた具体的な代案を明らかにしたいと思う。ヒントは、引用した冒頭の産経新聞の記事にある。ISAFといっても、その下で復興支援活動に従事するPRT(地域復興支援チーム)に注目していただきたい。また、ISAFといっても、輸送や補給など後方地域支援が不可欠であることにも目を向けて欲しい。イメージとしては、皮肉にも、イラクで陸空の自衛隊が担ってきた活動だ。「皮肉にも」と言ったのは、イラクの人道復興支援には自衛隊を派遣して、アフガニスタンの人道復興支援には派遣できない、と政府が言い張っているからだ。論理が破綻していると言わざるを得ない。
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