在りし日のルドルフです。ふてぶてしく荒っぽく、妙に人懐っこい変わった猫でした。
さて、何度かの脱走を繰り返した仔猫のルドルフは、室内猫として飼おうとした私たちの望みを裏切り、とうとう出入り自由の猫となって近所の猫たちとあくなきバトルを繰り返しながら、少しずつテリトリーを増やしていきました。
駅近辺の駐車場で見かけたり、思わぬところで出っくわしたりすると一瞬素知らぬふりをしましたが、「ルド!」と呼びかけると必ず返事を返してくれました。
町内の飼い猫のクロちゃんとの死闘は数知れず、止めにはいった私は、興奮したルドルフに噛まれるわ引っかかれるわで、足に全治7日間の怪我を負ったこともありました。
なんといってもある初夏の沼地での決闘は凄まじく、黒豹になって帰って来、そのまま家に上がろうとするのを押し止めて、洗濯カゴの簡易の檻に押し込んで、ホースで泥を洗い落としたこともありました。
度重なるケンカにとうとう立派な毛並みもボロボロになり、最後は耳元が両サイド禿げ上がる有様でした。
けれど、おしまいにはそのケンカにも勝てなくなり、我が家に後からやって来た新参猫のテトにも勝てなくなっていた今日この頃でした。
まるで古代の戦士のように、戦いに明け暮れてその一生を全うした、誇り高き野良の血を引いた飼い猫ルドルフよ。
我が家にはじめてやって来た憎らしくも愛らしい飼い猫のルドルフよ、安らかな眠りにつきたまえ・・・・・・さらば!!
私はしばし君を偲びつつ、内田百の「ノラや」でも読もうと思う。
そう、もうルドルフはいないのです。