ひとり語り 劇車銀河鐵道 いちかわあつき

 ひとり語りの口演や、絵本の読み語りなどの活動をしています。
 何処へでも出前口演致します。

ひとり語りレパートリー詳細解説PART 4

2007-08-25 10:54:20 | Weblog
     新美南吉「手袋を買いに」
 今日は新美南吉についてお話したいと思います。
 北の賢治南の南吉と、日本における代表的童話作家として並び評されることがある二人のようですが、僕の感覚からすると新美南吉は新美南吉で、宮沢賢治は宮沢賢治。それぞれに違っていて、良いのだと思います。
 大正から昭和初期にかけてこんな二人の作家が登場し、しかも二十代の若さであれだけの仕事を残して、さっさと駆け抜けていったというのは、どういう事だったのか。彼らの残した仕事の大きさは、後の世の私たちに与えた影響力からして、並大抵のエネルギー量ではなかったのではないか。だから、早くにこの世を去ってしまったのではないか・・・と、そんなことを考えてしまいます。
 さて、私がひとり語りの仕事を始めてレパートリーを一つずつ増やしていこうとしていた初期の頃、新美南吉の作品も是非にと考えて選んだのが、「手袋を買いに」でした。
 南吉童話の代表作といえば「ごんぎつね」。今も小学校の国語の教科書に掲載され続ける名作です。「ごんぎつね」か「手袋・・・」どちらをレパートリーに加えるかと思案した時、あの時の私は南吉の原点はやはり「手袋を買いに」ではないかと思い、こちらを選択したのでした。
 南吉童話の主要部分にあるものは、やはり母への追慕の情。物心つかぬうちに実母をなくした彼の、その母親への思いです。
 色々な作家を見てみると、幼くして母親を亡くしている人の多いこと。また、何らかの事情で、親の情愛に恵まれなかった人というのが、目立ちます。もちろんそれに限りませんが、満たされないものを想像力によって埋めていこうとする力が、どうやら創作の原点にはあるような気がします。
 南吉童話に登場するきつね。ごんぎつねにしろ、親子の銀ぎつねにしろ、私はかなり強い擬人化の傾向を感じ取るのです。その主人公たちに自らの思いを塗りこめていったのではないかと・・・。
 「ごんぎつね」に登場するごんも兵十も、私は南吉そのもののように思えるのです。だから兵十はごんを鉄砲で撃ってしまう。つまり、自分自身を撃つのです。
 母への思いを断ち切れず大人になり切れない自分自身へ、内面的に鉄槌を加えたのではないかと・・・。
 そこへいくと「手袋を買いに」は、ストレートで素直な思いが表現されています。どちらも二十歳前後に書かれたもので、揺れ動く内面心情を、見事に結晶化させて作品に仕立て上げた彼の才能にあらためて感服してしまいますが、私はその結晶度において、「手袋を買いに」を選びました。
 彼はこの作品のラストに、極めて正直なところを吐露しています。それは母狐の言う「本当に人間はいいものかしら・・・」という言葉です。私はこの問いかけを作品から受け止めて、語り手としてこれからも、聴いていただくお客様に広く投げかけて行きたいと思っています。
 また、この作品を原点として、南吉が最晩年に書いた「きつね」という作品を語りたいと考えていますが、未だに実現してはいません。この「きつね」という作品には実際にきつねは出て来ません。いわば「手袋を買いに」の裏返しの作品です。新美南吉三十年の生涯において、ここへ辿り着いたその足跡を顧みながら、私はこの「きつね」を語ることによって、ふるさと半田を舞台に童話を創作していった新美南吉の心の奥深くにあったものへ、もう一度思いを寄せてみたいと思っています。

「KAIDAN」初演を終えて・・・。

2007-08-23 10:25:45 | Weblog
 8月22日(水)午後6時半より、愛知県豊川市徳城寺本堂を舞台に、豊川門前寄席の8月口演として、小泉八雲原作いちかわあつき脚色による「KAIDAN]を語らせて頂きました。
 怪談話を語るのは、これが初めての試みでお客さんを前にしての初ネタ卸は、さすがに緊張しました。
 正直言って6月中に台本を書き上げ、7月中には覚えてという計画が8月にずれ込み、本を覚えきったのが8月14日、1週間の集中的稽古で本番を迎えました。まだまだ詰めの甘さは否めず、これから練り上げなければならないところは多々あるとは思いますが、最初のお客様となってくださいました豊川の皆様に厚く御礼申し上げます。この作品は今秋恵那にて口演の予定です。いずれまた詳細をご紹介致します。

8月盆帰省ラッシュが始まりました。

2007-08-11 17:36:30 | Weblog
 私には決まった夏休みも、帰る田舎というものもないので(生まれ故郷に住み続けているので)もっぱらニュースとしてしか受け止められませんが・・・遥か昔東京にいた頃は、そんなこともありました。乗車率200%という新幹線に乗って、東京から名古屋まで立ったまま帰って来たということもありましたっけ。
 車で帰省される皆さん、どうぞ事故のないよう安全運転で行って来てください。とにかく安全運転の基本は、無理をしないことです。サービスエリアや道の駅など最寄のところでこまめに休憩を取り、眠くなったら仮眠を取るのが一番ですが、ついつい先を急いだりしてしまいがちです。特に運転される方がひとりだけという場合には、常に余裕の運転を心がけたいものです。なんて、日頃の自分に対して言ってるようなものです。
 楽しい夏の思い出をつまらない事故で台無しにしてしまっては、残念です。くれぐれも笑顔のままに過ごせる盆休みとなるといいですね。そうそう、旅先で夫婦喧嘩、親子喧嘩なんてこともあるようですが、渋滞に巻き込まれてもイライラしないで、普段はあまりしないような会話のひと時を持たれてみてはどうでしょうか。
 故郷へ帰る途中での思い出話、お父さんやお母さんの子供の時の話とか、お子さんに話して聞かせてあげるのもいいですよね。
 会話もスキンシップ、絵本を読んであげるばかりが読み聞かせではありません。思い出話もそうですし、故郷の、田舎の景色が、何よりの生きた絵本ではないでしょうか。今日はなんか、取りとめもない記事になってしまいました。

暑中お見舞い申し上げます。

2007-08-06 16:41:04 | Weblog
 8月に入り、暑い日が続きます。中越地震の被災者の方々には、とても大変な日々だと思います。心よりお見舞い申します。
 さて、この暑い最中、わたしは今怪談話に取り組んでいます。小泉八雲の「怪談」や「骨董」などの中からお話を選び、それを脚色してひとり語り作品とした「KAIDAN」と題した作品です。
 前々から、大人向けに何か怖い話を・・・というリクエストを戴いたことはあったのですが、今回愛知県豊川市の門前寄席にて、怪談話をしてくれないかと知人の方に依頼されて、それならばと始めた企画です。以前から、小泉八雲は好きで、文学講座めいたものでも、何度か語らせてもらっていますが、作品を語るのは今回がはじめてです。
 私がラフカディオ・ハーン、小泉八雲を好きになったのは昔NHKで放映された、山田太一さんの作品「日本の面影」というドラマを観てからでした。ジョージ・チャキリスのハーン良かったですねぇ。また、壇ふみさん演ずる小泉セツも最高でした。僕はこのドラマを、日本のドラマ・シーンを変えた一作だと勝手に思っているのですが、残念ながらこれ以後の日本のテレビドラマ全体は、進歩向上の道を辿ってはいないようです。ちょっと話が横道にそれました。
 今回の語り作品の中でも、かなりの時間を割いて、小泉八雲夫妻について触れています。豊川での口演は、8月22日(水)の夜です。ネットでの案内記事があるようなので、見てみてください。
 さあ、本番へ向けてラストスパートです!!