瞑想と精神世界

瞑想や精神世界を中心とする覚書

■脳内現象

2004年11月01日 | 読書日誌
◆『脳内現象』茂木健一郎(NHKライブラリー、2004年)
同著者の『心を生み出す脳のシステム』を読んだときの強い知的興味を思い出した。この本もワクワクしながら読んでいる。実は、この二著の間に茂木には『意識とはなにか―「私」を生成する脳 』(ちくま新書、2003/10) があるが、これは陳腐な哲学的議論に終始しているようでまったく面白くなかった。

『脳内現象』は、『心を生み出す‥‥』よりも鮮明に、新しい科学のパラダイムをまさぐるという方向が打ち出されている。あくまでも心はニューロンのシステムから解き明かせるという立場を崩さなかった『心を生み出す‥‥』に比べると一歩前進しているように見える。

しかし本当に従来の科学の枠組みを一歩踏み込んで論じようとするなら、還元主義的な科学の前提を大きく飛び越えて精神の世界をも同時に語るパラダイムが構築されなければならない。

輪廻の問題に関係して、私という、意味の中心としての経験主体の唯一性を考察する本を読もうと思っていた。永井均の『〈私〉の存在の比類のなさ』にしようかと思っていたが、とりあず茂木のこの本の方が興味がもてそうだった。

それにしても茂木の問題意識は、ほとんど現象学のそれだ。フッサールが『ヨーロッパ諸学の危機と超越論的現象学』で論じたテーマを、先端的な脳科学の知見を参照しながら、確認しているという感じ。ようやく脳科学もこうした問題意識を視野に入れるようになったのか。

なお、この本についての詳しい読書日誌は、エポケー:精神世界と心理学を中心とした読書日記を参照のこと。今まで実験的に使用していたブログのうち、読書日誌は、このブログにあてることにした。