クールジャパン★Cool Japan

今、日本のポップカルチャーが世界でどのように受け入られ影響を広げているのか。WEB等で探ってその最新情報を紹介。

「生きがい」は長寿の秘訣?—世界を魅了した日本語「IKIGAI」

2024年09月05日 | 日本の長所
★この記事の内容のフルバージョンは、次の動画で見ることができます。⇒ 「生きがい」は長寿の秘訣?—世界を魅了した日本語「IKIGAI」

以前、インド人の友人とオンラインで話していたときのことです。ドバイへの出張から戻ったばかりの彼はドバイの空港内の小さな書店で買った数冊の本を見せてくれました。その中に「IKIGAI」というタイトルの本がありました。それは日本語の「生きがい」について英文で書かれた本でした。西アジアの空港内の小さな書店になぜ「IKIGAI」という日本語のタイトルの本が売られたいたのだろうと驚き、さっそくAmazonで調べてみました。するとその本は500万部を超えるベストセラーで、Amazonのメディテイション(瞑想)部門の1位を保持しています。もともとスペイン語で書かれ、英語を含む何か国語かの翻訳もあるようでした。

ちなみに何人かの外国の友人、併せて10人ほどにオンラインで聞いてみると、6~7人がIKIGAIという日本語を知っており、そのうち3~4人がこの本をすでに読んでいたのです。彼らは日本に関心が深い人々なので、その点は差し引いても、やはり驚くほど高い割合です。それで私もさっそく電子ブックの英語版を買って読んでみたのです。

「生きがい」という日本語にあたる外国語はないらしいということは知っていました。しかし、この言葉が「IKIGAI」としてことさらに注目されるのは、それが日本人の長寿と結びつけて紹介されたことに一因があるようでした。

実際にこの本「IKIGAI」(Francesc Miralles 、 Héctor García共著)を読んで見ると、沖縄の長寿村として有名な大宜味村の長寿の秘訣を現地に滞在して調査し、その秘訣のひとつが「生きがい」にあるとしているのです。この本がどのような視点から「生きがい」について語っているのか、いくつかピックアップしていみます。

1.「生きがい」こそ長寿の秘訣
著者のふたりは、100歳以上の高齢者の割合が世界最高である沖縄県・大宜味村でその長寿の秘訣を調査し、その結果がこの本の中心になっています。沖縄やこの村の長寿の秘訣は、健康的な食事、家庭菜園などでの戸外活動を中心としたシンプルな生活、緑茶(特にさんぴん茶)やシークワーサーをよく飲むこと、亜熱帯の気候などが考えられます。しかし「生きがい」こそが長寿の最も大切な秘訣だと著者たちは考えているようです。

2.「生きがい」の意味
では「生きがい」という日本語はこの本ではどのように理解されているのでしょうか。
日本語の「生きがい」に近い語にはフランス語の「raison d’être(レゾン デートル)で「存在意義」「存在理由」という意味ですが、この語とて二語で出来ており、しかも元は哲学用語で、日本語の「生きがい」のように昔から気軽に日常の中で使っていた言葉ではないのです。たった一語で「生きがい」に匹敵する意味を表す外国語はないようです。

この本によれば「IKIGAI」とは、「私が生きる意味とは何かWhat is the meaning of my life?」や「長く幸せな人生の秘訣とは何かWhat is the secret to a long and happy life?」という問いへの答えだと理解されています。すでに「生きがい」を見つけた人ともいれば、探し中の人もいるけれど、ともあれ日本人は、それを持つことは非常に大切だと考えると、この本は紹介しています。

3.大宜味村の人々の生きがい
では大宜味村の長寿の人々は何に生きがいを見出しているのでしょうか。この村では、住民同士のつながりを大切にしています。住民たちが互いに支え合う小グループとして「結(ゆい)」と呼ばれる伝統的な互助会があり、重要な役割を果たしています。結の働きは、農繁期などに協力して互いの農作業を手伝ったり、冠婚葬祭で協力し合ったり、定期的に集まって歌や踊りを楽しんだり、互いの健康を見守ったりして、仲間との社会的なつながりコミュニケーションを維持し、孤立を防ぐなどです。大切なことは、この「結」での助け合いや支え合いが、住民が生きがいを感じる一因となり、結果として大宜味村の高い長寿率に寄与していると見られています。

この本の内容は大宜味村の紹介だけでなく、健康法一般に関して様々な話題が取り上げられています。たとえばマインドフルネスを中心とした瞑想法、太極拳、気功、ヨーガ、ラジオ体操、指圧、ロゴセラピー、内観法まで多岐に渡っています。しかし、その主題を一言でいうならば生きがいと長寿の関係です。両者を結びつけて語ったからこそ、この本はベストセラーになったのだと思います。

しかし、IKIGAIという言葉が世界を魅了するのは、日本人の長寿の秘密との関りからだけではないでしょう。たとえば脳科学者の茂木健一郎は2017年に「The Little Book of Ikigai」という本を英文で出版し、31か国、28言語で出版が決まり、100万部を超えるベストセラーになりました。この本は、日本人自身があまり自覚していない日本人の生き方の特徴を、生きがいという言葉と結びつけて語っています。つまり、長寿との関係だけではなく、日本人の生き方や日本文化の本質とかかわる言葉として生きがいが語られ、世界で関心を持たれているのです。

★この記事の内容のフルバージョンは、次の動画で見ることができます。⇒ 「生きがい」は長寿の秘訣?—世界を魅了した日本語「IKIGAI」

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日本人の英語下手は日本の救いか?

2024年09月01日 | 日本の長所
★この記事の内容は、次のYouTube動画でも見ることが出来ます。⇒ 『日本人の英語下手は日本の救いか?』

日本人が英語に弱いのは、誰もが認めるでしょう。日本人の英語力を国際比較する指標の一つEF英語能力指数(EF EPI:English Proficiency Index)によれば、日本は2021年で 112か国中78位、2022年で 111か国中80位、2023年で113か国中87位と、年々低下しているのです。日本は実践的な英語教育に以前より力を入れているのに、この指標では順位が毎年下がっています。ただしこれは、他国の英語力が上がっているために、日本の順位が相対的に下がっているだけかもしれません。

2023年度のTOEIC Listening & Reading Test(TOEIC L&R)の日本の平均スコアは612点で、2021 年は、611点、2022年は608点ですから、ほぼ横ばいでしょう。2023年の日本の平均点は、世界の45か国中31位ということです。確実に言えるのは、世界的に見ても日本人の英語力がきわめて低いというこです。そしてとくに英会話力が弱いです。。

私は、日本人が英語力が弱いことは日本にとって救いかもしれないと考えています。その理由はあとで述べるとして、まずは、なぜ日本人は英語力、とくに会話力が低いのか、その理由を考えてみます。要因はいくつか考えられますが、その中には、諸外国に比べ日本が信じられないほど幸運な環境にあることも含まれます。

1. 英語教育の問題
何と言っても日本の英語教育が受験のための英語を重視し、会話力を軽視してきたのが最大の問題です。中学・高校から大学まで含めれば10年も英語を学びながら、ほとんど話せない。それは明らかに文法や読解などのインプットに比べアウトプットの機会が圧倒的に少ないことによります。

ここには伝統的な問題が横たわっているかもしれません。明治維新後の日本では、多くの知識人にとって欧米の文献を通してその進んだ知識や技術を吸収することが最重要で、会話力は二の次でした。それはさらにかつて中国文化を文字を通して学んできた伝統にもつながっています。その長い伝統が知らず知らずのうちに現代の英語教育にまで影響を及ぼしているのです。

2.教育全体が日本語で行われる
日本では小学校から大学・大学院の教育まで特別な場合を除いてほぼ日本語で行います。フィリピンでは、幼稚園・小学校から自国の歴史などを除いてほぼ英語で行われます。インドでも多くの学校や大学で英語が使用されています。特に都市部の私立学校や高等教育機関では、英語が主な授業言語です。東南アジアでも大学となると日本に比べ英語で行われる講義がはるかに多いようです。たとえばマレーシアでは、多くの大学で英語が授業の主な言語として使われているとのことです。タイでは、多くの大学では主にタイ語が使われているとのことですが、工学やビジネスなどでは英語での授業も多いようです。

ところが日本の場合は、授業や講義を通して英語を身に着けていく機会が他国に比べ極端に少ないのです。これは、明治時代に欧米の理系・文系の用語を苦労して日本語に翻訳した先人のお陰もあるでしょう。日本ではどのような専門分野でもその用語が日本語で表現できるので、基本的に日本語で学べるのです。翻訳書も豊富にあるので、原書を読まずに済む場合がはるかに多いのです。

3.英語や他言語に接する機会が少ない
ほぼ全ての日本人は日本語が母国語であり、日本のどこに行っても日本語でコミュニケーションができます。そして日本全体で日本語によるほぼ均質な義務教育が行われています。これは、日本人にとっては当然かも知れませんが、世界的にはかなり幸運な環境です。一言語だけで国民の誰とでも意思疎通ができるのは日本やヨーロッパの小国などごく少数の国々だけです。たとえばインドネシアでは、約700の言語が話されおり、インドでは、約450の言語が使用されています。フィリピンでは、約170の言語が話されています。こうした国々では公用語としての母国語はあるでしょうが、英語を共通のコミュニケーション用語として使う場合も多いのです。つまり必要に迫られて英語を使用する場合が多いのです。日本は、必要に迫られて英語を使用する機会が、他国に比べ非常に少なく、これが日本人が英語が苦手な理由の一つです。一方、日本人の誰とでも日本語ひとつで理解し合えるのは私達にとって幸運なことです。

4. モチベーションの問題
これは3と密接に関係します。大部分の日本人は、英語を話すことが必要になる機会がかなり少ないので、学習の必要性を実感しにくく、学習のモチベーションを得にくいのです。職業上で英語が必要だったり、必須だったりする場合もそれほど多くありません。英語が出来ないことが就職において絶対的に不利になることは、特殊な場合を除いてほとんどないのです。

5. 欧米語との言語的な違い
日本語と英語とでは文法構造が大きく違うことは誰もが知っています。欧米語相互ではかなり文法が似ていたり語彙に共通性がある場合も多いので、学ぶことが比較的かんたんですが、日本人が欧米語を学ぶ場合は、そういう利点がありません。

日本人の英語下手の理由には以上のように複数の事情が重なっています。とは言っても、日本人の英語下手が国家としてのマイナスになる面があるのは明らかで、このままでよいわけはありません。特に国のリーダーとなる政治家は、国際語たる英語を自由に使いこなせるべきです。また多くの企業にとっても英語で情報を得たり売り込んだり交渉したりが自由にできないと、国際競争に生き残れません。増大する海外旅行客を扱う観光産業や関連企業にとっても英語は益々重要になります。

一方、一般の国民は英語が話せなくとも日常生活にほとんど不便を感じません。国内なら日本語で用は足りるし、教育も日本語で受けられるのです。海外旅行に行ったときに多少不便を感じる程度でしょうか。一般の日本人が英語下手でも、ほとんど何もマイナスはないのです。英語下手でも不便を感じない日本人は、ある意味でとても幸運な環境の中で生活しているのです。そして国際的な情報を得るにしても、今後ますますAIによる自動翻訳が正確で迅速になっていくでしょうから、ほとんど心配はいらないのかもしれません。

逆に日本国内ではどこでも日本語が使用されるため、日本人同士のコミュニケーションは非常にスムーズに効率的に行われ、言語的な障壁による誤解や軋轢が生じにくいです。共通の言語を使う日本人という連帯感や文化的アイデンティティも強くなります。日本語を大切にすることによって、日本語によって伝えられてきた独自の文化や伝統を守る姿勢が強くなります。

いろいろな意味で日本にも今後ますます国際化の波が押し寄せてくるでしょう。英語がますます国際語として幅を利かせていくでしょう。しかし国際化が行き過ぎることの問題もあります。国際語としての英語が普及することで、文化の均質化が進み、多様な文化が英語圏の文化に吸収され、独自の文化が失われる危険があるのです。実際、英語が普及しすぎることで自国語や自国の伝統が失われる危険に晒されている国もあります。幸い日本にはそういう危険性はありません。日本人は英語下手ですが、日本語にこだわる限り、日本人としてのアイデンティティや文化や伝統を末長く維持し続けるでしょう。

★この記事の内容は、次のYouTube動画でも見ることが出来ます。⇒ 『日本人の英語下手は日本の救いか?』




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フランス人は何を恐怖したのか?ーマンガ・アニメが世界に与えた衝撃

2024年06月23日 | 世界に広がるマンガ・アニメ
これまでに自分のユーチューブチャンネルに投稿した動画から、クールジャパンに関係するものをいくつか選んでリストアップしてみた。

★⇒フランス人は何を恐怖したのかーマンガ・アニメが世界に与えた衝撃
フランスのTVではじめて日本のアニメが放送されたのは1972年で、子供たちの圧倒的な人気を得た最初の作品は1978年の「UFOロボ グレンダイザー」でした。1980年代後半からは、「ドラゴンボール」「うる星やつら」「キューティー・ハニー」「Dr.スランプ」「めぞん一刻」「キャッツ・アイ」「北斗の拳」「キャプテン翼」といった大ヒット作が立て続けに放送されました。その後も「キン肉マン」「シティハンター」「気まぐれオレンジ☆ロード」「らんま1/2」「美少女戦士セーラームーン」といったヒット作が放送されますが、その人気は1990年代中ごろから落ち込み始めたといいます。その大きな理由が日本製アニメに夢中になる子供たちの親世代からの激しい批判、ジャパンバッシングだったのです。
当時の日本アニメへのバッシングにはいくつかの理由があったようですが、そのいちばん深い理由は、大人たちの恐れではなかったかと、『水曜日のアニメが待ち遠しい:フランス人から見た日本サブカルチャーの魅力を解き明かす』の著者トリスタン・ブルネ氏は言います。その深い恐れとは何だったのか。

★⇒世界的ユーチューバーが日本に移住・その理由は日本人の英語力?
ピューディパイ(PewDiePie)という世界的なユーチューバーは、チャンネル登録者数が世界で最初に1億人を突破したYouTuberであり、King of YouTubeとも言われている。個人運営のYouTubeチャンネル世界一位を長らく保ち、今は二位になったが、それでも1億1千万人以上の登録者がいいる。彼はスウェーデン人だが、英語で発信するゲームの実況プレイで登録者数を伸ばした。
 彼は2022年に妻や愛犬二匹とともにイギリスから日本に移住し、東京の世田谷区に住み始めた。日本に移住して一年が経ったころに彼はジャパンレビューというタイトルの動画を投稿し、日本の好きなところと嫌いなとことを挙げている。日本の好きなところの第一に挙げていることが、実は日本人の英語力のなさに深く関係している。日本人が英語に弱いことと、ピューディパイの日本移住がどう関係するのか。動画で確認してください。

★⇒ドイツ人巨匠が日本のサービスや清潔さに刺激されて傑作映画を!役所広司主演『Perfect Days』
『Perfect Days』の監督のヴィム・ヴェンダース (Wim Wenders)は、数々の受賞歴に輝くドイツ人巨匠です。1982年の『ことの次第』が、ヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞を受賞。1984年の『パリ、テキサス』がカンヌ国際映画祭にてパルム・ドールを受賞。1987年、『ベルリン・天使の詩』ではカンヌ国際映画祭にて監督賞を受賞などです。そして『Perfect Days』は、2023年第76回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品され、役所広司が最優秀男優賞を受賞しました。

ヴェンダース監督は、日本で感銘を受けたサービスの質や公共の場の清潔さが刺激となって、この『Perfect Days』という映画を作り上げたといいます。では、その内容と日本のサービスが清潔さがどのようにつながるのでしょうか。この動画では、まずこの映画の内容に触れたうえで、動画の最後にこの問いに答えたいと思いす。

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ラーメンで蘇ったアメリカ人の人生!日本と日本食に魅せられて

2024年06月22日 | クールジャパンを考える
★これは私がユーチューブチャンネルに投稿した次の動画の後半部分の要約です。以下の動画でこの実話の全体をご覧ください。
 ⇒ 『ラーメンで蘇った彼の人生!日本と日本食に魅せられて』

ニューヨーク生まれのアイヴァン・オーキンは大学で日本語を学び、卒業の日本に移住します。そして日本人女性トミと結婚し、ニューヨークで料理人として働き始めます。ところがトミが急病にかかり、あっけなく亡くなったのです。2歳の息子とともに取り残された彼は、その後数年ものあいだ悲しみの中で暮らしました。妻を失った彼は、同時に妻を通しての日本とのかかわりを失ったことも、とても辛かったといいます。それでよく日本を訪れるようになりました。やがて、そんな中で出会った日本人女性マリに恋をし、出会って3か月後には結婚しました。彼女は小さな男の子をつれてニューヨークに移り住み、彼の家族は一機に4人となりました。

そしてある時、今度は家族4人で東京を訪れました。桜が満開の頃でした。美しくも儚く咲き散る桜の下で、「日本に戻る時が来た」とひらめいたそうです。40歳になった彼は、何か大きなことをしたい、それを日本でしたいのだと感じました。こうして家族と共に東京に戻った彼は、しばらくの間「主夫」として楽しく家事や子育てをして充実した生活を送っていたそうです。奥さんのマリがスタイリストとして家計を支えていました。しかし、やがて彼女の助言もあって、何か新しい取り組みを始める決心をするのです。さんざん話し合ったすえに、マリにラーメン屋をやったら、言われたそうです。彼は自信がなかったけど、「あなたの料理の腕なら何でもできる、無限の可能性がある」と言ってくれ、それに大いに勇気づけられたというのです。

2000年代半ばの東京で、乱立するラーメン屋を巡って研究しながら、東京にはラーメンを作っている白人がいないことを知り、これは面白い試みになると思ったそうです。そして実際に動き始めると、彼がこれまでに学んできたすべてが結びついたと感じました。日本文化や日本語の知識は、良い不動産業者を見つけたり、近所に友人を作ったり、従業員を指導したりするのにとても役立ちました。ニューヨークでの調理師として経験は、便利な厨房作りやよい食材選びにも生かせました。

自信を得た彼はマリに向って「俺は東京でいちばんのラーメン屋になる」と断言し、実際、店が2006年にオープンすると間もなく評判になり始めました。最初は、「変な外人」が始めた店という物珍しさで来る客も多かったようですが、やがて雑誌や新聞の記事となりテレビにも出演するほどになり、その結果、2-3時間待ちの列が出来るほどの店になったのです。その味は絶賛され、ラーメン職人の鉄人の一人と評され、文字通り「東京でいちばん」と言ってよいほどの人気店となったのです。その味は、彼の飽くなき追及心と努力の結果でした。普通のラーメン職人は、麺づくりは専門の麵業者にまかせます。しかし、彼は麺づくりから自分で行い、そこにも様々な工夫をこらしました。また、うまみの爆弾としてスープにロースト・トマトを加えることでやっと満足のいく味に達したといいます。これは日本のラーメン職人は思いつかない発想だそうです。

彼が寿司や天ぷらという伝統的な和食ではなくラーメンを選んだのは、日本食としてラーメンの歴史が比較的新しく、調理での守るべき型やきまりがなく、自由な試みが色々できるからでした。小さいころから彼は型にはまった教育が大嫌いでした。その意味で彼にとっては教科書が存在しないラーメン作りこそぴったりだったのです。逆に映画『ラーメンガール』は、伝統的な修行法という視点からラーメン作りの物語を構成しています。主人公のアビーは先生の作り方に忠実にラーメンを作ります。それでも師匠によしと言わせる味が出せません。決め手は魂が入っているか否か。がんこ親父の精神論、「入魂」論が物語の展開のかなめになっているのです。それに比べれば、アイヴァン・オーキンの様々な工夫や試行錯誤のなかにこそ、本物の職人魂が感じられます。

ともあれその頃、アイヴァン・オーキンは、自分の人生の頂点に達したと感じたようです。大好きな日本で、自分の意志で目標を達成し、自分の好きな仕事を日本語を使ってやっている。これ以上に素晴らしいことないという達成感を感じたのです。しかし彼には持ち前の冒険心、サムライ精神がありました。自分の人生の到達点からさらに一歩踏み出して新たにチャレンジする決心をし、繁盛する東京の店をたたみ、ニューヨークに立ち戻ったのです。一からやり直すために、そしてニューヨーカーのための新しいメニューを開発するために。それは2012年のことでした。

ニューヨークで彼は、努力と苦労を重ねて、ついにラーメン店をオープンしました。その店も、東京と同様に評判を呼び、大々的に宣伝されてニューヨーク・タイムズで二つ星を獲得しました。それは彼にとっては、想像すらできなかった素晴らしい成果でした。大人気の東京の店を惜しげもなく閉店し、そしてニューヨークでゼロからチャレンジして、再び大成功を収めたのです。
★これは私がユーチューブチャンネルに投稿した次の動画の後半部分の要約です。以下の動画でこの実話の全体をご覧ください。
 ⇒ 『ラーメンで蘇った彼の人生!日本と日本食に魅せられて』


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Zenという日本語がこれほど気軽に使われているとは!

2024年06月19日 | クールジャパンを考える
『世界に最も影響を与えた日本語ーアニメでもマンガでもサムライでもない』で、なぜ禅という日本語が世界に最も影響を与えた日本語だと言えるのか、私なりの根拠を説明しました。このブログでもその内容の一部を紹介しました。考察の全体は上にリンクした動画をご覧いただくとして、今回は、英語などの日常語の中で、Zenがどのように使われているかを紹介しましょう。

スティーブ・ジョブズのようにに禅を深く学んだり実践したりした、あるいはしている人々が世界中にかなり多いです。しかし、それだけではありません。Zenは、日本で使われるよりかなり広い意味で気軽に使われることが多いようです。日本文化や観光地や美しい風景を世界に紹介する私のXアカントで、「日本語の「禅」という言葉を聞いて何を思い浮かべますか? 「禅」という言葉をご自身の視点からどう説明しますか?」と質問してみました。世界中から、全部で26人の方が回答してくれました。その中からいくつか拾ってみます。

まずは、北海道に住むアメリカ人男性のコメント。彼によると、「以前、コロラド州に住んでいたころ、「リラックスして」という意味でjust zen out がトレンディーなスラングとして使われていた」ということです。それでインターネットで調べて見ると、かなり似たような使い方が出てきます。
You need to try to be more Zen! 君はもっとリラックスしたほうがいいよ!
Chilling out at the beach all day makes me feel very Zen. 1日中ビーチでまったりしていると、心から落ち着いた気分になる。
Protect your data and your Zen. 貴方のデータと心の平安を守りなさい。

Zenという言葉がこれぐらい気軽に使われるほど普及しているなら、ウィキペディアで104もの言語で項目が作られているのも不思議ではありません。では、話を私のXアカントに寄せてくれた回答の話に戻しましょう。ある長距離ランナーからの回答です。

★Philip S@StewardPjscfc
For me it is deep focus. As a long-distance runner and if I run in heat or tiredness, then I use my perception of zen to be in the moment and focus on the task in hand; accept the difficulties and stay with the task.
私にとっては、それは深い集中です。長距離ランナーとして、暑さや疲労の中で走るときは、禅の感覚を用いて今この瞬間に身を置き、目の前のすべきことに集中します。困難を受け入れて課題に取り組みます。

次はもっと一般的に禅という日本語から連想する言葉を述べたものをいくつか紹介します。これらがほぼ、禅という言葉から連想される共通の印象のようです。
★Claudia🎗️ אני ישראל חי@heloiseripley
Zen: inner peace, beauty, concentration, emptiness, being in the moment, breathing.
禅:心の平安、美しさ、集中、空虚、今この瞬間に生きること、呼吸
★Bliobleheris@Bliobleheris
Serene mindset of living in the moment without anxiety or overthinking
不安や考えすぎをせずに今を生きる穏やかな心構え
★Jelle de Vries@drjelledevries
Zen = a focus on beauty and unity (rather than on dogma, creed and intolerance)
禅 = 美と統一に重点を置く(教義、信条、不寛容ではなく)
★🇮🇳 Riitu Chugh@junoesque
Calm, Balance, Flow, In the Moment
落ち着き、バランス、流れ、この瞬間に
★Kalyani Oswal @K_Oswal
Wanting Nothing, Doing Nothing, Just Being
何も欲するな、何もするな、ただ存在せよ。 最後に少し長いものを紹介します。
★Natural Flirt Gamer🌸@NFlirtGamer
Zen is a feeling a state of being - a certain peacefulness and tranquility of mind, body, and spirit that allows you to relax, yet focus. I always associate zen with outdoors and nature somehow, water because I love water.
禅とは、心、身体、精神が平穏で穏やかで、リラックスしながらも集中できる状態を感じることです。私はいつも禅を屋外や自然と何かしら結び付けています、つまり水、私は水が大好きだからです。

以上からも世界では、日本人が知るよりも、かなり広い意味で日本語の禅という言葉が使われ理解されていることがわかるでしょう。場合によっては、日本人よりもはるかに深くその本質をつかんでいるのかもしれません。

最後に一言おことわりしておきます。禅は、中国唐代に禅宗として始まった大乗仏教の一派から始まっています。元はChánと発音される中国語でした。さらに元をたどれば古代インドのサンスクリット語dhyāna、ディヤーナにまでさかのぼります。その意味では純粋な日本語とは言えないでしょう。しかし、日本に伝わった禅は、単に仏教の修行法の枠を超えて、武士の剣道や弓道、茶道や華道や書道の修行法にまで影響を与えました。つまり日本では、仏教の一派の枠を超えて、武道や芸道にまで広く影響を及ぼして発展していったのです。こうした展開は日本独自のものでした。それゆえ禅の精神は、日本文化の核になる部分に深くかかわっているのです。そのような日本独自の禅が世界に広まったのは、仏教学者の鈴木大拙が1938年に英文で『禅仏教とその日本文化への影響』などを出版し、広く読まれたのがきっかけでした。こうして日本文化と切り離せない、日本語の禅が世界に知られるようになり、やがて世界共通語となっていったのです。

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世界がZENをクールと受け止めた理由

2024年06月18日 | クールジャパンを考える
世界に最も影響を与えた日本語は何か?それはアニメでもマンガでもサムライでもありません。それは日本文化の核心にかかわる言葉でありながら、現代の日本人はほとんど忘れかけている言葉です。日本人は、それを日本の宗教的な伝統にがんじがらめになった古臭い言葉と受け止める傾向がありますが、世界はそうは受けとめませんでした。では世界はこの言葉をどう受け止め、受け入れたのか。詳しくは、私のこの動画を見てください。⇒ 世界に最も影響を与えた日本語ーアニメでもマンガでもサムライでもない

今、日本文化がサムライや忍者、盆栽や着物など伝統的なものから、現代のポップカルチャーまで世界的な人気ですが、世界ではこの言葉が日本文化全体の核心にかかわるクールな言葉として、とても人気があるのです。日本人が感じるかもしれない古臭さとは逆に、時代の先端をいくようなファッショナブルな言葉として受け止められているのです。

津波152、アニメ131、柔道125、カラテ117、マンガ116、俳句109、侍107、寿司105、禅104、相撲89、合気道86、折り紙83、盆栽82、忍者78、着物77、芸者77、酒75、絵文字74、切腹73、ラーメン69、カラオケ62……

これは、ウィキペディアでどれだけの言語でその項目が作られ、説明されているかを示したものです。数字が多いほど世界の共通語になっているということです。この中で世界に最も影響を与えた言語は何でしょうか。それは順位では9番目にくる「禅」だと私は考えます。なぜそう考えるかは、先に紹介した動画の中で詳しく述べましたのでそれも併せてご覧ください。

先ほど、このZENという言葉、世界ではクールでファッショナブルな言葉として使われていると述べました。実際に世界では、塗料から化粧品に至るまで商品名にZenという名を付けたり、含ませたりすることで売り上げを伸ばそうとする例が多く見られます。また企業名にZenを入れることも流行しているそうです。ゼンディスク、ゼンモバイル、ゼンテクノローズ、ゼンセキュリティーなどなどがその代表です。Zenは、シンプルで無駄をそぎ落とした、どこか日本的な美的センスやライフスタイルを指し示すクールな言葉として使用されているのです。日本人が思い浮かべる伝統的な宗教と結びついたイメージから離れて、新しい価値観を示す言葉として使われているのです。これが、「世界に最も影響を与えた日本語」として「禅」を選んだ私の理由です。

しかしZENを、単にクールでファッショナブルな流行語として知られるだけではなく、新しいライフスタイルや生き方を提示する重要な言葉として理解する人々も多いです。アップルの創業者スティーブ・ジョブズやドキュメンタリー映画監督として有名なマイケル・ムーア、ツイッターの創業者であるエヴァン・ウィリアムズ、総合格闘家のヒクソン・グレイシーなどです。また、米国プロバスケットボールの名監督として知られるフィル・ジャクソンは、選手のコーチングに禅の思想を取り入れたことでも有名です。

とくにスティーブ・ジョブズは、自分の生き方のおいても、会社経営においても禅に深く影響を受けたことで有名です。彼はこう語ったといいます、「僕はいつも、仏教、とりわけ日本の禅宗をとても美しく崇高と感じてきた。なかでも、もっとも崇高なのが京都やその周辺にあるいくつもの庭園で、僕はその文化が醸し出すものに深い感銘を受ける」。また次のようにも語っています、「座禅をしていると最初は心がざわつくが、そのうちに直観が花開く」。

彼が愛した禅的な美や崇高さ、そして座禅によって得られた直観。それらが、彼の事業にも影響を与え、Appleの製品やビジネスモデルにも反映されたことは多くの人が指摘しています。iPhoneをはじめとする製品の、洗練されたシンプルなデザインは、どこかで禅の精神に通じます。そして彼の身近には常に日本人の禅僧・乙川弘文がおり、その禅僧と語り合う時間を大切にしていたということです。ジョッブズは、その人生においても、あるいはビジネスの指針としても、禅から、そしてとくに禅僧・乙川弘文から多くを学び、影響を受けていたようです。二人の交流を中心にインタビュー形式でまとめられた『宿無し弘文 スティーブ・ジョブズの禅僧 』(柳田由紀子著、集英社文庫)は、感動的です。

日本仏教の宗教一派、古臭い伝統という固定観念で「禅」を捉えると、今、世界がZENから何を学んでいるのかを見逃してしまいます。そして、今世界がクールと捉えている日本文化の核心に何があったのかも見逃してしまいます。私たちは今、古い固定観念から自由に「禅」を学び直す必要があるでしょう。それは、日本の伝統の素晴らしさに立ち返ることであると同時に、自分自身の生き方の指針を発見する作業であるかもしれません。

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世界に最も影響を与えた日本語-アニメやマンガやサムライではない

2024年06月17日 | クールジャパンを考える
★この記事の内容は、次のユーチューブ動画の前半部分です。世界に最も影響を与えた日本語についての結論は、次の動画で見ること   ができます。⇒世界に最も影響を与えた日本語-アニメやマンガやサムライではない


世界に最も影響を与えた日本語は何でしょうか。この問いに答える前に、今や世界語となった日本語の代表的なものをジャンル別にいくつかあげて見ましょう。(それぞれの日本語のあとの数字の意味は後で説明します。)

まずは、日本の伝統的な文化に関係して世界語になったものから。俳句109、侍107、禅104、折り紙83、盆栽82、忍者78、着物77、芸者77、切腹73など。

次は日本のポップカルチャーが世界的人気なので、その関連の日本語でも世界語となったものが多いです。主なものは、アニメ131、マンガ116、エモジ74、オタク50、かわいい40などです。

最近は、日本食も大人気で、世界中に知られた単語も多いです。代表的なものは、寿司105、酒75、ラーメン69、うま味59、ワサビ58、刺身53、天ぷら46、弁当46 などです。

次は、日本の武道関係です。柔道125、空手117、相撲89、合気道86などです。

最後に以上の分野以外の言葉として、津波152、神風68、カラオケ62、改善49、引きも凝り49などもかなり有名です。

これらがなぜ世界共通語だと言えるのでしょうか。そう判断できる基準のひとつとしてWikipedia を挙げたいと思います。たとえば津波(Tsunami)という日本語は、世界の152の言語において項目があります。つまり152の言語でその意味が説明され、そのままtsunamiという日本語を直接用いて、あの自然現象を呼んでいるのです。

もう一つ例をあげましょう。引きこもり(Hikikomori)という日本語は、49言語において項目が作られ、その言語で説明されています。たとえば米国でそれと同様の現象がみられると、日本語のhikikomoriという言葉が直接使われて、この現象が語られる場合が多いということです。寿司(Shushi)は105の言語で項目が作られており、これもやはり世界中で使われている日本語ということになるでしょう。

Wikipediaの中でどれぐらいの言語でその日本語の項目が見られるかで、その日本語がどれだけ世界共通語になっているかどうかが分かるというわけです。さきほど、世界共通語となったと思われる代表的な日本語を大雑把なジャンルごとに挙げましたが、いずれもWikipediaでその項目が作られた言語が多いものから選びました。それぞれの言葉の後の数字は、その言語数を表しています。

ところで世界には今196の国がありますが、使用されている言語は7000以上あると言います。その中でWikipediaでは、たとえばJapanという国名は317言語、United Statesは314言語、Franceは302言語で項目が見つかります。国名などの基本語はどの言語でも項目があるはずですから、Wikipedia は少なくとも317を超える言語で記述され利用されていると言えるでしょう。

ちなみにこのいくつの言語で項目が作られたかという基準で、世界共通語になった度合が強い日本語(つまり、より多くの言語でその言葉の項目があるもの)を選び、60以上の言語で示されたものを数字が多いものから順番に並べてみます。これ以外にもまだまだあるかもしれません。あったら教えていただければ幸いです。

津波152、アニメ131、柔道125、カラテ117、マンガ116、俳句109、侍107、寿司105、禅104、相撲89、合気道86、折り紙83、盆栽82、忍者78、着物77、芸者77、酒75、絵文字74、切腹73、ラーメン69、カラオケ62……ということになります。

さて、この動画のタイトルは「世界に最も影響を与えた日本語」でした。これらの日本語の中で言葉自体としてどれがいちばん影響を与えたのでしょうか。あるいは世界に新しいものの見方や新しい価値観をもたらしたでしょうか。最初の津波は、数字は高いですが自然現象ですから、言葉自体が世界の人々に大きな影響を与えたとは言えないでしょう。次にアニメやマンガですが、もちろん膨大なアニメやマンガの作品が世界中の人々に与えた影響は計り知れないと思います。しかしそれは、これらの言葉自体による影響とは言えません。

柔道や空手はどうでしょうか。世界中に柔道や空手の愛好家はたくさんおり、それらを学ぶ過程で日本武道の精神に影響を受けるということは大いにありうるでしょうが、これもやはり言葉自体の影響ではありません。

次に俳句ですが、各国の言葉で俳句作りを楽しむ人々が世界中に増えているとは聞いていました。世界俳句協会によるとその会員数は30か国200万人に及ぶということです。それにしても、これが侍や寿司より数字が高いのは驚きです。確かに、短い言葉の中に季節の変化や自然から受け止めた細やかな感動を表現する俳句の精神は魅力的であり、世界中の愛好家に多くの影響を与えたことでしょう。しかし俳句という言葉自体が日本語の中でもっとも影響を与えたとは言えないないでしょう。

寿司やラーメンは、それを食べた世界の人々をハッピーにしたかもしれませんが、これらの言葉自体が世界に影響を与えたとは言えません。

侍はどうでしょうか。『SHOGUN将軍』の大ヒットもあり、サムライ・スピリットは世界に益々知れ渡ったことでしょう。しかし、それが世界の人々の生き方やライフスタイルに大きな影響を与えたとまでは言えないと思います。

★この記事の内容は、次のユーチューブ動画の前半部分です。世界に最も影響を与えた日本語についての結論は、次の動画で見ること   ができます。⇒世界に最も影響を与えた日本語-アニメやマンガやサムライではない



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桜はなぜ日本文化の象徴なのか?—自然災害との関係

2024年06月02日 | 自然の豊かさと脅威の中で
★ここにリンクする動画は、世界の人々のために、桜がなぜ日本文化の象徴なのかを英語で解説したものである。以下はその日本語全訳である。映像は昭和記念公園や金沢城や兼六園で撮影した。美しい桜の動画もぜひ楽しんでください。
 ⇒ Why are cherry blossoms a symbol of Japanese culture? —Relationship with natural disasters

私は今75歳であるが、いまだに毎年桜の季節が訪れるのを楽しみにしている。今年は桜が満開になるのが例年に比べるとかなり遅かった。しかも東京ではその間あまり天気が良くなかった。4月7日ようやく晴れた日に、東京西部の昭和記念公園を訪れ、青空を背景に美しい桜の写真と動画を撮ることが出来た。その後、4月中旬に日本海側の石川県と新潟県を訪れたときにもまだ桜を楽しむことができた。

ところで石川県の能登半島では、今年1月1日に大きな地震があった。その地震の結果、能登半島の海岸では、最大4メートルもの大規模な海岸隆起があった。被害も深刻であった。能登半島に近い金沢市では、幸い私は被害の跡をほとんど見なかったが、金沢城の周囲で美しく咲く桜を見て、災害の多い日本と桜文化の関係を考えた。

日本人はなぜこれほど深く桜を愛するのだろうか。もちろん、それがあちこちで一斉に満開になったときのたとえようもない美しさが一番大きな理由だろう。葉が出ないうちに花だけが開花するためにその美しさがよけいに際立つ。そしてそれが本格的な春の訪れを告げるのだ。日本の春は、桜と切り離して語ることは出来ない。

桜は日本の四季の変化を象徴している。四季のある国は他にも多く存在するが、日本はとくに四季の違いがはっきりしている。そしてその変化を生活の中で意識し、深く味わう風習や文化が発達している。そして桜は季節の変化を最も鮮やかに告げるのだ。日本人は、満開の桜の下で、花見という風習によって春の到来を楽しむのだ。

しかし、日本人が桜を愛する別の理由もある。それは、花が咲いている期間が10日前後ときわめて短いことである。桜は、一斉に開花し、その美しさを一瞬、露わにすると、瞬く間に散ってしまう。花の命が短いからこそ、その短い時をより強くいとおしむのである。その短い花の命を惜しむかのように、人々は花見を楽しむのだ。

桜の花が咲く季節は、壮麗で魅惑的ですが、悲しいことに短命で、私たちの人生もまたはかないものだということを視覚的に思い出させてくれる。この意味で、花見は私たちに人生は短いこと、そしてその一瞬一瞬を大切にしなければならないことを思い出させてくれる。今日では、多くの人が家族や友人、同僚と桜の下で花見パーティーをただ単に楽しんでいるように見える。しかし、歴史的には桜の観賞が、何よりも瞑想的な意味があるものと認識されてきた。

そして今日でも、日本人が集まって桜を見物し、その美しさに驚嘆するとき、彼らは単にその花の美しさを楽しんでいるだけではなく、桜が表すより深い意味と背後の文化的伝統をもどこかで意識しているはずだ。彼らは、桜の下でただ飲んで歌って踊って楽しんでいるように見えても、今を楽しみながら人生の輝きや儚さを思い出しているのかもしれない。

実は、桜の中で私が一番好きなのは、散る桜の花びらの風景です。日本語には「花吹雪」という言葉があり、桜の花びらが雪のように散る美しい光景を表現している。雪のように舞い散る桜は、その美しさと儚さを際立たせます。日本の桜は、仏教の死生観、マインんどフルネス、今に生きるという教えと結びつき、人間の実存の永遠のメタファーとなっている。

この動画のタイトルは「桜はなぜ日本文化の象徴なのか?」だ。この問いへの答えは、桜が咲いている時が短いことに深く関係している。日本は国土の67%が豊かな森林に覆われ、四方が海に囲まれ随所に美しい海岸がある自然が豊かな国だ。しかし同時に、地震、津波、台風、大雨、洪水といった自然災害も多い。

1200年代の初頭(鎌倉時代初期)に鴨長明は『方丈記』という随筆を書いた。古典的な随筆の代表作の一つである。その冒頭にはこう書かれている。

「行く川のながれは絶えずして、しかも本の水にあらず。よどみに浮ぶうたかたは、かつ消えかつ結びて久しくとゞまることなし。世の中にある人とすみかと、またかくの如し。」

この文章は有名で、日本人なら誰でも聞いたことがあり、そしてその通りだと感じるだろう。こうした感覚は日本人の心に沁みついているからだ。日本人の歴史観や人生観は、こうした見方が底流になっている。つまりすべては移り変わり永遠にとどまるものは何もないということだ。

一方、ヨーロッパの国々ではどうだろうか。地震も津波も台風もほとんどなく、洪水があっても日本の洪水ほど急激な増水はない。つまり自然災害によってすべてが破壊されたり流されたりしてしまうことはほとんどない。ダヴィンチ、ニュートン、ルソー、モーツアルトの生家が今もそのまま残っている。日本では、彼らと同時代に活躍した人々の生家など、どこにも残っていない。もちろんそこには、石造りの建物と木の建物との違いもある。ともあれヨーロッパでは、古い時代の遺産の上に新しいものが積み重なっていく傾向がある。

ところが日本では、建物が木で出来ている上に自然災害が多いから、すべては時間の流れの中で消えていく傾向が強いのである。日本人は、すべてが流れ去り、消えていくという感覚が強く、そういう感覚を基礎にして日本文化が成り立っているのだ。ヨーロッパでは、変わりにくいから変わらないことを大切にする文化が育った。しかし日本では、すべてが変わってしまうから変わることを受け入れる文化が育った。何もしなくともすべてが変わってしまうから、変わることを前提とした文化が育ったのだ。そして人々は変わりゆく過程、消えゆく過程に美を見出したのだ。日本人が四季の変化を大切に感じる理由のひとつもそこにあるかもしれない。。

変化や儚さに美を見出す元々の日本人の傾向は、すべては無常であるという仏教の思想「無常観」の影響でさらに強まっている。 「無 
ここまで語れば、なぜ桜が日本文化の象徴であるのか、もう理解いただけただろう。日本人が桜を深く愛するは、そこに美しさと儚さが同居しているからだ。ごく短い間、美しく咲き誇り、そしてあっという間に散っていく桜。人々は、桜の美しくも短い命に、自分たちの命の儚さを重ね合わせて見ているのだ。豊かであると同時に、時に猛威をふるう自然の前で、人間の命がいかに儚いものであるかを、桜を見ながら実感する。その無常観が、日本の文化と美意識の根底にある。

江戸時代の学者本居宣長は、日本の思想や文化の研究者であった。彼の有名の和歌に次のようなものがある。

敷島の大和心を人問はば 朝日に匂ふ 山桜花(本居宣長)

If asked what the Japanese spirit is,
I would answer that
it is the mountain cherry blossoms
shining in the sunrise.

★ここにリンクする動画は、世界の人々のために、桜がなぜ日本文化の象徴なのかを英語で解説したものである。以下はその日本語全訳である。映像は昭和記念公園や金沢城や兼六園で撮影した。美しい桜の動画もぜひ楽しんでください。
 ⇒ Why are cherry blossoms a symbol of Japanese culture? —Relationship with natural disasters



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日本だけに起きた奇跡 アメリカ人研究者はこう見た(銃と剣をめぐって)

2024年05月25日 | 侵略を免れた日本
★以下は、次のユーチューブ動画の前半部分の要約です。全体の議論を見たいかたは次からお入りください。
 ⇒ 日本だけに起きた奇跡 アメリカ人研究者はこう見た(銃と剣をめぐって)

1980年にアメリカで実写ドラマ化されたジェイムズ・クラベルのベストセラー小説「SHOGUN」。それが、ハリウッドの製作陣の手で、真田広之主演の戦国スペクタクル・ドラマシリーズ「SHOGUN 将軍」全10話として新たに映像化されました。米国ではFXとフールー(Hulu)、日本や英国を含む他の地域ではディスニープラス(Disney+)で2024年2月より配信が始まると、たちまち話題となり、絶賛の嵐といってもよいほどの高い評価を得ています。映画レビューサイト「ロッテントマト」では、批評家からも一般視聴者からも高評価が続出しています。

主演の真田広之は、プロデューサーも務め、「日本人として日本の文化を正しく世界へ紹介したい」という思いをこのドラマに込めたと言います。「僕はこのプロジェクトに参加できて本当にうれしいし、幸せです。僕にとって奇跡のようなプロジェクトでしたし、プロデューサーとして初めての経験でした。プロデューサーとして僕たちの文化について全てを語ることができました」と彼は語っています。

物語は、関ヶ原の戦い前夜の日本を舞台に、徳川家康や石田三成ら歴史上の人物にインスパイアされて、天下獲りに向けた陰謀と策略に明け暮れるさむらいたちの闘いを壮大なスケールで描きます。物語の主人公は、五大老と敵対し、命をかけて戦う武将・虎永(真田広之)です。そんなある日、英国人航海士ジョン・ブラックソーン(後の按針)が、虎永の領地へ漂着します。虎永は、戸田鞠子(アンナ・サワイ)に按針の通訳を命じ、次第に按針と鞠子の間には固い絆が生まれ始めます。一方、難破船にはマスケット銃や大砲、さらに銀貨などがあり、虎長は天下取りの最大のライバルである石堂和成(モデルは石田三成)に優位に立ちます。

このドラマを見た海外の人々の多くは、日本の歴史にも興味をもち、もっと知りたいと思うことでしょう。事実そんなコメントが散見されます。そして、日本史に関心をもった人々が戦国時代以後の日本の歴史を探るならば、ある不可思議な事実に突き当たるでしょう。それは日本だけに起きた奇跡であり、銃と刀にまつわる次のような奇跡です。

日本に鉄砲がもたらされたのは、1543年。その年にポルトガル人が日本の南の島、種子島に漂着したのです。そのポルトガル人から二丁の鉄砲を購入したその島の領主が、刀鍛冶に鉄砲の製作を命じ、その結果、鉄砲がこの極東の島国に伝来してから1年余りで、その国産化に成功したといわれます。それ以来鉄砲は、日本中に短期間で広まりました。
それは、その時代の日本が戦国時代で、鉄砲は敵に勝つために極めて威力のある武器となったからです。そして日本はまたたく間に、ヨーロッパのいかなる国にも勝る、世界最大の鉄砲の生産・使用国になったのです。
にもかかわらず、その後まもなく日本人は、鉄砲を捨てて、刀剣の時代に舞い戻りました。武器の歴史において、他に例のない、信じられない逆行が起こったのです。しかも日本の他の技術はゆっくりではありますが確実に進歩していたのです。日本人は、あまりこの事実を意識しませんが、この退行は世界史的な視野から見れば、驚くべき奇跡なのです。世界史において戦争は付き物で、戦争がある以上、つねにより威力のある武器が求め続けられるからです。

西洋では、ポルトガル人が日本に漂着し鉄砲をもたらしたころ、つまり地理上の発見時代から、やがて帝国主義列強の時代へと大きく変化していきました。そしてその間に植民地に対する戦争だけでなく、西洋諸国間や一国内でも多くの戦争を繰り返しました。
たとえばドイツ30年戦争、英蘭戦争、英米戦争、ナポレオン戦争などです。
つまり16世紀後半に西洋と日本は共に鉄砲の時代を迎えたにもかかわらず、その後、一方は鉄砲の使用の拡大による激しい戦争への道を歩み、他方は鉄砲の放棄あるいは削減にともなう平和への道を歩んだのです。

ではなぜ日本は、世界の歴史の流れに逆らって鉄砲を捨てる奇跡の道を歩んだのでしょうか。まず歴史的事実を確認しましょう。西暦1600年に、関ヶ原の戦いにおいて全国の大名がふたつに分かれ戦いました。。結果は東軍が勝利し、この軍を率いた徳川家康が、全国を支配する実権を握り、1603年に徳川幕府を開きました。最初に触れたテレビドラマ「Shogun」は、この時代を舞台としています。

そして1615年には家康は、大阪城に残っていた西軍の勢力を滅ぼしました。これによって戦国時代は終わり、その後1867年に徳川幕府が滅びるまでの250年間、日本はほぼ戦争のない平和な時代が続くのです。そして、鉄砲は、戦国時代の終わりと共に放棄されていったのです。平和な時代になったからこそ、鉄砲は必要なくなったのだと言えるかも知れません。
 
しかし、いくつかの疑問が残ります。最初の疑問は、鉄砲は放棄されてもなぜ侍は、その後もずっと刀を持ち続けたのかということです。 次の疑問は、戦国時代のあとなぜ日本は250年もの平和を維持することができたのかです。

★以下は、次のユーチューブ動画の前半部分の要約です。全体の議論を見たいかたは次からお入りください。
 ⇒ 日本だけに起きた奇跡 アメリカ人研究者はこう見た(銃と剣をめぐって)


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マンガ・アニメが世界の人々の人生に与えた衝撃

2024年05月21日 | 世界に広がるマンガ・アニメ
★この記事の内容は、次のユーチューブ動画の前半部分です。議論の全体は次の動画で御覧になれます。
 ⇒ マンガ・アニメが世界の人々の人生に与えた深刻な衝撃

最近私は、自分のXアカントで海外の人々に次のような質問を投げかけて見ました。
What manga or anime had the most influence on your life? What kind of impact did that have? If possible, please also tell me your country name.
あなたの人生に最も影響を与えた漫画やアニメは何ですか?それはどのような影響を与えましたか?可能であれば国名も教えてください。

この質問に対して世界各国からおよそ50の回答がよせられました。回答で挙げられたマンガやアニメは多種多様、影響の内容も同様で、40以上の作品名が挙げられていたので、集計してランキングするのはあまり意味がない感じでした。それでも、挙げられた回数が多かった作品をあえて列挙すると、ドラゴンボールが5回、セーラームーンが3回、ナルト、らんま1/2、るろうに剣心、AKIRA、デスノートが各2回でした。あと宮崎駿の作品が4作品挙げられていました。それぞれの人生にどんな影響を与えたかについては、代表的なものをいくつか選んで、この動画の最後に紹介したいと思います。

ここではまず、ある本を紹介しながらフランスの子供たちの心にアニメとマンガがどのような影響を与えたかを語りたいと思います。ここに語られていたのと同じような影響を世界各国の子供、そして若者たちが受けていたと思われるからです。本のタイトルは『水曜日のアニメが待ち遠しい:フランス人から見た日本サブカルチャーの魅力を解き明かす』です。著者はトリスタン・ブルネ氏で、1976年生まれ、フランス人「オタク」の第一世代を自称するマンガ・アニメ通です。日本マンガの翻訳家であると同時に日本史の研究者であり、日本の大学等でフランス語、フランス思想の講師もつとめるとのことです。

彼によると、フランスのTVではじめて日本のアニメが放送されたのは1972年で、子供たちの圧倒的な人気を得た最初の作品は1978年の「UFOロボ グレンダイザー」でした。フランスで日本のアニメが本格的に放送されるにようになったのは、放送局が民営化される過程でコンテンツ不足に悩み、それを補うのに安い日本製アニメが輸入されたからでした。当時、フランスの小学校は水曜日が休日で、その日の子供向け番組にアニメが放映され、大勢の子供たちを夢中にさせたのです。水曜日のアニメを待ち遠しく待ったそうした子供たちの一人がこの本の著者トリスタン・ブルネ氏だったのです。

1980年代後半からは、「ドラゴンボール」「うる星やつら」「キューティー・ハニー」「Dr.スランプ」「めぞん一刻」「キャッツ・アイ」「北斗の拳」「キャプテン翼」といった大ヒット作が立て続けに放送されました。

その後も「キン肉マン」「シティハンター」「気まぐれオレンジ☆ロード」「らんま1/2」「美少女戦士セーラームーン」といったヒット作が放送されますが、その人気は1990年代中ごろから落ち込み始めたといいます。その大きな理由が日本製アニメに夢中になる子供たちの親世代からの激しい批判、ジャパンバッシングだったのです。
当時の日本アニメへのバッシングにはいくつかの理由があったようですが、そのいちばん深い理由は、日本のアニメが西欧にない異質な世界観・価値観を子供たちに注ぎ込むことへの大人たちの恐れではなかったかと、著者は言います。

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 ⇒ マンガ・アニメが世界の人々の人生に与えた深刻な衝撃

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海外の本音プチ炎上 日本人が親切?規律正しい?

2024年05月14日 | 日本の長所
★この記事の内容は、次のユーチューブ動画の要約です。議論の全体は次の動画で御覧になれます。
 ⇒ 「海外の本音プチ炎上 日本人が親切?規律正しい?」

私は最近、自分のXアカントで次のような質問をしました。
「日本人はなぜ規律や礼儀、敬意を大切にするのでしょうか。それは、日本が単一民族が住む島国であり、他国に侵略されたことがなく、自然災害があっても協力して立ち直ってきたからだと思います。これについてどう思いますか。」(原文は英語です)

この質問に対し、それほど多くの回答を期待していなかったのですが、意外にも海外から90以上の回答がありました。しかもかなり否定的、批判的な意見も多く、ちょっとした炎上かなと感じたくらいです。

上の私の問いかけに対してもかなり無礼な発言が散見しました。たとえば日本語にすると「アホなおいぼれめ、すぐにくたばるだろうがな」というような感じです。これはさすがにブロックしたので、もう見れませんが。この人も含め、「日本が単一民族が住む島国」だから規律や秩序があると表現したことにお怒りの人が多かったようです。もちろん日本を単純に単一民族の国とは言えないかもしれませんが、あえて単純化して言いました。言いたかったのは世界の他の国々に対してきわめて均質性の高い国で、それが日本人の規律性や秩序ある社会の一因になっているということです。

多様性と均質性。現代の世界は多様性を重視します。日本のように比較的に均質な社会だから、社会の秩序や規律性が保たれたと言えば、当然強い反発が起こります。そういう立場からの反対意見はたくさんありました。いくつか例を挙げます。

★私の考えでは、規律、礼儀正しさ、敬意と単一民族であることとのつながりはかなり希薄で、その間に因果関係をこじつけるのは、日本の多民族性を否定したい人々による神話作りの一部です。

★日本には単一民族が住んでいるのではありません。初期にはさまざまな地域から複数の移住がありましたが、最も明白な例は北海道のアイヌです。性格、行動、特性は国民に本来備わっており遺伝するという誤った考えに基づく意見は、すべて国家主義的なアプローチに過ぎず、まったくのナンセンスです

★彼らが秩序を保っているのは、人間の生命にとって非常に危険な場所において、それが生き残るための最も合理的な反応だからです。そして日本は単一の民族ではなく、複数の民族(少なくとも縄文人・弥生人のような2つの大きな民族)があり、さらに琉球人やアイヌもいます。

★「単一民族」という言葉には納得できません。歴史的に見て、それは正確ではありません。はるか昔、日本は北と南の部族が混在していました。そのため、顎の形や肌の色は多種多様です。

私の主張は、「大陸から海で適度に隔てられた日本は、異民族により侵略、征服されたなどの体験をほとんどもたず、そのため縄文・弥生時代以来、一貫した言語や文化の継続があった。そうした歴史的継続性や統一性という背景が一因となって、現代の日本社会の規律性や秩序の高さが生まれた」ということに尽きます。

上に挙げた例にも見られるように、私の質問に対して、先住民アイヌの例を持ち出し、真っ向から否定する意見もいくつかありました。しかし、アイヌについての最先端の研究成果を知れば、問題はそれほど単純でないことが分かるでしょう。少なくとも以下のような学説もあることを知っておくべきです。

北海道では、本州が弥生時代に入ってからも縄文文化を継続し、続縄文文化とよばれました。つまり縄文人がその文化を本州よりも長く継続していたのです。その頃、樺太からオホーツク文化が南下し、北海道の北と東の広い地域に広がりました。そして7世紀からは東北の農耕民が北海道西部に移り住み、本州の土師器の影響を受けた擦文式土器を特徴とする擦文文化に移行し、擦文人は勢力を北海道全域に広げました。

その結果、オホーツク文化は北海道の東部地区に残りましたが、擦文文化と融合してトビニタイ文化となりました。そして擦文文化がトビニタイ文化を吸収して、13世紀に成立したのがアイヌだと言われています。つまりアイヌとは、北海道縄文人の子孫である続縄文人と東北弥生人が融合し、樺太から下がってきたオホーツク人を吸収して一体となることで形成されたのです。近年の遺伝子調査によると、アイヌ人とDNAが最も近いのは、琉球人で、次に近いのが本土日本人でした。つまりアイヌは、琉球人とともに縄文人の血統を色濃く受け継いでいるのです。現代の日本人が、縄文人と弥生人の両方の血を受け継いでいることはよく知られていますが、アイヌや琉球の人々は、縄文人の血をより濃く残していると言えるのです。このような研究成果を踏まえるなら、アイヌを先住民と単純には言えないし、アイヌや琉球人を単純に別民族とも言えないのです。

最後にひとつだけ付け加えます。日本人の規律や秩序や治安の良さについては、先の意見(動画の中で見ることが出来ます)の中にあったように、もしかしたら表面的なものかも知れません。しかし犯罪や無法状態が蔓延する社会よりは、安心して暮らせる社会を誰もが望んでいます。日本が今そういう社会であるのは、いくつかの地理的・歴史的な条件が幸運に働いた結果かもしれません。しかし、日本人がそういう状態をいつまでも維持することで、それが世界に何かしら良い影響を与える可能性は高いと思います。そういう社会が存在することが可能なのだということを現実に示し続けることは十分に意味があるのです。そこに人々は可能性と希望を見つけ出すことができます。そして人々の意識が少しでも変われば世界が変わる可能性があるのです。かすかな可能性かもしれませんが、否定できない事実でしょう。

★この記事の内容は、次のユーチューブ動画の要約です。議論の全体は次の動画で御覧になれます。
 ⇒ 「海外の本音プチ炎上 日本人が親切?規律正しい?」



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日本人の優しさ・礼節・敬意——その驚くべき背景(世界の反応)

2024年05月07日 | 日本の長所
★この記事の後半は、次のユーチューブ動画でご覧いただけます。
 ⇒ 日本人の優しさ・礼節・敬意——その驚くべき背景(世界の反応)

私は自分のXアカントで行ったアンケート結果や、関連するユーチューブ動画や読んだ本のなどを参考にて、海外の人々が見た日本人や日本社会の特質をおよそ次のようにまとめてみました。

1)礼儀正しさ
2)規律性、社会の秩序がよく保たれている 
3)謙虚さ、親切、他人への思いやり 
4)勤勉さ、仕事への責任感、自分の仕事に誇りをもっていること
5)治安のよさ、犯罪率の低さ

では、日本人の礼儀、規律性、謙虚さ、優しさはいったいどこから来るのでしょうか。これに関し私は、東北大震災の直後に見せた日本人の秩序ある行動が、驚きと賞賛をもって世界に報道されたのを思い出します。当時、アメリカのニューヨークタイムズ紙は、「混乱の中での秩序と礼節、悲劇に直面しても冷静さと自己犠牲の気持ちを失わない、静かな勇敢さ、これらはまるで日本人の国民性に織り込まれている特性のようだ」と評しました。

逆にアメリカでは2005年のハリケーン・カトリーナの際に無法状態での略奪など混乱状態に陥りました。日本では災害時にそういう無法状態に陥らず、略奪もなく秩序が維持されていました。この違いはどこからくるのでしょうか。

ある意味でそれは、日本が、大陸から適度に隔てられた島国であるという特殊な地理的条件から来るとも言えるでしょう。そのため日本は、民族と国家がほぼ一致し、共通の文化と言語を保ちながら1500年以上も続いてきたのです。

ヨーロッパ大陸やアジア大陸などの大陸においては、異民族間の戦争や、侵略、虐殺が繰り返されてきました。そういう歴史の中では、信頼を前提とした人間関係は育ちにくいのです。戦争と殺戮の繰り返しは、不信と憎悪を残し、それが歴史的に蓄積されていきます。

一方、海に囲まれた日本では、異民族による大規模な侵略や殺戮をほとんど経験せず、自分たちの言葉や文化が根こそぎ奪われてしまうような体験もありませんでした。国内に戦乱はあったにせよ、その規模は世界史レベルからすれば小さく、長年培ってきた文化や生活が断絶してしまうこともありませんでした。異民族による侵略や虐殺のない平和で安定した社会は、長期的な安定した人間関係が生活の基盤となります。互いの信頼に基づく安定した人間関係を大切に育てることが、日本人のもっとも基本的な価値観となったのです。

★この記事の後半は、次のユーチューブ動画でご覧いただけます。
 ⇒ 日本人の優しさ・礼節・敬意——その驚くべき背景(世界の反応)

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日本文化・10の奇跡―世界を魅了する発信力の秘密

2024年05月05日 | 全般
日本が、強力な文化的な発信力をもつに至った歴史的背景には何があるのか。私はそれを、以下の10の観点から探ってみました。
(1)文化の継続性
(2)縄文の記憶
(3)他文明の吸収力
(4)作り変える力
(5)キリスト教への態度
(6)相対主義
(7)穀物・魚貝文化
(8)母性原理
(9)独特の自然観・人間観
(10)道の文化
この10項目は、日本文化全体の特徴というべきものですが、今回は、それぞれの項目がなぜマンガやアニメといった日本のポップカルチャーの発信力につながるのか、という視点から概観的に語りました。ここでは上の10項目のうち3つを紹介します。続きは以下の動画で御覧ください。
⇒ ★日本文化・10の奇跡―世界を魅了する発信力の秘密

(1)文化の継続性――大陸から海で適度に隔てられた日本は、異民族により侵略、征服されたなどの体験をほとんどもたず、そのため縄文・弥生時代以来、一貫した言語や文化の継続があった。
 
世界史対照年表などで見るとはっきりと分かりますが、単一で存続し続けた国家として「世界最古の国家」は日本です。日本より古い国々はありましたが、崩壊したり侵略されたりして塗り替えられました。国家としての継続性は日本が最長なのです。そして日本人は民族としての土台を塗り替えられた経験を持たぬまま、縄文時代から文化が継続されてきたのです。これが第一の奇跡といってよいでしょう。

(2)縄文の記憶——漁撈・狩猟・採集を基本とした縄文文化の記憶が、現代に至るまで消滅せず日本人の心や文化の基層として生き続けている。

世界中の産業文明の国々は、「前農耕的な」時代の文化の遺産をほとんど残していません。たとえばヨーロッパでは、キリスト教以前のケルト文化をほとんど忘れ去ってしまいました。ケルト人は、牧畜・農耕を営んでいましたが、都市は発達せず、森との共生の中に生きていました。日本の縄文文化は、一部農耕を取り入れながらも、狩猟・漁労・採集中心の豊かな文化で、それが約1万3千年も続きました。しかもその精神的な遺産が、強力な国家や宗教などによって圧殺されずに、現代日本人の精神の中にも生き続けています。世界がほとんど忘れ去ってしまった文明の古層が、現代日本の中に息づいているのです。

たとえば日本のどこにでも見られる神社は、縄文人の信仰の遺産の一端だとも言えるでしょう。そこに「日本文化のユニークさ」の基盤がります。世界がマンガ・アニメに引かれる背景には、現代文明の最先端にありながら他の近代国家がほとんど忘れてしまった縄文的な何かがそこに息づいているからではないでしょうか。その何かとは、生命と無生命、人間と他の生き物を明確に区別しない文化、アニミズム的、多神教的な文化とも言えるでしょう。生命のあるものとないものとがたえず交わり、絡み合う世界を描くマンガ、アニメ、ゲームなどの魅力。このように、機械と生命と人間の境界があいまいで、それらが自由に融合していく日本のファンタジー世界は「テクノ-アニミズム」の魅力とも呼べるでしょう。

(3)他文明の吸収力
大陸から適度な距離で隔てられた島国であり、外国に侵略された経験のない日本は、大陸の進んだ文明の負の面に直面せず、その良い面をひたすら尊崇し、吸収・消化することで、独自の文明を発達させることができた。

ユーラシア大陸のほとんどの国は、古代から他民族によって侵略され文化を破壊された経験をもちます。近代では、アジアとアフリカと南北アメリカのほとんどの国がヨーロッパ諸国の植民地とされました。日本がそういう経験をもたず、古代からの固有な文化を保ちながら現代に至ったこと自体が奇跡のひとつと言えるでしょう。日本は、こうした歴史のため、海の向こうから来るものを、恐ろしく破壊的で邪悪な何かと感じるのではなく、進んだ文明をもたらしてくれる善きものと感じ続けたのです。こうして中国文明も西洋文明も貪欲に吸収することができました。この意味で非常に学習力の高い民族だったと言えます。その結果、文明の古い層を残しながら文明の先端をも走っている、重層的な国なったのです。その重層性の中から、世界を魅了する日本文化の発信力も生まれてくるのです。

続きは以下の動画で御覧ください。
⇒ ★日本文化・10の奇跡―世界を魅了する発信力の秘密


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日本語の響き、きれいor汚い? 海外250人が直返答

2024年05月02日 | 日本についてのアンケート
★これほどに日本語の魅力に取りつかれている人々が多いとは驚きです。さらに確認するには次の動画をご覧くさい。
日本語の響き、きれいor汚い? 海外250人が直返答

私は、以前からずっと日本語の響きはあまりきれいではないだろうと思っていました。ところがここ数年、ユーチューブなどで見ると、日本語の響きの美しさに魅せられたり、それで日本語学習を始めたりと言う人が意外に多いことに驚きました。
たとえば日本で英会話講師としても知られるサマー・レイン( Summer Rane)さんの場合はこうです。彼女が9歳ぐらいのときアメリカではドラゴンボールZがすごく人気で、彼女も次のエピソードを見るのが待ちきれなかったといいます。そのアニメの日本語を耳にしたとき、何と美しい言語だろうと感じ、どうしてもしゃべるようになりたいと決心をしたそうです。そして高校生になってから本格的に日本語の学習をはじめ、今ではほぼ完ぺきな日本語を話します。彼女の例のような話をよく耳にするようになりました。

それで、教師をしていた私は、教室で何回か生徒に「日本語の響きはきれいに聞こえると思うか」と質問し手を挙げてもらいました。するときれいに聞こえるだろうと答える生徒はかなり少なく、あまりきれいではないと思っている生徒が多かったのです。以前の私と同じです。

私は、自分のX(ツイッター)アカウントで日本の観光地や風景、文化などを紹介しており、幸い世界中からフォロワーも多いので、これを利用し、数年前に海外の人々にとって日本語はどのように聞こえるのかを聞いてみることにしました。その時は50名ほどの人々に回答をいただいたき、結果は驚くべきものでした。その結果は、授業で教材としても使いました。その回答のいくつかは、このあとすぐに紹介します。

今回、もう一度同じ質問を世界に向けて投げかけて見ました。前回の回答の傾向が変わっていないか確認し、最新の情報に更新したうえで、この動画を作りたかったのです。質問は次のようなものでした。

「日本語を母国語としない皆さんにとって、日本語は美しい響きをもつと思いますか、それともきたなく聞こえますか。皆さんのお考えを聞かせてください。もし可能なら、あなたの国名も教えてください。」

私や私の生徒たちがそうだったと同様に、多くの日本人は、日本語の響きはあまり美しくないと思っているのではないでしょうか。この動画を見る前に、皆さんはどう思われていたでしょうか。そしてこの動画を見た後では印象が変わりましたか。下にコメントを下さればうれしいです。

さて、この私の質問に対し、今回は、質問して一週間後の時点で 214 名の人が回答してくれました。その内、日本語の響きは「美しい」と答えた人は191名、「何とも言えない」と答えた人は22名、「ひどい響き」と答えた人は1人でした。

私のフォロワーには日本に興味のある人が多く、そのため、日本語に対しても好印象を持っている人が多いようです。回答者には日本語学習者も20名ほど含まれていたのでなおさらでしょう。上記の結果は、このことを念頭に置いた上で見る必要があります。

しかし、それにしても、前回と同様に圧倒的多数の人々が、日本語は美しい響きをもつと感じていることに驚かされます。どんな回答が多かったのか、いくつかを取り上げて見ます。数年前のアンケートの回答からもいくつか選んでいます。すべてをご覧になりたいかたは、下にリンクする私のXアカウントをご参照ください。

まず、先ほどのサマー先生のように、日本語の響きの美しさに魅せられて、日本語の学習を始めたという人々の例をいくつか拾ってみましょう。

「私はドイツ出身で、その響きの美しさに惹かれて日本語を勉強し始めました。 これがきっかけで、日本の文化、人々、メディア、食べ物に対する生涯にわたる愛が始まりました。」

「チェコ人です。日本語は、とてもソフトでエレガントでペースがいいと思います。だから私は日本語と恋におちいり、勉強したいと思うのです。」

★これほどに日本語の魅力に取りつかれている人々が多いとは驚きです。さらに確認するには次の動画をご覧くさい。
日本語の響き、きれいor汚い? 海外250人が直返答

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世界は日本からこれを学びたい!日本では当然の光景だが

2024年05月01日 | 世界に広がるマンガ・アニメ
この記事は、次の動画の内容の5分の1程度の紹介です。全体はこちらで御覧ください。⇒世界は日本からこれを学びたい!日本では当然の光景だが Fusion of tradition and future!


米国の第96回アカデミー賞では、日本から山崎貴監督の『ゴジラ-1.0』、宮崎駿監督の『君たちはどう生きるか』そしてビム・ヴェンダース監督の『Perfect Days』の三作品がノミネートされ、そのうち『ゴジラ-1.0』と『君たちはどう生きるか』が、それぞれ視覚効果賞と長編アニメ賞に輝きました。そして『ゴジラ-1.0』は日本だけでなく米国や世界の多くの国々で日本映画として記録的なヒットとなりました。

さらに最近では、真田広之主演の戦国スペクタクル・ドラマシリーズ『SHOGUN 将軍』がハリウッド製作陣の手で映像化され配信が始まりました。米国ではFXとフールー(Hulu)、日本や英国を含む他の地域ではディスニープラス(Disney+)で配信され、世界的に絶賛の嵐といってもよいほどの高い評価を得て、話題となっています。

《中略》

40年前に比べれば世界中の人々の日本への関心と知識は大幅に増しています。日本を旅行した人の数もはるかに多くなっています。マンガやアニメをきっかけにして日本文化に関心をもち学び始めたり、日本語を学ぶ人の数も激増しています。だからこそ日本を見る眼も深まっているし、本物の日本の映像や文化を強く求めるようになっているのでしょう。真田広之が願ったように日本をテーマとした作品がますます増えていくでしょうが、それらは、本当の日本を描くことが何にもまして大切な条件になるでしょう。日本関連の作品が成功するか否かは、底の浅い安っぽい日本のイメージではなく、真の日本の姿をどれだけ映し出すかにかかってくるのです。

では何が日本文化をそれほど魅力的なものにしているのでしょうか。前回の私の動画『日本人のどこがユニーク? 世界の130人が熱く語る!』でも紹介したように、私は最近、自分のX(ツイッター)アカウントで次のような質問を投げかけて見ました。

「日本人や日本の文化・社会のユニークさは何だと思いますか。一つ二つ挙げてみてください。」この質問に幸い多くの回答が寄せられ、二日ほどでおよそ130になりました。その内容も様々な視点からの興味深いものばかりでした。その中には、ある共通の見解を示すものがかなり多く含まれていました。それは、日本文化の魅力の一側面を確実に表現していると思われます。そのいくつかを拾ってみましょう。

「本当に私が日本社会で最も素晴らしいと思うのは、本質的な日本らしさを保ちながら、変化し、適応し、外から新しい要素を加えていく能力です。言語であれ、技術であれ、文化であれ。」

《以下略》

この記事は、次の動画の内容の5分の1程度の紹介です。全体はこちらで御覧ください。⇒世界は日本からこれを学びたい!日本では当然の光景だが Fusion of tradition and future!


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