俺の翼に乗らないか?

スターフォックスの一ファンのブログ

『ベノム陥落』その4

2009年05月06日 13時57分13秒 | 小説『ベノム陥落』
 今の俺をレオンが見たら笑うだろう。
 そう考えてから少し驚いた。自分はいつのまにかレオンを片腕のように考えている。

 片腕。その言葉が鍵となりウルフの遠い記憶をすくい上げ、意識を過去へと運んだ。
 今のようにコーネリア軍が幅をきかせていなかった頃。戦場から戦場へと渡る狼の戦士の群れ。その群れのなかに自分がいた。まだほんの子供だったが。
 杯をあおる男たち。絶えず交わされる乱暴な言葉。繰り返される武勇伝。
 銀白色の大きな体をした戦士がウルフの目の前にいた。その体から逞しい腕が伸びて、幼いウルフを抱え上げ肩に乗せた。
 おまえは俺の片腕だな。
 やはり銀白色の体毛に覆われた口元から、うすく犬歯を覗かせてそう言った。
 片腕。片腕。ウルフにはその言葉の意味が正確にはわからなかった。わかったところで、なぜこの銀白色の戦士がまだ幼く戦闘に加われない自分を片腕、と呼ぶのか、その真意はやはりわからなかったろうが。
 ただ無性に誇らしかった。よくわからないけれど褒めてもらえたのだ。頬が火照った。体の奥のほうで小さな火がちろちろと燃え出したようだった。