「そんなんだから、ピグマってやつに裏切られるんじゃないか!!」
「そのことは言ってくれるな! 大体、金のために戦友を売るようなヤツのことが、ワシに理解できてたまるか! 金で何でも売り渡すやつは、手放したら最後、二度と買いもどせないものがあることも知らずに金に換えちまうもんだ。あいつは心も魂も、みんな換金しちまったんだ。やつの体のなかには、なにも詰まっちゃいない。目を覗いてみても、あるのは金への執着だけだ。そんなやつのことが……ワシに、わかるわけが……そんなやつのために……ジェームズ……ワシがもっと……もっとワシが……あんなやつのために、ジェームズが……ワシさえもっと、気をつけておればな!! ジェームズ!!」
もはや最後は絶叫だった、わっと床に伏せると、こぶしを叩きつけながら泣きわめいた。口論していたはずのスリッピーは、おびえて後ずさっている。
一体どうしたものかと立ち尽くすペパー将軍の脇から、フォックスが歩み寄り、ペッピーを抱き起こした。
「すこし風に当たってこいよ、ペッピー」
「……ズマン。ワジのだめに」
ヒック、えっぐ、という音のあいまに、涙声でしゃべりながらペッピーは立ち上がった。
「スリッピー。ペッピーをたのむよ」
こくん、と頷いて、スリッピーはペッピーの背中を押しながら、ドアのほうへと向かう。
「全くもう、泣き虫なんだからなぁ~」
「お前だけには、ヒック、言われだくないわい」
口げんかする二人の声が、ドアの向こうに遠くなり、やがて聞こえなくなった。