19世紀の建物を改装して若者たちが始めたこじゃれたホテルは居心地が良いけれど、
潜伏生活には向きませぬ。
革命とは?
何やら大それたことのように聞こえます。
しかしその場、その時は、何が起こったのかよくわからないものが革命と、
身をもって知った二年前。
革命から二年立ったその日、人々はあの革命の日に夢見た世界が現実になっていないことを憂いています。
それから一週間後の明日。
国を揺るがす何かが起きるかもしれない。
革命の日よりも、新たな指導者を選ぶ選挙の日よりも、
明日が見えない不安に包まれています。
そう感じるのはなぜか?
もしも、抗議するデモ隊があふれかえって、どこにも出ることができなくなったら?
そんな時は、楽しいところに泊まっているに限ります。
ホテル・ロータスは1950年代に建てられた、アールデコの家具のあるホテル。
設備は古くて、骨とう品みたいな家具と従業員。
そして、やっぱりいました!
いると思っていましたよ。
真っ白な白髪の肌の白い西洋人のおばあちゃんが、きちんとスーツを着こなして、
いつもロビーに座っています。
話しかけても、耳が遠いのか、振り向きもしません。
きっと、何かロマンスがあったのでしょうね。
このホテルを終の棲家にした訳を、もう彼女は忘れてしまったかもしれません。
お掃除のおばあちゃん、ベルのおじいちゃん。
レセプションのおじさんたちは、彼らの子どものようです。
ホテルとともに、年老いていく従業員たちのきらきらとした瞳。
あまり冗談も言わないけれど、優しいまなざしに、ふと手を見ると刺青があります。
コプトの人たちです。
コプトの人たちは、穏やかで優しくまじめです。
外でどんな大騒ぎがあろうとも、
ここではナイルの流れのごとく、ゆっくりとした時が流れていることでしょう。