あの、空気を薔薇色に染める、
絶壁の美しさを見たのが
遥か遠い日の出来事のように感じる
めまぐるしく過ぎゆく日々
ぺトラにたくさんいる、掃除夫がせわしなく行き来するような
ゆっくりと、
ぺトラの時間は、ゆっくりと流れている
絶壁の、頂上を目指し、
強風に飛ばされそうになり、
岩にしがみつく
決して一人で行ってはいけませんと、
出口に書かれている案内板を見るまで
時空の彼方にまで吹き飛ばされそうな強風
虫一匹いない、頂上の岩肌
誰もいない、きりたった崖
これらに何の恐怖も感じなかった事を、恐ろしく思う
人と、ロバの気配を感じる麓に降り立ち、
背中を流れる汗がやけに冷たく感じる
見上げれば、色とりどりの赤から黄色の薔薇の花弁を思わせる
つややかなマーブル模様
朝、夕の空気を薔薇色に染め上げる秘境
ぺトラの美しき空気に染まるには、
誰しも、2日は歩かねばならない。
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ぺトラでは、1日券、2日券、3日券が売り出されている。
一番お得なのは3日券で、1日券は仰天の金額である。
入り口でだまされた!ぼったくられた!と騒ぐイタリア人に「それは正規料金ですよ」と言うとあんぐりと口を開けていた。
そう、ここは、3日見てやっと満足できる広さなのだ。
私は2日で、主要な見どころをまわった。
遠くに続く遺跡に、いったい何回訪れたら満足できるだけ見られるのだろうと思った。