還りたい、還りたいと魂が叫び続けるアンダルシアを背に、ある時、私は北へと足を向けた。
寒い、耳が切られそうに凍てつく風の中、スカーフを巻いて、真っ青なコートを着て、私は旅に出た。
ドゥエロ川の静かな、鏡のような水面に引き込まれそうになる。
水の上を歩いていけば、輝く夕日の向こうの、幻想的な世界へ行くことが出来るのではないかと錯覚する。
どこまでも、どこまでも美しい。そして、心休まる静けさ。
詩人の愛した町。
誰しも詩人になってしまえるような、そんな雰囲気のある町。
ああ、ソリアを愛した詩人、マチャドはセビリアの生まれ。
アンダルシアの情熱的な血が描かせる、秘めたる想いがこめられた詩の数々。
私は行く。
アンダルシアに背を向け、マチャドが追悼したピカソのゲルニカの町へ向けて。
巡礼の道を歩く。
マチャドの「道はない。歩くことで道は出来る」という、高村光太郎のような詩に後押しされて、私は行く。
スペインが遠い。遠いけれど、決して私を忘れない。
私が忘れてしまわないように、聞こえてくるスペイン語の調べ。
ドゥエロ川の水面を思い出す。
その向こうに、未来が見える。