チェインブレーカー及び関連領域の郵便史

ユーゴスラヴィア建国当時~1922年頃までの旧オーストリア・ハンガリー帝国地域のチェインブレーカーを中心とした郵便史

210518表 小包第5期 スロヴェニア不足切手50 para+全国共通普通切手の混貼り

2008年04月12日 17時29分06秒 | 小包第5期
210518表 小包第5期 スロヴェニア不足切手50 para+全国共通普通切手の混貼り

小包第5期 ダルマチアからボスニア・ヘルツェゴビナ宛て
小包送票:ユーゴスラヴィアPOŠTNA SPREMNICA、左上に角に数値記載無し、スロヴェニア語、灰白紙、代金引換のない小包送票

小包ラベル:Dubrovnik-Ragusa 38、セルボクロアート語とイタリア語の二ヶ国語表記のラベル
備考:ドゥブロヴニク(セルボクロアート語Dubrovnik, イタリア語 Ragusa, ラテン語 Ragusium)は、世界遺産に指定されており、「アドリア海の真珠」と言われるほど美しい町です。

料金手書き:右上24.80

切手:
スロヴェニア加刷不足切手50 para (台切手15 vinar石版)(Mi.47) 4枚を普通切手として使用
ユーゴスラヴィア全国共通普通切手5 para (Mi.146) 4枚, 4 Dinar (Mi.156)
合計 6.2 Dinar (24 Kronen 80 vinar)(料金手書きと一致)

加刷不足切手50 paraの台切手15 vinar石版のプレーティング
右から左に向かって、シート32、タイプ35, 36, 37, 38、pos.85, 86, 87, 88
カナダのA. H. Stokes博士の研究資料に基づきます。

料金計算:
重量料金5 kg---5.0 Dinar
価格表記(保険)料金600 K(150 D)---1.0 Dinar
代金引換料金---無し
通知料金---20 para
合計6.2 Dinar (24 Kronen 80 vinar)(料金手書き、貼り付け切手と一致)

消印:DUBROVNIK 18. V. 21 a (DUBROVNIK郵便局1921年5月18日、消印識別記号a)、セルボクロアート語表記。下側のイタリア語の表記のRAGUSAを削除してユーゴ化した消印です。

備考:ダルマチア地方の消印のユーゴ化
ダルマチア地方の消印の郵便局名は、オーストリア帝国時代には上側がセルボクロアート語、下側がイタリア語の二ヶ国語表記でした。
ユーゴスラヴィア建国後もしばらくの間はオーストリア帝国時代のものがそのまま使用されていましたが、やがて下側のイタリア語表記が削除されてユーゴ化されました。

210513裏 小包第5期 チェインブレーカー1次15vinar,2次25 para使用禁止後使用例

2008年04月09日 21時10分01秒 | 小包第5期
210513裏 小包第5期 チェインブレーカー1次15vinar,2次25 paraの使用禁止後の使用例

小包到着印:ŠABAC + 16 V 921 + (ŠABAC郵便局1921年5月16日)
二重丸型のセルビアの消印、上側がキリル文字、下側がローマ字の二文字表記。
年号は921と3桁表記であり、ユーゴ型の2桁の21にはなっていません。
小包受取人サイン日付け: 1921年5月26日

210513表 小包第5期 チェインブレーカー1次15vinar,2次25 para使用禁止後使用例

2008年04月09日 21時08分11秒 | 小包第5期
210513表 小包第5期 チェインブレーカー1次15vinar,2次25 paraの使用禁止後の使用例

小包第5期 ヴォイヴォディナからセルビア宛て。
ヴォイヴォディナでチェインブレーカー1次15 vinar2枚と2次25 paraを使用禁止後に使用した例。
恐らく、「代金引換の有る小包送票の販売代金領収のための収入印紙」として使用したと推定されますが、切手が2枚脱落しているため確定はできません。

小包送票:ユーゴスラヴィアPOŠTNA SPREMNICA、左上角にSHS 16 v(小包送票代金の収入印紙、小包料金に含まない)、スロヴェニア語、ピンク色紙、代金引換の有る小包送票、左側クーポンが残されたままの使用例。

クーポンには10 vの収入印紙が印刷され、さらに左上にSHS 16 vが印刷されています。
これは、当初は小包送票の販売価格は10 vinarで計画されていたものが、16 vinarに値上げされたため、左上にSHS 16 vを追加印刷したものです。
新しい版を作り直す手間を省くためのこのようなやり方は、オーストリア帝国で良く行われていたものを真似ています。
16 vinarの価格に関しては、リュブリャナ郵政局の通達URDNI LIST LJUBLJANA 1919の51ページに1919年5月1日付の公示があり、小包送票の販売価格がオーストリア帝国時代から引き続いていた12 hellerから16 vinarに値上げされたことが公示されています。
ここで注意しなければならないのは、最初はオーストリア帝国の小包送票の価格は10 hellerであり、国王の肖像に10 hと書かれた印紙が印刷されていました。その後、第一次世界大戦の戦時価格として12 hellerに値上げされたため、12 hという追加印刷が左上に行なわれていました。
リュブリャナの国民政府は、当初は戦時価格12 heller(vinar)を元の価格10 vinarに戻すことを想定して小包送票の印紙10 vを印刷したと考えられます。しかし、その後の物資不足に伴う紙やインクなどの値上がりに伴い、小包送票の値上げが避けられなくなったため、16 vinarに値上げして、オーストリア帝国のやり方を真似て左上にSHS 16 vという新しい販売価格を追加印刷した考えられます。
参考文献:
Nachrichtenblatt der Arbeitsgemeinschaft Jugoslawien und Nachfolgestaaten 97-98/2006, p.1931-1945 (2006)
Prof. Dr.-Ing. Klaus Wieland
SHS 1918 bis 1921: Fiskalische Zusatzfrankaturen auf Postanweisungs-Formularen
SHS 1918年-1921年: 郵便為替証書への収入印紙としての追加貼り付け
備考: この研究論文にはリュブリャナ郵政局による小包送票の値上げも記載されています。

クーポンの部分のスロヴェニア語は下記のように解読できます。
収入印紙に印刷されている「NARODNA VLADA V LJUBLJANI」は、「national government in Ljubljanaリュブリャナの国民政府」という意味です。
Odrezekは「coupon クーポン」、sprejemini pečatは「acceptance stamp受領印紙」、Pošiljateljは「sender 発送者」という意味です。
備考:スロヴェニア語の翻訳に使用した辞書
DOŠA KOMAC、English-Slovene / Slovene-English Modern Dictionary
1998, HIPPOCRENE BOOKS, New York

小包ラベル:Apatin 610、上側がキリル文字、下側がローマ字の二文字表記
代金引換ラベル: 白紙に赤字で代金引換を表す言葉Pouzeće(セルボクロアート語), Remboursement(フランス語)を2ヶ国語で記載。

その他の表示:
黒色ハンドスタンプ: キリル文字でISPLACENO
意味は「要支払い」であり、代金引換金額の支払いを指示するセルビアの証示印です。
備考: セルボクロアート語の翻訳に使用した辞書
Nicholas Awde, Hippocrene Practical Dictionary, SERBO-CROATIAN, 1996

料金手書き:右下40.80, 8, 48.80の計算有り

切手:
①代金引換の有る小包送票代金(収入印紙として使用)
スロヴェニア1次チェインブレーカー15 vinar (Mi.102石版)2枚
スロヴェニア2次チェインブレーカー25 para (Mi.124)
合計130 vinar
ただし切手が2枚脱落しているため、小包料金第4期のヴォイヴォディナでの使用例から推定したものです。
②小包料金(郵便切手として使用)
ユーゴスラヴィア全国共通普通切手1 Dinar(Mi.154) 2枚
同20 paraと10 Dinarが脱落と推定。
合計 12. 2 Dinar (48 Kronen 80 vinar)と推定。

料金計算:
①代金引換の有る小包送票代金(収入印紙として使用) 130 vinar
②小包料金(郵便切手として使用)
重量料金10 kg---10.0 Dinar
価格表記(保険)料金---無し
代金引換料金820 K(205 D)
・郵便為替料金100~300D以下----1.5 Dinar
・受取人住所での支払い料金----0.5 Dinar
・合計2.0 Dinar
通知料金---20 para
合計12. 2 Dinar (48 Kronen 80 vinar)(料金手書きと一致)

消印:APATIN + 13 V 21 -9 + 2 (APATIN郵便局1921年5月13日9時、消印識別番号2) 、上側がキリル文字、下側がローマ字の二文字表記のユーゴ型の消印。
郵便局名はハンガリー語とセルボクロアート語とも同じでApatinです。

備考:使用禁止後のチェインブレーカー普通切手の使用
スロヴェニアのリュブリャナで発行されたチェインブレーカー普通切手は、1921年4月15日まで有効でしたので、小包第5期には既に無効となっていました。
この使用例では、使用禁止約1ヵ月後の1921年5月13日に使用されています。

小包料金 第5期 1921年5月1日~1922年9月24日まで

2008年04月09日 21時03分40秒 | 郵便料金
小包料金 第5期 1921年5月1日~1922年9月24日まで

第2期以降はSHS王国(ユーゴスラヴィア)全土で統一された郵便料金として実施されました。
スロヴェニアのリュブリャナで発行されたチェインブレーカー普通切手は、1921年4月15日まで有効でしたので、小包第5期には既に無効となっていました。
しかし、リュブリャナ発行のチェインブレーカー不足切手は、1921年11月2日までの使用期限でしたので、第5期の最初の半年間は、これらの不足切手は有効でした。

1920年5月16日からの通貨統一
旧オーストリア・ハンガリー帝国地域の通貨は、価値が4分の1に落とされて、セルビア王国の通貨に統一されました。
4 heller = 4 fillér = 4 vinar = 4 filir = 1 para
4 Krone = 4 Korona = 4 Krona = 4 Kruna = 1 Dinar
100 para = 1 Dinar
通貨統一以降も、小包料金が旧通貨の単位で小包送票に記載されているものが数多くあります。
これは小包料金第5期でも見られます。

以下の料金を小包発送者から徴収しました:
(1)重量料金
5 kg以下-----------5.0 Dinar
5~10 kg以下----------10.0 Dinar
10~15 kg以下--------15.0 Dinar
15~20 kg以下--------20.0 Dinar
(20kgを越える小包は取り扱われませんでした)

(2)かさばる小包:重量料金に対して2倍料金
(3)通知料金:20 para
(4)配達料金:2.0 Dinar
(5)速達料金:3.0 Dinar
備考:配達料金と通知料金に関して
行政またはその他の制度により郵便料金が免除されている小包に対しては、配達料金も通知料金も課せられない。
局留め小包または兵士宛て小包は、通知料金が課せられる。(訳注:配達料金は適用されない)

(6)代金引換料金
代金引換指定の小包に対しては為替料金を課し、これらの料金は小包送票に切手で貼り付ける。

郵便為替料金
通常または電信郵便為替は、最高金額1000 Dinarまでである。
(a)通常扱い郵便為替
25 Dinar以下-----0.5 Dinar
25~50 Dinar-----0.6 Dinar
50~100 Dinar-----1.0 Dinar
100~300 Dinar-----1.5 Dinar
300~500 Dinar-----2.0 Dinar
500~1000 Dinar-----3.0 Dinar
受取人の住所において支払いを行なう郵便為替は、支払い料金を課す。
50 Dinar以下------0.20 Dinar
50 Dinarを越える------0.50 Dinar
国家制度に基づく公用で発送される郵便為替、兵士宛て郵便為替、局留郵便為替は、支払い料金は課せられない。全ての郵便為替料金は、発送の際に課せられる。
(b)電信扱い郵便為替
電信扱い郵便為替料金を1 Dinarに値上げする。

(7)価格表記(保険)料金
100 Dinar以下-------0.5 Dinar
100~500 Dinar以下-------1.0 Dinar
500~1000 Dinar以下-------2.0 Dinar
(価格表記の最高額は1000 Dinar)
ただし、現金を入れた小包は1000 Dinarを越えることが可能であり、料金は1000 Dinar毎に1.0 Dinarを追加徴収する。

以下の料金は小包の受取人から徴収し不足切手で領収したと考えられます。
(8)小包の保管料金: 1日50 para

参考文献
(1)Nachrichtenblatt der Arbeitsgemeinschaft Jugoslawien und Nachfolgestaaten 47/93, p.732-735 (1993)
Pror. Dr.-Ing. Klaus Wieland
Ausgewählte Postgebühren in Slowenien 1918 bis 1921
スロヴェニアにおける1918年~1921年までの郵便料金選集
(2)Nachrichtenblatt der Arbeitsgemeinschaft Jugoslawien und Nachfolgestaaten 38/89, (1989),
Beilage Nr.2 DIE POSTGEBÜREN IN KÖNIGTRICH DER SERBEN, KROATIEN UND SLOWENIEN 1919-1922
付録No.2 セルビア人、クロアチア人、及びスロヴェニア人の国の郵便料金1919-1920


ユーゴスラヴィア建国当時の通貨単位のまとめ

1.オーストリア・ハンガリー帝国
①オーストリア帝国、占領下のボスニア・ヘルツェゴビナ: heller, Krone
②ハンガリー王国: fillér, Korona

2.SHS王国建国後、1920年5月15日まで
③スロヴェニア: vinar, Krona
④クロアチア: filir, Kruna
⑤ボスニア・ヘルツェゴビナ: heller, Kruna

1920年5月16日からセルビアとの通貨統合がおこなわれるまでは、上記の①~⑤の通貨の価値は同等でしたので以下の交換レートが成り立ちます:
100 heller = 100 fillér = 100 vinar = 100 filir = 1 Krone = 1 Korona = 1 Krona = 1 Kruna

3. 1920年5月16日からの通貨統一
旧オーストリア・ハンガリー帝国地域の通貨は、価値が4分の1に落とされて、セルビアの通貨に統一されました。
4 heller = 4 fillér = 4 vinar = 4 filir = 1 para
4 Krone = 4 Korona = 4 Krona = 4 Kruna = 1 Dinar
100 para = 1 Dinar

参考文献
(1)MICHEL ÖSTERREICH-SPEZIAL 1990
(2)MICHEL Europa-Katalog Ost 1988/89
(3)MICHEL 1952年版のユーゴスラヴィア (国立国会図書館研究員・田中邦夫氏にご提供いただいたものです)
(4)Stanley Gibbons Stamp Catalogue Part 3 Balkans, 3rd edition, 1987

210428裏 小包第4期 ユーゴスラヴィア全国共通普通切手のみの使用例

2008年04月06日 16時37分07秒 | 小包第4期
210428裏 小包第4期 ユーゴスラヴィア全国共通普通切手のみの使用例

小包到着印:モンテネグロNIKŠIĆ -7 V. 1921 (NIKŠIĆ郵便局1921年5月7日)
上側がキリル文字、下側がローマ字の二文字表記のユーゴ型消印。
ただし、年号はユーゴ型の2桁表示の21ではなく、4桁表示の1921になっています。
モンテネグロは山国でもともと人口が少なく、しかも第一次世界大戦で戦場となって多数の死者を出して荒廃したため、この時代の郵便物は非常に少なくほとんど見かけませんので、この時代の消印は珍しいと思われます。
小包受取人サイン日付け:1921年5月8日

210428表 小包第4期 ユーゴスラヴィア全国共通普通切手のみの使用例

2008年04月06日 16時36分25秒 | 小包第4期
210428表 小包第4期 ユーゴスラヴィア全国共通普通切手のみの使用例

小包第4期 ボスニア・ヘルツェゴビナからモンテネグロ宛て

備考:モンテネグロ
モンテネグロは山国でもともと人口が少なく(第一次世界大戦開始時で約24万人)、しかも第一次世界大戦でセルビア側について戦場となり、人口の25%に相当する6万人もの死者を出して荒廃したため、1920年前後の時代の郵便物は非常に少なくほとんど見かけません。
小包送票に記載されている宛て先の「Crnagora(ツルナゴーラ)」はモンテネグロの国名であり、その意味は「黒い山」です。モンテネグロは山国で、山々は非常に濃い緑色をした木々で覆われており、遠目にはそれらの木々が黒く見えるため「黒い山」という国名になったと言われています。2008年現在では独立国となっており、概要はWikipediaのサイト
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A2%E3%83%B3%E3%83%86%E3%83%8D%E3%82%B0%E3%83%AD
で知ることができます。
参考文献: 柴宜弘、ユ-ゴスラヴィア現代史、p.52、岩波書店、1996

小包送票:オーストリア・ハンガリー帝国占領下のボスニア・ヘルツェゴビナ10 heller(剣)の小包送票に、キリル文字でKRALJEVSTVO S.H.S. 12 hと加刷(小包送票代金の収入印紙、小包料金に含まない)、ドイツ語・セルボクロアート語、白紙

小包ラベル:Sarajevo 1 143

価格表記ベル:白色紙に赤字でV;セルボクロアート語でVrijednost価格表記(保険)付きを示します。オーストリア帝国占領時代のボスニア・ヘルツェゴビナの郵便規則では、価格表記(保険)付きは黒字でWと表示したラベルであったため、このVと表示したラベルはユーゴスラヴィアのものであると考えられます。

料金手書き:31 K 20 h (7.8 Dinar)

切手:ユーゴスラヴィア全国共通普通切手
15 para (Mi.148)2枚, 50 para (Mi.151), 1 Dinar (Mi.154) 2枚, 5 Dinar (Mi.157)
合計7.8 Dinar (31 Kronen 20 vinar)

料金計算:
重量料金11.7 kg---6.0 Dinar (24 Kronen)
価格表記(保険)料金(četiri hiljade)4000 K (1000 Dinar)---1.2 Dinar (4.8 Kronen)
代金引換料金---無し
配達料金---0.6 Dinar (2.4 Kronen)
合計7.8 Dinar (31 Kronen 20 vinar)(料金手書きに一致、貼り付け切手に一致)

参考文献:価格表記(保険)の文字表記の解読に使った辞書と参考書
(1)Langenscheidt, Universal Croatian Dictionary, 1987
(2)Nicholas Awde, Hippocrene Practical Dictionary, SERBO-CROATIAN, 1996
(3)中島由美、エクスプレス セルビア・クロアチア語, 白水社, 1987

消印: SARAJEVO 1 28. IV. 21 -0 7 (SARAJEVO 1郵便局1921年4月28日、消印識別番号7)、上側がキリル文字、下側がローマ字の二文字表記のユーゴ型消印
時刻表示が「-0」とされている理由は不明です。昼の正午を意味する可能性もあります。

ヴォイヴォディナ地方のパンチェヴォ郵便局の代金引換のない小包送票代金のまとめ

2008年04月05日 11時23分35秒 | 小包第4期
ヴォイヴォディナ地方のPANČEVO郵便局の代金引換のない小包送票代金のまとめ

ヴォイヴォディナ地方のPANČEVO郵便局での1921年4月13日の代金引換のない小包送票代金(収入印紙として使用)をまとめてみました。

手元にある3通の小包送票では、代金引換のない小包送票代金(収入印紙として使用)として
210413A: 30 para
210413B: 25 para
210413C: 25 para
が徴収されていました。
同一の郵便局で同一の日でありながら25 paraと30 paraの2種類の価格がある理由は、現時点では不明です。可能性としては、郵便局員の過失が最も可能性が高いと思われます。

代金引換のない小包送票代金(収入印紙として使用)の徴収に使用された切手は、
スロヴェニア2次チェインブレーカー15 para (Mi.122)は3通に共通しており、これに加えて、
210413A: ユーゴスラヴィア傷病兵慈善切手15+15 para (Mi.160)
210413B: ユーゴスラヴィア傷病兵慈善切手10+10 para (Mi.159)
210413C: ユーゴスラヴィア傷病兵慈善切手10+10 para (Mi.159)
が使用されています。

傷病兵慈善切手が使用されていますので、下記の寄付金が余分に徴収されたと考えられます:
210413A: 15 para
210413B: 10 para
210413C: 10 para
小包の料金計算と切手の貼り付けは、郵便局員により行なわれる規則でした。これら3例の使用例では、小包発送者に対して余分な金銭的負担のかかる慈善切手が郵便局員により使用されています。このため、ヴォイヴォディナ地方のPANČEVO郵便局は、傷病兵のための寄付金を強制的に徴収するために傷病兵慈善切手の使用を強制した可能性も考えられます。無論、小包発送者との話し合いによる同意があった可能性もあります。今後さらに多くのこのような使用例が発見されれば、より正確な解析も可能になると思われます。

210413C裏 小包第4期 スロヴェニア2次+全国共通普通切手+傷病兵慈善切手の混貼り

2008年04月05日 11時22分32秒 | 小包第4期
210413C裏 小包第4期 スロヴェニア2次+全国共通普通切手+傷病兵慈善切手の混貼り

小包到着印:JAJCE 19. IV. 21 a (JAJCE 郵便局1921年4月19日、消印識別記号a )、ドイツ語のK. UND K. MILIT. POSTを削除してユーゴ化した消印。
小包受取人サイン日付け:1921年4月23日
小包引渡し印:JAJCE 23. IV. 21 a (JAJCE 郵便局1921年4月23日、消印識別記号a)、ドイツ語のK. UND K. MILIT. POSTを削除してユーゴ化した消印。

証示印:ドイツ語AUSGEFOLGT LAGERZINS K. h.
AUSGEFOLGTは「交付された」という意味であり、小包の受取人への引渡しを示します。LAGERZINSは「保管料金」という意味です。
19日に到着し23日に引き渡しています。AUSGEFOLGT LAGERZINSの証示印が押されていますので、小包の保管料金が徴収されたと考えられます。ただし、保管料金に相当する不足切手は小包送票に貼られていません。別の書式で処理されたと推定されます。

備考:商人のスタンプ
小包の受取人は、会社名の記載されたスタンプを使用しています。
第1期小包料金の項でご紹介した文献(5)の著者Dr. Helmut Kobelbauerは、「特に、定期的に高頻度に郵便物が届く商人がこの特別サービス(小包私書箱)を利用した」としています。そして、リュブリャナ1郵便局での使用例を示し、商人が自分の商店の名前の入った楕円形のスタンプを押して受取日を記入している例を紹介しています。また、Dr. Kobelbauerは、「商人はこのようなスタンプを使用するが、個人は通常はこのようなスタンプを使用しない」と記載しています。このような商人のスタンプの存在は、小包私書箱の使用の判断の根拠になるようです。
今ご紹介している使用例で、小包の受取人は、会社名の記載されたスタンプを使用していますので、多量の小包等の郵便物を受け取る商人であると考えられます。
参考文献
(5)Arge der Balkan Länder, No. 161, p.28-31, (2003)
Dr. Helmut Kobelbauer
Nebenstempel der Paketabgabe beim Postamt Ljubljana
リュブリャナ1郵便局による小包引渡しの証示印

210413C表 小包第4期 スロヴェニア2次+全国共通普通切手+傷病兵慈善切手の混貼り

2008年04月05日 11時20分31秒 | 小包第4期
210413C表 小包第4期 スロヴェニア2次+全国共通普通切手+傷病兵慈善切手の混貼り

小包第4期 ヴォイヴォディナからボスニア・ヘルツェゴビナ宛て
小包送票:ユーゴスラヴィアPOŠTNA SPREMNICA、左上に角に数値記載無し、スロヴェニア語、灰白紙、代金引換のない小包送票
小包ラベル:Pančevo 237、上側がキリル文字、下側がローマ字の二文字表記
上側のセルビア人の使用するキリル文字表記が鉛筆で塗り潰されているのは興味深く、セルビア支配に対する反発の表われの可能性もあると思われます。

料金手書き:15 para切手の下になっていて不明

切手:
①代金引換のない小包送票代金(収入印紙として使用)
スロヴェニア2次チェインブレーカー15 para (Mi.122)
ユーゴスラヴィア傷病兵慈善切手10+10 para (Mi.159)
合計 25 para
備考:寄付金10 para付きの傷病兵慈善切手が使用されていますので、上記の25 para以外に、小包発送者は寄付金10 paraも余分に支払わされたと考えられます。
ヴォイヴォディナPANČEVO郵便局は、傷病兵のための寄付金を強制的に徴収するために傷病兵慈善切手の使用を強制した可能性も考えられます。無論、小包発送者との話し合いによる同意があった可能性もあります。
②小包料金(郵便切手として使用)
ユーゴスラヴィア全国共通普通切手10 para (Mi.121), 2 Dinar (Mi.130) 2枚
合計 4.1 Dinar (16 Krona 40 vinar)

料金計算:
①代金引換のない小包送票代金(収入印紙として使用)25 para
②傷病兵のための寄付金10 para
③小包料金(郵便切手として使用)
重量料金5.7 kg---4.0 Dinar (16 Kronen)
価格表記(保険)料金---無し
代金引換料金---無し
通知料金---10 para (40 vinar)
合計4.1 Dinar (16.40 Kronen)(貼り付け切手と一致)

備考
上記の小包料金解析とは異なる方法で、重量料金5 kgで4.0 Dinar、配達料金0.6 Dinarとすると、合計4.6 Dinarとなります。この金額では、切手の合計貼付額4.35 Dinarより多くなり、25 para料金不足になってしまい、料金を説明できません。
この210413Cと同じ4月13日の同じ郵便局の使用例である「210413A表 小包第4期 スロヴェニア2次+全国共通普通切手+傷病兵慈善切手の混貼り」の場合には、小包料金が鉛筆で記載され、小包送票代金が切手で徴収されたことが証明されていますので、210413Cも同様の取り扱いがされたと考えるのが合理的であると考えられます。

消印:PANČEVO +13. IV. 21. -9+ 5(PANČEVO郵便局1921年4月13日9時、消印識別番号5)、上側がキリル文字、下側がローマ字の二文字表記の消印。この都市の名は、ハンガリー語Pancsova、セルボクロアート語Pančevo です。

210413B裏 小包第4期 スロヴェニア2次+全国共通普通切手+傷病兵慈善切手の混貼り

2008年04月02日 20時24分29秒 | 小包第4期
210413B裏 小包第4期 スロヴェニア2次+全国共通普通切手+傷病兵慈善切手の混貼り

小包到着印:JAJCE 19. IV. 21 a (JAJCE 郵便局1921年4月19日、消印識別記号a )、ドイツ語のK. UND K. MILIT. POSTを削除してユーゴ化した消印。
小包受取人サイン日付け:1921年4月23日
小包引渡し印:JAJCE 23. IV. 21 a (JAJCE 郵便局1921年4月23日、消印識別記号a )、ドイツ語のK. UND K. MILIT. POSTを削除してユーゴ化した消印。

証示印:ドイツ語AUSGEFOLGT LAGERZINS K. h.
AUSGEFOLGTは「交付された」という意味であり、小包の受取人への引渡しを示します。LAGERZINSは「保管料金」という意味です。
19日に到着し23日に引き渡しています。AUSGEFOLGT LAGERZINSの証示印が押されていますので、小包の保管料金が徴収されたと考えられます。ただし、保管料金に相当する不足切手は小包送票に貼られていません。別の書式で処理されたと推定されます。

備考:商人のスタンプ
小包の受取人は、会社名の記載されたスタンプを使用しています。
第1期小包料金の項でご紹介した文献(5)の著者Dr. Helmut Kobelbauerは、「特に、定期的に高頻度に郵便物が届く商人がこの特別サービス(小包私書箱)を利用した」としています。そして、リュブリャナ1郵便局での使用例を示し、商人が自分の商店の名前の入った楕円形のスタンプを押して受取日を記入している例を紹介しています。また、Dr. Kobelbauerは、「商人はこのようなスタンプを使用するが、個人は通常はこのようなスタンプを使用しない」と記載しています。このような商人のスタンプの存在は、小包私書箱の使用の判断の根拠になるようです。
今ご紹介している使用例で、小包の受取人は、会社名の記載されたスタンプを使用していますので、多量の小包等の郵便物を受け取る商人であると考えられます。
参考文献
(5)Arge der Balkan Länder, No. 161, p.28-31, (2003)
Dr. Helmut Kobelbauer
Nebenstempel der Paketabgabe beim Postamt Ljubljana
リュブリャナ1郵便局による小包引渡しの証示印

210413B表 小包第4期 スロヴェニア2次+全国共通普通切手+傷病兵慈善切手の混貼り

2008年04月02日 20時23分24秒 | 小包第4期
210413B表 小包第4期 スロヴェニア2次+全国共通普通切手+傷病兵慈善切手の混貼り

小包第4期 ヴォイヴォディナからボスニア・ヘルツェゴビナ宛て
小包送票:ユーゴスラヴィアPOŠTNA SPREMNICA、左上に角に数値記載無し、スロヴェニア語、灰白紙、代金引換のない小包送票

小包ラベル:Pančevo 217、上側がキリル文字、下側がローマ字の二文字表記
上側のセルビア人の使用するキリル文字表記が鉛筆で塗り潰されているのは興味深く、セルビア支配に対する反発の表われの可能性もあると思われます。
また、この使用例では、セルビア人の使用するキリル文字部分が破れています。これが故意に破り取られたのか、小包送票の取り扱い中に偶然に破れたのかは不明です。故意に破り取られたとしたら、セルビア人支配に対する反発が影響していると考えられます。

料金手書き:無し

切手:
①代金引換のない小包送票代金(収入印紙として使用)
スロヴェニア2次チェインブレーカー15 para (Mi.122)
ユーゴスラヴィア傷病兵慈善切手10+10 para (Mi.159)
合計 25 para
備考:寄付金10 para付きの傷病兵慈善切手が使用されていますので、上記の25 para以外に、小包発送者は寄付金10 paraも余分に支払わされたと考えられます。
ヴォイヴォディナPANČEVO郵便局は、傷病兵のための寄付金を強制的に徴収するために傷病兵慈善切手の使用を強制した可能性も考えられます。無論、小包発送者との話し合いによる同意があった可能性もあります。
②小包料金(郵便切手として使用)
ユーゴスラヴィア全国共通普通切手10 para (Mi.121), 2 Dinar (Mi.130)
合計 2.1 Dinar (8 Krona 40 vinar)

料金計算:
①代金引換のない小包送票代金(収入印紙として使用)25 para
②傷病兵のための寄付金10 para
③小包料金(郵便切手として使用)
重量料金3.2 kg---2.0 Dinar (8 Kronen)
価格表記(保険)料金---無し
代金引換料金---無し
通知料金---10 para (40 vinar)
合計2.1 Dinar (8.40 Kronen)(貼り付け切手と一致)

備考
上記の小包料金解析とは異なる方法で、重量料金3.2kgで2.0 Dinar、配達料金0.6 Dinarとすると、合計2.6 Dinarとなります。この金額では、切手の合計貼付額2.35 Dinarより多くなり、25 para料金不足になってしまい、料金を説明できません。
この210413Bと同じ4月13日の同じ郵便局の使用例である「210413A表 小包第4期 スロヴェニア2次+全国共通普通切手+傷病兵慈善切手の混貼り」の場合には、小包料金が鉛筆で記載され、小包送票代金が切手で徴収されたことが証明されていますので、210413Bも同様の取り扱いがされたと考えるのが合理的であると考えられます。

消印:PANČEVO +13. IV. 21. -9+ 5(PANČEVO郵便局1921年4月13日9時、消印識別番号5)、上側がキリル文字、下側がローマ字の二文字表記の消印。この都市の名は、ハンガリー語Pancsova、セルボクロアート語Pančevo です。