チェインブレーカー及び関連領域の郵便史

ユーゴスラヴィア建国当時~1922年頃までの旧オーストリア・ハンガリー帝国地域のチェインブレーカーを中心とした郵便史

210513裏 小包第5期 チェインブレーカー1次15vinar,2次25 para使用禁止後使用例

2008年04月09日 21時10分01秒 | 小包第5期
210513裏 小包第5期 チェインブレーカー1次15vinar,2次25 paraの使用禁止後の使用例

小包到着印:ŠABAC + 16 V 921 + (ŠABAC郵便局1921年5月16日)
二重丸型のセルビアの消印、上側がキリル文字、下側がローマ字の二文字表記。
年号は921と3桁表記であり、ユーゴ型の2桁の21にはなっていません。
小包受取人サイン日付け: 1921年5月26日

210513表 小包第5期 チェインブレーカー1次15vinar,2次25 para使用禁止後使用例

2008年04月09日 21時08分11秒 | 小包第5期
210513表 小包第5期 チェインブレーカー1次15vinar,2次25 paraの使用禁止後の使用例

小包第5期 ヴォイヴォディナからセルビア宛て。
ヴォイヴォディナでチェインブレーカー1次15 vinar2枚と2次25 paraを使用禁止後に使用した例。
恐らく、「代金引換の有る小包送票の販売代金領収のための収入印紙」として使用したと推定されますが、切手が2枚脱落しているため確定はできません。

小包送票:ユーゴスラヴィアPOŠTNA SPREMNICA、左上角にSHS 16 v(小包送票代金の収入印紙、小包料金に含まない)、スロヴェニア語、ピンク色紙、代金引換の有る小包送票、左側クーポンが残されたままの使用例。

クーポンには10 vの収入印紙が印刷され、さらに左上にSHS 16 vが印刷されています。
これは、当初は小包送票の販売価格は10 vinarで計画されていたものが、16 vinarに値上げされたため、左上にSHS 16 vを追加印刷したものです。
新しい版を作り直す手間を省くためのこのようなやり方は、オーストリア帝国で良く行われていたものを真似ています。
16 vinarの価格に関しては、リュブリャナ郵政局の通達URDNI LIST LJUBLJANA 1919の51ページに1919年5月1日付の公示があり、小包送票の販売価格がオーストリア帝国時代から引き続いていた12 hellerから16 vinarに値上げされたことが公示されています。
ここで注意しなければならないのは、最初はオーストリア帝国の小包送票の価格は10 hellerであり、国王の肖像に10 hと書かれた印紙が印刷されていました。その後、第一次世界大戦の戦時価格として12 hellerに値上げされたため、12 hという追加印刷が左上に行なわれていました。
リュブリャナの国民政府は、当初は戦時価格12 heller(vinar)を元の価格10 vinarに戻すことを想定して小包送票の印紙10 vを印刷したと考えられます。しかし、その後の物資不足に伴う紙やインクなどの値上がりに伴い、小包送票の値上げが避けられなくなったため、16 vinarに値上げして、オーストリア帝国のやり方を真似て左上にSHS 16 vという新しい販売価格を追加印刷した考えられます。
参考文献:
Nachrichtenblatt der Arbeitsgemeinschaft Jugoslawien und Nachfolgestaaten 97-98/2006, p.1931-1945 (2006)
Prof. Dr.-Ing. Klaus Wieland
SHS 1918 bis 1921: Fiskalische Zusatzfrankaturen auf Postanweisungs-Formularen
SHS 1918年-1921年: 郵便為替証書への収入印紙としての追加貼り付け
備考: この研究論文にはリュブリャナ郵政局による小包送票の値上げも記載されています。

クーポンの部分のスロヴェニア語は下記のように解読できます。
収入印紙に印刷されている「NARODNA VLADA V LJUBLJANI」は、「national government in Ljubljanaリュブリャナの国民政府」という意味です。
Odrezekは「coupon クーポン」、sprejemini pečatは「acceptance stamp受領印紙」、Pošiljateljは「sender 発送者」という意味です。
備考:スロヴェニア語の翻訳に使用した辞書
DOŠA KOMAC、English-Slovene / Slovene-English Modern Dictionary
1998, HIPPOCRENE BOOKS, New York

小包ラベル:Apatin 610、上側がキリル文字、下側がローマ字の二文字表記
代金引換ラベル: 白紙に赤字で代金引換を表す言葉Pouzeće(セルボクロアート語), Remboursement(フランス語)を2ヶ国語で記載。

その他の表示:
黒色ハンドスタンプ: キリル文字でISPLACENO
意味は「要支払い」であり、代金引換金額の支払いを指示するセルビアの証示印です。
備考: セルボクロアート語の翻訳に使用した辞書
Nicholas Awde, Hippocrene Practical Dictionary, SERBO-CROATIAN, 1996

料金手書き:右下40.80, 8, 48.80の計算有り

切手:
①代金引換の有る小包送票代金(収入印紙として使用)
スロヴェニア1次チェインブレーカー15 vinar (Mi.102石版)2枚
スロヴェニア2次チェインブレーカー25 para (Mi.124)
合計130 vinar
ただし切手が2枚脱落しているため、小包料金第4期のヴォイヴォディナでの使用例から推定したものです。
②小包料金(郵便切手として使用)
ユーゴスラヴィア全国共通普通切手1 Dinar(Mi.154) 2枚
同20 paraと10 Dinarが脱落と推定。
合計 12. 2 Dinar (48 Kronen 80 vinar)と推定。

料金計算:
①代金引換の有る小包送票代金(収入印紙として使用) 130 vinar
②小包料金(郵便切手として使用)
重量料金10 kg---10.0 Dinar
価格表記(保険)料金---無し
代金引換料金820 K(205 D)
・郵便為替料金100~300D以下----1.5 Dinar
・受取人住所での支払い料金----0.5 Dinar
・合計2.0 Dinar
通知料金---20 para
合計12. 2 Dinar (48 Kronen 80 vinar)(料金手書きと一致)

消印:APATIN + 13 V 21 -9 + 2 (APATIN郵便局1921年5月13日9時、消印識別番号2) 、上側がキリル文字、下側がローマ字の二文字表記のユーゴ型の消印。
郵便局名はハンガリー語とセルボクロアート語とも同じでApatinです。

備考:使用禁止後のチェインブレーカー普通切手の使用
スロヴェニアのリュブリャナで発行されたチェインブレーカー普通切手は、1921年4月15日まで有効でしたので、小包第5期には既に無効となっていました。
この使用例では、使用禁止約1ヵ月後の1921年5月13日に使用されています。

小包料金 第5期 1921年5月1日~1922年9月24日まで

2008年04月09日 21時03分40秒 | 郵便料金
小包料金 第5期 1921年5月1日~1922年9月24日まで

第2期以降はSHS王国(ユーゴスラヴィア)全土で統一された郵便料金として実施されました。
スロヴェニアのリュブリャナで発行されたチェインブレーカー普通切手は、1921年4月15日まで有効でしたので、小包第5期には既に無効となっていました。
しかし、リュブリャナ発行のチェインブレーカー不足切手は、1921年11月2日までの使用期限でしたので、第5期の最初の半年間は、これらの不足切手は有効でした。

1920年5月16日からの通貨統一
旧オーストリア・ハンガリー帝国地域の通貨は、価値が4分の1に落とされて、セルビア王国の通貨に統一されました。
4 heller = 4 fillér = 4 vinar = 4 filir = 1 para
4 Krone = 4 Korona = 4 Krona = 4 Kruna = 1 Dinar
100 para = 1 Dinar
通貨統一以降も、小包料金が旧通貨の単位で小包送票に記載されているものが数多くあります。
これは小包料金第5期でも見られます。

以下の料金を小包発送者から徴収しました:
(1)重量料金
5 kg以下-----------5.0 Dinar
5~10 kg以下----------10.0 Dinar
10~15 kg以下--------15.0 Dinar
15~20 kg以下--------20.0 Dinar
(20kgを越える小包は取り扱われませんでした)

(2)かさばる小包:重量料金に対して2倍料金
(3)通知料金:20 para
(4)配達料金:2.0 Dinar
(5)速達料金:3.0 Dinar
備考:配達料金と通知料金に関して
行政またはその他の制度により郵便料金が免除されている小包に対しては、配達料金も通知料金も課せられない。
局留め小包または兵士宛て小包は、通知料金が課せられる。(訳注:配達料金は適用されない)

(6)代金引換料金
代金引換指定の小包に対しては為替料金を課し、これらの料金は小包送票に切手で貼り付ける。

郵便為替料金
通常または電信郵便為替は、最高金額1000 Dinarまでである。
(a)通常扱い郵便為替
25 Dinar以下-----0.5 Dinar
25~50 Dinar-----0.6 Dinar
50~100 Dinar-----1.0 Dinar
100~300 Dinar-----1.5 Dinar
300~500 Dinar-----2.0 Dinar
500~1000 Dinar-----3.0 Dinar
受取人の住所において支払いを行なう郵便為替は、支払い料金を課す。
50 Dinar以下------0.20 Dinar
50 Dinarを越える------0.50 Dinar
国家制度に基づく公用で発送される郵便為替、兵士宛て郵便為替、局留郵便為替は、支払い料金は課せられない。全ての郵便為替料金は、発送の際に課せられる。
(b)電信扱い郵便為替
電信扱い郵便為替料金を1 Dinarに値上げする。

(7)価格表記(保険)料金
100 Dinar以下-------0.5 Dinar
100~500 Dinar以下-------1.0 Dinar
500~1000 Dinar以下-------2.0 Dinar
(価格表記の最高額は1000 Dinar)
ただし、現金を入れた小包は1000 Dinarを越えることが可能であり、料金は1000 Dinar毎に1.0 Dinarを追加徴収する。

以下の料金は小包の受取人から徴収し不足切手で領収したと考えられます。
(8)小包の保管料金: 1日50 para

参考文献
(1)Nachrichtenblatt der Arbeitsgemeinschaft Jugoslawien und Nachfolgestaaten 47/93, p.732-735 (1993)
Pror. Dr.-Ing. Klaus Wieland
Ausgewählte Postgebühren in Slowenien 1918 bis 1921
スロヴェニアにおける1918年~1921年までの郵便料金選集
(2)Nachrichtenblatt der Arbeitsgemeinschaft Jugoslawien und Nachfolgestaaten 38/89, (1989),
Beilage Nr.2 DIE POSTGEBÜREN IN KÖNIGTRICH DER SERBEN, KROATIEN UND SLOWENIEN 1919-1922
付録No.2 セルビア人、クロアチア人、及びスロヴェニア人の国の郵便料金1919-1920


ユーゴスラヴィア建国当時の通貨単位のまとめ

1.オーストリア・ハンガリー帝国
①オーストリア帝国、占領下のボスニア・ヘルツェゴビナ: heller, Krone
②ハンガリー王国: fillér, Korona

2.SHS王国建国後、1920年5月15日まで
③スロヴェニア: vinar, Krona
④クロアチア: filir, Kruna
⑤ボスニア・ヘルツェゴビナ: heller, Kruna

1920年5月16日からセルビアとの通貨統合がおこなわれるまでは、上記の①~⑤の通貨の価値は同等でしたので以下の交換レートが成り立ちます:
100 heller = 100 fillér = 100 vinar = 100 filir = 1 Krone = 1 Korona = 1 Krona = 1 Kruna

3. 1920年5月16日からの通貨統一
旧オーストリア・ハンガリー帝国地域の通貨は、価値が4分の1に落とされて、セルビアの通貨に統一されました。
4 heller = 4 fillér = 4 vinar = 4 filir = 1 para
4 Krone = 4 Korona = 4 Krona = 4 Kruna = 1 Dinar
100 para = 1 Dinar

参考文献
(1)MICHEL ÖSTERREICH-SPEZIAL 1990
(2)MICHEL Europa-Katalog Ost 1988/89
(3)MICHEL 1952年版のユーゴスラヴィア (国立国会図書館研究員・田中邦夫氏にご提供いただいたものです)
(4)Stanley Gibbons Stamp Catalogue Part 3 Balkans, 3rd edition, 1987