チェインブレーカー及び関連領域の郵便史

ユーゴスラヴィア建国当時~1922年頃までの旧オーストリア・ハンガリー帝国地域のチェインブレーカーを中心とした郵便史

ヴォイヴォディナ地方のパンチェヴォ郵便局の代金引換のない小包送票代金のまとめ

2008年04月05日 11時23分35秒 | 小包第4期
ヴォイヴォディナ地方のPANČEVO郵便局の代金引換のない小包送票代金のまとめ

ヴォイヴォディナ地方のPANČEVO郵便局での1921年4月13日の代金引換のない小包送票代金(収入印紙として使用)をまとめてみました。

手元にある3通の小包送票では、代金引換のない小包送票代金(収入印紙として使用)として
210413A: 30 para
210413B: 25 para
210413C: 25 para
が徴収されていました。
同一の郵便局で同一の日でありながら25 paraと30 paraの2種類の価格がある理由は、現時点では不明です。可能性としては、郵便局員の過失が最も可能性が高いと思われます。

代金引換のない小包送票代金(収入印紙として使用)の徴収に使用された切手は、
スロヴェニア2次チェインブレーカー15 para (Mi.122)は3通に共通しており、これに加えて、
210413A: ユーゴスラヴィア傷病兵慈善切手15+15 para (Mi.160)
210413B: ユーゴスラヴィア傷病兵慈善切手10+10 para (Mi.159)
210413C: ユーゴスラヴィア傷病兵慈善切手10+10 para (Mi.159)
が使用されています。

傷病兵慈善切手が使用されていますので、下記の寄付金が余分に徴収されたと考えられます:
210413A: 15 para
210413B: 10 para
210413C: 10 para
小包の料金計算と切手の貼り付けは、郵便局員により行なわれる規則でした。これら3例の使用例では、小包発送者に対して余分な金銭的負担のかかる慈善切手が郵便局員により使用されています。このため、ヴォイヴォディナ地方のPANČEVO郵便局は、傷病兵のための寄付金を強制的に徴収するために傷病兵慈善切手の使用を強制した可能性も考えられます。無論、小包発送者との話し合いによる同意があった可能性もあります。今後さらに多くのこのような使用例が発見されれば、より正確な解析も可能になると思われます。

210413C裏 小包第4期 スロヴェニア2次+全国共通普通切手+傷病兵慈善切手の混貼り

2008年04月05日 11時22分32秒 | 小包第4期
210413C裏 小包第4期 スロヴェニア2次+全国共通普通切手+傷病兵慈善切手の混貼り

小包到着印:JAJCE 19. IV. 21 a (JAJCE 郵便局1921年4月19日、消印識別記号a )、ドイツ語のK. UND K. MILIT. POSTを削除してユーゴ化した消印。
小包受取人サイン日付け:1921年4月23日
小包引渡し印:JAJCE 23. IV. 21 a (JAJCE 郵便局1921年4月23日、消印識別記号a)、ドイツ語のK. UND K. MILIT. POSTを削除してユーゴ化した消印。

証示印:ドイツ語AUSGEFOLGT LAGERZINS K. h.
AUSGEFOLGTは「交付された」という意味であり、小包の受取人への引渡しを示します。LAGERZINSは「保管料金」という意味です。
19日に到着し23日に引き渡しています。AUSGEFOLGT LAGERZINSの証示印が押されていますので、小包の保管料金が徴収されたと考えられます。ただし、保管料金に相当する不足切手は小包送票に貼られていません。別の書式で処理されたと推定されます。

備考:商人のスタンプ
小包の受取人は、会社名の記載されたスタンプを使用しています。
第1期小包料金の項でご紹介した文献(5)の著者Dr. Helmut Kobelbauerは、「特に、定期的に高頻度に郵便物が届く商人がこの特別サービス(小包私書箱)を利用した」としています。そして、リュブリャナ1郵便局での使用例を示し、商人が自分の商店の名前の入った楕円形のスタンプを押して受取日を記入している例を紹介しています。また、Dr. Kobelbauerは、「商人はこのようなスタンプを使用するが、個人は通常はこのようなスタンプを使用しない」と記載しています。このような商人のスタンプの存在は、小包私書箱の使用の判断の根拠になるようです。
今ご紹介している使用例で、小包の受取人は、会社名の記載されたスタンプを使用していますので、多量の小包等の郵便物を受け取る商人であると考えられます。
参考文献
(5)Arge der Balkan Länder, No. 161, p.28-31, (2003)
Dr. Helmut Kobelbauer
Nebenstempel der Paketabgabe beim Postamt Ljubljana
リュブリャナ1郵便局による小包引渡しの証示印

210413C表 小包第4期 スロヴェニア2次+全国共通普通切手+傷病兵慈善切手の混貼り

2008年04月05日 11時20分31秒 | 小包第4期
210413C表 小包第4期 スロヴェニア2次+全国共通普通切手+傷病兵慈善切手の混貼り

小包第4期 ヴォイヴォディナからボスニア・ヘルツェゴビナ宛て
小包送票:ユーゴスラヴィアPOŠTNA SPREMNICA、左上に角に数値記載無し、スロヴェニア語、灰白紙、代金引換のない小包送票
小包ラベル:Pančevo 237、上側がキリル文字、下側がローマ字の二文字表記
上側のセルビア人の使用するキリル文字表記が鉛筆で塗り潰されているのは興味深く、セルビア支配に対する反発の表われの可能性もあると思われます。

料金手書き:15 para切手の下になっていて不明

切手:
①代金引換のない小包送票代金(収入印紙として使用)
スロヴェニア2次チェインブレーカー15 para (Mi.122)
ユーゴスラヴィア傷病兵慈善切手10+10 para (Mi.159)
合計 25 para
備考:寄付金10 para付きの傷病兵慈善切手が使用されていますので、上記の25 para以外に、小包発送者は寄付金10 paraも余分に支払わされたと考えられます。
ヴォイヴォディナPANČEVO郵便局は、傷病兵のための寄付金を強制的に徴収するために傷病兵慈善切手の使用を強制した可能性も考えられます。無論、小包発送者との話し合いによる同意があった可能性もあります。
②小包料金(郵便切手として使用)
ユーゴスラヴィア全国共通普通切手10 para (Mi.121), 2 Dinar (Mi.130) 2枚
合計 4.1 Dinar (16 Krona 40 vinar)

料金計算:
①代金引換のない小包送票代金(収入印紙として使用)25 para
②傷病兵のための寄付金10 para
③小包料金(郵便切手として使用)
重量料金5.7 kg---4.0 Dinar (16 Kronen)
価格表記(保険)料金---無し
代金引換料金---無し
通知料金---10 para (40 vinar)
合計4.1 Dinar (16.40 Kronen)(貼り付け切手と一致)

備考
上記の小包料金解析とは異なる方法で、重量料金5 kgで4.0 Dinar、配達料金0.6 Dinarとすると、合計4.6 Dinarとなります。この金額では、切手の合計貼付額4.35 Dinarより多くなり、25 para料金不足になってしまい、料金を説明できません。
この210413Cと同じ4月13日の同じ郵便局の使用例である「210413A表 小包第4期 スロヴェニア2次+全国共通普通切手+傷病兵慈善切手の混貼り」の場合には、小包料金が鉛筆で記載され、小包送票代金が切手で徴収されたことが証明されていますので、210413Cも同様の取り扱いがされたと考えるのが合理的であると考えられます。

消印:PANČEVO +13. IV. 21. -9+ 5(PANČEVO郵便局1921年4月13日9時、消印識別番号5)、上側がキリル文字、下側がローマ字の二文字表記の消印。この都市の名は、ハンガリー語Pancsova、セルボクロアート語Pančevo です。