チェインブレーカー及び関連領域の郵便史

ユーゴスラヴィア建国当時~1922年頃までの旧オーストリア・ハンガリー帝国地域のチェインブレーカーを中心とした郵便史

210428裏 小包第4期 ユーゴスラヴィア全国共通普通切手のみの使用例

2008年04月06日 16時37分07秒 | 小包第4期
210428裏 小包第4期 ユーゴスラヴィア全国共通普通切手のみの使用例

小包到着印:モンテネグロNIKŠIĆ -7 V. 1921 (NIKŠIĆ郵便局1921年5月7日)
上側がキリル文字、下側がローマ字の二文字表記のユーゴ型消印。
ただし、年号はユーゴ型の2桁表示の21ではなく、4桁表示の1921になっています。
モンテネグロは山国でもともと人口が少なく、しかも第一次世界大戦で戦場となって多数の死者を出して荒廃したため、この時代の郵便物は非常に少なくほとんど見かけませんので、この時代の消印は珍しいと思われます。
小包受取人サイン日付け:1921年5月8日

210428表 小包第4期 ユーゴスラヴィア全国共通普通切手のみの使用例

2008年04月06日 16時36分25秒 | 小包第4期
210428表 小包第4期 ユーゴスラヴィア全国共通普通切手のみの使用例

小包第4期 ボスニア・ヘルツェゴビナからモンテネグロ宛て

備考:モンテネグロ
モンテネグロは山国でもともと人口が少なく(第一次世界大戦開始時で約24万人)、しかも第一次世界大戦でセルビア側について戦場となり、人口の25%に相当する6万人もの死者を出して荒廃したため、1920年前後の時代の郵便物は非常に少なくほとんど見かけません。
小包送票に記載されている宛て先の「Crnagora(ツルナゴーラ)」はモンテネグロの国名であり、その意味は「黒い山」です。モンテネグロは山国で、山々は非常に濃い緑色をした木々で覆われており、遠目にはそれらの木々が黒く見えるため「黒い山」という国名になったと言われています。2008年現在では独立国となっており、概要はWikipediaのサイト
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A2%E3%83%B3%E3%83%86%E3%83%8D%E3%82%B0%E3%83%AD
で知ることができます。
参考文献: 柴宜弘、ユ-ゴスラヴィア現代史、p.52、岩波書店、1996

小包送票:オーストリア・ハンガリー帝国占領下のボスニア・ヘルツェゴビナ10 heller(剣)の小包送票に、キリル文字でKRALJEVSTVO S.H.S. 12 hと加刷(小包送票代金の収入印紙、小包料金に含まない)、ドイツ語・セルボクロアート語、白紙

小包ラベル:Sarajevo 1 143

価格表記ベル:白色紙に赤字でV;セルボクロアート語でVrijednost価格表記(保険)付きを示します。オーストリア帝国占領時代のボスニア・ヘルツェゴビナの郵便規則では、価格表記(保険)付きは黒字でWと表示したラベルであったため、このVと表示したラベルはユーゴスラヴィアのものであると考えられます。

料金手書き:31 K 20 h (7.8 Dinar)

切手:ユーゴスラヴィア全国共通普通切手
15 para (Mi.148)2枚, 50 para (Mi.151), 1 Dinar (Mi.154) 2枚, 5 Dinar (Mi.157)
合計7.8 Dinar (31 Kronen 20 vinar)

料金計算:
重量料金11.7 kg---6.0 Dinar (24 Kronen)
価格表記(保険)料金(četiri hiljade)4000 K (1000 Dinar)---1.2 Dinar (4.8 Kronen)
代金引換料金---無し
配達料金---0.6 Dinar (2.4 Kronen)
合計7.8 Dinar (31 Kronen 20 vinar)(料金手書きに一致、貼り付け切手に一致)

参考文献:価格表記(保険)の文字表記の解読に使った辞書と参考書
(1)Langenscheidt, Universal Croatian Dictionary, 1987
(2)Nicholas Awde, Hippocrene Practical Dictionary, SERBO-CROATIAN, 1996
(3)中島由美、エクスプレス セルビア・クロアチア語, 白水社, 1987

消印: SARAJEVO 1 28. IV. 21 -0 7 (SARAJEVO 1郵便局1921年4月28日、消印識別番号7)、上側がキリル文字、下側がローマ字の二文字表記のユーゴ型消印
時刻表示が「-0」とされている理由は不明です。昼の正午を意味する可能性もあります。

ヴォイヴォディナ地方のパンチェヴォ郵便局の代金引換のない小包送票代金のまとめ

2008年04月05日 11時23分35秒 | 小包第4期
ヴォイヴォディナ地方のPANČEVO郵便局の代金引換のない小包送票代金のまとめ

ヴォイヴォディナ地方のPANČEVO郵便局での1921年4月13日の代金引換のない小包送票代金(収入印紙として使用)をまとめてみました。

手元にある3通の小包送票では、代金引換のない小包送票代金(収入印紙として使用)として
210413A: 30 para
210413B: 25 para
210413C: 25 para
が徴収されていました。
同一の郵便局で同一の日でありながら25 paraと30 paraの2種類の価格がある理由は、現時点では不明です。可能性としては、郵便局員の過失が最も可能性が高いと思われます。

代金引換のない小包送票代金(収入印紙として使用)の徴収に使用された切手は、
スロヴェニア2次チェインブレーカー15 para (Mi.122)は3通に共通しており、これに加えて、
210413A: ユーゴスラヴィア傷病兵慈善切手15+15 para (Mi.160)
210413B: ユーゴスラヴィア傷病兵慈善切手10+10 para (Mi.159)
210413C: ユーゴスラヴィア傷病兵慈善切手10+10 para (Mi.159)
が使用されています。

傷病兵慈善切手が使用されていますので、下記の寄付金が余分に徴収されたと考えられます:
210413A: 15 para
210413B: 10 para
210413C: 10 para
小包の料金計算と切手の貼り付けは、郵便局員により行なわれる規則でした。これら3例の使用例では、小包発送者に対して余分な金銭的負担のかかる慈善切手が郵便局員により使用されています。このため、ヴォイヴォディナ地方のPANČEVO郵便局は、傷病兵のための寄付金を強制的に徴収するために傷病兵慈善切手の使用を強制した可能性も考えられます。無論、小包発送者との話し合いによる同意があった可能性もあります。今後さらに多くのこのような使用例が発見されれば、より正確な解析も可能になると思われます。

210413C裏 小包第4期 スロヴェニア2次+全国共通普通切手+傷病兵慈善切手の混貼り

2008年04月05日 11時22分32秒 | 小包第4期
210413C裏 小包第4期 スロヴェニア2次+全国共通普通切手+傷病兵慈善切手の混貼り

小包到着印:JAJCE 19. IV. 21 a (JAJCE 郵便局1921年4月19日、消印識別記号a )、ドイツ語のK. UND K. MILIT. POSTを削除してユーゴ化した消印。
小包受取人サイン日付け:1921年4月23日
小包引渡し印:JAJCE 23. IV. 21 a (JAJCE 郵便局1921年4月23日、消印識別記号a)、ドイツ語のK. UND K. MILIT. POSTを削除してユーゴ化した消印。

証示印:ドイツ語AUSGEFOLGT LAGERZINS K. h.
AUSGEFOLGTは「交付された」という意味であり、小包の受取人への引渡しを示します。LAGERZINSは「保管料金」という意味です。
19日に到着し23日に引き渡しています。AUSGEFOLGT LAGERZINSの証示印が押されていますので、小包の保管料金が徴収されたと考えられます。ただし、保管料金に相当する不足切手は小包送票に貼られていません。別の書式で処理されたと推定されます。

備考:商人のスタンプ
小包の受取人は、会社名の記載されたスタンプを使用しています。
第1期小包料金の項でご紹介した文献(5)の著者Dr. Helmut Kobelbauerは、「特に、定期的に高頻度に郵便物が届く商人がこの特別サービス(小包私書箱)を利用した」としています。そして、リュブリャナ1郵便局での使用例を示し、商人が自分の商店の名前の入った楕円形のスタンプを押して受取日を記入している例を紹介しています。また、Dr. Kobelbauerは、「商人はこのようなスタンプを使用するが、個人は通常はこのようなスタンプを使用しない」と記載しています。このような商人のスタンプの存在は、小包私書箱の使用の判断の根拠になるようです。
今ご紹介している使用例で、小包の受取人は、会社名の記載されたスタンプを使用していますので、多量の小包等の郵便物を受け取る商人であると考えられます。
参考文献
(5)Arge der Balkan Länder, No. 161, p.28-31, (2003)
Dr. Helmut Kobelbauer
Nebenstempel der Paketabgabe beim Postamt Ljubljana
リュブリャナ1郵便局による小包引渡しの証示印

210413C表 小包第4期 スロヴェニア2次+全国共通普通切手+傷病兵慈善切手の混貼り

2008年04月05日 11時20分31秒 | 小包第4期
210413C表 小包第4期 スロヴェニア2次+全国共通普通切手+傷病兵慈善切手の混貼り

小包第4期 ヴォイヴォディナからボスニア・ヘルツェゴビナ宛て
小包送票:ユーゴスラヴィアPOŠTNA SPREMNICA、左上に角に数値記載無し、スロヴェニア語、灰白紙、代金引換のない小包送票
小包ラベル:Pančevo 237、上側がキリル文字、下側がローマ字の二文字表記
上側のセルビア人の使用するキリル文字表記が鉛筆で塗り潰されているのは興味深く、セルビア支配に対する反発の表われの可能性もあると思われます。

料金手書き:15 para切手の下になっていて不明

切手:
①代金引換のない小包送票代金(収入印紙として使用)
スロヴェニア2次チェインブレーカー15 para (Mi.122)
ユーゴスラヴィア傷病兵慈善切手10+10 para (Mi.159)
合計 25 para
備考:寄付金10 para付きの傷病兵慈善切手が使用されていますので、上記の25 para以外に、小包発送者は寄付金10 paraも余分に支払わされたと考えられます。
ヴォイヴォディナPANČEVO郵便局は、傷病兵のための寄付金を強制的に徴収するために傷病兵慈善切手の使用を強制した可能性も考えられます。無論、小包発送者との話し合いによる同意があった可能性もあります。
②小包料金(郵便切手として使用)
ユーゴスラヴィア全国共通普通切手10 para (Mi.121), 2 Dinar (Mi.130) 2枚
合計 4.1 Dinar (16 Krona 40 vinar)

料金計算:
①代金引換のない小包送票代金(収入印紙として使用)25 para
②傷病兵のための寄付金10 para
③小包料金(郵便切手として使用)
重量料金5.7 kg---4.0 Dinar (16 Kronen)
価格表記(保険)料金---無し
代金引換料金---無し
通知料金---10 para (40 vinar)
合計4.1 Dinar (16.40 Kronen)(貼り付け切手と一致)

備考
上記の小包料金解析とは異なる方法で、重量料金5 kgで4.0 Dinar、配達料金0.6 Dinarとすると、合計4.6 Dinarとなります。この金額では、切手の合計貼付額4.35 Dinarより多くなり、25 para料金不足になってしまい、料金を説明できません。
この210413Cと同じ4月13日の同じ郵便局の使用例である「210413A表 小包第4期 スロヴェニア2次+全国共通普通切手+傷病兵慈善切手の混貼り」の場合には、小包料金が鉛筆で記載され、小包送票代金が切手で徴収されたことが証明されていますので、210413Cも同様の取り扱いがされたと考えるのが合理的であると考えられます。

消印:PANČEVO +13. IV. 21. -9+ 5(PANČEVO郵便局1921年4月13日9時、消印識別番号5)、上側がキリル文字、下側がローマ字の二文字表記の消印。この都市の名は、ハンガリー語Pancsova、セルボクロアート語Pančevo です。

210413B裏 小包第4期 スロヴェニア2次+全国共通普通切手+傷病兵慈善切手の混貼り

2008年04月02日 20時24分29秒 | 小包第4期
210413B裏 小包第4期 スロヴェニア2次+全国共通普通切手+傷病兵慈善切手の混貼り

小包到着印:JAJCE 19. IV. 21 a (JAJCE 郵便局1921年4月19日、消印識別記号a )、ドイツ語のK. UND K. MILIT. POSTを削除してユーゴ化した消印。
小包受取人サイン日付け:1921年4月23日
小包引渡し印:JAJCE 23. IV. 21 a (JAJCE 郵便局1921年4月23日、消印識別記号a )、ドイツ語のK. UND K. MILIT. POSTを削除してユーゴ化した消印。

証示印:ドイツ語AUSGEFOLGT LAGERZINS K. h.
AUSGEFOLGTは「交付された」という意味であり、小包の受取人への引渡しを示します。LAGERZINSは「保管料金」という意味です。
19日に到着し23日に引き渡しています。AUSGEFOLGT LAGERZINSの証示印が押されていますので、小包の保管料金が徴収されたと考えられます。ただし、保管料金に相当する不足切手は小包送票に貼られていません。別の書式で処理されたと推定されます。

備考:商人のスタンプ
小包の受取人は、会社名の記載されたスタンプを使用しています。
第1期小包料金の項でご紹介した文献(5)の著者Dr. Helmut Kobelbauerは、「特に、定期的に高頻度に郵便物が届く商人がこの特別サービス(小包私書箱)を利用した」としています。そして、リュブリャナ1郵便局での使用例を示し、商人が自分の商店の名前の入った楕円形のスタンプを押して受取日を記入している例を紹介しています。また、Dr. Kobelbauerは、「商人はこのようなスタンプを使用するが、個人は通常はこのようなスタンプを使用しない」と記載しています。このような商人のスタンプの存在は、小包私書箱の使用の判断の根拠になるようです。
今ご紹介している使用例で、小包の受取人は、会社名の記載されたスタンプを使用していますので、多量の小包等の郵便物を受け取る商人であると考えられます。
参考文献
(5)Arge der Balkan Länder, No. 161, p.28-31, (2003)
Dr. Helmut Kobelbauer
Nebenstempel der Paketabgabe beim Postamt Ljubljana
リュブリャナ1郵便局による小包引渡しの証示印

210413B表 小包第4期 スロヴェニア2次+全国共通普通切手+傷病兵慈善切手の混貼り

2008年04月02日 20時23分24秒 | 小包第4期
210413B表 小包第4期 スロヴェニア2次+全国共通普通切手+傷病兵慈善切手の混貼り

小包第4期 ヴォイヴォディナからボスニア・ヘルツェゴビナ宛て
小包送票:ユーゴスラヴィアPOŠTNA SPREMNICA、左上に角に数値記載無し、スロヴェニア語、灰白紙、代金引換のない小包送票

小包ラベル:Pančevo 217、上側がキリル文字、下側がローマ字の二文字表記
上側のセルビア人の使用するキリル文字表記が鉛筆で塗り潰されているのは興味深く、セルビア支配に対する反発の表われの可能性もあると思われます。
また、この使用例では、セルビア人の使用するキリル文字部分が破れています。これが故意に破り取られたのか、小包送票の取り扱い中に偶然に破れたのかは不明です。故意に破り取られたとしたら、セルビア人支配に対する反発が影響していると考えられます。

料金手書き:無し

切手:
①代金引換のない小包送票代金(収入印紙として使用)
スロヴェニア2次チェインブレーカー15 para (Mi.122)
ユーゴスラヴィア傷病兵慈善切手10+10 para (Mi.159)
合計 25 para
備考:寄付金10 para付きの傷病兵慈善切手が使用されていますので、上記の25 para以外に、小包発送者は寄付金10 paraも余分に支払わされたと考えられます。
ヴォイヴォディナPANČEVO郵便局は、傷病兵のための寄付金を強制的に徴収するために傷病兵慈善切手の使用を強制した可能性も考えられます。無論、小包発送者との話し合いによる同意があった可能性もあります。
②小包料金(郵便切手として使用)
ユーゴスラヴィア全国共通普通切手10 para (Mi.121), 2 Dinar (Mi.130)
合計 2.1 Dinar (8 Krona 40 vinar)

料金計算:
①代金引換のない小包送票代金(収入印紙として使用)25 para
②傷病兵のための寄付金10 para
③小包料金(郵便切手として使用)
重量料金3.2 kg---2.0 Dinar (8 Kronen)
価格表記(保険)料金---無し
代金引換料金---無し
通知料金---10 para (40 vinar)
合計2.1 Dinar (8.40 Kronen)(貼り付け切手と一致)

備考
上記の小包料金解析とは異なる方法で、重量料金3.2kgで2.0 Dinar、配達料金0.6 Dinarとすると、合計2.6 Dinarとなります。この金額では、切手の合計貼付額2.35 Dinarより多くなり、25 para料金不足になってしまい、料金を説明できません。
この210413Bと同じ4月13日の同じ郵便局の使用例である「210413A表 小包第4期 スロヴェニア2次+全国共通普通切手+傷病兵慈善切手の混貼り」の場合には、小包料金が鉛筆で記載され、小包送票代金が切手で徴収されたことが証明されていますので、210413Bも同様の取り扱いがされたと考えるのが合理的であると考えられます。

消印:PANČEVO +13. IV. 21. -9+ 5(PANČEVO郵便局1921年4月13日9時、消印識別番号5)、上側がキリル文字、下側がローマ字の二文字表記の消印。この都市の名は、ハンガリー語Pancsova、セルボクロアート語Pančevo です。

210413A裏 小包第4期 スロヴェニア2次+全国共通普通切手+傷病兵慈善切手の混貼り

2008年03月30日 09時37分05秒 | 小包第4期
210413A裏 小包第4期 スロヴェニア2次+全国共通普通切手+傷病兵慈善切手の混貼り

小包到着印:JAJCE 18. IV. 21 a (JAJCE 郵便局1921年4月18日、消印識別記号a)、ドイツ語のK. UND K. MILIT. POSTを削除してユーゴ化した消印。
小包受取人サイン日付け:1921年4月21日
小包引渡し印:JAJCE 21. IV. 21 a (JAJCE 郵便局1921年4月21日、消印識別記号a)、ドイツ語のK. UND K. MILIT. POSTを削除してユーゴ化した消印。

証示印:ドイツ語AUSGEFOLGT LAGERZINS K. h.
AUSGEFOLGTは「交付された」という意味であり、小包の受取人への引渡しを示します。LAGERZINSは「保管料金」という意味です。
18日に到着し21日に引き渡しています。AUSGEFOLGT LAGERZINSの証示印が押されていますので、小包の保管料金が徴収されたと考えられます。ただし、保管料金に相当する不足切手は小包送票に貼られていません。別の書式で処理されたと推定されます。

備考:商人のスタンプ
小包の受取人は、会社名の記載されたスタンプを使用しています。
第1期小包料金の項でご紹介した文献(5)の著者Dr. Helmut Kobelbauerは、「特に、定期的に高頻度に郵便物が届く商人がこの特別サービス(小包私書箱)を利用した」としています。そして、リュブリャナ1郵便局での使用例を示し、商人が自分の商店の名前の入った楕円形のスタンプを押して受取日を記入している例を紹介しています。また、Dr. Kobelbauerは、「商人はこのようなスタンプを使用するが、個人は通常はこのようなスタンプを使用しない」と記載しています。このような商人のスタンプの存在は、小包私書箱の使用の判断の根拠になるようです。
今ご紹介している使用例で、小包の受取人は、会社名の記載されたスタンプを使用していますので、多量の小包等の郵便物を受け取る商人であると考えられます。
参考文献
(5)Arge der Balkan Länder, No. 161, p.28-31, (2003)
Dr. Helmut Kobelbauer
Nebenstempel der Paketabgabe beim Postamt Ljubljana
リュブリャナ1郵便局による小包引渡しの証示印

210413A表 小包第4期 スロヴェニア2次+全国共通普通切手+傷病兵慈善切手の混貼り

2008年03月30日 09時36分03秒 | 小包第4期
210413A表 小包第4期 スロヴェニア2次+全国共通普通切手+傷病兵慈善切手の混貼り

小包第4期 ヴォイヴォディナからボスニア・ヘルツェゴビナ宛て
小包送票:ユーゴスラヴィアPOŠTNA SPREMNICA、左上に角に数値記載無し、スロヴェニア語、灰白紙、代金引換のない小包送票
小包ラベル:Pančevo 265、上側がキリル文字、下側がローマ字の二文字表記
上側のセルビア人の使用するキリル文字表記が鉛筆で塗り潰されているのは興味深く、セルビア支配に対する反発の表われの可能性もあると思われます。

料金手書き:中央右下16.40 (4.1 Dinar)

切手:
①代金引換のない小包送票代金(収入印紙として使用)
スロヴェニア2次チェインブレーカー15 para (Mi.122)
ユーゴスラヴィア傷病兵慈善切手15+15 para (Mi.160)
合計 30 para
備考:寄付金15 para付きの傷病兵慈善切手が使用されていますので、上記の30 para以外に、小包発送者は寄付金15 paraも余分に支払わされたと考えられます。
ヴォイヴォディナPANČEVO郵便局は、傷病兵のための寄付金を強制的に徴収するために傷病兵慈善切手の使用を強制した可能性も考えられます。無論、小包発送者との話し合いによる同意があった可能性もあります。
②小包料金(郵便切手として使用)
ユーゴスラヴィア全国共通普通切手10 para (Mi.121), 2 Dinar (Mi.130) 2枚
合計 4.1 Dinar (16 Krona 40 vinar)(料金手書きと一致)

料金計算:
①代金引換のない小包送票代金(収入印紙として使用)30 para
②傷病兵のための寄付金15 para
③小包料金(郵便切手として使用)
重量料金5.1 kg---4.0 Dinar (16 Kronen)
価格表記(保険)料金---無し
代金引換料金---無し
通知料金---10 para (40 vinar)
合計4.1 Dinar (16.40 Kronen) (料金手書き、貼り付け切手と一致)

備考
小包料金の手書きは16.40 Kronenであり、この金額には「代金引換のない小包送票代金(収入印紙として使用) 30 para」が含まれていません。このため明らかに両者は別扱いがされており、30 para が小包料金ではなく、小包送票の販売代金領収のための収入印紙である証明です。

消印:PANČEVO +13. IV. 21. -9+ 5 (PANČEVO郵便局1921年4月13日9時、消印識別番号5)、上側がキリル文字、下側がローマ字の二文字表記の消印。この都市の名は、ハンガリー語Pancsova、セルボクロアート語Pančevo です。

210401裏 小包第4期 スロヴェニア1次20 Kronaと全国共通普通切手の混貼り

2008年03月29日 09時33分23秒 | 小包第4期
210401裏 小包第4期 スロヴェニア1次20 Kronaと全国共通普通切手の混貼り

小包到着印:BOS. GRADIŠKA 5 4 21 (BOS. GRADIŠKA郵便局1921年4月5日)、ドイツ語のK. UND K. MILIT. POSTを削除してユーゴ化した消印。
小包受取人サイン日付け:1921年4月6日
小包引渡し印:BOS. GRADIŠKA 6 4 21 (BOS. GRADIŠKA郵便局1921年4月6日)、ドイツ語のK. UND K. MILIT. POSTを削除してユーゴ化した消印。

210401表 小包第4期 スロヴェニア1次20 Kronaと全国共通普通切手の混貼り

2008年03月29日 09時32分39秒 | 小包第4期
210401表 小包第4期 スロヴェニア1次20 Kronaと全国共通普通切手の混貼り

小包第4期 スロヴェニアからボスニア・ヘルツェゴビナ宛て
小包送票:ユーゴスラヴィアPOŠTNA SPREMNICA、左上角にSHS 16 v、スロヴェニア語、ピンク色紙、代金引換のある小包送票

小包ラベル:Ljubljana 1 スロヴェニア語で表記されたラベル
オーストリア帝国時代のドイツ語で表記されたラベルとは全く異なる、新しいスロヴェニア独自のラベルを作って使用しています。
番号1339は、郵便局名とは全く紙質の違う別の紙に印刷されたものを使用しています。

料金手書き:
右上20 Krona切手の左上に37.60の記載、

切手:
スロヴェニア1次チェインブレーカー20 Krona (Mi.119)
ユーゴスラヴィア全国共通普通切手15 para(Mi.148), 25 para(Mi.150), 4 Dinar(Mi.156)
合計 9.4 Dinar (37 Kronen 60 vinar)

料金計算:
重量料金20 kg---8.0 Dinar
価格表記(保険)料金600 K (150 D)---0.3 Dinar
代金引換料金614 K (153.5 D)---200 Dinar以下の代金引換、宛先住所での支払い有り1.0 Dinar
通知料金---0.1 Dinar
合計9.4 Dinar (37 Kronen 60 vinar)(料金手書き、貼り付け切手と一致)

消印: LJUBLJANA 1 -1 IV 21 -0 2b (LJUBLJANA 1郵便局1921年4月1日、消印識別記号2b)、上側がローマ字、下側がキリル文字の二文字表記のユーゴ型の消印。
時刻表示が「-0」とされている理由は不明です。昼の正午を意味する可能性もあります。

注意:消印の文字の位置
ユーゴ型のローマ字とキリル文字の二文字表記の消印は、
①ヴォイヴォディナでは、上側がキリル文字、下側がローマ字
②ボスニア・ヘルツェゴビナでは、上側がキリル文字、下側がローマ字
③スロヴェニアでは、上側がローマ字、下側がキリル文字
となっています。
スロヴェニア民族はローマ字だけを使用し、キリル文字を使う習慣が全くないため、ローマ字を上側に配置していると考えられます。

このカバーの希少性の解説
スロヴェニア1次チェインブレーカー20 Krona (Mi.119, 発行数6万8600枚)のカバーの入手は困難です。
発行数が6万8600枚と言っただけではピンと来ないのですが、日本の戦前の記念切手の発行数と比較すると、その少なさの感覚はつかめると思います:
1916年の裕仁立太子記念10銭8.6万枚、
1921年の郵便創始50周年記念10銭10万枚。
これらの日本切手のカバーがどれほど希少なものかは良くご存知のことと思います。
ここでご紹介している小包送票に貼られている発行数6万8600枚の1次チェインブレーカー20 Kronaは、1916年の裕仁立太子記念10銭8.6万枚、1921年の郵便創始50周年記念10銭10万枚よりも発行数が各々1万7400枚、3万1400枚も少ない切手です。
ほぼ同時代の日本のこれらの戦前の記念切手と、スロヴェニアの不足切手の直接比較は社会的・経済的状況が異なりますので困難ですが、日本人が良く知っている日本切手と比較した方がカバーの価値の類推には役立つと思われますのでご紹介いたしました。

210331裏 小包第4期 ボスニア・ヘルツェゴビナの代金引換のある三ヶ国語表記の小包送票

2008年03月27日 19時21分40秒 | 小包第4期
210331裏 小包第4期 ボスニア・ヘルツェゴビナの代金引換のある三ヶ国語表記の小包送票

小包到着印:VARCAR VAKUF 3 IV 21 (VARCAR VAKUF郵便局1921年4月3日)、ドイツ語のK. UND K. MILIT. POSTを削除してユーゴ化した消印。
小包受取人サイン日付け:1921年4月6日
小包引渡し印: VARCAR VAKUF 6 IV 21 (VARCAR VAKUF郵便局1921年4月6日)、ドイツ語のK. UND K. MILIT. POSTを削除してユーゴ化した消印。

証示印:ドイツ語AUSGEFOLGT LAGERZINS K. h.
AUSGEFOLGTは「交付された」という意味であり、小包の受取人への引渡しを示します。LAGERZINSは「保管料金」という意味です。
3日に到着し6日に引き渡しています。AUSGEFOLGT LAGERZINSの証示印が押されていますので、小包の保管料金が徴収されたと考えられます。ただし、保管料金に相当する不足切手は小包送票に貼られていません。別の書式で処理されたと推定されます。

210331表 小包第4期 ボスニア・ヘルツェゴビナの代金引換のある三ヶ国語表記の小包送票

2008年03月27日 19時20分21秒 | 小包第4期
210331表 小包第4期 ボスニア・ヘルツェゴビナの代金引換のある三ヶ国語表記の小包送票

小包第4期 ボスニア・ヘルツェゴビナ地域内便

小包送票:オーストリア・ハンガリー帝国占領下のボスニア・ヘルツェゴビナ10 heller(剣)の小包送票(左上に12hの印刷)に、ローマ字でKRALJEVSTVO S.H.S. 14 hと加刷 (小包送票代金の収入印紙、小包料金に含まない)、代金引換のある小包送票、ドイツ語・セルボクロアート語・フランス語の三ヶ国語表記、ピンク色紙

備考:
①私のコレクションでは、ボスニア・ヘルツェゴビナの小包送票で、ドイツ語・セルボクロアート語・フランス語の三ヶ国語表記のものはこれ1通だけであり、これは比較的少ないものであると推定しています。
②小包送票価格の値上げの変遷
オーストリア・ハンガリー帝国によるボスニア・ヘルツェゴビナの軍事占領時代に当初は10 hellerで剣の図案の印紙部分を印刷し、その後第一次世界大戦の戦時値上げで左上角に12 hellerを追加印刷し、ユーゴスラヴィアになった後に黒色加刷で14 hellerを加刷して値上げしたという経緯を、一枚の小包送票の上で見ることができます。

小包ラベル:Sarajevo H.P.A. 210
価格表記ラベル:白色紙に赤字でV;セルボクロアート語でVrijednost価格表記(保険)を示します。オーストリア帝国占領時代のボスニア・ヘルツェゴビナの郵便規則では、価格表記(保険)は黒字でWと表示したラベルであったため、このVと表示したラベルはユーゴスラヴィアのものであると考えられます。

料金手書き:右上43.60

切手:
スロヴェニア2次チェインブレーカー50 para (Mi.127), 10 Dinar (Mi.133)
ユーゴスラヴィア全国共通普通切手15 para(Mi.148), 25 para(Mi.150)
合計10.9 Dinar (43.6 Kronen)

料金計算:
重量料金20 kg---8.0 Dinar (32 Kronen)
価格表記(保険)料金(četri hiljade)4000 K (1000 Dinar)---1.2 Dinar (4.8 Kronen)
代金引換料金(dvije hiljade sedamsto)2700 K (675 Dinar)--- 200 Dinarを越えて1000 Dinar以下、宛先住所での支払い有り1.6 Dinar (6.4 Kronen)
通知料金---0.1 Dinar (0.4 Kronen)
合計10.9 Dinar (43.6 Kronen)(料金手書きに一致、貼り付け切手に一致)

参考文献:価格表記(保険)及び代金引換の文字表記の解読に使った辞書と参考書
(1)Langenscheidt, Universal Croatian Dictionary, 1987
(2)Nicholas Awde, Hippocrene Practical Dictionary, SERBO-CROATIAN, 1996
(3)中島由美、エクスプレス セルビア・クロアチア語, 白水社, 1987

消印:SARAJEVO 1 31. III. 21 -0 7 (SARAJEVO 1郵便局1921年3月31日、消印識別番号7)、上側がキリル文字、下側がローマ字の二文字表記のユーゴ型消印。
時刻表示が「-0」とされている理由は不明です。昼の正午を意味する可能性もあります。

210324裏 小包第4期 スロヴェニア1次20 Krona切手の使用例

2008年03月25日 20時31分51秒 | 小包第4期
210324裏 小包第4期 スロヴェニア1次20 Krona切手の使用例

小包到着印:MOSTAR 27 III 21 -4 b (MOSTAR 郵便局1921年3月27日4時、消印識別記号b)、上側がキリル文字、下側がローマ字の二文字表記のユーゴ型消印
小包受取人サイン日付け:1921年4月1日
小包引渡し印:MOSTAR 1 -1. IV. 21 c ◦ (MOSTAR1郵便局1921年4月1日、消印識別記号c ◦)、ドイツ語のK. UND K. MILIT. POSTを削除してユーゴ化した消印。

注意:
1921年3月末から4月初めのMOSTAR1郵便局では、オーストリア帝国の軍事郵便局の消印をユーゴ化した消印と、二文字表記のユーゴ型消印が併用されていた事実がこの使用例により証明されています。

210324表 小包第4期 スロヴェニア1次20 Krona切手の使用例

2008年03月25日 20時31分06秒 | 小包第4期
210324表 小包第4期 スロヴェニア1次20 Krona切手の使用例

小包第4期 スロヴェニアからボスニア・ヘルツェゴビナ宛て
小包送票:ユーゴスラヴィアPOŠTNA SPREMNICA、左上角にSHS 16 v、スロヴェニア語、ピンク色紙、代金引換のある小包送票

小包ラベル:Ljubljana 1 スロヴェニア語で表記されたラベル
オーストリア帝国時代のドイツ語で表記されたラベルとは全く異なる、新しいスロヴェニア独自のラベルを作って使用しています。
番号1996は、郵便局名とは全く紙質の違う別の紙に印刷されたものを使用しています。

料金手書き:
右上20 Krona切手の左側に22.40の記載、
中央右下に16, 4, 2.40, 22.40の記載

切手:
スロヴェニア1次チェインブレーカー20 Krona (Mi.119)
スロヴェニア2次チェインブレーカー60 para (Mi.128)
合計 5.6 Dinar (22 Kronen 40 vinar)

料金計算:
重量料金7 kg---4.0 Dinar
価格表記(保険)料金---無し
代金引換料金622 K (155.5 D)---200 Dinar以下の代金引換、宛先住所での支払い有り1.0 Dinar
配達料金---0.6 Dinar
合計5.6 Dinar (22 Kronen 40 vinar) (料金手書き、貼り付け切手と一致)

左下の青紫インクの622, 6.10, 628.10の手書きの解析
(1)622: 代金引換金額622 K (155.5 D)に一致するため代金引換金額と推定。
(2)6.10: 代金引換金額を小包発送者に郵便為替で送金する料金と推定
小包第4期の国内郵便為替料金によると、
為替金額が100 Dinarを越えて200 Dinar以下の場合の料金は0.70 Dinar、
為替金額が50 Dinarを越える場合の郵便為替の受取人の住所での支払い料金は0.20 Dinar
合計 0.90 Dinar (3.60 Kronen)

これだけでは6.10-3.60 = 2.50 Kronenが、まだ不足しています。
郵便為替証書の料金が2.50 Kronenの可能性も無きにしもあらずですが、これではあまりにも高すぎると思われますので、この可能性はないと思われます。
現時点で最も可能性が高いのは、
(a)郵便為替の速達料金 60 para (2.4 Kronen)
(b)郵便為替証書の料金 0.1 Kronen (10 vinar)
合計 2.50 Kronen であると考えられます。
参考文献: Nachrichtenblatt der Arbeitsgemeinschaft Jugoslawien und Nachfolgestaaten 38/89, (1989),
Beilage Nr.2 DIE POSTGEBÜREN IN KÖNIGTRICH DER SERBEN, KROATIEN UND SLOWENIEN 1919-1922
付録No.2 セルビア人、クロアチア人、及びスロヴェニア人の国の郵便料金1919-1920

消印: LJUBLJANA 1 24 III 21 -0 2b (LJUBLJANA 1郵便局1921年3月24日、消印識別記号2b)、上側がローマ字、下側がキリル文字の二文字表記のユーゴ型の消印。
時刻表示が「-0」とされている理由は不明です。昼の正午を意味する可能性もあります。

注意:消印の文字の位置
ユーゴ型のローマ字とキリル文字の二文字表記の消印は、
①ヴォイヴォディナでは、上側がキリル文字、下側がローマ字
②ボスニア・ヘルツェゴビナでは、上側がキリル文字、下側がローマ字
③スロヴェニアでは、上側がローマ字、下側がキリル文字
となっています。
スロヴェニア民族はローマ字だけを使用し、キリル文字を使う習慣が全くないため、ローマ字を上側に配置していると考えられます。

このカバーの希少性の解説
スロヴェニア1次チェインブレーカー20 Krona (Mi.119, 発行数6万8600枚)のカバーの入手は困難です。
発行数が6万8600枚と言っただけではピンと来ないのですが、日本の戦前の記念切手の発行数と比較すると、その少なさの感覚はつかめると思います:
1916年の裕仁立太子記念10銭8.6万枚、
1921年の郵便創始50周年記念10銭10万枚。
これらの日本切手のカバーがどれほど希少なものかは良くご存知のことと思います。
ここでご紹介している小包送票に貼られている発行数6万8600枚の1次チェインブレーカー20 Kronaは、1916年の裕仁立太子記念10銭8.6万枚、1921年の郵便創始50周年記念10銭10万枚よりも発行数が各々1万7400枚、3万1400枚も少ない切手です。
ほぼ同時代の日本のこれらの戦前の記念切手と、スロヴェニアの不足切手の直接比較は社会的・経済的状況が異なりますので困難ですが、日本人が良く知っている日本切手と比較した方がカバーの価値の類推には役立つと思われますのでご紹介いたしました。