チェインブレーカー及び関連領域の郵便史

ユーゴスラヴィア建国当時~1922年頃までの旧オーストリア・ハンガリー帝国地域のチェインブレーカーを中心とした郵便史

220130表 小包5期 クロアチア郵便代行業者の消印

2008年04月20日 19時23分02秒 | 小包第5期
220130表 小包5期 クロアチア郵便代行業者の消印

小包第5期 クロアチアからセルビア宛て
小包送票:ユーゴスラヴィアKRALJEVSTVO SRBA・HRVATA SLOVENACA 10 PARA(40 vinar,小包送票代金の収入印紙、小包料金に含まない)、セルボクロアート語、淡黄白色紙、左側のクーポンが残されています
小包ラベル:Mala Vašica p.ügyn. p.ag. 42 ハンガリー王国領の郵便代行業者のラベルをそのまま使用しています。
料金手書き:無し

切手:ユーゴスラヴィア全国共通普通切手1 Dinar (Mi. 154) 12枚
合計 12 Dinar

料金計算:
重量料金10 kg---10 Dinar
価格表記(保険)料金---無し
代金引換料金---無し
配達料金---2.0 Dinar
合計12 Dinar (貼り付け切手と一致)

消印:
長方形の4つの角を切り落としたハンガリー式の郵便代行業者の消印
MALAVAŠICA
22 JAN 30 d.e.
POSTAI ÜGYN,
POSTAN AGENCIJA
(1922年1月30日)
ハンガリー語のPOSTAI ÜGYNとセルボクロアート語のPOSTAN. AGENCIJAは、両方とも郵便代行業者を意味しています(英語ではPostal Agencyとするべきでしょう)。
ハンガリー式の左から右に「年月日」の配列のままで使用しており、ユーゴ式の「日月年」にはなっていません。
この使用例では年号表示がハンガリー式の3桁の年号表示920ではなく、ユーゴ式の年号表記の2桁の20になっています。
また、ハンガリー語表記の「POSTAI ÜGYN」は残されたままになっています。

211220裏 小包第5期、イタリア占領から返還されたコルチュラ島宛て

2008年04月19日 06時59分00秒 | 小包第5期
211220裏 小包第5期、イタリア占領から返還されたコルチュラ島宛て

到着印:BLATO 27. XII. 21 *a* (BLATO郵便局1921年12月27日、消印識別記号a)

イタリア軍によるダルマチア占領
Korčula(コルチュラ)島は、イタリア軍占領下のダルマチアのゾーンIであり、1921年4月17日にユーゴスラヴィアに返還されました。
この使用例は、返還8ヵ月後の消印であり、ユーゴスラヴィアの消印が間に合わなかったため、古いオーストリア時代の消印がそのまま使用されています。
参考文献
Dr. H. Dietz
Die Postämter in den von Italien besetzten Gebieten Norddalmatiens nach dem I. Weltkrieg 第一次世界大戦後にイタリアにより占領された地域である北ダルマチアの郵便局
Nachrichtenblatt der Arbeitsgemeinschaft Jugoslawien und Nachfolgestaaten No.26, p.375-376 (1984)

受取人サイン日付け: 1921年12月29日

備考
代金引換金額を為替送金するための用紙の一部が残っており、送金の宛先のSarajevoと金額の一部の95が残っています。

211220表 小包第5期、イタリア占領から返還されたコルチュラ島宛て

2008年04月19日 06時58分09秒 | 小包第5期
211220表 小包第5期、イタリア占領から返還されたコルチュラ島宛て

小包第5期 セルビアの小包送票をボスニア・ヘルツェゴビナのサラエヴォで使用、
ボスニア・ヘルツェゴビナのサラエヴォから、イタリア占領から返還されたコルチュラ島宛て

小包送票:KRALJEVINA SRBA, HRVATA i SLOVENACA, SPROVODNI LIST, 40 para
翻訳「セルビア人、クロアチア人、及びスロヴェニア人の王国、小包送票、40 para」
(この使用例では切手の下に隠れていますが、「201017表」より40 paraの印刷がされていることが判明しています)
この形式のものは、旧セルビア王国領内だけで使用するために用意されたと思われますが、小包送票の不足のため、ボスニア・ヘルツェゴビナのサラエヴォにも回されたと推定されます。
小包送票(代金引換有り)の販売価格は40 para (160 vinar)で、これは収入印紙として領収され、小包料金には含まれません。

小包ラベル:Sarajevo H.P.A. 4005、1921年末になってもオーストリア帝国時代のラベルをまだ使用しています。

価格表記ラベル:白色紙に赤字でV;セルボクロアート語でVrijednost価格表記(保険)付きを示します。オーストリア帝国占領時代のボスニア・ヘルツェゴビナの郵便規則では、価格表記(保険)付きは黒字でWと表示したラベルであったため、このVと表示したラベルはユーゴスラヴィアのものであると考えられます。

料金手書き:無し

切手:
ユーゴスラヴィア全国共通普通切手20 para(Mi.149), 50 para(Mi.151), 5 Dinar(Mi.157), 10 Dinar(Mi.158)2枚
合計25.7 Dinar

料金計算:
重量料金16.7 kg---20.0 Dinar
価格表記(保険)料金1000 Dinar---2.0 Dinar
代金引換料金950 Dinar
・郵便為替料金500~1000D以下----3.0 Dinar
・受取人住所での支払い料金、50 Dを越える----0.5 Dinar
・合計3.5 Dinar
通知料金---0.2 Dinar
合計25.7 Dinar、貼り付け切手に一致。

消印:SARAJEVO 1 20. XII. 21 -7 15 (SARAJEVO 1郵便局1921年12月20日7時、消印識別番号15)、上はキリル文字、下はローマ字の二文字表記。

宛先: イタリア占領から返還されたコルチュラ島のBlato

211203表 小包第5期、ユーゴスラヴィア全国共通普通切手の最高額面10 Dinar

2008年04月16日 21時33分32秒 | 小包第5期
211203表 小包第5期、ユーゴスラヴィア全国共通普通切手の最高額面10 Dinar

小包第5期 セルビアの小包送票、セルビア地域内便
小包送票:KRALJEVINA SRBA, HRVATA i SLOVENACA, SPROVODNI LIST, 40 para
翻訳「セルビア人、クロアチア人、及びスロヴェニア人の王国、小包送票、40 para」
(この使用例では切手の下に隠れていますが、「201017表」の使用例より40 paraの印刷がされていることが判明しています)

小包送票(代金引換有り)の販売価格は40 para (160 vinar)で、これは収入印紙として領収され、小包料金には含まれません。
この例のように、左側の小包発送者の控えの部分(クーポン)が残されている例は少ないのが実状です。

小包ラベル:П.П.-С.Р. 471。ローマ字ではP.P.-S.R.となりますが、省略前の元の意味は不明です。
料金手書き:25.20

切手:
ユーゴスラヴィア全国共通普通切手20 para(Mi.149), 5 Dinar(Mi.157), 10 Dinar(Mi.158)2枚
合計25.2 Dinar (料金手書きと一致)

料金計算:
重量料金18 kg---20.0 Dinar
価格表記(保険)料金520.60 Dinar---2.0 Dinar
代金引換料金520.60 Dinar
・郵便為替料金500~1000D以下----3.0 Dinar
・受取人住所での支払い料金----無し
・合計3.0 Dinar
通知料金---0.2 Dinar
合計25.2 Dinar 料金手書き、貼り付け切手に一致。

消印:BEOGRAD 2 3-IIX…921 (1921年12月3日)、上はキリル文字、下はローマ字の二文字表記。
備考:月は本来XIIとすべきところが、間違ってIIXとされています。

210521裏 小包第4期~5期 保管料金、スロヴェニア不足切手1, 3, 8 Dinarの使用例

2008年04月13日 10時22分15秒 | 小包第5期
210521裏 小包第4期~5期 保管料金、スロヴェニア不足切手1, 3, 8 Dinarの使用例

到着印:CELJE 27. II. 21. -4 1b (CELJE郵便局1921年2月27日4時、消印識別記号1b)、上側がローマ字、下側がキリル文字の二文字表記のユーゴ型の消印。

保管料金徴収指示
Ležarina zar od 1/3 – 19/5. 21 62.40 K u Celje 20/5. 21
「1921年3月1日~5月19日までの保管料金62.40 K、Celjeにて 1921年5月20日」

保管料金計算
小包第4期 3月1日~4月30日、61日間、10 para/日、合計6.1 Dinar
小包第5期 5月1日~5月19日、19日間、50 para/日、合計9.5 Dinar
総計15.6 Dinar (62.40 Kronen)、表側の記載金額62.40 Kと一致。

小包の宛て先のCelje郵便局で保管され、Celje郵便局で不足切手が貼り付けられて、Celje郵便局の消印で不足切手が消印されています。
このため、小包の保管料金は小包の受取人がCelje郵便局で支払ったが、小包の受取りは拒否したため、小包発送人のいるZagrebへ返送されたと考えられます。
小包の返送料金に関しては、小包送票には全く記載されていませんので、Zagrebの郵便局で処理されたと推定されます。

不足切手
5 para (15 vinar石版) 2枚、左側の切手は目打ちがシフト
50 para (15 vinar石版)
1 Dinar (30 vinar石版)
3 Dinar (30 vinar凸版、右側のみ直線ルレット、上下左側はノコギリルレット) 2枚
8 Dinar (30 vinar石版)

スロヴェニアの加刷不足切手の発行枚数は少なく、以下の通りです。
5 para (15 vinar石版) 72万枚
50 para (15 vinar石版) 72万枚
1 Dinar (30 vinar石版) 30万枚
3 Dinar (30 vinar凸版) 9万枚
8 Dinar (30 vinar石版) 12万枚
発行数9万枚の3 Dinar (30 vinar凸版)が2枚貼られていること、
発行数12万枚の最高額面の8 Dinar (30 vinar石版)が貼られていること、
を考慮すると、この使用例は非常に稀なものであると思われます。

発行数が9万枚、12万枚と言っただけではピンと来ないのですが、ほぼ同年代の日本の戦前の記念切手の発行数と比較すると、その少なさの感覚はつかめると思います。例えば、
1916年の裕仁立太子記念10銭8.6万枚、
1921年の郵便創始50周年記念10銭10万枚。
これらの日本切手のカバーがどれほど希少なものかは良くご存知のことと思います。
ここでご紹介している小包送票に貼られている発行数9万枚のスロヴェニア不足切手3 Dinar (30 vinar凸版)は、1916年の裕仁立太子記念10銭8.6万枚とほぼ発行数が同じで、1921年の郵便創始50周年記念10銭10万枚よりも発行数が1万枚も少ない切手です。
また、発行数12万枚の8 Dinar (30 vinar石版)も、カバーではほとんど見ることのできないものです。
ほぼ同時代の日本のこれらの戦前の記念切手と、スロヴェニアの不足切手の直接比較は社会的・経済的状況が異なりますので困難ですが、日本人が良く知っている日本切手と比較した方がカバーの価値の類推には役立つと思われますのでご紹介いたしました。

不足切手の消印:CELJE 21. V. 21. 2c (CELJE郵便局1921年5月21日、消印識別記号2c)、上側がローマ字、下側がキリル文字の二文字表記のユーゴ型の消印。

小包返送時のZAGREBの到着印:
ZAGREB 21-MAJ-21 N8 W2W (ZAGREB2郵便局1921年5月21日昼間8時、消印識別記号W)、ユーゴ化した消印
ハンガリー型の「年-月-日-時刻」をユーゴ型の「日-月-年-時刻」の順に変更しています。
ハンガリー型消印のD欄のハンガリー王の王権を示す「イシュトヴァーン・クラウン」は削除されて、空欄になっています。
年号は、ハンガリー型の3桁の921をユーゴ型の2桁の21に変更しています。

返送小包の受取人サイン日付け:1921年5月25日

210521表 小包第4期~5期 保管料金、スロヴェニア不足切手1, 3, 8 Dinarの使用例

2008年04月13日 10時21分14秒 | 小包第5期
210521表 小包第4期~5期 保管料金、スロヴェニア不足切手1, 3, 8 Dinarの使用例

小包第4期~5期 クロアチアからスロヴェニア宛て、返送便

小包送票:ユーゴスラヴィアPOŠTNA SPREMNICA、左上角にSHS 16 v無し、スロヴェニア語、ピンク色紙(ただし色は薄い)、代金引換のある小包送票

小包ラベル:ZAGREB 6 38 29
料金手書き:無し(右下角の4080は重量4080gを意味すると考えられます)

切手:
スロヴェニア2次チェインブレーカー10 para (Mi.121) 2枚
ユーゴスラヴィア全国共通普通切手4 Dinar (Mi.156)
合計 4.2 Dinar

料金計算(小包第4期):
重量料金4080 g---2.0 Dinar
価格表記(保険)料金---無し
代金引換料金2812 K (703 D)--- 200 Dinarを越えて、宛先住所での支払い有り1.6 Dinar
配達料金---0.6 Dinar
合計 4.2 Dinar (貼り付け切手と一致)

消印: ZAGREB 25 FEB 921 -8 A6A (ZAGREB 6郵便局1921年2月25日8時、消印識別記号A)、不完全にユーゴ化した消印
ハンガリー型の「年-月-日-時刻」をユーゴ型の「日-月-年-時刻」の順に変更しています。
ハンガリー型消印のD欄のハンガリー王の王権を示す「イシュトヴァーン・クラウン」は削除されて、空欄になっています。
年号は、ハンガリー型の3桁の921のままであり、ユーゴ型の2桁の21には変更されていません。
時刻表示は「-8」と表示されており、ハンガリー型消印に見られたNまたはEの記号が削除されています。

返送指示
紫色鉛筆で中央部に記載: スロヴェニア語nazaj Zagreb「ザグレブへ返送」

保管料金徴収指示
鉛筆で下部にスロヴェニア語で記載
Ležarina zar od 1/3 – 19/5. 21 62.40 K u Celje 20/5. 21
「1921年3月1日~5月19日までの保管料金62.40 K、Celjeにて 1921年5月20日」

備考: スロヴェニア語の翻訳に使用した辞書
DOŠA KOMAC, English-Slovene/ Slovene-English Modern Dictionary, 1998, HIPPOCRENE BOOKS, New York

210518表 小包第5期 スロヴェニア不足切手50 para+全国共通普通切手の混貼り

2008年04月12日 17時29分06秒 | 小包第5期
210518表 小包第5期 スロヴェニア不足切手50 para+全国共通普通切手の混貼り

小包第5期 ダルマチアからボスニア・ヘルツェゴビナ宛て
小包送票:ユーゴスラヴィアPOŠTNA SPREMNICA、左上に角に数値記載無し、スロヴェニア語、灰白紙、代金引換のない小包送票

小包ラベル:Dubrovnik-Ragusa 38、セルボクロアート語とイタリア語の二ヶ国語表記のラベル
備考:ドゥブロヴニク(セルボクロアート語Dubrovnik, イタリア語 Ragusa, ラテン語 Ragusium)は、世界遺産に指定されており、「アドリア海の真珠」と言われるほど美しい町です。

料金手書き:右上24.80

切手:
スロヴェニア加刷不足切手50 para (台切手15 vinar石版)(Mi.47) 4枚を普通切手として使用
ユーゴスラヴィア全国共通普通切手5 para (Mi.146) 4枚, 4 Dinar (Mi.156)
合計 6.2 Dinar (24 Kronen 80 vinar)(料金手書きと一致)

加刷不足切手50 paraの台切手15 vinar石版のプレーティング
右から左に向かって、シート32、タイプ35, 36, 37, 38、pos.85, 86, 87, 88
カナダのA. H. Stokes博士の研究資料に基づきます。

料金計算:
重量料金5 kg---5.0 Dinar
価格表記(保険)料金600 K(150 D)---1.0 Dinar
代金引換料金---無し
通知料金---20 para
合計6.2 Dinar (24 Kronen 80 vinar)(料金手書き、貼り付け切手と一致)

消印:DUBROVNIK 18. V. 21 a (DUBROVNIK郵便局1921年5月18日、消印識別記号a)、セルボクロアート語表記。下側のイタリア語の表記のRAGUSAを削除してユーゴ化した消印です。

備考:ダルマチア地方の消印のユーゴ化
ダルマチア地方の消印の郵便局名は、オーストリア帝国時代には上側がセルボクロアート語、下側がイタリア語の二ヶ国語表記でした。
ユーゴスラヴィア建国後もしばらくの間はオーストリア帝国時代のものがそのまま使用されていましたが、やがて下側のイタリア語表記が削除されてユーゴ化されました。

210513裏 小包第5期 チェインブレーカー1次15vinar,2次25 para使用禁止後使用例

2008年04月09日 21時10分01秒 | 小包第5期
210513裏 小包第5期 チェインブレーカー1次15vinar,2次25 paraの使用禁止後の使用例

小包到着印:ŠABAC + 16 V 921 + (ŠABAC郵便局1921年5月16日)
二重丸型のセルビアの消印、上側がキリル文字、下側がローマ字の二文字表記。
年号は921と3桁表記であり、ユーゴ型の2桁の21にはなっていません。
小包受取人サイン日付け: 1921年5月26日

210513表 小包第5期 チェインブレーカー1次15vinar,2次25 para使用禁止後使用例

2008年04月09日 21時08分11秒 | 小包第5期
210513表 小包第5期 チェインブレーカー1次15vinar,2次25 paraの使用禁止後の使用例

小包第5期 ヴォイヴォディナからセルビア宛て。
ヴォイヴォディナでチェインブレーカー1次15 vinar2枚と2次25 paraを使用禁止後に使用した例。
恐らく、「代金引換の有る小包送票の販売代金領収のための収入印紙」として使用したと推定されますが、切手が2枚脱落しているため確定はできません。

小包送票:ユーゴスラヴィアPOŠTNA SPREMNICA、左上角にSHS 16 v(小包送票代金の収入印紙、小包料金に含まない)、スロヴェニア語、ピンク色紙、代金引換の有る小包送票、左側クーポンが残されたままの使用例。

クーポンには10 vの収入印紙が印刷され、さらに左上にSHS 16 vが印刷されています。
これは、当初は小包送票の販売価格は10 vinarで計画されていたものが、16 vinarに値上げされたため、左上にSHS 16 vを追加印刷したものです。
新しい版を作り直す手間を省くためのこのようなやり方は、オーストリア帝国で良く行われていたものを真似ています。
16 vinarの価格に関しては、リュブリャナ郵政局の通達URDNI LIST LJUBLJANA 1919の51ページに1919年5月1日付の公示があり、小包送票の販売価格がオーストリア帝国時代から引き続いていた12 hellerから16 vinarに値上げされたことが公示されています。
ここで注意しなければならないのは、最初はオーストリア帝国の小包送票の価格は10 hellerであり、国王の肖像に10 hと書かれた印紙が印刷されていました。その後、第一次世界大戦の戦時価格として12 hellerに値上げされたため、12 hという追加印刷が左上に行なわれていました。
リュブリャナの国民政府は、当初は戦時価格12 heller(vinar)を元の価格10 vinarに戻すことを想定して小包送票の印紙10 vを印刷したと考えられます。しかし、その後の物資不足に伴う紙やインクなどの値上がりに伴い、小包送票の値上げが避けられなくなったため、16 vinarに値上げして、オーストリア帝国のやり方を真似て左上にSHS 16 vという新しい販売価格を追加印刷した考えられます。
参考文献:
Nachrichtenblatt der Arbeitsgemeinschaft Jugoslawien und Nachfolgestaaten 97-98/2006, p.1931-1945 (2006)
Prof. Dr.-Ing. Klaus Wieland
SHS 1918 bis 1921: Fiskalische Zusatzfrankaturen auf Postanweisungs-Formularen
SHS 1918年-1921年: 郵便為替証書への収入印紙としての追加貼り付け
備考: この研究論文にはリュブリャナ郵政局による小包送票の値上げも記載されています。

クーポンの部分のスロヴェニア語は下記のように解読できます。
収入印紙に印刷されている「NARODNA VLADA V LJUBLJANI」は、「national government in Ljubljanaリュブリャナの国民政府」という意味です。
Odrezekは「coupon クーポン」、sprejemini pečatは「acceptance stamp受領印紙」、Pošiljateljは「sender 発送者」という意味です。
備考:スロヴェニア語の翻訳に使用した辞書
DOŠA KOMAC、English-Slovene / Slovene-English Modern Dictionary
1998, HIPPOCRENE BOOKS, New York

小包ラベル:Apatin 610、上側がキリル文字、下側がローマ字の二文字表記
代金引換ラベル: 白紙に赤字で代金引換を表す言葉Pouzeće(セルボクロアート語), Remboursement(フランス語)を2ヶ国語で記載。

その他の表示:
黒色ハンドスタンプ: キリル文字でISPLACENO
意味は「要支払い」であり、代金引換金額の支払いを指示するセルビアの証示印です。
備考: セルボクロアート語の翻訳に使用した辞書
Nicholas Awde, Hippocrene Practical Dictionary, SERBO-CROATIAN, 1996

料金手書き:右下40.80, 8, 48.80の計算有り

切手:
①代金引換の有る小包送票代金(収入印紙として使用)
スロヴェニア1次チェインブレーカー15 vinar (Mi.102石版)2枚
スロヴェニア2次チェインブレーカー25 para (Mi.124)
合計130 vinar
ただし切手が2枚脱落しているため、小包料金第4期のヴォイヴォディナでの使用例から推定したものです。
②小包料金(郵便切手として使用)
ユーゴスラヴィア全国共通普通切手1 Dinar(Mi.154) 2枚
同20 paraと10 Dinarが脱落と推定。
合計 12. 2 Dinar (48 Kronen 80 vinar)と推定。

料金計算:
①代金引換の有る小包送票代金(収入印紙として使用) 130 vinar
②小包料金(郵便切手として使用)
重量料金10 kg---10.0 Dinar
価格表記(保険)料金---無し
代金引換料金820 K(205 D)
・郵便為替料金100~300D以下----1.5 Dinar
・受取人住所での支払い料金----0.5 Dinar
・合計2.0 Dinar
通知料金---20 para
合計12. 2 Dinar (48 Kronen 80 vinar)(料金手書きと一致)

消印:APATIN + 13 V 21 -9 + 2 (APATIN郵便局1921年5月13日9時、消印識別番号2) 、上側がキリル文字、下側がローマ字の二文字表記のユーゴ型の消印。
郵便局名はハンガリー語とセルボクロアート語とも同じでApatinです。

備考:使用禁止後のチェインブレーカー普通切手の使用
スロヴェニアのリュブリャナで発行されたチェインブレーカー普通切手は、1921年4月15日まで有効でしたので、小包第5期には既に無効となっていました。
この使用例では、使用禁止約1ヵ月後の1921年5月13日に使用されています。