チェインブレーカー及び関連領域の郵便史

ユーゴスラヴィア建国当時~1922年頃までの旧オーストリア・ハンガリー帝国地域のチェインブレーカーを中心とした郵便史

Prirucnikの弱点

2008年03月30日 09時45分45秒 | スロヴェニア切手
Prirucnikの弱点

チェインブレーカーのまとまったハンドブックは既に何度もご紹介している下記の文献です:
Priručnik Maraka Jugoslavenskih Zemalja, vol.4, 5, 6, 7, 1945-47, Zagreb (Croatia)
翻訳:ユーゴスラヴィア切手ハンドブック 第4, 5, 6, 7巻

しかし、この文献には以下の弱点が有ります。

1.郵便料金が全く記載されていない。
このため、郵便史の研究にとっては重大な支障があります。
この点を補うには、ドイツ、スイス、イギリスの研究会の機関誌の入手と翻訳が必須になります。

2.チェインブレーカーの石版と凸版のタイプに関する図が使い物にならない。
残念ながら、この文献に記載されているタイプの図では、実際の切手のタイプの区別はできません。
カナダのA.H. Stokes博士の研究が必要になります。

3.チェインブレーカーの版欠点の識別が非常に困難
チェインブレーカーの版欠点については、文書による記載だけであり図がほとんど掲載されていないため。非常に分かりにくく、ほとんど使い物にならない。
この点に関しても、カナダのA.H. Stokes博士の研究が必要になります。

2,3の補足
チェインブレーカーのタイプ研究とプレーティングの第一人者であるカナダのA.H. Stokes博士の研究は、アメリカのCroatian Philatelic Societyのバックナンバーに掲載されています。
一部は、イギリスのYugoslavia Study Groupのバックナンバーに掲載されているという話しを聞いたことがあります。
私は、博士から直接研究資料のコピーを譲っていただいて使用しています。

4.郵便局名のリストは、①スロヴェニアだけが掲載されており、②クロアチア、③ボスニア・ヘルツェゴビナ、④ヴォイヴォディナ、⑤ダルマチアのリストがない。
私は、①③④⑤のリストをスイスのThomas Artel氏より譲っていただき使用しております。これ以外の局はクロアチアであると判断できます。

5.小包送票、郵便為替、現金封筒、郵便小切手、電報、Odjavaなどの公的書式について解説されていない。この点も郵便史研究にとり重大な支障となっています。

6. チェインブレーカーを収入印紙として使用した例について解説されていない。

7. ケルンテン、シュタイヤーマルク、テメスヴァール、バラーニャの占領及び占領地での使用に関して詳しく述べられていない。

8.各地域で使用された郵便印に関する詳しい解説がない。

9.郵便代行業者の業務内容及び使用した消印のタイプに関して詳しく述べられていない。

この他の点では、完全ではありませんが非常に良くまとまっています。
このように様々な弱点がありますから、ドイツ、スイス、イギリスの研究会の機関誌の入手と翻訳が必須になります。これらの機関誌には、いまだに新発見の報告や研究が相次いでいます。

210413A裏 小包第4期 スロヴェニア2次+全国共通普通切手+傷病兵慈善切手の混貼り

2008年03月30日 09時37分05秒 | 小包第4期
210413A裏 小包第4期 スロヴェニア2次+全国共通普通切手+傷病兵慈善切手の混貼り

小包到着印:JAJCE 18. IV. 21 a (JAJCE 郵便局1921年4月18日、消印識別記号a)、ドイツ語のK. UND K. MILIT. POSTを削除してユーゴ化した消印。
小包受取人サイン日付け:1921年4月21日
小包引渡し印:JAJCE 21. IV. 21 a (JAJCE 郵便局1921年4月21日、消印識別記号a)、ドイツ語のK. UND K. MILIT. POSTを削除してユーゴ化した消印。

証示印:ドイツ語AUSGEFOLGT LAGERZINS K. h.
AUSGEFOLGTは「交付された」という意味であり、小包の受取人への引渡しを示します。LAGERZINSは「保管料金」という意味です。
18日に到着し21日に引き渡しています。AUSGEFOLGT LAGERZINSの証示印が押されていますので、小包の保管料金が徴収されたと考えられます。ただし、保管料金に相当する不足切手は小包送票に貼られていません。別の書式で処理されたと推定されます。

備考:商人のスタンプ
小包の受取人は、会社名の記載されたスタンプを使用しています。
第1期小包料金の項でご紹介した文献(5)の著者Dr. Helmut Kobelbauerは、「特に、定期的に高頻度に郵便物が届く商人がこの特別サービス(小包私書箱)を利用した」としています。そして、リュブリャナ1郵便局での使用例を示し、商人が自分の商店の名前の入った楕円形のスタンプを押して受取日を記入している例を紹介しています。また、Dr. Kobelbauerは、「商人はこのようなスタンプを使用するが、個人は通常はこのようなスタンプを使用しない」と記載しています。このような商人のスタンプの存在は、小包私書箱の使用の判断の根拠になるようです。
今ご紹介している使用例で、小包の受取人は、会社名の記載されたスタンプを使用していますので、多量の小包等の郵便物を受け取る商人であると考えられます。
参考文献
(5)Arge der Balkan Länder, No. 161, p.28-31, (2003)
Dr. Helmut Kobelbauer
Nebenstempel der Paketabgabe beim Postamt Ljubljana
リュブリャナ1郵便局による小包引渡しの証示印

210413A表 小包第4期 スロヴェニア2次+全国共通普通切手+傷病兵慈善切手の混貼り

2008年03月30日 09時36分03秒 | 小包第4期
210413A表 小包第4期 スロヴェニア2次+全国共通普通切手+傷病兵慈善切手の混貼り

小包第4期 ヴォイヴォディナからボスニア・ヘルツェゴビナ宛て
小包送票:ユーゴスラヴィアPOŠTNA SPREMNICA、左上に角に数値記載無し、スロヴェニア語、灰白紙、代金引換のない小包送票
小包ラベル:Pančevo 265、上側がキリル文字、下側がローマ字の二文字表記
上側のセルビア人の使用するキリル文字表記が鉛筆で塗り潰されているのは興味深く、セルビア支配に対する反発の表われの可能性もあると思われます。

料金手書き:中央右下16.40 (4.1 Dinar)

切手:
①代金引換のない小包送票代金(収入印紙として使用)
スロヴェニア2次チェインブレーカー15 para (Mi.122)
ユーゴスラヴィア傷病兵慈善切手15+15 para (Mi.160)
合計 30 para
備考:寄付金15 para付きの傷病兵慈善切手が使用されていますので、上記の30 para以外に、小包発送者は寄付金15 paraも余分に支払わされたと考えられます。
ヴォイヴォディナPANČEVO郵便局は、傷病兵のための寄付金を強制的に徴収するために傷病兵慈善切手の使用を強制した可能性も考えられます。無論、小包発送者との話し合いによる同意があった可能性もあります。
②小包料金(郵便切手として使用)
ユーゴスラヴィア全国共通普通切手10 para (Mi.121), 2 Dinar (Mi.130) 2枚
合計 4.1 Dinar (16 Krona 40 vinar)(料金手書きと一致)

料金計算:
①代金引換のない小包送票代金(収入印紙として使用)30 para
②傷病兵のための寄付金15 para
③小包料金(郵便切手として使用)
重量料金5.1 kg---4.0 Dinar (16 Kronen)
価格表記(保険)料金---無し
代金引換料金---無し
通知料金---10 para (40 vinar)
合計4.1 Dinar (16.40 Kronen) (料金手書き、貼り付け切手と一致)

備考
小包料金の手書きは16.40 Kronenであり、この金額には「代金引換のない小包送票代金(収入印紙として使用) 30 para」が含まれていません。このため明らかに両者は別扱いがされており、30 para が小包料金ではなく、小包送票の販売代金領収のための収入印紙である証明です。

消印:PANČEVO +13. IV. 21. -9+ 5 (PANČEVO郵便局1921年4月13日9時、消印識別番号5)、上側がキリル文字、下側がローマ字の二文字表記の消印。この都市の名は、ハンガリー語Pancsova、セルボクロアート語Pančevo です。

210401裏 小包第4期 スロヴェニア1次20 Kronaと全国共通普通切手の混貼り

2008年03月29日 09時33分23秒 | 小包第4期
210401裏 小包第4期 スロヴェニア1次20 Kronaと全国共通普通切手の混貼り

小包到着印:BOS. GRADIŠKA 5 4 21 (BOS. GRADIŠKA郵便局1921年4月5日)、ドイツ語のK. UND K. MILIT. POSTを削除してユーゴ化した消印。
小包受取人サイン日付け:1921年4月6日
小包引渡し印:BOS. GRADIŠKA 6 4 21 (BOS. GRADIŠKA郵便局1921年4月6日)、ドイツ語のK. UND K. MILIT. POSTを削除してユーゴ化した消印。

210401表 小包第4期 スロヴェニア1次20 Kronaと全国共通普通切手の混貼り

2008年03月29日 09時32分39秒 | 小包第4期
210401表 小包第4期 スロヴェニア1次20 Kronaと全国共通普通切手の混貼り

小包第4期 スロヴェニアからボスニア・ヘルツェゴビナ宛て
小包送票:ユーゴスラヴィアPOŠTNA SPREMNICA、左上角にSHS 16 v、スロヴェニア語、ピンク色紙、代金引換のある小包送票

小包ラベル:Ljubljana 1 スロヴェニア語で表記されたラベル
オーストリア帝国時代のドイツ語で表記されたラベルとは全く異なる、新しいスロヴェニア独自のラベルを作って使用しています。
番号1339は、郵便局名とは全く紙質の違う別の紙に印刷されたものを使用しています。

料金手書き:
右上20 Krona切手の左上に37.60の記載、

切手:
スロヴェニア1次チェインブレーカー20 Krona (Mi.119)
ユーゴスラヴィア全国共通普通切手15 para(Mi.148), 25 para(Mi.150), 4 Dinar(Mi.156)
合計 9.4 Dinar (37 Kronen 60 vinar)

料金計算:
重量料金20 kg---8.0 Dinar
価格表記(保険)料金600 K (150 D)---0.3 Dinar
代金引換料金614 K (153.5 D)---200 Dinar以下の代金引換、宛先住所での支払い有り1.0 Dinar
通知料金---0.1 Dinar
合計9.4 Dinar (37 Kronen 60 vinar)(料金手書き、貼り付け切手と一致)

消印: LJUBLJANA 1 -1 IV 21 -0 2b (LJUBLJANA 1郵便局1921年4月1日、消印識別記号2b)、上側がローマ字、下側がキリル文字の二文字表記のユーゴ型の消印。
時刻表示が「-0」とされている理由は不明です。昼の正午を意味する可能性もあります。

注意:消印の文字の位置
ユーゴ型のローマ字とキリル文字の二文字表記の消印は、
①ヴォイヴォディナでは、上側がキリル文字、下側がローマ字
②ボスニア・ヘルツェゴビナでは、上側がキリル文字、下側がローマ字
③スロヴェニアでは、上側がローマ字、下側がキリル文字
となっています。
スロヴェニア民族はローマ字だけを使用し、キリル文字を使う習慣が全くないため、ローマ字を上側に配置していると考えられます。

このカバーの希少性の解説
スロヴェニア1次チェインブレーカー20 Krona (Mi.119, 発行数6万8600枚)のカバーの入手は困難です。
発行数が6万8600枚と言っただけではピンと来ないのですが、日本の戦前の記念切手の発行数と比較すると、その少なさの感覚はつかめると思います:
1916年の裕仁立太子記念10銭8.6万枚、
1921年の郵便創始50周年記念10銭10万枚。
これらの日本切手のカバーがどれほど希少なものかは良くご存知のことと思います。
ここでご紹介している小包送票に貼られている発行数6万8600枚の1次チェインブレーカー20 Kronaは、1916年の裕仁立太子記念10銭8.6万枚、1921年の郵便創始50周年記念10銭10万枚よりも発行数が各々1万7400枚、3万1400枚も少ない切手です。
ほぼ同時代の日本のこれらの戦前の記念切手と、スロヴェニアの不足切手の直接比較は社会的・経済的状況が異なりますので困難ですが、日本人が良く知っている日本切手と比較した方がカバーの価値の類推には役立つと思われますのでご紹介いたしました。

210331裏 小包第4期 ボスニア・ヘルツェゴビナの代金引換のある三ヶ国語表記の小包送票

2008年03月27日 19時21分40秒 | 小包第4期
210331裏 小包第4期 ボスニア・ヘルツェゴビナの代金引換のある三ヶ国語表記の小包送票

小包到着印:VARCAR VAKUF 3 IV 21 (VARCAR VAKUF郵便局1921年4月3日)、ドイツ語のK. UND K. MILIT. POSTを削除してユーゴ化した消印。
小包受取人サイン日付け:1921年4月6日
小包引渡し印: VARCAR VAKUF 6 IV 21 (VARCAR VAKUF郵便局1921年4月6日)、ドイツ語のK. UND K. MILIT. POSTを削除してユーゴ化した消印。

証示印:ドイツ語AUSGEFOLGT LAGERZINS K. h.
AUSGEFOLGTは「交付された」という意味であり、小包の受取人への引渡しを示します。LAGERZINSは「保管料金」という意味です。
3日に到着し6日に引き渡しています。AUSGEFOLGT LAGERZINSの証示印が押されていますので、小包の保管料金が徴収されたと考えられます。ただし、保管料金に相当する不足切手は小包送票に貼られていません。別の書式で処理されたと推定されます。

210331表 小包第4期 ボスニア・ヘルツェゴビナの代金引換のある三ヶ国語表記の小包送票

2008年03月27日 19時20分21秒 | 小包第4期
210331表 小包第4期 ボスニア・ヘルツェゴビナの代金引換のある三ヶ国語表記の小包送票

小包第4期 ボスニア・ヘルツェゴビナ地域内便

小包送票:オーストリア・ハンガリー帝国占領下のボスニア・ヘルツェゴビナ10 heller(剣)の小包送票(左上に12hの印刷)に、ローマ字でKRALJEVSTVO S.H.S. 14 hと加刷 (小包送票代金の収入印紙、小包料金に含まない)、代金引換のある小包送票、ドイツ語・セルボクロアート語・フランス語の三ヶ国語表記、ピンク色紙

備考:
①私のコレクションでは、ボスニア・ヘルツェゴビナの小包送票で、ドイツ語・セルボクロアート語・フランス語の三ヶ国語表記のものはこれ1通だけであり、これは比較的少ないものであると推定しています。
②小包送票価格の値上げの変遷
オーストリア・ハンガリー帝国によるボスニア・ヘルツェゴビナの軍事占領時代に当初は10 hellerで剣の図案の印紙部分を印刷し、その後第一次世界大戦の戦時値上げで左上角に12 hellerを追加印刷し、ユーゴスラヴィアになった後に黒色加刷で14 hellerを加刷して値上げしたという経緯を、一枚の小包送票の上で見ることができます。

小包ラベル:Sarajevo H.P.A. 210
価格表記ラベル:白色紙に赤字でV;セルボクロアート語でVrijednost価格表記(保険)を示します。オーストリア帝国占領時代のボスニア・ヘルツェゴビナの郵便規則では、価格表記(保険)は黒字でWと表示したラベルであったため、このVと表示したラベルはユーゴスラヴィアのものであると考えられます。

料金手書き:右上43.60

切手:
スロヴェニア2次チェインブレーカー50 para (Mi.127), 10 Dinar (Mi.133)
ユーゴスラヴィア全国共通普通切手15 para(Mi.148), 25 para(Mi.150)
合計10.9 Dinar (43.6 Kronen)

料金計算:
重量料金20 kg---8.0 Dinar (32 Kronen)
価格表記(保険)料金(četri hiljade)4000 K (1000 Dinar)---1.2 Dinar (4.8 Kronen)
代金引換料金(dvije hiljade sedamsto)2700 K (675 Dinar)--- 200 Dinarを越えて1000 Dinar以下、宛先住所での支払い有り1.6 Dinar (6.4 Kronen)
通知料金---0.1 Dinar (0.4 Kronen)
合計10.9 Dinar (43.6 Kronen)(料金手書きに一致、貼り付け切手に一致)

参考文献:価格表記(保険)及び代金引換の文字表記の解読に使った辞書と参考書
(1)Langenscheidt, Universal Croatian Dictionary, 1987
(2)Nicholas Awde, Hippocrene Practical Dictionary, SERBO-CROATIAN, 1996
(3)中島由美、エクスプレス セルビア・クロアチア語, 白水社, 1987

消印:SARAJEVO 1 31. III. 21 -0 7 (SARAJEVO 1郵便局1921年3月31日、消印識別番号7)、上側がキリル文字、下側がローマ字の二文字表記のユーゴ型消印。
時刻表示が「-0」とされている理由は不明です。昼の正午を意味する可能性もあります。

210324裏 小包第4期 スロヴェニア1次20 Krona切手の使用例

2008年03月25日 20時31分51秒 | 小包第4期
210324裏 小包第4期 スロヴェニア1次20 Krona切手の使用例

小包到着印:MOSTAR 27 III 21 -4 b (MOSTAR 郵便局1921年3月27日4時、消印識別記号b)、上側がキリル文字、下側がローマ字の二文字表記のユーゴ型消印
小包受取人サイン日付け:1921年4月1日
小包引渡し印:MOSTAR 1 -1. IV. 21 c ◦ (MOSTAR1郵便局1921年4月1日、消印識別記号c ◦)、ドイツ語のK. UND K. MILIT. POSTを削除してユーゴ化した消印。

注意:
1921年3月末から4月初めのMOSTAR1郵便局では、オーストリア帝国の軍事郵便局の消印をユーゴ化した消印と、二文字表記のユーゴ型消印が併用されていた事実がこの使用例により証明されています。

210324表 小包第4期 スロヴェニア1次20 Krona切手の使用例

2008年03月25日 20時31分06秒 | 小包第4期
210324表 小包第4期 スロヴェニア1次20 Krona切手の使用例

小包第4期 スロヴェニアからボスニア・ヘルツェゴビナ宛て
小包送票:ユーゴスラヴィアPOŠTNA SPREMNICA、左上角にSHS 16 v、スロヴェニア語、ピンク色紙、代金引換のある小包送票

小包ラベル:Ljubljana 1 スロヴェニア語で表記されたラベル
オーストリア帝国時代のドイツ語で表記されたラベルとは全く異なる、新しいスロヴェニア独自のラベルを作って使用しています。
番号1996は、郵便局名とは全く紙質の違う別の紙に印刷されたものを使用しています。

料金手書き:
右上20 Krona切手の左側に22.40の記載、
中央右下に16, 4, 2.40, 22.40の記載

切手:
スロヴェニア1次チェインブレーカー20 Krona (Mi.119)
スロヴェニア2次チェインブレーカー60 para (Mi.128)
合計 5.6 Dinar (22 Kronen 40 vinar)

料金計算:
重量料金7 kg---4.0 Dinar
価格表記(保険)料金---無し
代金引換料金622 K (155.5 D)---200 Dinar以下の代金引換、宛先住所での支払い有り1.0 Dinar
配達料金---0.6 Dinar
合計5.6 Dinar (22 Kronen 40 vinar) (料金手書き、貼り付け切手と一致)

左下の青紫インクの622, 6.10, 628.10の手書きの解析
(1)622: 代金引換金額622 K (155.5 D)に一致するため代金引換金額と推定。
(2)6.10: 代金引換金額を小包発送者に郵便為替で送金する料金と推定
小包第4期の国内郵便為替料金によると、
為替金額が100 Dinarを越えて200 Dinar以下の場合の料金は0.70 Dinar、
為替金額が50 Dinarを越える場合の郵便為替の受取人の住所での支払い料金は0.20 Dinar
合計 0.90 Dinar (3.60 Kronen)

これだけでは6.10-3.60 = 2.50 Kronenが、まだ不足しています。
郵便為替証書の料金が2.50 Kronenの可能性も無きにしもあらずですが、これではあまりにも高すぎると思われますので、この可能性はないと思われます。
現時点で最も可能性が高いのは、
(a)郵便為替の速達料金 60 para (2.4 Kronen)
(b)郵便為替証書の料金 0.1 Kronen (10 vinar)
合計 2.50 Kronen であると考えられます。
参考文献: Nachrichtenblatt der Arbeitsgemeinschaft Jugoslawien und Nachfolgestaaten 38/89, (1989),
Beilage Nr.2 DIE POSTGEBÜREN IN KÖNIGTRICH DER SERBEN, KROATIEN UND SLOWENIEN 1919-1922
付録No.2 セルビア人、クロアチア人、及びスロヴェニア人の国の郵便料金1919-1920

消印: LJUBLJANA 1 24 III 21 -0 2b (LJUBLJANA 1郵便局1921年3月24日、消印識別記号2b)、上側がローマ字、下側がキリル文字の二文字表記のユーゴ型の消印。
時刻表示が「-0」とされている理由は不明です。昼の正午を意味する可能性もあります。

注意:消印の文字の位置
ユーゴ型のローマ字とキリル文字の二文字表記の消印は、
①ヴォイヴォディナでは、上側がキリル文字、下側がローマ字
②ボスニア・ヘルツェゴビナでは、上側がキリル文字、下側がローマ字
③スロヴェニアでは、上側がローマ字、下側がキリル文字
となっています。
スロヴェニア民族はローマ字だけを使用し、キリル文字を使う習慣が全くないため、ローマ字を上側に配置していると考えられます。

このカバーの希少性の解説
スロヴェニア1次チェインブレーカー20 Krona (Mi.119, 発行数6万8600枚)のカバーの入手は困難です。
発行数が6万8600枚と言っただけではピンと来ないのですが、日本の戦前の記念切手の発行数と比較すると、その少なさの感覚はつかめると思います:
1916年の裕仁立太子記念10銭8.6万枚、
1921年の郵便創始50周年記念10銭10万枚。
これらの日本切手のカバーがどれほど希少なものかは良くご存知のことと思います。
ここでご紹介している小包送票に貼られている発行数6万8600枚の1次チェインブレーカー20 Kronaは、1916年の裕仁立太子記念10銭8.6万枚、1921年の郵便創始50周年記念10銭10万枚よりも発行数が各々1万7400枚、3万1400枚も少ない切手です。
ほぼ同時代の日本のこれらの戦前の記念切手と、スロヴェニアの不足切手の直接比較は社会的・経済的状況が異なりますので困難ですが、日本人が良く知っている日本切手と比較した方がカバーの価値の類推には役立つと思われますのでご紹介いたしました。

210321裏 小包第4期 スロヴェニア2次、全国共通普通切手、傷病兵慈善切手の混貼り

2008年03月23日 10時53分09秒 | 小包第4期
210321裏 小包第4期 スロヴェニア2次、全国共通普通切手、傷病兵慈善切手の混貼り

小包到着印:OSIJEK B1B 23 MAR 921-N8 (OSIJEK1郵便局1921年3月23日昼間8時、消印識別記号B)
小包受取人サイン日付け:1921年3月24日
郵便局内事務処理印:OSIJEK B1B 25 MAR 921-N7 (OSIJEK1郵便局1921年3月25日昼間7時、消印識別記号B)
OSIJEK郵便局の消印は、ハンガリー式の「年-月-日」の順番を、「日-月-年」に変えてユーゴ化された消印です。ただし、年号表示はハンガリー式の3桁の921のままであり、ユーゴ式の2桁の21には変えられていません。
D欄のハンガリー王国の国王の王権を象徴する「イシュトヴァーン・クラウン」と呼ばれる王冠が消印から削除され、櫛形に変えられています。

210321表 小包第4期 スロヴェニア2次、全国共通普通切手、傷病兵慈善切手の混貼り

2008年03月23日 10時51分52秒 | 小包第4期
210321表 小包第4期 スロヴェニア2次、全国共通普通切手、傷病兵慈善切手の混貼り

小包第4期 ヴォイヴォディナからクロアチア宛て
小包送票:ユーゴスラヴィアPOŠTNA SPREMNICA、左上角にSHS 16 v、スロヴェニア語、ピンク色紙、代金引換のある小包送票
小包ラベル:Kula 640、上側がキリル文字、下側がローマ字の二文字表記のラベル
価格表記ラベル:淡黄色紙に赤文字でV (ハンガリー型のラベル)
代金引換ラベル:白紙に赤字で代金引換を表す言葉Pouzeće(セルボクロアート語), Remboursement(フランス語)を二ヶ国語で記載。

料金手書き:右下8.40, 3.60, 6.40, 18.40の記載

切手:
スロヴェニア2次チェインブレーカー10 para (Mi.121)
ユーゴスラヴィア全国共通普通切手25 para(Mi.150)、4 Dinar (Mi.131)
ユーゴスラヴィア傷病兵慈善切手25+25 para (Mi.161)、印刷時の大きな紙折れにより白い帯状の未印刷部分ができ、その部分の紙の一部が切れています
合計 4.6 Dinar (18 Kronen 40 vinar)(料金手書きと一致)

料金計算:
①代金引換のある小包送票代金(収入印紙として使用)
小包第4期のヴォイヴォディナ地方の代金引換のある小包送票の代金は、他の使用例では130 vinarが切手で徴収され収入印紙として小包送票に貼られています。しかし、この使用例では切手の追加貼り付けはされていません。
このため、このKula郵便局での使用例では、(a)現金で130 vinarを徴収した、(b)130 vinarの徴収は行なわなかった、のいずれかの取り扱いがされたと思われます。

②小包料金(郵便切手として使用)
重量料金4 kg---2.0 Dinar
価格表記(保険)料金3000 K (750 D)---0.9 Dinar
代金引換料金2870 K (717.5 D)---200 Dinarを越えて、宛先住所での支払い有り1.6 Dinar
通知料金---0.1 Dinar
合計4.6 Dinar (18 Kronen 40 vinar) (料金手書き、貼り付け切手と一致)

③傷病兵のための寄付金 25 para
小包の料金計算と切手の貼りつけは郵便局員により行われます。この使用例では、小包の発送者に金銭的に余分な負担のかかる傷病兵慈善切手25+25 para (Mi.161)を郵便局員は使用しています。小包発送者との話し合いによる同意があった可能性もありますが、寄付金を集めるための強制貼り付けであった可能性もあります。

消印: KULA 921 MAR 21 N4 C (KULA郵便局1921年3月21日昼間4時、消印識別記号C)、日付けはハンガリー式のままです。しかし、D欄のハンガリー王国の国王の王権を象徴する「イシュトヴァーン・クラウン」と呼ばれる王冠が消印から削除され空欄になっています。
この郵便局の郵便局名は、ハンガリー語もセルボクロアート語もKulaであり同一です。

210316裏 小包第4期 スロヴェニア不足切手5para, 50 para、保管料金

2008年03月22日 14時57分29秒 | 小包第4期
210316裏 小包第4期 スロヴェニア不足切手5para, 50 para、保管料金

到着印: VLASENICA 19 3 21 (VLASENICA 郵便局1921年3月19日)、ドイツ語のK. UND K. MILIT. POSTを削除してユーゴ化した消印。日付け数字の19だけが手書きされています。
小包受取人サイン日付け: 1921年4月2日

小包私書箱への小包保管料金
証示印:ドイツ語AUSGEFOLGT LAGERZINS 4 K. 40 h.
AUSGEFOLGTは「交付された」という意味であり、小包の受取人への引渡しを示します。LAGERZINSは「保管料金」という意味です。
VLASENICA郵便局に3月19日に到着し、4月2日に受取人がサインしています。
請求された小包保管料金は4 Kronen 40 heller = 1.1 Dinarです。
第4期の小包保管料金は、10 para/日ですから11日分の保管料金を請求されています。
到着翌日の3月20日から受け取り前日の4月1日までは13日間ですから、1.3 Dinar請求されると思われますが、実際には1.1 Dinarしか請求されていません。
これが、単なる計算間違いなのか、小包到着後の一定期間は保管料金適用の猶予期間があったのかは現時点では不明です。

保管料金徴収のための不足切手
para単位のスロヴェニア不足切手
5 para (Mi.44) 2枚、50 para (Mi.47) 1枚(左側が二重目打ち)
合計60 para (2 Kronen 40 vinar)

保管料金は4 Kronen 40 hellerと記載されているのに対して、実際の不足切手は60 para (2 Kronen 40 vinar)しか貼られていません。
最初は不足切手の脱落かと思いましたが、私が詳しく調べても切手の脱落の痕跡が見られませんでしたので、郵便局員が間違って60 para (2 Kronen 40 vinar)しか貼らなかったと推定しています。
これらの不足切手の消印は、小包受取人サイン日付け1921年4月2日の翌日の4月3日です。
恐らく、4月2日に小包を引き渡す際には、4 Kronen 40 heller = 1.1 Dinarを受取人から徴収したが、翌日に郵便局内で保管料金分の不足切手を貼り付ける際に間違って60 para (2 Kronen 40 vinar)しか貼らなかったと推定されます。

不足切手のプレーティング
中央5 para: 台切手15vinar石版のタイプ10、シート7、pos. 10
左側5 para: 台切手15vinar石版のタイプ20、シート7、pos. 20
右側50 para: 台切手15vinar石版のタイプ31、シート不明、pos. 81
プレーティングはカナダのA. H. Stokes博士の研究資料に基づきます。

210316表 小包第4期 スロヴェニア不足切手5para, 50 para、保管料金

2008年03月22日 14時56分00秒 | 小包第4期
210316表 小包第4期 スロヴェニア不足切手5para, 50 para、保管料金

小包第4期 ボスニア・ヘルツェゴビナ地域内便
小包送票:ユーゴスラヴィアPOŠTNA SPREMNICA、左上角にSHS 16 v、スロヴェニア語、ピンク色紙、代金引換のある小包送票
小包ラベル:SARAJEVO H.P.A. 649
料金手書き:無し

切手:
スロヴェニア2次チェインブレーカー6 Dinar (Mi.132)
ユーゴスラヴィア全国共通普通切手15 para(Mi.148) 2枚
合計 6.3 Dinar
備考:下側の15 para切手に大きな傷がついています。これは、小包の送達の際についた傷ではなく、このカバーをアルバムリーフ等に貼り付ける際に使用していたものを剥がす際に傷がついたと推定しています。私が入手した時にはこのような状態でした。残念ではありますが、カバーをアルバムリーフに装着する技術が未発達であった時代から87年間にも渡って多くのコレクターの間を渡り歩くと、このような傷がついたりすることがあるのは避けられないようです。

料金計算:
重量料金6.5 kg---4.0 Dinar
価格表記(保険)料金1300 K(325 D)---0.6 Dinar
代金引換料金1200 K 25 v(300.625 D)--- 200 Dinarを越えて、宛先住所での支払い有り1.6 Dinar
通知料金---0.1 Dinar
合計6.3 Dinar (貼り付け切手と一致)

消印: SARAJEVO 1 16. III. 21 15 11 (SARAJEVO 1郵便局1921年3月16日15時、消印識別番号11)、上側がキリル文字、下側がローマ字の二文字表記のユーゴ型消印

210311表 小包第4期 130 vinar分の切手を小包送票代金収入印紙として使用

2008年03月20日 16時17分53秒 | 小包第4期
210311表 小包第4期 130 vinar分の切手を小包送票代金収入印紙として使用

小包第4期 ヴォイヴォディナで代金引換のある小包送票の販売代金領収のための収入印紙としてチェインブレーカー1次15 vinar切手 2枚と全国共通切手25 para (100 vinar)切手を収入印紙として使用
ヴォイヴォディナからセルビア宛て。

小包送票:
ユーゴスラヴィアPOŠTNA SPREMNICA、左上角SHS 16 v、スロヴェニア語、ピンク色紙、代金引換のある小包送票、左側クーポンが残されたままの使用例。
クーポンには10 vの収入印紙が印刷され、さらに左上にSHS 16 vが印刷されています。
これは、当初は小包送票の販売価格は10 vinarで計画されていたものが、16 vinarに値上げされたため、左上にSHS 16 vを追加印刷したものです。
新しい版を作り直す手間を省くためのこのようなやり方は、オーストリア帝国で良く行われていたものを真似ています。
16 vinarの価格に関しては、リュブリャナ郵政局の通達URDNI LIST LJUBLJANA 1919の51ページに1919年5月1日付の公示があり、小包送票の販売価格がオーストリア帝国時代から引き続いていた12 hellerから16 vinarに値上げされたことが公示されています。
ここで注意しなければならないのは、最初はオーストリア帝国の小包送票の価格は10 hellerであり、国王の肖像に10 hと書かれた印紙が印刷されていました。その後、第一次世界大戦の戦時価格として12 hellerに値上げされたため、12 hという追加印刷が左上に行なわれていました。
リュブリャナの国民政府は、当初は戦時価格12 heller(vinar)を元の価格10 vinarに戻すことを想定して小包送票の印紙10 vを印刷したと考えられます。しかし、その後の物資不足に伴う紙やインクなどの値上がりに伴い、小包送票の値上げが避けられなくなったため、16 vinarに値上げして、オーストリア帝国のやり方を真似て左上にSHS 16 vという新しい販売価格を追加印刷した考えられます。
参考文献:
Nachrichtenblatt der Arbeitsgemeinschaft Jugoslawien und Nachfolgestaaten 97-98/2006, p.1931-1945 (2006)
Prof. Dr.-Ing. Klaus Wieland
SHS 1918 bis 1921: Fiskalische Zusatzfrankaturen auf Postanweisungs-Formularen
SHS 1918年-1921年: 郵便為替証書への収入印紙としての追加貼り付け
備考: この研究論文にはリュブリャナ郵政局による小包送票の値上げも記載されています。

クーポンの部分のスロヴェニア語は下記のように解読できます。
収入印紙に印刷されている「NARODNA VLADA V LJUBLJANI」は、「national government in Ljubljanaリュブリャナの国民政府」という意味です。
Odrezekは「coupon クーポン」、sprejemini pečatは「acceptance stamp受領印紙」、Pošiljateljは「sender 発送者」という意味です。
備考:スロヴェニア語の翻訳に使用した辞書
DOŠA KOMAC, English-Slovene / Slovene-English Modern Dictionary
1998, HIPPOCRENE BOOKS, New York

小包ラベル:Vršac 1、上側がキリル文字、下側がローマ字の二文字表記
ヴォイヴォディナのこの都市の名称は、ハンガリー語Versecz、セルボクロアート語Vršac です。
参考文献: スイスのThomas Artel氏により提供されたヴォイヴォディナの消印の研究リスト

代金引換ラベル
ピンク色紙に黒字で代金引換を表すハンガリー語のUTÁNVÉTELとフランス語のREMBOURSEMENTを二ヶ国語で記載

料金手書き:
中央右下8.40, 6.40, 14.80の計算の記載有り
中央下に1.30の鉛筆書きあり

切手:
①代金引換のある小包送票代金(収入印紙として使用)、表側に貼り付け
スロヴェニア1次チェインブレーカー15 vinar (Mi.102)切手 2枚 =30 vinar
ユーゴスラヴィア全国共通普通切手25 para (Mi.150) = 100 vinar
合計 1 Krone 30 vinar(中央下の1.30の鉛筆書きと一致)
②小包料金(郵便切手として使用)、裏側に貼り付け
スロヴェニア1次チェインブレーカー5 Krona (Mi.111)
スロヴェニア2次チェインブレーカー10 para (Mi.121) 2枚, 2 Dinar (Mi. 130)
ユーゴスラヴィア全国共通普通切手25 para (Mi.150)
合計 3.7 Dinar (14 Krona 80 vinar)(中央右下の料金手書き14.80と一致)

料金計算:
①代金引換のある小包送票代金(収入印紙として使用) 130 vinar(中央下の1.30の鉛筆書きと一致)
②小包料金(郵便切手として使用)
重量料金5 kg---2.0 Dinar (8 Kronen)
価格表記(保険)料金2924 K(731 D)--- 200 Dinarを越えて1000 Dinar以下、宛先住所での支払い有り1.6 Dinar (6.4 Kronen)
代金引換料金---無し
通知料金---0.1 Dinar (0.4 Kronen)
合計3.7 Dinar (14.8 Kronen) (中央右下の料金手書き14.80, 小包料金貼り付け切手と一致)

備考
小包料金の手書きは14.8 Kronenであり、この金額には「代金引換のある小包送票代金(収入印紙として使用) 130 vinar)」が含まれていません。このため明らかに両者は別扱いがされており、130 vinar が小包料金ではなく、小包送票の販売代金領収のための収入印紙である証拠です。
ただし、収入印紙130 vinar 分だけが徴収されたのか、あるいはこれと印刷された16 vinar (4 para)も併せて合計146 vinar徴収されたのかは不明です。

消印:VRŠAC1 11. III. 21. 11 7(VRŠAC1郵便局1921年3月11日11時、消印識別番号7)、上側がキリル文字、下側がローマ字の二文字表記の消印。この都市の名は、ハンガリー語Versecz、セルボクロアート語Vršac です。