200518裏 第4期返送便、特殊な保管料金, 不足切手ウィーン版1, 10 Krona
(1)到着印および切手の消印:LJUBLJANA 1 18. V. 20 5c (1920年5月18日)、スロヴェニア語表記、ドイツ語表記LAIBACHを削除してユーゴ化した消印
小包受取人サイン日付:1920年5月18日
(2)ダルマチアのJanjina郵便局での小包の保管料金13 K 80と、小包返送料金9.60 K、合計23 K 40の徴収
スロヴェニア不足切手ウィーン印刷1 Krona(Mi.41II, 発行数10万枚) 3枚
スロヴェニア不足切手ウィーン印刷10 Krona(Mi.43II, 発行数わずか2.5万枚) 2枚, (上側の切手は右側が無目打ち)
スロヴェニア普通切手20 vinar (Mi.103凸版) 2枚、不足を示すTまたはPortoのハンドスタンプ加刷をせずに、普通切手を不足切手として使用しています。
合計23 Krona 40 vinar
尚、不足切手の発行枚数は下記の文献の記載によります:
KATALOG POŠTANSKIH MARAKA JUGOSLOVENSKIH ZEMALJA 1968,
翻訳: ユーゴスラヴィア郵便切手カタログ1968年版
BIRO ZA POŠTANSKE MARKE BEOGRAD 翻訳:ベオグラード郵便切手局
(3)このカバーの希少性の解説
スロヴェニア不足切手ウィーン印刷のKrona単位の高額面の切手は、発行数が少ないためカバーの入手は困難です。
この使用例では、発行数10万枚の1 Kronaが3枚貼られ、さらに発行数わずか2.5万枚の10 Kronaが2枚も貼られています。
発行数が10万枚、2.5万枚と言っただけではとピンと来ないのですが、日本の戦前の記念切手の発行数と比較すると、その少なさの感覚はつかめると思います:
1916年の裕仁立太子記念10銭8.6万枚、
1919年の飛行郵便試験記念1.5銭5万枚、3銭3万枚、
1921年の郵便創始50周年記念10銭10万枚。
これらの日本切手のカバーがどれほど希少なものかは良くご存知のことと思います。
ここでご紹介している小包送票に貼られている発行数10万枚のスロヴェニア不足切手ウィーン印刷1 Kronaは、1921年の郵便創始50周年記念10銭10万枚と同じ発行数であり、それが3枚も貼られています。
そして、発行数わずか2.5万枚のスロヴェニア不足切手ウィーン印刷10 Kronaは、1919年の飛行郵便試験記念3銭3万枚よりも発行枚数が5000枚も少なく、しかもそれが2枚も貼られています。
ほぼ同時代の日本のこれらの戦前の記念切手と、スロヴェニアの不足切手の直接比較は社会的・経済的状況が異なりますので困難ですが、日本人が良く知っている日本切手と比較した方がカバーの価値の類推には役立つと思われますのでご紹介いたしました。
(4)右上の黒色のハンドスタンプMの解説
スロヴェニアの首都リュブリャナのLjubljana 1郵便局だけで使用された、小包の局内管理のためのハンドスタンプがあることが知られており、文献(1)と(2)に次のようにまとめられています。
①A: Amtlich 公用、官用;公用小包の場合に押されており、軍隊宛ての小包にも使用された例が報告されています。
②E: Express 速達;速達扱いの小包送票に押されています。
③M: Magazin 倉庫、貯蔵庫;これはLjubljana 1郵便局の小包私書箱に保管される小包に押されています。
したがって、この使用例に押されているハンドスタンプMは、この小包がLjubljana 1郵便局の小包私書箱に保管されたことを示しています。
この使用例の小包私書箱の保管料金の徴収は、この小包送票では行われておらず、他の小包と一括して別の書式で処理された可能性が高いと思われます。
備考:商人のスタンプ
返送された小包の受取人は、氏名と居住都市Ljubljanaの記載されたスタンプを使用しています。
第1期小包料金の項でご紹介した文献(1)の著者Dr. Helmut Kobelbauerは、「特に、定期的に高頻度に郵便物が届く商人がこの特別サービスを利用した」としています。そして、リュブリャナ1郵便局での使用例を示し、商人が自分の商店の名前の入った楕円形のスタンプを押して受取日を記入している例を紹介しています。また、Dr. Kobelbauerは、「商人はこのようなスタンプを使用するが、個人は通常はこのようなスタンプを使用しない」と記載しています。このような商人のスタンプの存在は、小包私書箱の使用の判断の根拠になるようです。
今ご紹介している使用例で、返送された小包の受取人は、氏名と居住都市Ljubljanaの記載されたスタンプを使用していますので、多量の小包等の郵便物を受け取る商人であると考えられます。
参考文献
(1)H. Kobelbauer
Nebenstempel der Paketabgabe beim Postamt Ljubljana 1
リュブリャナ1郵便局による小包引渡しの証示印
Arge der Balkanländer p.28, No. 161, March, 2003
(2)Helmut Kobelbauer
Ergänzung und Anmerkung 補足および注釈
Nachrichtenblatt der Arbeitsgemeinschaft Jugoslawien und Nachfolgestaaten, p.1673-1675, 85-86/2004