チェインブレーカー及び関連領域の郵便史

ユーゴスラヴィア建国当時~1922年頃までの旧オーストリア・ハンガリー帝国地域のチェインブレーカーを中心とした郵便史

210521裏 小包第4期~5期 保管料金、スロヴェニア不足切手1, 3, 8 Dinarの使用例

2008年04月13日 10時22分15秒 | 小包第5期
210521裏 小包第4期~5期 保管料金、スロヴェニア不足切手1, 3, 8 Dinarの使用例

到着印:CELJE 27. II. 21. -4 1b (CELJE郵便局1921年2月27日4時、消印識別記号1b)、上側がローマ字、下側がキリル文字の二文字表記のユーゴ型の消印。

保管料金徴収指示
Ležarina zar od 1/3 – 19/5. 21 62.40 K u Celje 20/5. 21
「1921年3月1日~5月19日までの保管料金62.40 K、Celjeにて 1921年5月20日」

保管料金計算
小包第4期 3月1日~4月30日、61日間、10 para/日、合計6.1 Dinar
小包第5期 5月1日~5月19日、19日間、50 para/日、合計9.5 Dinar
総計15.6 Dinar (62.40 Kronen)、表側の記載金額62.40 Kと一致。

小包の宛て先のCelje郵便局で保管され、Celje郵便局で不足切手が貼り付けられて、Celje郵便局の消印で不足切手が消印されています。
このため、小包の保管料金は小包の受取人がCelje郵便局で支払ったが、小包の受取りは拒否したため、小包発送人のいるZagrebへ返送されたと考えられます。
小包の返送料金に関しては、小包送票には全く記載されていませんので、Zagrebの郵便局で処理されたと推定されます。

不足切手
5 para (15 vinar石版) 2枚、左側の切手は目打ちがシフト
50 para (15 vinar石版)
1 Dinar (30 vinar石版)
3 Dinar (30 vinar凸版、右側のみ直線ルレット、上下左側はノコギリルレット) 2枚
8 Dinar (30 vinar石版)

スロヴェニアの加刷不足切手の発行枚数は少なく、以下の通りです。
5 para (15 vinar石版) 72万枚
50 para (15 vinar石版) 72万枚
1 Dinar (30 vinar石版) 30万枚
3 Dinar (30 vinar凸版) 9万枚
8 Dinar (30 vinar石版) 12万枚
発行数9万枚の3 Dinar (30 vinar凸版)が2枚貼られていること、
発行数12万枚の最高額面の8 Dinar (30 vinar石版)が貼られていること、
を考慮すると、この使用例は非常に稀なものであると思われます。

発行数が9万枚、12万枚と言っただけではピンと来ないのですが、ほぼ同年代の日本の戦前の記念切手の発行数と比較すると、その少なさの感覚はつかめると思います。例えば、
1916年の裕仁立太子記念10銭8.6万枚、
1921年の郵便創始50周年記念10銭10万枚。
これらの日本切手のカバーがどれほど希少なものかは良くご存知のことと思います。
ここでご紹介している小包送票に貼られている発行数9万枚のスロヴェニア不足切手3 Dinar (30 vinar凸版)は、1916年の裕仁立太子記念10銭8.6万枚とほぼ発行数が同じで、1921年の郵便創始50周年記念10銭10万枚よりも発行数が1万枚も少ない切手です。
また、発行数12万枚の8 Dinar (30 vinar石版)も、カバーではほとんど見ることのできないものです。
ほぼ同時代の日本のこれらの戦前の記念切手と、スロヴェニアの不足切手の直接比較は社会的・経済的状況が異なりますので困難ですが、日本人が良く知っている日本切手と比較した方がカバーの価値の類推には役立つと思われますのでご紹介いたしました。

不足切手の消印:CELJE 21. V. 21. 2c (CELJE郵便局1921年5月21日、消印識別記号2c)、上側がローマ字、下側がキリル文字の二文字表記のユーゴ型の消印。

小包返送時のZAGREBの到着印:
ZAGREB 21-MAJ-21 N8 W2W (ZAGREB2郵便局1921年5月21日昼間8時、消印識別記号W)、ユーゴ化した消印
ハンガリー型の「年-月-日-時刻」をユーゴ型の「日-月-年-時刻」の順に変更しています。
ハンガリー型消印のD欄のハンガリー王の王権を示す「イシュトヴァーン・クラウン」は削除されて、空欄になっています。
年号は、ハンガリー型の3桁の921をユーゴ型の2桁の21に変更しています。

返送小包の受取人サイン日付け:1921年5月25日

210521表 小包第4期~5期 保管料金、スロヴェニア不足切手1, 3, 8 Dinarの使用例

2008年04月13日 10時21分14秒 | 小包第5期
210521表 小包第4期~5期 保管料金、スロヴェニア不足切手1, 3, 8 Dinarの使用例

小包第4期~5期 クロアチアからスロヴェニア宛て、返送便

小包送票:ユーゴスラヴィアPOŠTNA SPREMNICA、左上角にSHS 16 v無し、スロヴェニア語、ピンク色紙(ただし色は薄い)、代金引換のある小包送票

小包ラベル:ZAGREB 6 38 29
料金手書き:無し(右下角の4080は重量4080gを意味すると考えられます)

切手:
スロヴェニア2次チェインブレーカー10 para (Mi.121) 2枚
ユーゴスラヴィア全国共通普通切手4 Dinar (Mi.156)
合計 4.2 Dinar

料金計算(小包第4期):
重量料金4080 g---2.0 Dinar
価格表記(保険)料金---無し
代金引換料金2812 K (703 D)--- 200 Dinarを越えて、宛先住所での支払い有り1.6 Dinar
配達料金---0.6 Dinar
合計 4.2 Dinar (貼り付け切手と一致)

消印: ZAGREB 25 FEB 921 -8 A6A (ZAGREB 6郵便局1921年2月25日8時、消印識別記号A)、不完全にユーゴ化した消印
ハンガリー型の「年-月-日-時刻」をユーゴ型の「日-月-年-時刻」の順に変更しています。
ハンガリー型消印のD欄のハンガリー王の王権を示す「イシュトヴァーン・クラウン」は削除されて、空欄になっています。
年号は、ハンガリー型の3桁の921のままであり、ユーゴ型の2桁の21には変更されていません。
時刻表示は「-8」と表示されており、ハンガリー型消印に見られたNまたはEの記号が削除されています。

返送指示
紫色鉛筆で中央部に記載: スロヴェニア語nazaj Zagreb「ザグレブへ返送」

保管料金徴収指示
鉛筆で下部にスロヴェニア語で記載
Ležarina zar od 1/3 – 19/5. 21 62.40 K u Celje 20/5. 21
「1921年3月1日~5月19日までの保管料金62.40 K、Celjeにて 1921年5月20日」

備考: スロヴェニア語の翻訳に使用した辞書
DOŠA KOMAC, English-Slovene/ Slovene-English Modern Dictionary, 1998, HIPPOCRENE BOOKS, New York