モウズイカの裏庭2

秋田在・リタイア老人の花と山歩きの記録です。

秋田駒ヶ岳の花図鑑(1)

2024年01月04日 | 秋田駒・乳頭/花と山容

(昔、同様の図鑑を一度作ってますが、昨年三月、旧ホームページ消失に伴い、無くなったので、作り直しました。)

古い話で恐縮。1990年代の初め頃だったか、

山と渓谷社が雑誌『山と渓谷』誌上で読者を対象に高山植物の人気投票を行ったところ、
堂々第1位に輝いたのは、コマクサだった。
さらに2、3位あたりにエーデルワイス類(ウスユキソウの仲間)とチングルマ、
少し離れてニッコウキスゲやイワカガミもあったように記憶している。
いずれも今回紹介する秋田駒で見られる花ばかりだが、
特に女王格のコマクサとエーデルワイス類(ここではミヤマウスユキソウ)が
一緒に観られる贅沢な山は国内広しといえども、秋田駒ヶ岳ぐらいではなかろうか。

コマクサ(右下にタカネスミレ) 2015/06/21
 

(右上)ミヤマウスユキソウ 2015/06/21


この山、ほかにも花の種類が豊富であり、枚挙にいとまもないのだが、
少々残念なのは特産種が無い点だ。

奥羽山脈に連なり、いまだに蒸気を吹き上げる新しい火山だから、
それはしょうがないか。

しかしエゾツツジやイワブクロのように中部山岳に産しない北方系のキャラクターや、
タカネスミレのように分布が限られ、なおかつみごとに群生する花もある。

2015/06/21 タカネスミレの群生



もちろんヒナザクラやトウゲブキ、ハクサンシャジンなど
東北の高山植物常連メンバーもそろっている。

日本アルプスならば2500m以上の高所でやっと面会できる高嶺の花達に、
ここでは、1300m程度の高さでいとも簡単に面会できる。
緯度が高い分、高山帯になる高度が下がってくるのは当然だが、
ここでは下がり方が少し急激すぎるような気もする。
それには冬の厳しい気候や地形、火山活動などが関係しているものと思われる。
我が郷土にこんな素晴らしい山があることを改めて誇りに思う。
しかもかなり上まで車で行け、
(八合目から始まる新道コースならば)歩き出して

5分もしないうちに数多の高山植物に対面出来る。
あとは1時間ちょっと重力に抗するだけで、山頂や核心部分に至るのだから、
私のような足弱不精者にはとても有難い山だ。

秋田駒ヶ岳で今までに私が歩いた軌跡をマップ上に赤い線で記してみた。




秋田県側からの代表的な登山コースである
新道コースや
しゃくなげコースを通って、

男岳、男女岳、横岳、焼森などのピーク、
間にある阿弥陀池、浄土平、馬ノ背稜線、
更に南側爆裂火口内の
馬場ノ小路(通称:ムーミン谷)や大焼砂の稜線を巡っている。

本図鑑で取り上げた花はこの範囲で撮影したものばかりだ。
しかし秋田駒ヶ岳には他にも登山コースが有る。
岩手県側の国見温泉からのコースのうち、
大焼砂分岐より南、横長根と国見温泉の間はまだ歩いたことがない。
中生保内から金十郎長根を登り、男岳山頂に至るコースや
浄土平から旧硫黄鉱山跡を通り、新道コースに至るコース(旧道?)も同様だ。
本図鑑ではこれら未踏区間の花情報が欠如している点をお見知りおき頂きたい。

植物の掲載順はおおむね、開花が早いものからとしたが、
開花期間の長いものや果実が顕著なもの、その他特徴的な一部の花は複数回登場させている。
植物写真の撮影年月日は貴重な情報なので、極力掲載することにした。

植物名の同定にあたっては、既存の高山植物関係の図鑑以外に、
工藤茂美・著、『秋田駒ケ岳・花の旅』(栃の葉書房)(絶版)、
田村武志・著、『秋田駒ケ岳花抒情』(秋田文化出版)、
日野東+葛西英明・著、フラワートレッキング秋田駒ヶ岳(無明舎出版)などの書籍も参考にさせて頂いた。
何か間違い等にお気づきの方はご指摘頂きたい。
これら書籍とは別に秋田駒ヶ岳の高山植物については、
最近、ホームページで
秋田駒ヶ岳 乳頭山 みちのく最大級の高山植物を誇る花の山』が立ち上がっていた。
こちらはまだ見つけたばかりなのでまだ見ていない。
これから訪ねてみようと思う。


【初夏の花1】
概ね六月から七月上旬にかけて咲く花を扱ってみた。
この時期、秋田駒に咲く花の代表は、今、紹介したばかりのタカネスミレだが、
まずはやや低所に咲く花から始めてみる。
次の写真は駒ヶ岳八合目付近から主峰の男女岳(おなめだけ)方面を眺めたものだ(2023/06/26撮影)。




この付近の標高は約1310mであるが、
八幡平のようにアオモリトドマツは無く、ダケカンバなどの高木も見当たらない。

この先、新道コースを歩くと、標高1458mの片倉岳展望台(赤土広場)までの間は
やや背の高い低木や笹、高茎草本の茂みの中を歩くことになる。
東北地方北部の森林限界はおよそ1800m前後と言われるが、
秋田駒ではこれが500mくらい降下している。
かといってハイマツが優勢なわけでもないので、純粋な高山帯とは呼び難い。
鳥海山や月山など日本海側の高山同様、秋田駒では偽高山帯が発達している。

2013/06/06 ミヤマスミレの群生



ミヤマスミレ Viola selkirkii 
2013/06/06
   


(右上)ハクサンチドリ Dactylorhiza aristata 
2015/06/21

ハクサンチドリは新道コース下部(八合目付近)の道端には雑草のように生えているが、

それ以外の場所では疎らだ。何故なんだろう。

ハクサンチドリ(白花)2023/06/26
 

(右上)イワテハタザオ Arabis serrata var. japonica f. fauriei 
2021/06/17 大焼砂にて。

イワテハタザオは岩手山と秋田駒ヶ岳の特産と言われるが、
下写真は新道コース下部(八合目近く)の赤土斜面で見たもの。

2015/06/21


こちらは葛西英明氏の著作、『フラワートレッキング秋田駒ヶ岳』では

エゾノイワハタザオとされているようだが、私には識別出来なかった。 

ショウジョウバカマ Heloniopsis orientalis 2015/06/21
 


(右上)コミヤマカタバミ Oxalis acetosella
 2015/06/21

秋田駒にはミヤマカタバミもあるが、
八合目より上の灌木林下で見かけるものは
コミヤマカタバミの方が多いように思った。
花弁には多少なりとも紅色の筋があった。


ゴゼンタチバナ Cornus canadense 2023/06/26
   


(右上)ツマトリソウ Trientalis europaea
 2023/06/26


ウラジロヨウラク Menziesia multiflora
 2023/06/26



ベニバナイチゴ Rubus vernus 2015/06/21



マイヅルソウ Maianthemum dilatatum
 2015/06/21  
 


(右上)ズダヤクシュ Tiarella polyphylla
 2015/06/21


ヒロハユキザサ Maianthemum yesoense  2023/06/26
 


(右上)サンカヨウ Diphylleia grayi
 2023/06/26


秋田駒には黄色いスミレが三種類見られる。
歩き出してすぐ目につくのは、低山性のオオバキスミレ。
新道コースでは片倉岳展望台の手前に群生している。


オオバキスミレ Viola brevistipulata
 2015/06/21



ミツバオウレン Coptis trifolia
 1980年代、撮影年月日は不明。
   


(右上)ヒメイチゲ Anemone debilis
 1980年代、撮影年月日は不明。


秋田駒ヶ岳の花図鑑(2)に続く。


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4 コメント

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Unknown (ミルク)
2024-01-04 13:08:10
駒ヶ岳は花が多くて楽しみですね。
もう絶対自力では登れないので
お花楽しみにしてます。
返信する
ミルクさんへ。 (モウズイカ)
2024-01-04 14:21:58
いつもありがとうございます。
秋田駒ヶ岳は花の種類が多いので、今のところ7頁になる見通しです。
頁が多くなりますが、よろしくお願い致します。
返信する
Unknown (chato2009)
2024-01-24 22:02:51
こんばんは。
若い頃、コマクサを見たくて山に登りました。ライチョウを見たくて山に登りました。ブロッケンを見たくて山に登りました。願いは全て叶いました。今はハイキング程度です。
高尾山にでも行ってみます。
返信する
chato2009さんへ。 (モウズイカ)
2024-01-25 08:16:09
コメントありがとうございます。
メイちゃん。ホント可愛いですね。毎日、癒されております。今後もよろしくお願いします。
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