日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

三権分立は機能を十分果たされているか

2023年08月19日 11時46分52秒 | 日々雑感
 三権分立とは権力がひとつの機関に集中する弊害を抑止し、人民の権利や自由の確保を保障しようとするシステムである。権力分立の源流をたどると、古代ギリシャまでさかのぼるそうだが、近代的な権力分立の考えはモンテスキュー等により確立したようだ。この考え方は現代に至るまで受け継がれており、主要国家では一般的に国家権力を立法権・行政権・司法権の三権に分類している。

 1788年に発効したアメリカ合衆国憲法は、最も厳格な三権部立を採用したようだが、現在も円滑に機能しているだろうか。合衆国憲法は、最高裁判所の裁判官は大統領が上院の助言と同意に基づいて任命すると定めている。通常は、大統領の政治的立場に近い法律家が最高裁長官や判事の候補となるそうで、トランプ前大統領の時には共和党に近い保守系の判事が指名されていた。その任期は一生涯続くそうで、死亡により席が空くまで次の判事等の採用はないそうだ。

 結果、保守派が過半数となった米連邦最高裁が、人工妊娠中絶を憲法上の権利と認める1973年の判決を覆す判断を下したのだ。これはバイデン現大統領の意向に反するものであろうが、三権分立の精神から大統領と言えども逆らうことは出来ない。

 イスラエルでは今年7月、ネタニヤフ政権が進める司法制度改革の関連法案の採決が強行されたことに抗議し、市民が国会に続く道路を占拠するなど大規模なデモに乗り出している。改革案では、裁判官任命への政権の影響力を強め、最高裁の判断を国会が覆すことができるようにする内容で、ネタニヤフ政権は議会と司法のバランスを正すのに必要だ、と釈明しているが、立法に対する司法のチェック機能が低下し、三権分立が崩壊するとの懸念が抗議活動を激化させているようだ。

 わが国でも、司法権のトップである最高裁判所の長官は内閣の指名に基いて天皇が任命すると憲法に定めている。しかし天皇の任命は形ばかりであり、実質的には内閣の長である首相に任命権がある。完全分立を実現するとなれば総選挙で決めるべきであろうが、司法の世界は行政に比べその仕事ぶりは国民には広く知れ渡っていない。そこで、実質的に総選挙で選ばれた首相に任命権があるのも致し方ないが、その長官が首相に気兼ねをするようになっては、三権独立の崩壊である。

 選挙の度に1票の格差が問題になる。最高裁判所は違憲と断定せずに違憲状態であるとの判断を下す。政治の混乱を避ける為であろうが、立法、行政はこれに甘んじて抜本的改革を先延ばしている。政治の混乱は司法の責任ではない。政府に気兼ねなく断固たる判断を下すべきである。

 司法と政府の癒着に関しては、政府は2020年に当時東京高検検事長の黒川氏の定年を半年間延長する閣議決定をし、検事総長就任を可能にしたが、黒川氏の掛マージャン問題が発覚し見送られた。典型的な癒着と思われるが、司法も行政の甘い言葉に惑わされぬよう、襟を正して貰いたいものだ。
2023.08.19(犬賀 大好ー939)