日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

トランプ次期大統領の二枚舌

2016年12月14日 09時29分05秒 | 日々雑感
 男子たるもの、一度 ”カラスが白いと言ったら、死んでも言い続けろ” とは、少々言い過ぎではあるが、人間はそれくらい自分の発言に責任を持て、と教えられたものだ。しかし、次期米国大統領トランプ氏は発言をたびたび簡単にひっくり返えすが、詫びれた様子はなく、またそれを非難する声も余り聞こえてこない。

 例えば、イスラム教徒に対する差別発言を選挙運動中しばしば行ったが、当選後学校の児童の間での差別発言が問題となると、それはいけないことと、臆面もなく言う。大統領が自ら差別発言を扇動することは大問題であるが、こうも簡単に前言を翻してよいだろうかと考えてしまう。

 トランプ氏の発言は、信念に基づくものではなく、その場の雰囲気を盛り上げるための戯言のようなものかも知れない。米国国民もそのことを理解しており、過激な発言も単なるエンターテイメントと理解し、大統領になってもその通りやる筈はないと、安心して投票したかも知れない。

 トランプ氏は、メキシコとの国境に壁を設置、パリ協定やTPPからの離脱、北米自由貿易協定(NAFTA)の見直しや中国製品の輸入関税引き上げ、を選挙運動中訴えた。日本人並みに ”武士に二言は無い” 、とそのまま実行に移すと世界的にも大問題となるが、ここでは前言を翻してくれた方が、何かと安心である。

 そもそも、政治家の公約は何かを犠牲にしなければ実現が難しいとの局面を有する。世界の出来事はこんがらがった糸のように繋がっている。オバマ大統領も核廃絶を訴えてノーベル賞まで受けたが、核兵器削減ですら一向に進んでいない。核廃絶は、北朝鮮のように核兵器を誇示する国を抹殺でもしない限り、実現できないだろう。トランプ氏の地球温暖化陰謀説も、米国各地における異常気象も神様のせいにしておけば、安心して石炭や石油を使用できるとの思惑であろう。将来を犠牲にして、今を享受するは日本でもよく行われており、珍しいことではない。何処かで、犠牲者の出ることを覚悟しなければ、公約の実現は難しい。

 また先日、トランプ氏は環境保護局長官にスコット・プルイット氏を起用することに決めたようである。プルイット氏は地球温暖化対策に対する規制反対の強硬派であるとのことだ。どうも、地球温暖化に対しては世界の潮流に従い前言を翻すと期待していたが、前言をそのまま実行するのではないかと危惧される。

 なお、中国は米国と共に初めてパリ協定に参加し、世界の指導者たらんことを示そうとしていたが、米国が離脱した場合、なおかつこの姿勢を固持するであろうか。中国の大都会での排出ガスの影響は抜き差しならない状態に追い込まれているが、中国経済の減退まで覚悟出来ているだろうか。今後の様子で中国の本気度が分かる。温出効果ガスの二大排出国である米国と中国が離脱するとパリ協定はもぬけの殻となってしまうが、ここで日本の真価が問われる。

 安倍晋三首相は先月中旬、ペルーで行われるAPEC首脳会議への出席の途中、ニューヨークでトランプ次期大統領と会談した。会談後の記者会見で安倍首相は、”信頼できる指導者だと確信した”と述べ、日米間の”同盟というのは、信頼がなければ機能しない。私は、トランプ次期大統領は、まさに信頼することができる指導者だと確信した”と述べた。世界の首脳に先駆けてトランプ氏と会談できたことに舞い上がっている様子であった。

 ただ、ゴルフでは意気投合してもトランプ氏の腹はまだ読めない筈だ。何が本心で、何が戯言か、記者会見で外交辞令上、腹の内は読めなかったと批判的な発言を出来ないことも確かであろうが、少々はしゃぎ過ぎの感でもあった。

 トランプ氏が選挙運動中過激に発言していたことが、当選後穏やかになったと一安心してか、ニューヨーク株式市場は度々過去最高値を更新しているとの話であるが、期待し過ぎではなかろうか。政治家として、あるいはビジネスマンとして、その時の一番の利益を優先させることは当たり前と言う人もいるが、間違いと分かっても前言を変えない人間の方が人として信頼できる。今後、トランプ氏の発言で、世界は右往左往することになるだろう。2016.12.14(犬賀 大好-294)

先送りされる原発ゴミ処理問題

2016年12月10日 09時51分08秒 | 日々雑感
 環境省は11月9日、東京電力福島第1原発事故で生じた除染廃棄物を最長30年間保管する中間貯蔵施設を福島県双葉町と大熊町の両村に本格着工すると発表した。現在、福島県においては、除染に伴い発生した大量の土壌や廃棄物等が仮置場や住宅の敷地内、学校の校庭等に保管されており、福島の復旧・復興に大きな障害となっている。保管開始は来年秋以降と予定されており、当初の計画より2年半以上遅れている。遅れの原因は地元の理解と用地の取得の困難さにあるとのことだ。原発事故からもうすぐ6年、やっとここまでたどり着けた分けだ。

 しかし、あくまで中間貯蔵であり、最終ではない。国は30年後に汚染土の県外搬出を完了するとの法律を作った。しかし、中間貯蔵施設を着工するための方便であることは間違いない。後世の人が何とかしてくれるだろうとの先送り体質丸出しである。

 今でも決められない最終処分場を将来誰がどこに決めることが出来るのであろうか。決めたところでそこに大きな利益を生むわけではないので、誰もやりたがらないに決まっている。日本の少子化が進み、限界集落が無人化するのを待っているのであろうか。しかし、地権者が居なくなるわけではない。恐らくこの中間貯蔵施設がそのまま最終処分場になることだろう。30年も経てば、ゴミ問題も忘れ去られていると期待しているのが見え見えである。

 この施設は、福島県内で出る汚染土のみを保管する。汚染土に関しては、自分の県で出たゴミは、自身の県内で処理するのが基本方針であった筈だが、宮城県など福島県以外の県の施設はどうなっているのであろうか。恐らく宙に浮いたままの状態であろう。比較的放射能レベルの低いゴミですらこの有様であるので、福島第一原発等の廃炉に伴って生ずる高汚染ゴミや核廃棄物は一体どこに保管するつもりであろうか。

 11月30日、日本原子力開発機構は、原発の使用済み燃料再処理工場「東海再処理施設」の廃止に向けた工程を原子力規制委員会に報告した。廃止完了までに70年かかり、当面の10年間に必要な費用は2170億円と見込むそうだ。費用もさることながら、ここでもゴミの保管場所が問題となるはずだ。

 施設内の高放射能個体廃棄物貯蔵庫のプール底には約800個の廃棄物入りのドラム缶が乱雑に積み上げられているとの話だ。未来永劫そこに置けないことは分かっていながら、取り出すことまで考慮していなかったためと説明しているが、将来を考えない、何とも無責任な言動であろうか。

 また、高速炉開発会議は、廃炉が検討されている高速増殖原型炉もんじゅに代わり、より実用化に近い実証炉を国内に建設するなどとする開発方針の骨子を公表した。もんじゅは当然廃炉となり、ゴミ処分が問題となる。新しい実証炉を作ること自体も問題であるが、それ以前にゴミをどう処分するかを明確にしてもらいたいものだ。

 核燃料サイクルは、”もんじゅ”が頓挫しても、死守しなければならない国の方針のようだ。このサイクルは、エネルギー資源に乏しい日本が、貴重なウラン資源をより有効に利用するための夢のサイクルあったはずだ。ここで中止しては、これまでに蓄えたプルトニウムの使い道が無くなり、国際社会への言い訳が出来なくなるからである。

 しかし、この夢のサイクルは同時にゴミを生み出すシステムでもあるはずだが、一体国の担当者はこのゴミ問題をどう考えていたのであろうか。恐らく、将来の不安より、目先の利益を享受することに夢中になっていたのであろう。

 官僚には任期がある。今を乗り切れば、後の問題は後任が何とかするとの無責任体質にすっかり慣れ切っている。一方、学者や研究者は蛸壺を掘って、全体を見ようとしない。問題先送りはこのゴミ問題に限ったことではない。特に、日本経済のプライマリーバランス問題は先送りが当たり前になっている。先送りは先になればなるほど問題解決を困難にすることは、分かり切っているはずだが。2016.12.10(犬賀 大好-293)

韓国社会の混乱とマスコミの役目

2016年12月07日 09時48分35秒 | 日々雑感
 朴槿恵(パク・クネ)大統領の辞任を求めて、韓国では連日大規模なデモが行われているとのことだ。このような老若男女が参加する大規模なデモが行われるのは、1987年まで続いた軍事政権を市民がデモを通じて民主的なものに変えた経験があるからであり、今回のデモも単なる政治への批判や反発ではなく、自分たちの社会をよりよくするための行動からであると好意的な論評をする人もいる。本当にそうであればよいが、傍目には、単なる欲求不満のはけ口と思える。

 韓国は日本の隣国であり、日本文化は朝鮮文化の影響を多大に受けているため、考え方も似ているに違いないと思われるが、韓国の歴代大統領が、10人中8人が亡命・失脚・死刑判決・懲役刑判決・自殺しているという話はよく知られており、朴大統領もこれに仲間入りしそうである。これから見ると、韓国人と日本人はどこか基本的な点で異なっている感がする。

 韓国社会は制度や規則ではなく、個人的な関係によって物事が動く”コネ社会”とのことだ。朝鮮半島は大陸と陸続きなため、異民族の侵略を受けやすく、制度や規則が簡単に変わる歴史的な背景があるのだろう。その点、親類、縁者等の個人的な関係の方が信頼できるとの土壌があるのかも知れない。

 最近韓国ドラマをよく見る。韓国社会における慣習や考え方が日本におけるそれと随分異なり、新鮮に感ずるからである。その中で警察も検察も規則ではなく人間関係によって動く話もしばしば登場するが、それは昔の話と思っていたら現代でも続いているようだ。現在の韓国では儒教を信ずるものは少数であるようだ。しかし、社会の土壌には人間関係を重視する儒教の精神が強く残っているような気がする。

 今回の不祥事も朴大統領と崔順実(チェ・スンシル)氏の40年来の個人的信頼関係が原因と言われている。崔氏とその一族は大統領の個人的な信頼を傘に、私欲を満たしていたようだ。

 なぜ韓国はこのようなことが繰り返されるか、韓国国民の間に、この疑問が共有されているのだろうか。デモの様子をテレビで見る限り、辞任の要求で統一されているが、このような背景を糾弾する動きは汲み取れない。韓国マスコミは、このあたりの認識があるのだろうか。

 2014年4月に韓国旅客船沈没事故が起きたが、その事故の最中およそ7時間にわたって、朴槿恵大統領の所在や動向が不明だったことがあったそうだ。これを報じた産経新聞社のソウル支局長が名誉毀損罪で逮捕された。この報道記事は他の韓国メディアの記事を引用したに過ぎなかったが、日系と言うこともあって問題視されたようだ。

 この動きの裏には、大統領府の意向が働いていたことが、元首席秘書官の在職中のメモとされるものから明らかになった。ここにおいても、規則より人間関係が重視されていたようだ。すなわち、規則に照らし合わせて問題とするか否かを判断するのではなく、個人的な感情が支配していたようである。

 朝鮮日報や東亜日報の主要韓国メディアは、この件に関して政権に媚びてか、ひたすら産経新聞叩きに熱中し、政権運営等の問題の本質に迫ることはしなかった。韓国は、北朝鮮と国境を接しているためか、マスコミ対策が普段から厳しいようであるが、韓国メディアは政権に対してもっと厳しくなければ韓国社会の発展は無い。

 もし、あの時韓国マスコミがもっと本質に迫っておれば、今回の不祥事も未然に防げていたかも知れない。大統領側もマスコミのもっと自由な発言を容認し、耳を傾けて居ればと、朴大統領も悔やんでいるだろう。

 朴大統領の辞任の方向が明確になり、次の大統領に話題が移りつつあるが、候補の公約に”コネ社会からの脱却や”報道の自由化”があるであろうか。韓国のマスコミも連続する大統領の不祥事の本質を探求し、韓国社会のどこに問題があるかを明確にし、世論を先導すべきであろう。このまま、新しい大統領が選ばれても、同じ過ちを繰り返すばかりである。2016.12.07(犬賀 大好-292)

基礎研究を続けることの難しさ

2016年12月03日 09時22分37秒 | 日々雑感
 全国にある86の国立大学の40歳未満の若手教員において、5年程度の「任期つき」の雇用が急増し、2016年度は63%にまで達したそうだ。この動き推し進める文科省は、その効用を次のように説明している。大学教員に任期制を導入できるようにすることは、人材交流を一層促進することとなり、教員自身の能力を高め、大学における教育研究の活性化を図る上で、極めて大きな意義を持つものである、と。 

 大学教員の人事については、いったん教員に採用された後は、業績評価がなされないまま、年功序列的な人事が行われるため、教育研究が低調となることが予てより指摘されている。そこで任期制を導入することにより、教員の教育研究が活性化することが期待されるわけであり、一理ある。

 大学において業績評価が難しい訳は、大学における研究テーマは専門ごとに細分化されているため、専門外の人物がその内容を判断出来ない点にある。このため、単に学会発表等の学外発表件数のみで評価する傾向もあり、同じような内容の論文をあちこちの学会で発表して点数を稼ぐ弊害も多々見受けられる。

 確かに、重箱の隅をほじるような研究を長年続ける大学教授がいても、それが理由で罷免されるなぞとの話は聞いたことが無い。その研究が基礎科学に近いほど成果が出難く、研究活動が低調であると外目には映る。

 また、大学の独立法人化以降、特に工学系では企業に利用されない技術は無駄との風潮が強くなり、大学と企業の連携による研究費獲得が推奨されるようになった。このため、結果の出やすいテーマ、短期で結果の出るテーマが選択される傾向が強くなった。本来大学においては、企業における研究より将来を見据えた研究に重きを置くべきであるが、それが困難となっている弊害も出ている。

 さて、国立大学の従来通りの任期無し教員の人件費は国からの運営費交付金に頼っている。国立大学の法人化後、国の厳しい財政状態を背景に運営交付金は約1500億円削減されてしまった。大学は教員の数を減らすことが出来ないため、任期付き教員を増やさざるを得ない状況になっているのだ。

 財務省の財政難と文科省の任期付き教員の推奨が合致し、このような63%と言う高い数値が実現されているのだ。任期付き教員の任期は5年程度であると言っても、5年経てば別の職を求めなければならず、所謂非正規社員と同じ境遇である。

 厚生労働省が昨年12月に発表した2014年の「就業形態調査」によると、民間事業者に勤める労働者のうち非正規社員の占める割合が40.5%に達し、初めて4割の大台を超えたそうだが、若手大学教員においてはそれ以上になっているのだ。今のままでは日本において正社員、正教員となることは益々難しくなるだろう。

 任期付き教員においては、先述のように長い時間がかかる研究への取り組みは困難となっている。今年ノーベル生理学・医学賞を受賞した大隅栄誉教授も基礎科学の重要性を指摘しており、現状の大学運営を見る限りにおいては、将来のノーベル賞は到底無理との懸念を示している。

 また、2002年ノーベル物理学賞を受賞した小柴昌俊が理事長を務める「平成基礎科学財団」は基礎科学の振興を目的に設立されたが、来年3月で解散すると発表された。財政上の問題とされているが、恐らく民間企業においても存続のための寄付金を出すところが無くなったのであろう。

 基礎科学は資金が必要な上、時間もかかり、いつ成果が出るか分からない効率の悪さが付きまとう。常温核融合、高温超電導など、夢の技術であり、一時期マスコミを賑わしたが、最近影を潜めている。かといって、その実現が不可能と証明された分けではない。相変わらず夢を追いかけている研究者もどこかにいるだろう。

 ”夢は諦めずに追い続ければ必ず適う” と言う人もしばしばマスコミの登場するが、それは適った人の言い草である。中には適わぬ夢を追いかけて人生を無駄にする人も、あるいは気違い扱いされる人もいるだろう。しかし、夢を追いかけないで、夢が適う筈が無いのも真実である。

 文科省は教員の活性化を図りたいようであるが、短期勝負、効率化の方針に将来の日本の科学技術は大丈夫であろうか。2016.12.03(犬賀 大好-291)