11月30日、高速炉開発会議は、廃炉が検討されている高速増殖原型炉 ”もんじゅ” に代わり、より実用化に近い実証炉を国内に建設するなどとする開発方針の骨子を公表した。2018年を目途に約10年間の開発体制を固めるそうだ。これは、万が一実証炉が順調に進んだとしても、少なくとも今後10年間はプルトニウムを消費できないことを意味している。
高速炉は実験炉、原型炉、実証炉、商用炉の段階を経て実用化するのが通常の進め方だそうだ。悪名高きもんじゅは原型炉であったが、途中頓挫したまま、廃炉の瀬戸際に立たされている。つまり原型炉で解決されるべき課題を残したまま次の実証炉に進むわけであるが、何とも無謀な開発計画である。このような無謀な計画を推し進めるのは、核燃料サイクルを諦めるわけにはいかない背景があるからであろうが、技術開発は一歩一歩推し進めるとの鉄則を無視してまでやるとは、正気の沙汰とは思えない。
核燃料サイクルの主要な要素は、再処理施設と高速増殖炉である。再処理は使用済み核燃料からプルトニウムを抽出すること、高速炉はそのプルトニウムを燃やして発電することで、この二つの要素が揃わなければサイクルは成り立たない。
通常の原発から生ずる使用済み核燃料は再処理しないとゴミとなり行き場を失う。青森県六ケ所村にある日本原燃の再処理工場は当初2009年完成を予定していたが、様々なトラブルが相次ぎ、現在2018年上期の操業開始を目指して工事が進行中とのことである。工場の操業開始が遅れているため、再処理工場の容量3千トンのプールは既に満杯近くになっているそうだ。全国の原発の保管プールの72%も埋まっているので、すぐにでも再処理が開始されないと行き場が無くなる。
現在再処理の一部は仏や英国に頼んでいるようであるが、費用は安くはないだろう。遠からずゴミとして埋設する等が必要になりそうであるが、埋設に関しては一向に進んでいない。ようやく、福島第一原発事故で生じた低濃度放射線汚染ゴミを埋設する中間処理施設の建設が始まったくらいである。
六ケ所村の再処理工場はフル稼働すれば年4トンのプルトニウムが抽出されるそうだが、このプルトニウムも高速炉がないと行き場を失う。現在、日本の使用済み核燃料からプルトニウムが既に47トンつくられており、その4分の3は、まだそれを分離処理した施設のある英国とフランスに置かれているそうだ。このプルトニウムは日本の軍事上の抑止力になっているとの説もあるが、再処理で出来たプルトニウムでは核兵器は作れないとの説もあり、よく分からない。ともかく、その保管には長期に亘り、安全性を確保する必要があり、多大な費用、リスクが付きまとう。
日本は利用目的の無いプルトニウムを持たないことを国際的に約束している。日本としては、プルトニウムの使用目的を明確に示さなくてはならないが、高速増殖炉もんじゅは瀕死の状態だ。次期の商用炉が立ち上がるのは10年以上先の話だ。
そこで、政府はプルトニウムの使用目的を、ウランと混ぜたMOX燃料にして普通の原発で燃やすプルサーマル発電で消費する方針をたてた。プルサーマル発電は、普通の原子炉において、多数のウランの燃料棒の一部をMOX燃料棒に置き換えて発電する方式であるが、その技術的な、経済的な課題は種々指摘されている。例えば、MOX燃料棒の方が発熱量が大きいため、炉内に温度ムラが生じ、制御が難しくなる等である。しかし、現状ではプルトニウムの使用はこれしかない。
19日、文科省は福井県にもんじゅを廃炉にする方針を伝えたとのことだ。その中で廃炉作業は、原子力研究開発機構が担当するとされた。当機構はもんじゅを運営していたが、原始力規制委員会から不適格とされた機構である。
当然別の信頼ある機構が担当すべきであろうが、高速増殖炉は原子炉の中でも特殊の方式だ。研究者、技術者は限定されるであろう。受け皿はここしかないのだ。また、文科省は福井県に実証炉を新設するつもりのようであるが、やはり先の機構が担当することになるだろう。兎も角、研究者、技術者がいないのだ。また、世界的にも人気の無い高速炉に新たに人生を託そうとする若者もそうは出てこないだろう。
これから先の人材不足は明らかである。しかし、日本としてはプルトニウムの使用目的を作らなくてはならない。恐らく、名目上高速炉の開発は進めるであろうが、遅々として進まず、見果てぬ夢に終わるだろう。
”夢は諦めなければ必ず適う”の言葉はたびたびマスコミを賑わす。しかし、夢を追い過ぎて人生を無駄にした人間もそれ以上に多いはずだ。核燃料サイクルは見果てぬ夢と早めに諦めた方がよい。2016.12.21(犬賀 大好-296)
高速炉は実験炉、原型炉、実証炉、商用炉の段階を経て実用化するのが通常の進め方だそうだ。悪名高きもんじゅは原型炉であったが、途中頓挫したまま、廃炉の瀬戸際に立たされている。つまり原型炉で解決されるべき課題を残したまま次の実証炉に進むわけであるが、何とも無謀な開発計画である。このような無謀な計画を推し進めるのは、核燃料サイクルを諦めるわけにはいかない背景があるからであろうが、技術開発は一歩一歩推し進めるとの鉄則を無視してまでやるとは、正気の沙汰とは思えない。
核燃料サイクルの主要な要素は、再処理施設と高速増殖炉である。再処理は使用済み核燃料からプルトニウムを抽出すること、高速炉はそのプルトニウムを燃やして発電することで、この二つの要素が揃わなければサイクルは成り立たない。
通常の原発から生ずる使用済み核燃料は再処理しないとゴミとなり行き場を失う。青森県六ケ所村にある日本原燃の再処理工場は当初2009年完成を予定していたが、様々なトラブルが相次ぎ、現在2018年上期の操業開始を目指して工事が進行中とのことである。工場の操業開始が遅れているため、再処理工場の容量3千トンのプールは既に満杯近くになっているそうだ。全国の原発の保管プールの72%も埋まっているので、すぐにでも再処理が開始されないと行き場が無くなる。
現在再処理の一部は仏や英国に頼んでいるようであるが、費用は安くはないだろう。遠からずゴミとして埋設する等が必要になりそうであるが、埋設に関しては一向に進んでいない。ようやく、福島第一原発事故で生じた低濃度放射線汚染ゴミを埋設する中間処理施設の建設が始まったくらいである。
六ケ所村の再処理工場はフル稼働すれば年4トンのプルトニウムが抽出されるそうだが、このプルトニウムも高速炉がないと行き場を失う。現在、日本の使用済み核燃料からプルトニウムが既に47トンつくられており、その4分の3は、まだそれを分離処理した施設のある英国とフランスに置かれているそうだ。このプルトニウムは日本の軍事上の抑止力になっているとの説もあるが、再処理で出来たプルトニウムでは核兵器は作れないとの説もあり、よく分からない。ともかく、その保管には長期に亘り、安全性を確保する必要があり、多大な費用、リスクが付きまとう。
日本は利用目的の無いプルトニウムを持たないことを国際的に約束している。日本としては、プルトニウムの使用目的を明確に示さなくてはならないが、高速増殖炉もんじゅは瀕死の状態だ。次期の商用炉が立ち上がるのは10年以上先の話だ。
そこで、政府はプルトニウムの使用目的を、ウランと混ぜたMOX燃料にして普通の原発で燃やすプルサーマル発電で消費する方針をたてた。プルサーマル発電は、普通の原子炉において、多数のウランの燃料棒の一部をMOX燃料棒に置き換えて発電する方式であるが、その技術的な、経済的な課題は種々指摘されている。例えば、MOX燃料棒の方が発熱量が大きいため、炉内に温度ムラが生じ、制御が難しくなる等である。しかし、現状ではプルトニウムの使用はこれしかない。
19日、文科省は福井県にもんじゅを廃炉にする方針を伝えたとのことだ。その中で廃炉作業は、原子力研究開発機構が担当するとされた。当機構はもんじゅを運営していたが、原始力規制委員会から不適格とされた機構である。
当然別の信頼ある機構が担当すべきであろうが、高速増殖炉は原子炉の中でも特殊の方式だ。研究者、技術者は限定されるであろう。受け皿はここしかないのだ。また、文科省は福井県に実証炉を新設するつもりのようであるが、やはり先の機構が担当することになるだろう。兎も角、研究者、技術者がいないのだ。また、世界的にも人気の無い高速炉に新たに人生を託そうとする若者もそうは出てこないだろう。
これから先の人材不足は明らかである。しかし、日本としてはプルトニウムの使用目的を作らなくてはならない。恐らく、名目上高速炉の開発は進めるであろうが、遅々として進まず、見果てぬ夢に終わるだろう。
”夢は諦めなければ必ず適う”の言葉はたびたびマスコミを賑わす。しかし、夢を追い過ぎて人生を無駄にした人間もそれ以上に多いはずだ。核燃料サイクルは見果てぬ夢と早めに諦めた方がよい。2016.12.21(犬賀 大好-296)