日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

国際卓越大学は日本の技術力低下を防げるか

2023年09月06日 10時53分53秒 | 日々雑感
 昨年5月に国会で成立した「国際卓越研究大学法」は、12月から今年3月まで対象校を募集し10校が応募した。審査は国内外の大学や企業の関係者10人でつくる文科省の有識者会議で4月から始まった。審査の主なポイントは、〇国際的に卓越した研究成果を出せる研究力〇実効性が高く意欲的な事業・財務戦略〇自律と責任のあるガバナンス体制の三つだそうで、5カ月間で12回の会合を重ね、書類審査や面接のほか、審査の最終段階の7月、東北大と東京大、京都大については現地視察もしたそうだ。

 その結果として、文科省は、最初の国際卓越研究大学に東北大学を選定したと発表した。選定されると、10兆円規模の大学ファンドの運用益から東北大学には年間100億円前後が最大25年間助成される予定で、世界トップクラスの研究環境の整備等が期待されるとのことだ。

 選定から漏れた京都大学は、研究組織改革と人材・研究環境への投資、研究成果の活用、新しいガバナンス体制の確立等を推進するとの方針を説明したが、有識者会議は、執行部の変革への強い意志は高く評価できるが、他方、国際標準の新たな体制に移行するには責任と権限の所在の明確化が必要である等の意見を付したそうだ。これらの説明だけでは何が欠けているのかよく分からない。

 そもそも国際卓越大学法は、近年の日本の技術力や研究力の低下を懸念し、技術立国日本の再生を図ろうとするのが目的である。かって大学の活性化を図るために大学の独立法人化等を始めとして各種の支援を行ってきたが、芳しい成果を得られなかった。

 例えば、研究内容が注目され多く引用される論文の数で、日本がイランに抜かれて前回の12位から過去最低の13位にさらに順位を下げたことを今年8月、文部科学省の科学技術・学術政策研究所が公表した。論文数だけで判断するのは早計であるが、研究開発分野における日本の国際的地位の低下が進んでいることは間違いないだろう。

 日本の研究力低下の一因として指摘されるのが若手の人材不足だそうだ。実際、日本の博士号取得者は2006年度をピークに減少しているようだ。博士号を取得してもその後の研究活動の環境の確保等が困難であるからだ。この一点を捉えてみても、数校の特定大学に多額の資金を提供したところで何の役にも立たない。

 また、選考基準にガバナンスとの言葉がたびたび登場するのが気になる。膨大な資金を運用するため当然ガバナンスは必要であるが、学問研究の場への政府の過度な介入は、言論の自由の圧迫につながり、民主主義の土台を危うくすることに注意する必要がある。政府は日本学術会議の数名の推薦候補者の任命を拒否し続けている。ガバナンスを強調するのは学術会議が政府の言いなりにならないことが背景にあると勘繰ってしまう。

 独創的な研究は自由な発想の下に生まれる。最近の研究は実験施設の建設等で莫大な資金が必要なことは確かであるが、金があるほど施設の運用管理に気を取れら、頭を使わなくなることも確かである。
2023.09.06(犬賀 大好ー944)


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