日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

日本からの水産物輸入規制と中国経済

2023年09月02日 10時09分48秒 | 日々雑感
 今月24日午後1時ごろから東京電力が原発の処理水放出を開始したことを受けて、中国政府は日本からの水産物の輸入を停止すると発表した。多核種除去設備(ALPS)処理水から海に放出されるトリチウムを毎年22兆ベクレル放出すると予想されているが、この量は中国浙江省の秦山原子力発電所の年間排出量の約10分の1程度であるのに、このことを棚に上げておいて日本水産物の全面的輸入の一時禁止にまで踏み切ったのは他に理由があると思わざるを得ない。

 一つには、現在中国は経済悪化に喘いでおり、庶民の不満を外に向けさせる為ではないかと思われる。SNS上では日本からの水産物の不買や果ては化粧品の不買まで拡がっているとのことだ。しかし、これに対する日本を擁護するような投稿は即座に排除されるとのことで、背後では政府が糸を引いていることに間違いない。

 さて、2023年の中国の成長率見通しを+5%以下に下方修正する動きが広がってきているようだ。昨年の中国の成長率も+3%と政府見通しを下回ったが、今年も2年連続で政府見通しを下回る異例の事態となっている。更に来年の成長率も+5%を下回るとの見通しも出ており、習近平総書記の焦りの一つが、水産物輸入禁止であろう。

 中国では、ゼロコロナ政策解除後の景気回復に急ブレーキがかかり、更に、デフレ、就職氷河期、不動産不況といったバブル崩壊後の日本と非常によく似た経済現象が見られ、中国経済がバブル崩壊後の日本経済と同様に、長期的な低迷に陥るリスクも見られ始めたとのことだ。

 中国経済が長期停滞を回避するための処方箋は、例え景気が悪化しようとも、安易な景気対策としての不動産規制の緩和やインフラ投資の拡大等の従来構造を温存しないことのようであるが、足元では不動産企業の破綻で不動産危機に陥るリスクの可能性が高まっているようだ。

 しかし、不動産業に代わって今後の経済成長を牽引するはずだったハイテク分野も米国政府による規制強化で成長が難しくなっている。すなわち米国バイデン政権が次々に打ち出す対中包囲網に日本が従っていることも背景にある。

 米国は、2022年10月に、スーパー・コンピュータや人工知能(AI)に使う先端半導体やその製造に必要な装置、技術について、中国への輸出を事実上禁じている。その際、半導体製造装置に強みをもつ日本にも同調するよう求めていた。日本政府はこれに応えて今年7月23日、先端半導体の製造装置等23品目を輸出管理の規制対象に加え、事実上の中国向け輸出規制措置に踏み切った。

 中国政府の日本からの水産物の輸入規制は、半導体関係の日本の規制を緩める為の交換材料では無いかとの観測もある。日本の中国との水産物資源の取引額の絶対額は余り大きくないため、日本経済への影響は少ない見通しであるが、これから中国は何かにつけて日本へのイチャモンを付けてくるだろう。2023.09.02(犬賀 大好ー943)


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