正式名称を「日本型新裁量労働制」と呼ぶ「高度プロフェッショナル制度(高プロ)」は、日本労働組合総連合会(連合)自身が「残業代ゼロ法案」と呼んでこれまで一貫して反対し続けてきた。ところが、先日、高プロ制度の導入に連合執行部の一部メンバーの主導で条件付き容認の方針を決めたことが明らかになった。条件付きと言いながら一転して容認したことは、下部から激しい反発を招き、結局、撤回する羽目に追い込まれた。
そもそも、高プロ法案とは、簡単に言えば、年収1,075万円以上の高度な専門業務に就いている人を残業代の支払い対象から除外しようとするもので、一般労働者は関係ないように思われる。その目的は、労働時間ではなく成果で評価する、ことであるとされている。
条件付きで容認する方針に転じた連合への抗議デモが7月19日夜、東京都千代田区の連合本部前であったそうだ。日本最大の労働組合の中央組織として、労働者の代表を自任してきた連合が、身内のデモに見舞われるとは前代未聞の話だ。その責任を負い、次期会長予定であった事務局長の逢見氏の会長就任は見送られることになったようだ。
経済がグローバル化し、競争も世界が相手となると、これまでの日本的な労働習慣を見直す必要が生ずる。その一つが労働生産性の向上であり、時間より成果を重視したくなるのは当然である。
時間外労働することが常習化してくると、時間内はダラダラ働くようになり、生産性が落ちる傾向になる。この解決には年収1075万円以上の労働者だけではなく、もっと年収の低い労働者にまで対象を広げる必要が出てくる。労働生産性向上のためいづれ全労働者に「残業代ゼロ法案」を広げる恐れがあることが、一般労働者が反対する最大の理由であろう。
また外国人労働者、特に欧米人と一緒に仕事するようになると、日本人にも成果に対する報酬を望む人材や実力で評価されることを好む人材が増え、彼らが海外へ流出することを歯止めする必要も出てくる。
そもそも労働組合は、一般の働く人々の権利と生活を守るために動くのがの役割の筈だ。リーマンショック時、会社が倒産し、経営者も労働者も路頭に迷うことになって以来、労働組合も会社があっての労働組合だとの意識が強くなった。労働組合の幹部も、会社を存続させることが最優先と、企業経営者の立場を取る傾向が強くなった。
労働生産性の向上は従来からの懸案事項であり、20年ばかり前に成果主義が流行った。成果主義とは、業務の成果やその成果に至るまでの過程によって評価し、報酬や人事を決定することであり、向上心がある人は、より自分を高めようと努力することが期待された。
従来の年功序列型の制度では、成果の高い人が成果の低い人よりも多くの仕事をしているにもかかわらず、給与面での差に大差ないと、労働意欲がア下がり、結果として労働生産性が落ちる欠点となった。
成果主義を富士通は1993年に導入した。日本企業の中でも先駆的な取り組みであった。また、2014年にパナソニックやソニーが年功序列を廃止し完全成果主義に踏み切ったことで話題になった。国内の企業では年功序列から成果主義へのシフトが試みられているが、現状ではなかなか定着していない。成果主義による目立った成功例がなく、導入当時の制度をそのまま続行している企業は皆無と思われる。
最大の理由は成果を正しく評価できないことである。日本ではチームで仕事する意識が高く、成果を個人に割り付けることが難しく、また、正当に評価されないとの意識より従業員の会社への信頼感が低下して社員の能力の弱体化に繋がるとの懸念もある。
高プロ法案は、経済のグローバル化に沿った法案であろうが、日本の労働生産性の低さの改善が背景にある。この意味で連合としても何らかの対策に迫られているのであろう。しかし、連合は労働者の立場からグローバル化に対処すべきだ。企業にはグローバル化で儲けた莫大な資金が内部留保としてあるとの話だ。この金を少しでも労働者に回し、労働意欲を高め、間接的に生産性の向上に資すればよいのだ。2017.08.05(犬賀 大好-361)
そもそも、高プロ法案とは、簡単に言えば、年収1,075万円以上の高度な専門業務に就いている人を残業代の支払い対象から除外しようとするもので、一般労働者は関係ないように思われる。その目的は、労働時間ではなく成果で評価する、ことであるとされている。
条件付きで容認する方針に転じた連合への抗議デモが7月19日夜、東京都千代田区の連合本部前であったそうだ。日本最大の労働組合の中央組織として、労働者の代表を自任してきた連合が、身内のデモに見舞われるとは前代未聞の話だ。その責任を負い、次期会長予定であった事務局長の逢見氏の会長就任は見送られることになったようだ。
経済がグローバル化し、競争も世界が相手となると、これまでの日本的な労働習慣を見直す必要が生ずる。その一つが労働生産性の向上であり、時間より成果を重視したくなるのは当然である。
時間外労働することが常習化してくると、時間内はダラダラ働くようになり、生産性が落ちる傾向になる。この解決には年収1075万円以上の労働者だけではなく、もっと年収の低い労働者にまで対象を広げる必要が出てくる。労働生産性向上のためいづれ全労働者に「残業代ゼロ法案」を広げる恐れがあることが、一般労働者が反対する最大の理由であろう。
また外国人労働者、特に欧米人と一緒に仕事するようになると、日本人にも成果に対する報酬を望む人材や実力で評価されることを好む人材が増え、彼らが海外へ流出することを歯止めする必要も出てくる。
そもそも労働組合は、一般の働く人々の権利と生活を守るために動くのがの役割の筈だ。リーマンショック時、会社が倒産し、経営者も労働者も路頭に迷うことになって以来、労働組合も会社があっての労働組合だとの意識が強くなった。労働組合の幹部も、会社を存続させることが最優先と、企業経営者の立場を取る傾向が強くなった。
労働生産性の向上は従来からの懸案事項であり、20年ばかり前に成果主義が流行った。成果主義とは、業務の成果やその成果に至るまでの過程によって評価し、報酬や人事を決定することであり、向上心がある人は、より自分を高めようと努力することが期待された。
従来の年功序列型の制度では、成果の高い人が成果の低い人よりも多くの仕事をしているにもかかわらず、給与面での差に大差ないと、労働意欲がア下がり、結果として労働生産性が落ちる欠点となった。
成果主義を富士通は1993年に導入した。日本企業の中でも先駆的な取り組みであった。また、2014年にパナソニックやソニーが年功序列を廃止し完全成果主義に踏み切ったことで話題になった。国内の企業では年功序列から成果主義へのシフトが試みられているが、現状ではなかなか定着していない。成果主義による目立った成功例がなく、導入当時の制度をそのまま続行している企業は皆無と思われる。
最大の理由は成果を正しく評価できないことである。日本ではチームで仕事する意識が高く、成果を個人に割り付けることが難しく、また、正当に評価されないとの意識より従業員の会社への信頼感が低下して社員の能力の弱体化に繋がるとの懸念もある。
高プロ法案は、経済のグローバル化に沿った法案であろうが、日本の労働生産性の低さの改善が背景にある。この意味で連合としても何らかの対策に迫られているのであろう。しかし、連合は労働者の立場からグローバル化に対処すべきだ。企業にはグローバル化で儲けた莫大な資金が内部留保としてあるとの話だ。この金を少しでも労働者に回し、労働意欲を高め、間接的に生産性の向上に資すればよいのだ。2017.08.05(犬賀 大好-361)