森友学園問題、加計学園問題、そして稲田前防衛相問題を切っ掛けとして安倍一強体制が揺らぎ始めた。しかし、衆参両議院で与党が過半数を占める現状では安倍首相の座はまだ当分安泰と思われるが、後の世に名相として名を残すためには、今のうちに負の遺産を一つでも解決して、”立つ鳥跡を濁さず” と後の政権に引き継ぐべきであろう。
安倍政権の功罪は色々議論される。成果の一つは外国人旅行者の激増であろう。これは安倍政権の円安誘導のお蔭であるとの解釈もあるが、中国、台湾を始めとする途上国からの旅行者が急増したことからして、これらの国での経済発展のお蔭と見る方が妥当であろう。
さて、安倍政権の最大の目玉であるのは異次元緩和であろう。この目標である物価上昇率2%は、7月20日、またしても先送りされた。黒田日銀総裁は、物価目標の2%達成時期を、2年程度で実現すると大見得を切った。しかし、2013年4月以降、既に6回目の延期であるが、相変わらず同じような政策を続行しており、工夫の余地が見られない。
経済学は学問であるとして大学の経済学部で教えている。学問であるからには、もう少し将来の予想が出来るものと思っていたが、経済のスペシャリストである筈の日銀総裁でも予想が外れるとは、勉強不足か、あるいは元々学問としては全く体をなしていないのかも知れない。
この間着実にリスクは膨らんでいる。日銀の国債保有残高は着々と積み上がり、昨年10月に初めて400兆円を突破したそうだ。日銀が将来、物価目標の2%を達成し、緩和縮小で国債購入量を減らした場合、国債価格が下落し、日銀が保有する国債に巨額の含み損が生じる可能性が高いと素人でもわかる。このリスクに対して、総裁は特に問題は生じないと表明しているが、これまでの実績からして全く信用できない。
そもそも、2%が達成され、景気が好循環し、GDPが増え、税収が増すとの当初の目論見であった筈であるが、この経済の予想はとっくに間違っていると証明されていると思わないのであろうか。黒田総裁は相変わらず金融緩和の出口は「議論するのは時期尚早」と述べるにとどめているが、恐ろしい将来が予想されて何も言えないのではなかろうか。
この金融緩和は現時点では株高をもたらしており大成功と言う人もいるが、将来間違いなく安倍政権の負の遺産となろう。この株高は公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)も貢献している。GPIFの平成28年度末の運用資産額は144.9兆円だそうで、時々運用益が何兆円出たと華々しく報道される。GPIFが公的年金資金を株に投資している段階では、他の投資家も安心して投資できるが、資金を回収し始めるとそれに倣って回収を始め、株は値下がりするであろう。運用益が何兆円出たと言っても、表面的な話であり、それをそのまま現金化できる筈が無い。
また、消費増税を10%に上げる法律は2度先送りされた。安倍首相は昨年6月、今年4月に予定されていた消費税の8%から10%への増税を平成31年10月まで再延期することを正式に発表した。理由は、増税による消費の落ち込みであった。
実際に増税した場合、どの程度の落ち込みになったか分からないが、物価上昇率が2%に届きそうにない現状見ると、平成31年になっても、再再延期するのではないかと懸念される。民進党と合意されていた増税による税と社会保障の一体改革は完全に無視された形であるが、民進党からも批判の声は余り聞こえてこない。これも安倍政権が先送りした負の遺産の一つとなろう。
更に2016年12月末の国債と借入金、政府短期証券の合計残高は1066兆4234億円で、前年から21兆8330億円増えて過去最高となった。1000兆円を超える際にはマスコミも随分話題にしたが、一旦超えてしまうと話題性が無くなったのか、余り騒がなくなった。
この赤字を少しでも減らそうとする試みが、プライマリーバランス(PB)だ。 政府は、7月18日に開かれた経済財政諮問会議で中長期の経済見通しの新たな試算を示した。2020年度の国庫の収支は8.2兆円程度の赤字となる見通しで、政府が事実上の国際公約としている基礎的財政収支(プライマリーバランス)の黒字化の目標達成は極めて厳しい状況のようだ。
このように安倍政権は、現在が良ければ良いとの大衆迎合政権であり、将来を考えての身を切る政策は見当たら無い。この大衆迎合が現在の自民党を形成しているのであるが、国民もうまい話には裏があると気付くべきである。
安倍政権が残すであろう負の遺産はこの他、TPPの挫折による成長戦略の頓挫、社会的経済的な格差の拡大、原発ごみの処分問題等色々ある。安倍首相の念願の憲法改正も、一強体制の揺らぎにより怪しくなった。安倍首相は後の世に名宰相として名を残すためには、将来に向けた布石を一つでも多くやるべきであろう。2017.08.02(犬賀 大好-360)
安倍政権の功罪は色々議論される。成果の一つは外国人旅行者の激増であろう。これは安倍政権の円安誘導のお蔭であるとの解釈もあるが、中国、台湾を始めとする途上国からの旅行者が急増したことからして、これらの国での経済発展のお蔭と見る方が妥当であろう。
さて、安倍政権の最大の目玉であるのは異次元緩和であろう。この目標である物価上昇率2%は、7月20日、またしても先送りされた。黒田日銀総裁は、物価目標の2%達成時期を、2年程度で実現すると大見得を切った。しかし、2013年4月以降、既に6回目の延期であるが、相変わらず同じような政策を続行しており、工夫の余地が見られない。
経済学は学問であるとして大学の経済学部で教えている。学問であるからには、もう少し将来の予想が出来るものと思っていたが、経済のスペシャリストである筈の日銀総裁でも予想が外れるとは、勉強不足か、あるいは元々学問としては全く体をなしていないのかも知れない。
この間着実にリスクは膨らんでいる。日銀の国債保有残高は着々と積み上がり、昨年10月に初めて400兆円を突破したそうだ。日銀が将来、物価目標の2%を達成し、緩和縮小で国債購入量を減らした場合、国債価格が下落し、日銀が保有する国債に巨額の含み損が生じる可能性が高いと素人でもわかる。このリスクに対して、総裁は特に問題は生じないと表明しているが、これまでの実績からして全く信用できない。
そもそも、2%が達成され、景気が好循環し、GDPが増え、税収が増すとの当初の目論見であった筈であるが、この経済の予想はとっくに間違っていると証明されていると思わないのであろうか。黒田総裁は相変わらず金融緩和の出口は「議論するのは時期尚早」と述べるにとどめているが、恐ろしい将来が予想されて何も言えないのではなかろうか。
この金融緩和は現時点では株高をもたらしており大成功と言う人もいるが、将来間違いなく安倍政権の負の遺産となろう。この株高は公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)も貢献している。GPIFの平成28年度末の運用資産額は144.9兆円だそうで、時々運用益が何兆円出たと華々しく報道される。GPIFが公的年金資金を株に投資している段階では、他の投資家も安心して投資できるが、資金を回収し始めるとそれに倣って回収を始め、株は値下がりするであろう。運用益が何兆円出たと言っても、表面的な話であり、それをそのまま現金化できる筈が無い。
また、消費増税を10%に上げる法律は2度先送りされた。安倍首相は昨年6月、今年4月に予定されていた消費税の8%から10%への増税を平成31年10月まで再延期することを正式に発表した。理由は、増税による消費の落ち込みであった。
実際に増税した場合、どの程度の落ち込みになったか分からないが、物価上昇率が2%に届きそうにない現状見ると、平成31年になっても、再再延期するのではないかと懸念される。民進党と合意されていた増税による税と社会保障の一体改革は完全に無視された形であるが、民進党からも批判の声は余り聞こえてこない。これも安倍政権が先送りした負の遺産の一つとなろう。
更に2016年12月末の国債と借入金、政府短期証券の合計残高は1066兆4234億円で、前年から21兆8330億円増えて過去最高となった。1000兆円を超える際にはマスコミも随分話題にしたが、一旦超えてしまうと話題性が無くなったのか、余り騒がなくなった。
この赤字を少しでも減らそうとする試みが、プライマリーバランス(PB)だ。 政府は、7月18日に開かれた経済財政諮問会議で中長期の経済見通しの新たな試算を示した。2020年度の国庫の収支は8.2兆円程度の赤字となる見通しで、政府が事実上の国際公約としている基礎的財政収支(プライマリーバランス)の黒字化の目標達成は極めて厳しい状況のようだ。
このように安倍政権は、現在が良ければ良いとの大衆迎合政権であり、将来を考えての身を切る政策は見当たら無い。この大衆迎合が現在の自民党を形成しているのであるが、国民もうまい話には裏があると気付くべきである。
安倍政権が残すであろう負の遺産はこの他、TPPの挫折による成長戦略の頓挫、社会的経済的な格差の拡大、原発ごみの処分問題等色々ある。安倍首相の念願の憲法改正も、一強体制の揺らぎにより怪しくなった。安倍首相は後の世に名宰相として名を残すためには、将来に向けた布石を一つでも多くやるべきであろう。2017.08.02(犬賀 大好-360)