日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

グローバル化と反グローバル化の流れ

2016年10月26日 09時19分25秒 | 日々雑感
 グローバル化とはWikipediaによれば、社会的あるいは経済的な関連が、旧来の国家や地域などの境界を越えて、地球規模に拡大して様々な変化を引き起こす現象である。そう考えると、現在西欧諸国で問題化している移民排斥運動は反グローバル化の流れであろう。

 シリアやイラクを始めとする中東の不安定さは、西欧諸国への難民を急増させている。一方、難民を受け入れる各国は、治安の悪化、雇用の喪失や財政の負担増を理由に移民反対の運動が起こっている。

 今年10月始めに行われたハンガリーの移民受け入れ是非を巡る国民投票において、投票率の低さから不成立となったが、投票した人の98%が移民受け入れに反対していたとのことであった。

 また、英国のEC離脱もその理由の一つになっている。ヨーロッパ統合に一番熱心なメルケル首相が率いるドイツにおいても、移民流入に反対する声が上がり始めている。

 更に米国においては、11月に行われる大統領選において、メキシコとの国境に壁を設けて流民を阻止すると主張するトランプ候補は、相変わらず40%以上の国民の支持を保ち続けている。

 このような、難民、移民に反対する主張は、近視眼的にはよく理解できる。そもそも欧州連合(EU)は、歴史的な反省から欧州を一つにまとめようとする理念からの誕生である。現在問題となっている欧州外からの移民は想定外の話かも知れないが、全人類が一つにまとまりたいとの理念は共通であり、例え域外からの移民であっても受け入れるのが理想であろう。

 現在西欧各国では移民排斥運動が盛んであるが、日本では余り聞かれない。厚生労働省の「外国人雇用状況」の届出状況によると2014年10月末の合法的な外国人労働者数は78.8万人と過去最多を更新したようだ。別の統計では日本は現在200万人の外国籍登録者がいるようだ。この他不法滞在者も多数存在すると思われるが、まだ他の先進諸国と比べて率的にもそれほど高くないため顕在化していないようだ。

 日本に滞在するほとんどの外国人労働者は難民、流民、移民とは異なり、研修生、技能実習生などの形で日本に滞在している。しかし、日系ブラジル人が多数住む、愛知県や群馬県では地域の住民との軋轢も聞こえてくる。大都市におけるヘイトスピーチもこの種の運動かも知れないが、大きな流れとはなっていない。

 日本では難民受け入れには法的に厳しく対応している。研修生や技能実習生はそれなりの覚悟で来日するのに比べ、難民は祖国を止むを得ず出て来るため、その貧しさの故治安の悪化につながり易いと考えられる。従って、日本で西欧各国に比べ、移民排斥運動が盛んとならないのは日本の難民受け入れ政策のお陰と言えるかも知れない。難民受け入れ反対は、反グローバル化の流れでもあるが、片や日本はグローバル化の恩恵を多大に受けている。

 すなわち、自動車製造、造船、大都市近郊農業は少子高齢化社会の影響を受けて、外国人労働者頼みとなっているのが現状である。今後少子高齢化は益々進み、生産人口の減少をカバーするため外国人労働者を益々必要とする社会となるであろう。このため移民、難民を問わず、入国後の定住支援に関する社会統合政策、言葉の支援、就労支援、社会保障などの難問に対応していかなくてはならないだろう。

 現在グローバル化の一番の課題は環太平洋経済連携協定(TPP)の承認問題であろう。自動車製造技術は世界一であるが、国内需要は限度がある為、市場を世界に求めなくてはならない。このためにも是非TPPの発効は願うところであろう。自民党は今月中にTPP承認を国会決議したいようであるが、現時点で国内承認を終えた国は皆無のようだ。年内を目標としているのは、日本を始めとして、オーストラリア、ニュージランド、シンガポールであり、カナダ、ベトナム、マレーシア、ブルネイは時期未定とのことだ。

 肝心の米国では、クリントン候補もトランプ候補もTPPには反対だ。クリントン候補は当選後賛成に回らざるを得ないだろうとの楽観的な観測もあるが、TPPにより外国製品が流入すると雇用が失われ、賃金が下がるとのトランプ候補の主張を全く無視することは出来ないだろう。何しろ彼は国民の40%以上の支持を集めているのだから。少なくとも、将来のクリントン大統領は、内容の修正、すなわち再交渉を求めてくるだろう。
日本がTPPに最初に承認となれば、米国は反って反発するかも知れない。日本の積極的賛成は日本にとって有利であるからであり、米国の国益とはならないと判断されるかもしれない。

 さて、日本は人的な面でも輸出の面でもグローバル化は必要であるが、世界では反グローバル化の流れも着実に進行している。グローバル化の良いとこ取りだけではすまされないであろう。日本は世界に向けてどのように処すべきであろうか。2016.10.26(犬賀 大好-280)