日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

”もんじゅ”の廃炉と核ごみの最終処分場

2016年10月08日 09時16分40秒 | 日々雑感
 政府は先月21日、原子力関係閣僚会議を開き、高速増殖原型炉「もんじゅ」について、年末までに抜本的な見直しをすることで合意した。事実上廃炉に向かうことになるとのマスコミの論調である。しかし、同時に核燃料サイクルの推進と、高速炉の研究開発の計画を維持することも確認したそうだ。

 新設される「高速炉開発会議」の主管は経済産業省であり、文科省、日本原子力研究開発機構、電力事業者、原子炉メーカが参加する予定とのことである。そこでは、仏が進めるASTRIDへの協力を軸に日仏共同研究の腹づもりのようである。これは、核燃料サイクルの完全破綻を認めないための苦肉の策とも思われる。10月7日の第1回目の会議においても、高速炉への未練タラタラのようであった。

 ”もんじゅ”の廃炉を決めたことは遅きに失した感であるが、政府としては思い切った決断と評価したい。しかし、高速増殖炉の研究開発を続行するとは、決断の甘さも感ずる。増殖炉の必要性は、ウランは埋蔵量が無限ではないためいつまでも低価格な原子力発電を持続出来ない、あるいは米国やイギリスは撤退したがロシアや中国は開発を進めており、技術的に遅れる懸念がある、等である。

 今後、電気エネルギーが益々必要となるのは確かだろう。これに対し、エネルギー源を原子炉に頼るのではなく、自然エネルギーに頼ればよいだけだ。現時点ではコスト的に負けると言っても、必要は発明の母だ。、自然エネルギー開発は始まったばかりで、アイデアはいくらでも埋まっている。研究者や技術者は必死に考え、素晴らしい方法を考え出す筈だ。若者は、技術的に行き詰まり、評判の悪い高速増殖炉より、夢のある自然エネルギー技術に将来を託すだろう。

 日立製作所と東芝、三菱重工業の原子力発電メーカー3社が、核燃料事業の統合に向けて調整に入ったことが先月28日に報道された。福島の事故以降、世界的に原発新設の機運が落ち込む中、政府は最終的に日立、東芝、三菱重工の原発事業自体の統合を進めたい考えで、燃料事業の統合をその第一歩とするようである。

 核燃料サイクル破綻に伴う最大の問題は、使用済み核燃料の処分問題だ。これまでに原発が出した燃えカスの処分法や、蓄積したプルトニウムの処分法だ。地下に埋蔵するにしても、今後何百年、安定に維持し続けなくてはならない。地震大国の日本の中にこれに耐える地盤があるのだろうか。これから政府が最終処分地を必至に探すにしても、原子力事業の窓口が一本化されていた方が、何かとやり易い。この意味でも統合は必須だ。

 スウェーデンでは、各原子力発電所で発生した使用済燃料を再処理せずに一か所に集め、電力会社が共同出資して設立したSKB社が高レベル放射性廃棄物として地下約500mの深さの結晶質岩中に地層処分する方針だそうだ。

 これから日本では ”もんじゅ” ばかりでなく、福島第1原発など廃炉はどんどん増えていく。核燃料だけでなく、廃炉後の高濃度汚染炉材のごみも増えていく。福島原発事故の際の低濃度の汚染ごみですら最終処分場はままならない。国は、核のごみの処分場を国を挙げて探さなくてはならない。本来は各電力会社が自社で処分すべきであろうが、原発を国策として進めてきたとの言い分により、国に責任転嫁するだろう。国も天下りを受け入れた電力会社に恩はあるし、これからも受け入れて貰わなくてならない。

 日本はこれまで、技術は無限に進歩するとの信仰の下に、原発ゴミの処分法も高速増殖炉技術もその内何とかなるだろうと、能天気に問題を先送りしてきた。核燃料サイクルの破綻は、もんじゅが冷却用のナトリウム漏れ事故を起こした20年以上前から予測できた筈なのに、ごみ処分の検討など何もしてこなかったとは、呆れるばかりである。高速炉開発会議は、これまで先送りしてきたごみ問題を解決してから、先に進んでもらいたい。2016.10.08(犬賀 大好-275)