俯瞰

振り返ると
持ちきれないほどの思い出

ずいぶん長く歩いて遠いところまで来てしまった

楽しかったね
ついこの前、一緒に自由にいられたのにね

ずっとずっと続くのかなあと思えるほど
ゆるゆる過ぎた夏休み

もうあの頃には戻れない

ああ、そうか、なにもかもが
期間限定だったのか
だったら意地なんか張らなきゃよかった
ありのまま素直にいればよかった
遠回りしてる時間なんてなかったのに


不思議に今も一瞬で戻れる
貝殻の砂利道
夏の風に揺れるワンピース
深く深く吸ってみて
爽やかないいにおい

過ぎてみてもう戻れないと思い知ってから
名付けられる
あれは幸せだ　と

急に心細くなるのはなぜ
不安になるのはなぜ

誰もが等しく歳を取って老いてゆく

猛烈な寂しさに襲われる時は
小さなその手を握らせてね
ずっとずっと護っているつもりで
いつもいつも護られてるのは　わたしだった

なにもかもが少しずつわたしから離れていく