モノクロ

やがて過ごしたこの場所も


無人になり
新しい住人がやってくるのだろう

知らない表札

でも、この家の中がどんなふうか
わたしは知っている

庭先に植えたクリスマスツリー
リビングのピアノ
優しいママが剥いてくれた果実

過ごした時間だけが
残っている

自転車に乗って遊びに行こう
一緒に

夏休みはラジオ体操
バーベキューとか

いろんなものをくれたね
今なら　よくわかる


やがて違う家族が
違う色に染める


とっくに終わった映画をまだ見続けているよう

ONEDAY

大きな木の下で

ヒグラシが鳴いている

あの頃に引き戻される

赤いランドセル揺れて
追いかけて
拾いながら歩いたあの道
打ちひしがれて泣いているのなら
抱きしめに行くよ
置き去りになんか　しない

踊るみたいに歩いて
手をつないで
近くて近すぎて大事すぎて
わざとぶっきらぼうに

噂になって
ふたり
だからかえって素直になれなかった

晴れでも雨でも歩き続けた
あの頃のわたしたち

かげろうのよう


なんでもない１シーンが
胸に迫ってくるのはなぜ
ありきたりな毎日が
かけがえなくなるのはなぜ

corner

必要なんかないのに、まだ欲しい

クローゼットからあふれた
ためいき
散らかったままの部屋は
誰もきれいにしてくれない

同じようなワードローブ
着こなしきれる　はずもない

ああ、でも。

捨てきれない過去みたく
格好悪いけど

ひとめぼれで買ったワンピース
ハンガーにかけたまんま

きっと。


なんでも欲しがるわりに
大事にしないできない

開ければ同じ色のオンパレード
今日の天気みたい
グレーの

捨てても捨てても捨てきれない？

近道したつもりで
遠ざかってしまった


わたしの首を絞めるのはわたし自身なんだ

面影

似た人を見るたび、
あの面影を重ねてしまう

同じ人間なんて
誰ひとりいないのに

今日はもうやめよう

雨を含んだ髪の毛
足跡

想っても
思い出しても
反芻しても　なにもならない・・・

どこまでもいけるんじゃないかって

ふたりだと
できる気がしてた

孤独から解放された日

いつもいつも
見知らぬ誰かにあなたの面影を重ねている

救われない

離別

ほら、また会いたくなってしまう

自分の欲望に
どれほど振り回されてきただろう
これ以上なにもいらないのに
大事にしきれない

旅に出て
思い出を捨てに行こう

親友が言う
無理に忘れなくたっていい

だけど結局
１００回戻ってきてしまう
ここにある限り

疲れた


たまらなく大切だから
憎みだす前に離れるの


聴くたびに見るたびに会いたくなってしまう

その感情に
さよなら

被害者

想うたびに
恐れるたびに
動けなくなる

そのまえに
ざわめきが　わたしの背を押して

何度、もうだめだって思ったろう
あきらめたら
壁も崖も自分でつくってるらしい

もう　やるせなくなるほどに
よわいものはよわい
大事にされない
底辺にいるのならずっと底辺だ


突きつけられて、戸惑っている時間なんて　ない

このまま　こうして　終わる


今夜のニュースの被害者は　わたしだった
今夜のニュースの加害者も　わたしだった

煽り笑い蔑み憎み怒り泣き



また大事なものが消えた

失われたものは　もうもどらない

無題

自分でも触れたことのない場所に
触れてきたひとだった

なでるように
えぐるように

一番触れて欲しくて
一番そっとしておいて欲しい
そうゆう場所

自分の立ち位置が揺らぐ
自信か誇りか
もっと弱いもの　自尊心？
崩されてく気がした
くだらない　プライド

いたむように
かすむように

たぶん、次の場所に行くために必要な痛み
それを教えてくれたひと

ほんの少しだけ
互いの宝物を交換したんだって
そう思ってもいい？

more

去年の今頃には
思いもしなかった
新しい出会いとさよなら
知り尽くした感のあった自分の
未知の部分を

なにも、かわらないよね

変化を恐れながら
進化を求めるものでしょう？誰だって

大事にしきれない思い出を抱えて
新しい世界に行くものでしょう？誰だって

完全に飽和状態
もう、飽きてしまった

こんなに大事にされて
嬉しくて涙がこぼれた
同じだけのそれ以上の想いを返したくて
隣にいるのが自然だった


なのに

こころがいつか離れて
固執も執着も薄れて剥がれて消えてゆく
憎みたいくらいの沸騰した想いも
冷めていくんだね


まだ見たこともない
新しい世界や自分と出会うために
あれもこれも捨てて
もっと強くなって