無題

忘れたくなくても
もうあの日のあなたが思い出せない

だから今日のあなたを
抱きしめる
その熱と重みをわたしの腕や頬に刻んでおこう

いつかあなたは遠くへ旅立つから

なければないで生きていける
報われないかもしれないっていう恐怖すらない
報われたいと思う卑しさに気付いてうんざりするだけ

心配しなくていいし
自由だし
責任もないし
気楽だし
だけどあなたのいる世界を知ったいま
あなたのいない世界に行きたいだろうか
あなたのいない世界だなんて
なんてつまらないんだろう
色もある味もある手触りもある
なのになにか足りない

なければないでよかったのにね
でももう戻れないね
あなたのいない世界で生きていたわたしが嘘のよう

今日のわたしが出来得るすべて
ここに刻んでおこう
いつかそれらぜんぶ束ねて
眠れる日が来るから