傷

優しすぎるあなたは
わたしばかり優先して
自分が傷ついていることに気づいていない

わたしを大切にすると
あなたは疲れてしまう

愛すれば愛するほどに疲弊して
消耗して

あなたはいつも優しいゆえに傷ついて
そんなあなたにわたしがなにをできるだろう？
あなたのしあわせを祈っているのに
わたしがあなたを傷つけている　この事実


抱きしめるたびに
抱きしめられるたびに
なにもできない自分を嫌いになる

棘

生きていることが
無意味に辛い時があった

自分以外の世界は敵だった
戦う以外生きる道がなく
自分を守るので精一杯
武器を持つ手が震えてた
勝ちたいとは思わないけど
負けたくもなかった

他人を傷つける棘が
時に自分を傷つけ


もうその棘を脱ぎ捨てて


刺された傷はいつか癒える

呼吸

とても不思議だけど
いまの願い
祈りにちかいような

あなたの幸せ

あなたが今よりもすこしでも楽になれますように


もし、あなたがいなくなったら
胸が潰れるだろう
いつのまに、こんなにも大切なひとになったのか


ふたりでいること
どこにも負担がかからない
呼吸するみたく

このしあわせをずっと大事にしてたい

again

おそるおそる触れたあの夜から
抱きしめるのも特別なことだった
力加減も分からずに
強すぎたり
それすら愛おしかった

自分と違う個体をこの身体に感じることが
とても神聖なことだった

今はもう、その線、憶えてしまった
どんなふうに抱きしめればいいか
忘れようとしたってこの腕が忘れさせない


あたりまえ　の日常を
あたりまえ　の君の存在を
あたりまえだと思った時から傲慢になってたんだ


もういちど言うから
はじめて「好きだ」と言ったあの夜を巻き戻すから



「もういちど僕を　好きになってくれないかな？」

蜃気楼

確信すればするほど
焦点がぼやけてしまう

あなたの中にある
不安や痛みや悦び
なにひとつわからない

ただ、推し量るだけ

きっと、
あなたもそうなんだろう


愛してるって思えば思うほど
信じてるって言えば言うほど
かたちにしようとしてもそれは無理

いつかはかわるこの気持ちだけでも
ingの今、これだけでも
いいと思える　それじゃだめかな

確かなものなにひとつなくても
それだけで今日、強く生きていける

bifurcate

身近な愛おしい人より
通りすがりの他人を大切にする方が
ずっと楽な気がする


いちばん外側だけ装っていれば
優しさを無限に与えられる
見返りすらいらない

愛おしいと思えば思うほど
大事にする　仕方が分からなくなる
疑心暗鬼になる
嫌われたくないと思ってしまう
あなたへの距離の取り方が分からない
どこまで触れていいのか
どこまでさらけだせるのか


いちばん大切な人を
大切にする　仕方が分からないの
時間だけがさらさら　音を立てて、過ぎてゆく
なんのこたえも出ないままに


このまま歩いていっても
薄暗いままな気がして
ひょっとしたら
この手は、離した方がいいのかもしれない

cost

わたしは喜んで
差し出すのに
報われなければ
落胆するのだろう

報われくてもいいと叫びながら
必死でなにか掴み取ろうとしている
醜いわたしがいる


頑なな態度をとったあと
苦い後悔がこみあげる
長い夜が始まる


この世でたぶん　たったひとり
そうゆうひとにさえ
虚勢をはり
意地をはってしまう
素直になれない

あなたにも、自分にも疲れてしまった