で、ロードショーでは、どうでしょう? 第2185回。
「なんか最近面白い映画観た?」
「ああ、観た観た。ここんトコで、面白かったのは・・・」
『バイオレント・ナイト』
本物のサンタクロースが贈り物を届けに入った豪邸で武装強盗団と鉢合わせするバイオレンス・コメディ・アクション。
主演は、ドラマシリーズ『ストレンジャー・シングス 未知の世界』のデヴィッド・ハーバー。
共演は、ジョン・レグイザモ、ビヴァリー・ダンジェロ。
監督は、『処刑山 -デッド・スノウ-』、『ヘンゼル&グレーテル』のトミー・ウィルコラ。
物語。
クリスマスイブの夜。
人々に信じられなくなり、やけっぱちになっているサンタ・クロースは、酒を煽りながら、よい子リストを元に、プレゼントを届けていた。
彼がアメリカの超富豪家族の屋敷に煙突から入ると、そこに高級酒を見つけ、手を伸ばす。
その時、屋敷に銃声が響く。
屋敷には金庫を狙う武装強盗団も潜入しており、サンタは命の危機を感じ、逃げようとする。
だが、彼は逃げる途中、よい子リストの少女トルーディのピンチを見てしまう。
脚本:パトリック・ケイシー、ジョシュ・ミラー
出演。
デヴィッド・ハーバー (サンタ・クロース)
リア・ブレイディ (トルーディ/ガートルード・ライトストーン)
ジョン・レグイザモ (スクルージ/強盗団頭領)
ブレンダンフレッチャー (クランプス/強盗団)
ミトラ・スリ (キャンディ・ケイン/強盗団)
アンドレ・エリクセン (ジンジャーブレッド/強盗団)
アレックス・ハッセル (ジェイソン・ライトストーン/父)
アレクシス・ラウダー (リンダ・ライトストーン/母)
ビヴァリー・ダンジェロ (ガートルード・ライトストーン/祖母)
エディ・パターソン (アルヴァ・ライトストーン/伯母さん)
カム・ジガンデイ (モーガン・スティール)
アレクサンダー・エリオット (バート/バートルード・ライトストーン)
レイ・ストラクチャン (アル/門番)
マイク・ドプッド (ソープ隊長/キラースクワッド隊長)
スタッフ。
製作:ケリー・マコーミック、デヴィッド・リーチ、ガイ・A・ダネッラ
製作総指揮:マーク・S・フィッシャー
撮影:マシュー・ウェストン
編集:ジム・ペイジ
音楽:ドミニク・ルイス
『バイオレント・ナイト』を鑑賞。
現代アメリカ、本物サンタクロースが入った超豪邸で武装強盗団と対峙するバイオレンス・コメディ・アクション。
『ダイ・ハード』の1と2と『ホーム・アローン』に、『サンタクルーズ』と言った趣。劇中でもモロに『ダイ・ハード』と『ホーム・アローン』に言及するほど、オマージュを捧げまくる。「イピカイエー」の代わりに「ホー・ホー・ホー」となった感じです。他にもキャンディケイン役とジンジャーブレッド役など強盗団は『ダイ・ハード3』のオマージュが入っていたり、かなり細かくネタを入れている。だって、トランシーバーとかアルとか、元ネタを愛しているのがよくわかるのもいい。
そうこれ、シナリオがお手本的で、実によくできているんです。
まず、サンタはあることでサンタ職についた長寿だけど基本は人間なので撃たれたら死にます。でも、いくつかあるサンタの魔法道具、贈り物袋、よい子リスト、煙突通り抜けメガネなどなどを彼は武器にしていく。これの使い方が巧い。もう一つ仕込まれたMCU映画へのオマージュが彼をヒーローにしていく。
制作をしたのは、アクション映画専門制作会社87ノース・プロダクションズで、今作は『Mr.ノーバディ』、『ケイト』、『ブレット・トレイン』に続く第4弾。
そう、なのでアクションは楽しく激しくグロく、映倫R15+で子供が見るには推奨されてません。
キャスティングは知られた方は二人だけですが、これまたいいネタになってるんですよ。
サンタになるのは、ドラマシリーズ『ストレンジャー・シングス 未知の世界』のデヴィッド・ハーバーで、そのおじさんの奮闘ぶりが最高です。強盗団の頭領にはジョン・レグイザモで、『ダイ・ハード2』では強盗団の下っ端でしたね。子供主役のリア・ブレイディのサンタを信じている子供ぶりで映画に安らぎを与えます。父役アレックス・ハッセルはその容姿自体が一つのネタでその名前は劇中でも触れられます。カム・ジガンデイはB級アクションスターとしてリアルなハリウッド小ネタを振りまきます。(彼が言うセリフは昔マーク・ウォルバーグが言ったものだったり)。
これ、なんでクリスマス前に公開しなかったか。そりゃ、間違って見ないようにでしょう。この面白さが評判になって、連れて行ってと言われて親御さんが困らないように、と邪推しちゃうほどの面白さ。
でもね、これが堂々たるクリスマス映画なのです。まぁ、『ダイ・ハード』もクリスマス映画の逸品とされていますからね。
仕事に疲れた初老サンタがじょじょに自分の価値を取り戻していく内容に、おっさんこそグッときちゃいますぜ。
豪邸の美術や夜の撮影も安っぽくないのがいいのよね。B級のようで、ちゃんとAマイナス級になってるのよ。これがいい。
タイトルは、「サイレント・ナイト」のもじりですね。クリスマス小ネタも盛りだくさんですので、性的じゃない辺りには気を配っています。
こういう凝ったおふざけが映えるのもクリスマスの魔法ですね。(『グリーンンナイト』もこっちより)
なんといっても、血の赤と軍服の緑とお札の白とは、クリスマスカラーですから。
10か月後にもう一度見たくなる聖作。
おまけ。
原題は、『VIOLENT NIGHT』。
『暴力の夜』。
「サイレント・ナイト」のもじりですね。
2022年の作品。
製作国:アメリカ
上映時間:112分
映倫:R15+
配給:東宝東和
87ノース・プロダクションズ(英語: 87North Productions)は、デヴィッド・リーチとケリー・マッコーミックが設立した、アクション映画に特化したアメリカ合衆国の映画制作会社。
似た設定のサンタクロースによるアクション映画に『クリスマス・ウォーズ』がある。
サンタホラーでは、『レア・エクスポーツ 囚われのサンタクロース』、『悪魔のサンタクロース/惨殺の斧』、『サンタが殺しにやってくる』、『サタンクロース』などがある。
ダメおっさんサンタなら『バッドサンタ』。
似たタイトルのクリスマスホラーには『サイレントナイト』(2006)てのがあったり。
似たタイトルでは、『バイオレンス・ナイト』(2021)(別題:『バイオレンス・ナイト/ペイント・イット・ブラック』)もあります。
今作は、オリジナリティはあんまないのよね。
ややネタバレ。
サンタは悪い子の靴下に石炭を入れるというのがある。
劇中でも、赤ん坊の前で泥酔して寝ている父親に石炭を置いていく。
石炭は英語でcoal。
この響きによる言葉ネタがあったようだが、分からなかった。
ネタバレ。
スクルージがサンタに言う「お前は一体何者だ? アクション映画をたくさん見た警備員か?」は、『ダイ・ハード』でハンス・グルーバーがジョン・マクレーンに言った「お前は子供の頃、映画をたくさん見すぎたアメリカ人?」の引用。
金庫のデザインも『ダイ・ハード』に少し似せている。
黒人クラッカーは女性に。
やって来た軍人が裏切り者なのも『ダイ・ハード2』のネタで、隊長のソープは『ダイ・ハード』の原作者ロデリック・ソープからかな。
トルーディのお父さんは、ジャン=クロード・ヴァン・ダムにそっくり。
逃げるモーガンに「ヴァン・ダムみたいに逃げたわ」と言うセリフがある。
モーガンが言う「俺が乗っていたら、テロリストを倒して、9・11は防げた」はマーク・ウォルバーグが言った言葉で、すぐに謝罪した。
「Santa Claus is Coming to Town」というセリフは、予告編の日本語字幕では、「サンタがマジにやってきたぜ」になっていたが、劇中は「サンタが町にやってきたぜ」となっている。
父と母がキスをするのは、宿木の下で、クリスマスの風習にかけている。
ヴァイキングで、ハンマーに名前(頭蓋骨潰し=スカルクラッシャー)があるネタは、たぶん『マイティ・ソー』へのオマージュ。
ハンマーを得てから強くなるのも。
最後に本物のスカルクラッシャーを奥さんのローラ?が橇に載せている。
すでに逃げていたのに、トナカイたちは贈り物の袋が焼けたのをなぜ気づいたのか? ただ単に気をまわしただけか。
赤鼻のトナカイのルドルフがいないのはなぜかしら。
プレゼントに『ダイ・ハード』のDVDが出てくるが、子供がそれを求めたのね。
トルーディも『ホーム・アローン』を見たばかりだし。
大ヒットをしたので、続編開発開始(決定ではない模様)のアナウンスがあった。
なぜ彼がヴァイキングからサンタになったのか、ルドルフがなぜいないのかの理由も出てくるかな。
そうそう、サンタのイメージを悪くしないためか、実は、銃での殺しはしてないのよね。
あくまで素手と武器と事故と魔法での殺し。
空間性がよくわからないのが、『ダイ・ハード』や『ホーム・アローン』から学びとれてない。
小屋にいる相手を銃撃を途中でやめて、近接戦闘にするなど、ちょっとサンタに都合よい展開にしすぎよね。コメディとはいえ。