菱沼康介の、丸い卵も切りよで四角。

日々の悶々を、はらはらほろほろ。

誰のせいで彼女は命を失くしたのか? 『毒親<ドクチン>』

2024年04月17日 00時00分23秒 | 映画(公開映画)

で、ロードショーでは、どうでしょう? 第2339回。


「なんか最近面白い映画観た?」
「ああ、観た観た。ここんトコで、面白かったのは・・・」

 

 

 


『毒親<ドクチン>』

 

 

 

なぜ女子高生は見ず知らずの人らと自殺したのか、まさか巧妙な殺人なのか、母親と刑事たちが闇に迫るミステリー・ドラマ。

キム・スイン監督『毒親<ドクチン>』公式サイト

 

原題は、『독친』。
『毒チン』。

邦題には、『毒親<ドクチン>』となっているが、『毒親』の韓国語読みは、ドクチンではない。
タイトル自体が謎になっているなど、重要なのに邦画界の状況が面白さを少々欠けさせてしまったが、韓国で英語題をつけているので、海外ならそういう要素で惹きつけるしかないという判断なのだろう。

 

英語題は、『Toxic Parents』。
『毒親』、『毒両親』。

英語題は面白さが少し欠けちゃってます。

 

 

 

製作年:2023
製作国:韓国
上映時間:104分
映倫:R15+

 

配給 : ミステリーピクチャーズ、シグロ.

 

 

物語。

現代韓国、成績優秀で優等生の女子高校生ユリは、見知らぬ人々と死体で発見される。
ユリを愛する母ヘヨンは、優等生の娘が自殺するわけがないと半狂乱になる。
確かに、警察も、ユリが他の人とまったく連絡経路がつかめない上、現場から逃げた者がいることが分かり、殺人も捜査線上に上がってくる。
そんな中、刑事とヘヨンは、ユリを担当教員ギボムが呼び出していたこと、ユリが最後に連絡を取っていた同級生でアイドル練習生チェ・イェナの謎の言葉<毒チン>を含む脅迫めいたチャットを見つける。
ヘヨンは、教師と同級生によるイジメ問題があり、彼らのせいにより、娘はこの事件に巻き込まれたのだと、二人を追い詰めていく。

 

主演は、『ストーリー・オブ・マーメイド(人魚姫)』『妻の誘惑』などのチャン・ソヒ、ドラマシリーズ『ペーパー・ハウス・コリア 統一通貨を奪え』のカン・アンナ。
チャン・ソヒの6年ぶりの映画復帰作でもある。

監督・脚本は、『オクス駅お化け』の脚色や『覗き屋』の脚本を手がけたキム・スイン。
長編初監督作品。

 

 

 

スタッフ。

監督・脚本:キム・スイン
撮影:ソン・サンジェ

美術:イ・ヒジョン
衣装:オ・サンジン
編集:イム・シンミ
音楽:イ・サンフン

 


出演。

チャン・ソヒ (カン・ヘヨン/母)
カン・アンナ (イ・ユリ/娘)

チェ・ソユン (チェ・イェナ/同級生/アイドル練習生)
ユン・ジュンウォン (ギボム/担任教員)
オ・テギョン (オ刑事)
チョ・ヒョンギュン (ユン刑事/後輩)
ユン・ソジン (チャン刑事/証拠調査担当)

 

 

『毒親<ドクチン>』を観賞。
現代韓国、なぜ女子高生は見ず知らずの人らと自殺したのか、まさか巧妙な殺人なのか、母親と刑事たちが闇に迫るミステリー・ドラマ。
毒親の話だとして見に行くと、そこの部分は少し弱く感じる。ただし、その解釈にはかなり深みはある。
なにしろ、ミステリー・ドラマと銘打ってる部分が、一つネタバレされているのよね。
実は、原題は『독친』で『毒チン』となる。「毒親」は韓国語では「ドクブモ」で全然違う言葉。「ドクチン」は造語で、この言葉の謎を解くのが一つのミステリー要素になっている。
だが、邦題では客を引き付ける部分を強調(社会問題作品のように見せ)してしまって、謎が一つ欠けちゃった。でも、これは日本側だけの問題ではなく、本国による英語題は『Toxic Parents』で「毒両親」なので、つくり手がそこの社会問題的な題材でも押し出さないと海外じゃあ弱いから、そこを誘引剤にしようという意図からのものであると思われ、それを受けての邦題ということだろう。
けれども、謎は他に、連絡方法の謎、ある絵の謎、同級生との関係など、3つほど謎がありますし、父親の見せ方も手練れ感。
社会問題の部分もそこそこ描かれるけど、ポイントは親と子、教師と生徒、愛の有り様というけっこう複合的な内容を映画的にまとめこんでいる。上質なドラマなんですわ。
なので、映画を最後まで見ると、なかなかによくできたシナリオなのだとわかるのだが、邦題で行った人はその謎の答えを知っているので、捜査の半分くらいまで、まさかこのタイトルで意味が違うのかという変な疑心暗鬼に囚われるように努力しないとならない。(ドクチンはちょっとエロい響きにもとれるのは、劇中でも意識されている)
とはいえ、あくまでこの謎は一部で、捜査の進ませ具合や社会問題の描き方はなかなか凝っており、韓国社会へ提言として、うまくはまっている。
ただほんのちょっと予算の部分で、日本のTVドラマ感が見える編集や構成や撮影があるのが残念。
とはいえ、かなり工夫しているのもわかる(構図の意図とか)ので、お金がないことや志す方向性がいかに映画を支配するのかと考えさせる。
やや説明的ではあるが、芝居が悪くないのもいいところ。
特に、カン・アンナとチェ・ソユンの新人コンビはなかなか。二人の関係の描き方はいい出汁が出てます。
女子校生の青春ものが好きなら、ここはグッとくるはず。
教員役のユン・ジュンウォンが楔を打ち込む。このアイドル練習生こそ、実は映画の肝だったりして、教員とのシーンで映画の質がぐっと上がります。
脇キャラのエピソードにもテーマを潜ませていて、現実と地続きにさせる。
そうそう、アイドル練習生のシーンもちょこちょこあるのも箸休め。
掘り下げよりも物語の展開でぐいぐい進めていくのがいいんです。
まさに、よくできた秀作エンターテインメント(毒親の部分が謎ならさらに点数アップ)。
監督と脚本は、『オクス駅お化け』の脚色や『覗き屋』の脚本を手がけたキム・スインで、長編映画監督デビューということなので、この商業作のお手本のようなつくり上がりから、次がどうなるか、楽しみ。
いい映画の臭いを嗅ぎつけた映画ファンによって劇場そこそこ混んでましたよ。
この内容で、うっすらとハッピーエンドを用意する剛腕を抱きしめる一本。

 

 

韓国では<K-長女>という言葉があるそうで、20~30代の長女が、母親から自分の代わりとなることを過大に求められるのだという。
韓国映画にもたまに描かれる。

 

韓国語で、「毒親」は「독 부모(ドクブモ)」となる。
「독친(ドクチン)」つまり、「毒チン」は存在しない言葉で、性的な響き(チンは日本語的だが、韓国語の「独身」とも同じ響きだったり、チンの謎にもその要素があるので)として感じられているよう。

 

독친(영화) - 나무위키

 

김수인 감독의 '독친', 日 개봉 목전…외신 집중 관심

독 되는 사랑 주는 엄마 된 장서희..'독친', 캐릭터포스터 공개 - 헤럴드 POP

毒親(ドクチン) | こぉれ、いしけぇから、おっかいて、かっぽっちめぇ!

 

 

 

 

 

 

 

ネタバレ。

原題では、謎の言葉なので、ヘヨンが毒親かどうかは隠されており、ミステリーの一つになっている。
なので、そこの受け止め方で、最後のイェリの言葉の意味が変わる。

 

イェリが打ち間違えた「毒チン」は「毒針」の「독침」で、発音は「ドクチム」。
毒針はペニスにも取れるので、教員によるセクハラや性的な反抗も疑いたくなる仕掛けになっている。

字幕がほのちょっとだけ、変だたのがなあ。
「君の親が死んだわけじゃない」とか「ファイナル・ボス」とかちょこちょこ。
「あんたの親が死んだわけじゃない」や「ラスト・ボス(最後のボスからのラスボスでもいい)」でよかったと思うの。
言葉が大事な映画だけに、残念。

 

好みのセリフ。

「私たちは本当に被害者なの? 私たちは、与えた愛が与えられた方に愛で受けとめられていると勝手に思い込んでいて、見逃してしまった。本当は加害に加担していたのかも」

「殺したい相手がいるとき、その殺したい相手ではなく自分を殺してしまう人がいるんです」

「お姉ちゃんを戻して! お姉ちゃんがいないとママの怒るのが僕にくるから」

 

誰かが見ているということが映画的に配置されている。
監視カメラ、盗聴、仕掛けたカメラ、携帯で撮影した動画・・・。

それは、レストランのシーンでも強調される。

 

『優しい嘘』や『心の秘密』なども似ている。
日本だと、『母性』が似てるのかしら。
予告編がマイチだったのと感想もあまりよくないので見てないのだけど。

 

 

 

 

 

 

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