で、ロードショーでは、どうでしょう? 第2259回。
「なんか最近面白い映画観た?」
「ああ、観た観た。ここんトコで、面白かったのは・・・」
『イメージズ』
幻覚症状に悩まされる小説家の妻と写真家の夫が別荘へ逃げ込むサイコホラー。
以前の題名は、『ロバート・アルトマンのイメージズ』。
主演のスザンナ・ヨークの原作小説を下敷きに映画化。
スザンナ・ヨークは、カンヌ映画祭にて主演女優賞を受賞。
監督・脚本は、ロバート・アルトマン。
物語。
馴染めない都市に移ってきた小説家の人妻キャスリンは、成功したカメラマンの夫ヒューが浮気しているという謎の電話を受ける。
幻聴を聴くようにもなった彼女は、夫にかつて住んでいた田舎へ戻ることを提案する。
心配した夫はそれを受け入れる。
そこには、以前の浮気相手マルセルが離婚して幼い娘のスザンナと暮らしていた。
だが、そこに死んだはずの昔の恋人マルセルが現れる。
原作:スザンナ・ヨーク 小説『ユニコーンを探して』
出演。
スザンナ・ヨーク (キャスリン)
ルネ・オーベルジョノワ (ヒュー)
マルセル・ボズフィ (ルネ)
ヒュー・ミリアス (マルセル)
キャスリン・ハリソン (スザンナ)
ジョン・モーレイ (老人)
スタッフ。
製作:トミー・トムソン
撮影:ヴィルモス・ジグモンド
プロダクションデザイン:レオン・エリクソン
編集:グレーム・クリフォード
音楽:ジョン・ウィリアムズ、ツトム・ヤマシタ
『イメージズ』を鑑賞。
70年代アメリカ、幻覚症状に悩まされる小説家の妻と写真家の夫が別荘へ逃げ込むサイコホラー。
主演のスザンナ・ヨークの手による原作小説『ユニコーンを探して』を下敷きに映画化。
監督・脚本は、ロバート・アルトマン。以前の題名は、『ロバート・アルトマンのイメージズ』で、日本では劇場未公開だったが、2023年の<ロバート・アルトマン傑作選>で初公開となった。
後のアルトマン作『三人の女』にも共通する心が分断されていく女性の物語となっている。だが、ドラマというよりは、完全にジャンルものになっている。もちろん、そこはアルトマン、壊れた愛のドラマを展開し、一人の女性の心から過去と現在を同時に描いてみせる。時間の群像を表出している。
ジャンル的にも面白い映像のしかけもある。
女性の複雑さとホラーヒロインと壊れていく女を演じ上げたスザンナ・ヨークは、この演技でカンヌ映画祭主演女優賞を受賞。
原作主演と監督脚本のコラボの螺旋がどうなっているのを見たくて見に行ったのだが、実にシンプルで強固な映画となっていた。
そこを支えるのは、ヴィルモス・ジグモンドの陰影深く、フィルムならでは色厚さと仕掛けを意識した的確な映像。
さらに、物語を深く刻みつけるのは二人の音楽家によるサントラ。巨匠ジョン・ウィリアムズ(当時は40手前)のピアノの旋律が破壊を待ち、神経を逆なでするツトム・ヤマシタの東洋的な音響効果。
この物語、そのまま現代に焼き直してリメイクできるよね。というか、似たような映画がいくつか思いつくので、定番なのよね。だからこそ、作家の技が見えやすい。
特に、最後のあの滝での見せ方の不穏さがチャチになっていないのが流石。
キャスティングも交えた脚色に技ありで、スザンナ・ヨークがキャスリン役、スザンナ役にキャスリン・ハリソン、ヒュー役にルネ・オーベルジョノワ、ルネ役にマルセル・ボズフィ、マルセル役にヒュー・ミリアス、と役名と役者名が交錯するようになっている。
それにより、観客も幻惑されるのだ。
これにより、実は……という思考が浮かび上がり、物語の層が厚くなり、複雑さを増す。実際、そこを意識して、全体はシンプルなストーリーになっているのでね。
そうしおう、実はコメディ要素もあるので、そこをマルセル・ボズフィが見せるので、それが愛の有り様の含みがある。夫(ルネ・オーベルジョノワ)のズレた笑いがそれを膨らます。もはや風鈴と不倫がかかっているのかと思ったり。
集合体を収束させる一つの形(ウィンドチャイム、羊と犬など)で示される映像隠喩なども見事。
後半には、さらにそこをくねらせて、心の襞が絡まっていく。
家とか小物などの美術もリッチ。
『シャイニング』も参考にしたかのようなカットや演出もある。
ミニマムな家とその周囲に絞ったことで、ひとつの定型になっていて、今も見やすい。お見事と言いたくなるB+な逸品。
その広がった角の根元の根元は体がない鹿作。
おまけ。
原題は、『IMAGES』。
別題:『ロバート・アルトマンのイメージズ』。(以前の題)
本編の表示は『Robert Altman's IMAGES』。
『幻像たち』。
『ロバート・アルトマンの幻像たち』。
1972年の作品。
製作国:アイルランド
上映時間:101分
映倫:G
ネタバレ。
幻覚を殺し、その死体があるままで暮らしていることの恐怖と笑い。
滝を落ちるキャスリンの実在感が素晴らしい。
これが人形に見えたことで冷める映画がどれだけあったか。