菱沼康介の、丸い卵も切りよで四角。

日々の悶々を、はらはらほろほろ。

切り離されていく気分になる。 『豚が井戸に落ちた日』

2023年07月27日 00時34分30秒 | 映画(公開映画)

で、ロードショーでは、どうでしょう? 第2277回。


「なんか最近面白い映画観た?」
「ああ、観た観た。ここんトコで、面白かったのは・・・」

 

 

 

 


『豚が井戸に落ちた日』

 

 

売れない小説家と恋人と不倫相手とその夫の四角関係を複数視点で描くドラマ。

 

唯一無二のスタイルで映画に愛されているとしか言えない最もミニマムな巨匠ホン・サンスの長編監督デビュー作。

ソン・ガンホの映画出演デビュー作でもある。

 

 

物語。

売れない30歳代の小説家キム・ヒョソプは、後輩で恋人ミンジュがいるが、人妻ポギョンとの不倫愛に嵌っている。
時間はあるが、うまく時間を合わせられない3人。
ヒョソプは仲間内でも疎まれているが、友人の編集者トンソクとともに文士の集まりに出席する。

ポギョンの夫トンウは営業をしているサラリーマン。
あまり有能ではなく、出張が多く、旅先では小さなトラブルでストレスが溜まる。

ミンジュは映画館のもぎりの他に新しいバイトを始める。それは、日本のエロアニメの声優の仕事だった。
映画館の同僚ミンスはミンジュに片思いをしている。

ポギョンはついにヒョソプと生きようと決意する。

原作:ク・ヒョソ 『面識のない夏』
脚色:ホン・サンス、チョン・デソン、ヨ・ヘヨン、キム・アラ、ソ・シネ

 

 

 

出演。

キム・ウィソン  (キム・ヒョソプ(金孝燮)/三流小説家)
パク・チンソン  (ハン・ドンウ/ポギョンの夫/チノン食物の課長)
チョ・ウンスク  (ソ・ミンジェ 場末の映画館の切符売り/小説家志望)
イ・ウンギョン  (ポギョン/ドンウの妻)
ソン・ミンソク  (ヤン・ミンス/映画館の男性職員)

チョン・ヘリョン  (インチャン チョンジュ(全州)に住むトンウの後輩)
パン・ウニ    (ソンファ インチャンの妻)
パク・キョンホ   (先輩文人1 ピョン・サング)
パク・チュンソン  (先輩文人2)
ソン・ガンホ   (トンソク 文人 キム・ヒョソプの大学同窓)
イ・ビョンスル   (ムノ 文人 キム・ヒョソプの大学同窓)
イ・ヨンスク   (ホンソン 文人 ヒョンソプの大学後輩)
キム・デファン  (図書出版 <窓> 後輩)
ペ・ジュンシク  (韓国料理店 支配人)
クォン・ヒョッキョン (韓国料理店 女性従業員)
スン・ドンウン  (判事)
イ・ジョンイル (コ・チウォン 裁判所で金を借りる男)
チョ・ジョンウォン  (広報室長)
パク・ノイル   (慶尚道男 バスで嘔吐する男)
チェ・ヒヨン   (チケット喫茶店のレジ(娼婦))
イ・チャンウ  (全州コアデパート 専務)
オ・ジヒョン   (全州コアデパート 専務秘書)
イ・ジョンジン  (エレベーターガール)
キム・サンヒ   (泌尿器科 看護婦)
ソン・ウンジェ  (チンスク/ミス・キム)
ハ・デギョン   (ミンスのおじ/シルリム劇場支配人)
ク・ボソク    (録音室 社長 クムガン(金剛)流通)
カン・ヒ      (ミンジェの大家)
イ・ユンピョ    (屋上の女)
チェ・ユミン   (ケヨン ポギョンの友人 薬剤師 スギョン薬局)
キム・ジョンソク   (写真館 独身男 国際写真館)

 


スタッフ。

助監督:キム・ムンス、キム・チュングク、シン・チャンギル、ソ・シネ
撮影:チョ・ドングァン(K.S.C)
照明:キム・イルジュン
編集:パク・コクチ
音楽:オク・キルソン
美術:チョ・ユンサム

 

 

『豚が井戸に落ちた日』を鑑賞。
90年代韓国、売れない小説家と恋人と不倫相手とその夫の四角関係を複数視点で描くドラマ。
ドライに、淡々と日常の時間をとらえていく中で、突然起こるドラマチックに震撼する。
唯一無二のスタイルで映画に愛されているとしか言えない最もミニマムな巨匠ホン・サンスの長編監督デビュー作で、まだ独自のスタイルは確立されておらず、ホン・サンス色は薄いもののすでに、特徴のいくつかは見られる。(お酒の席、喫茶店での二人会話、なにげない時間など)
カット割りもスタンダードで見やすくはある。わかりやすいクローズアップにまだホン・サンスの魔法はない。
キム・ウィソンのうらぶれ存在感が映画にリアリティをもたらす。ソン・ガンホの映画出演デビュー作で、キム・ウィソンの推薦だったそうですよ。遠くから見てもすぐわかる大柄の体を少しすくめた感じは、すでに健在。出番は多くないが、90年代の匂いをしっかりと刻み付けている。
男は頼りなく、女は愛にまっすぐに生きる。女性の美女ぶりはホン・サンスを感じさせるフィクションの目を感じる。
映倫はR18だが、男女ともに全裸による性交描写があるためで、そこまで扇情的でも赤裸々でもないです。
なにより、そのリアリティは流石の一言で、当時の韓国を見た気にさせる。なのに、決して、ドキュメンタリー的でない物語力はすでに映されている。
そして、その描写によって、薄く息苦しくさせ、現実と地続きにさせる。
それを後押ししてくる音楽の使い方が技あり。これで映画全体が締まっている。
2013年に韓国映像資料院の<韓国映画100選>に選定されているのも納得。
まぁ、見やすくはないですけどね。
そのフィルムの触感と合わせて、時代を伝えてきます。
そのドライさの乾燥ぶりで唇ひび割れます。
彼らの疎外感が画面で隔てられた私たちも抱くのに、決して共有できないうら寂しさ。
ちょっとした言葉、タイミングで届かなくなる杯作。

 

 

 

おまけ。

原題は、『돼지가 우물에 빠진 날』。
英語題は、『The day a pig fell into a well』。
『豚が井戸に落ちた日』。

 

1996年の作品。

 

製作国:韓国
上映時間:114分
映倫:R-18

 

配給:パンドラ  
 

 

 

 

受賞歴。

1996年の第17回 青龍映画賞にて、新人監督賞、女優助演賞(チョ・ウンスク)を受賞。
1996年の第16回 韓国映画評論家協会賞 新人監督賞, 音楽賞(オク・キルソン)を受賞。
1996年の第1回 釜山国際映画祭 ネットパック賞を受賞。
1996年の第15回 バンクーバー映画祭 龍虎賞(Dragon and Tiger Award for Young Cinema)を受賞。
1997年の第20回 黄金撮影賞授賞式にて、新人監督賞、 新人演技賞(キム・ウィソン, チョ・ウンスク)を受賞。
1997年の第42回 アジア太平洋映画祭にて、最高新人賞を受賞。
1998年の第26回 オランダ ロッテルダム映画祭にて、タイガー賞(Tiger Award,最優秀作品賞)を受賞。
2013年に、韓国映像資料院「韓国映画100選」選定作品に選出。

 

豚が井戸に落ちた日 : 作品情報 - 映画.com

돼지가 우물에 빠진 날 - 나무위키

豚が井戸に落ちた日 の映画情報 - Yahoo!映画

돼지가 우물에 빠진 날 | 왓챠

돼지가 우물에 빠진 날 < 자료검색 < 영상도서관 - 한국영상자료원

 

 

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