菱沼康介の、丸い卵も切りよで四角。

日々の悶々を、はらはらほろほろ。

タタタの神太郎  『タイタンの戦い』

2010年05月04日 00時00分18秒 | 映画(公開映画)
 
で、ロードショーでは、どうでしょう? 第135回。



「なんか最近面白い映画観た?」
「ああ、観た観た。ここんトコで、面白かったのは・・・」







『タイタンの戦い』





特殊撮影の巨人の一人、レイ・ハリーハウゼンが担当した名作『タイタンの戦い』のリメイク作品。(監督はデズモンド・デイビス)
芸術的ストップモーション・アニメ(特別にダイナメーションと呼ばれる)と合成で、驚異の世界を描いていた作品なのですが、それを今度はCGでというわけ。


これ、3D映画だと大きく宣伝されています。
でも、この作品は、『アバター』の大ヒット(予測?)の影響により、急遽2Dから3Dへと変換作業が施されての3Dなのよね。
実は、3Dってちょっと問題があって、早いカット割りや動きが苦手なのよね。
上映方式によっては、色と明るさが失われるという欠点もある。

で、おいらは、たぶん2D版の方がよいのではないかと、判断した。
評判を聞く限り、その判断は正解だったよう。
判断の理由は、予告編で、画面の質感にこだわった印象を受けたので。
赤茶けたというか独特のオリジナル作などに通じる風合いは意外と好みでした。
あれは逆に3Dじゃもったいないと思うけどなぁ。
 


物語は、ギリシャ神話をアレンジしたもの。
ゼウスと人間の子供ペルセウスが神の人間への仕打ちに立ち向かう話。
神を侮辱したアルゴスの王に怒ったゼウスはハデスに人間に罰を与えるよう指示する。
ハデスは王に、皆既日食までに姫をいけにえに捧げなければ、街を怪物クラーケンを放つと告げる。
ペルセウスは、選ばれた戦士とともに神を倒す方法を手に入れるために魔女の元へ旅に出る。

生まれを呪う感じ、人間が神に抗うという壮大なドラマが、どこか現代のティーンの反抗心にスケール・ダウンしちゃった感じは、否めない。
同じ題材では、アニメの『アリオン』を思い出してしまったのだけど、あちらの方がそこらへんの大きさは楽しめます。

あと音楽が少し物足りない。
壮大さはあるんだけど、ちょっと落ち着いてるかな。
コレは好みなのですが。



ただ、役者陣が意外といい。
主役のサム・ワーシントンは、クラシックなスター、カーク・ダグラスやジョン・ウェインなどと同タイプの魅力があることを発見。
リーアム・ニーソン&レイフ・ファインズというイギリスの名優コンビがゼウスとハデスの兄弟役を、まさに神のごとき重厚な演技で神を演じている。
同じくイギリス勢の『アバウト・ア・ボーイ』のニコラス・ホルトや、ほかにも、北欧の名優マッツ・ミケルセンなど、欧州の香りを出しているのはフランスの監督だからかも。
ただ、ギリシャ人はいないけどね。
ワーソントンはオーストラリア人だし。


監督のルイ・レテリエは『インクレディブル・ハルク』で巨大モンスター・プロレスを魅力的に描いて見せただけあって、こちらでも怪物と人間の肉弾バトルはさすがの迫力。
ところが、クライマックスの巨大クラーケンになると、肉体というよりは乗り物アクションになってるんだけど、それがイマイチ。
でかいからあまりにゲーム的でせっかくあった肉体の興奮が薄れちゃったのよ。
もちろん、イメージのふくらみはあるんだけね。

もっとも印象深いのは、サソリとのバトル。
そうそう、オリジナルへの敬意として、モンスターなどの造詣をかなりこだわっていて、いいのよ。
そして、ジン一族や魔女などの人間系モンスターがいい。
デザイン的には『300』とか『パンズ・ラビリンス』っぽいともいえるんだけどさ。
あれ、同じデザイナーなのかしら?
でも『パンズ・ラビリンス』は、ギレルモ・デル・トロのデザイン?


でも、この映画の魅力が、実は、年を取れない呪いをかけられた女性や『300』に出てきた不死の兵などの魅力深いキャラクターたち。
主人公をずっと疎ましく扱う隊長とか、エリートの若き戦士とか、勝手に加わったコンビとか、ステロタイプなんだけど、この旅のチームは、かなりわくわくさせる。
彼らの活躍がもっともっと見たかった。

ルイ・レテリエは日本のマンガやアニメの大ファンだそうで、神々の鎧姿はあの『聖闘士星矢』からの影響だそう。
それで車田正美が描いたポスターも作られた。
神の武器の出し方などもその影響なのかも。


日本のアニメほど、がっつり濃ゆく出来てないのが欠点ともいえて、魅力的なキャラクターたちがもうちょい絡んだら、楽しめたのかも。
レイ・ハリーハウゼンの世界の魅力的な怪物に勝つのは、人間のキャラ力だったのかもしれなかったのに。



だから、もういろいろすごく惜しいなぁ、とつぶやいちゃう映画。
ギリシャ神話に興味と、サム・ワーシントンの筋肉美を堪能する気ならって感じ。







 
アメリカではまぁまぁヒットしたので、続編が決まったそうなんだけど、ただ怪物を豪華にするだけでない、怪物や神や人間たちの精神性というかキャラクターを充実させてほしいなぁ、と思ったりして。
『ハルク』はまさにそこの良さだったわけで。
だから、きっと、次回はサム・ワーシトンがでっかくなるんじゃないかしらね。








おまけ。
『タイタンの戦い』のタイタンというのは、ギリシャ神話に出てくる巨人一族のことですね。
ゼウスもその一族の末裔なのですが、父であるクロノスを倒して王座につこうとします。
そのとき、タイタン族はクロノスの側についたわけです。
なので、負けたタイタン族は冥府に落とされます。
だから、このタイトルは、神(ゼウス)に逆らうモノどもという意味なのか?
でも原題は『CLASH OF THE TAITANS』ですから、『タイタン族の崩壊』となる。
タイタン族を冥府の一族とみてるのかしらね?
それとも、神の世の終わりを指しているのか?
でも、一応、主人公のペルセウスもタイタン族の末裔(クロノスの孫)にあたるはず。
タイタン族同士の衝突ということかもしれぬ。











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