菱沼康介の、丸い卵も切りよで四角。

日々の悶々を、はらはらほろほろ。

親の心、子知らずもがな。   『イギリスから来た男』

2006年11月01日 00時15分34秒 | オレは好きなんだよ!

【俺は好きなんだよ】第43回

 

『イギリスから来た男』(1999)

原題の『THE LIMEY』は、“英国人”とのこと。
その昔、英国水兵が壊血病を予防するためにライムを食べていたことに由来する言葉とのこと。

スティーブン・ソダーバーグのテレンス・スタンプと映画への愛情溢れる一編。


スタッフ。
監督:スティーヴン・ソダーバーグ
製作:ジョン・ハーディ
   スコット・クレイマー
脚本:レム・ドブス
撮影:エドワード・ラックマン
音楽:クリフ・マルティネス
 
出演。
テレンス・スタンプ、ピーター・フォンダ、ルイス・ガスマン、バリー・ニューマン、レスリー・アン・ウォーレン、ジョー・ダレッサンドロ、ニッキー・カット、アメリア・ハインル、メリッサ・ジョージほか。


物語。
娘の謎の死の真相を求めて、イギリスからハリウッドへと渡った元犯罪者・ライミー。
たった一人の父親の娘へのもう届かない不器用な愛情が、血みどろの戦いの中で昇華していく。

主人公のライミーを演じるは、ベテラン、テレンス・スタンプ!!
対するは、アメリカの名優ピーター・フォンダ!!
この60年代のイギリスとアメリカ代表する名優の対決、これだけで、この映画は痺れさせるのよ。


で、主人公ライミーの過去のシーンとして使われれいる映像は、1968年のスタンプ主演のケン(ケネス)・ローチ監督作品『夜空に星のあるように』を使っている。
(BBCのディレクターを経て、映画初演出となる社会派リアリズムの映画。ケン・ローチが珍しく職業俳優を起用している作品)
まさに映画を一人の俳優の人生の記録として、扱っているのだ。


1999年のインディペンデント・スピリット賞で、作品賞、監督賞に加えて、主演男優賞 テレンス・スタンプ、助演男優賞 ルイス・ガスマン、脚本賞 レム・ドブスがノミネートしています。


オープニング・タイトル“THE LIMEY”にThe whoの曲がかかるところから、渋さがきりっと染み渡っているのよね。


それに、彼の長編デビュー作にして出世作『セックスと嘘とビデオテープ』は、コミュニケーション不全の物語であり、この映画でも父と娘のコミュニケーション不全が全編を覆っている。だが、その間には、愛が溢れている。

で、その『セックスと嘘とビデオテープ』で、カンヌ映画祭でパルムドール受賞の時のコメントを思い出しちまった。
「人生をメチャクチャにしてくれて、ありがとう」
確かにその言葉通り、その後、数作は批評的にも工業的にも苦しむ作品を生み出し続けたが、いまや、かの映画のその姉妹編『フル・フロンタル』を『オーシャンズ11』と続けて作るような自由を獲得しているのだから、人生は面白いと思わせてくれる。
それも、スティーブン・ソダーバーグの映画への片思いこそがつかませたものじゃないのか。
片思いは、最も愛情溢れるコミュニケーション不全じゃないか、なんて思わせてくれる一本なのだ。






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