菱沼康介の、丸い卵も切りよで四角。

日々の悶々を、はらはらほろほろ。

肌理が細かい皮膚を剥ぐ。 『ゲット・アウト』

2017年11月11日 00時00分01秒 | 映画(公開映画)

で、ロードショーでは、どうでしょう? 第1185回。


「なんか最近面白い映画観た?」
「ああ、観た観た。ここんトコで、面白かったのは・・・」

 

 

 

『ゲット・アウト』

 

 

 

 

人気コメディアン、ジョーダン・ピールの監督デビュー作(脚本も。脚本では主演した映画『キアヌ』などがある)にして、全米でサプライズ大ヒットを記録して大きな話題を集めたホラー・サスペンス。

米国が抱える根深い人種問題を背景に、白人の彼女の家を初めて訪問することになった黒人青年を待ち受ける予測不能の運命を不穏なタッチでスリリングに描き出す。

 

 

 

 

物語。

ニューヨークに暮らす黒人青年のカメラマン、クリス・ワシントンは、白人の恋人ローズ・アーミテージと彼女の実家に行くことに。だが、リベラルな彼女は、医師の両親に恋人が黒人であることを知らせていない。

クリスはナーバスなまま、アーミテージ家に着くと、まったく心配ないというローズの言葉通り、彼女の両親は歓迎してくれる。一安心するも彼は入ってはいけない地下室や湖の対岸まで隣家の無い孤立した屋敷、やや粗暴な弟や使用人として働いている黒人たちの姿に妙な胸騒ぎを感じるのだった。

深夜、ふと目を覚ましたクリスは我慢していた煙草を吸いに外に出る。

すると、使用人の男がクリスに目がけて突進してくる。

 

 

 

出演。

ダニエル・カルーヤが、黒人のクリス・ワシントン。

新ホラーヒーロー誕生です。

アリソン・ウィリアムズが、白人のローズ・アーミテージ。
キャサリン・キーナーが、白人心療医のミッシー・アーミテージ。
ブラッドリー・ウィットフォードが、白人医師のディーン・アーミテージ。
ケイレブ・ランドリー・ジョーンズが、医師志望のジェレミー・アーミテージ。

リルレル・ハウリーが、黒人の友人のロッド・ウィリアムズ。

ベッティ・ガブリエルが、黒人使用人のジョージーナ。
マーカス・ヘンダーソンが黒人使用人のウォルター。

レイキース・スタンフィールドが、黒人青年のアンドリュー・ローガン・キング/アンドレ・ヘイワース。
スティーヴン・ルートが、画廊オーナーのジム・ハドソン。

 


ほかに、エリカ・アレクサンダー、ジェラルディン・シンガー、リチャード・ハード。など。

 

 

 

 

スタッフ。

製作は、ショーン・マッキトリック、ジェイソン・ブラム、エドワード・H・ハム・Jr、ジョーダン・ピール。
製作総指揮は、レイモンド・マンスフィールド、クーパー・サミュエルソン、ショーン・レディック、ジャネット・ヴォルトゥルノ。

 

撮影は、トビー・オリヴァー。

 

プロダクションデザインは、ラスティ・スミス。
衣装デザインは、ナディーン・ヘイダーズ。

 

編集は、グレゴリー・プロトキン。

編集のタイミングも絶妙。

 

音楽は、マイケル・エイブルズ。

この音楽もいいです。 

 

 

 

 


白人の彼女の実家に挨拶に行った黒人カメラマンが味わう恐怖を描くホラー。
知的に仕組まれた不穏なる社会派コメディでもある。映画の記憶が現実を想起させる。裏に隠された笑いは実感と知識がないと見えてこず見た目上はホラーの体裁を保っているところが稀有。違和感の柄で埋め尽くされた恐怖のベールに包まれた新しい古典。
ジョーダン・ピールの驚くべきデビュー作。
新ホラーヒーローのダニエル・カルーヤとにらめっこがしたい。キャストの眼力がフラッシュバックする。
人の表情が、その奥の意識が怖い。こんなに怖い涙はなかなか出会えません。
幾重にも重ねられた映画ミルフィーユの肌理のある皮膚感覚に鳥肌を立てる裏作。

 

 

 

 

 

おまけ。

原題は、『GET OUT』。

『出ていけ』ですね。

 


上映時間は、104分。
製作国は、アメリカ。
映倫は、G。

 

 

受賞歴。

2017年のMTVムービー・アワードにて、コメディ演技賞をリルレル・ハウリーが、受賞。

 

突進してくるウォルターの真似なども、あちらでは流行ったようです。

 

 

 

 

キャッチコピーは、「何かがおかしい」。

“違和感”と“可笑しい”がかかっているのでしょうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

ややネタバレ。

この映画のキャスティングがまさに物語の意図を体現したキャスティングになっていて素晴らしい。

キャサリン・キーナーは、『マルコヴィッチの穴』などでも怖い妻を演じている。劇中に出てくる“沈んだ地”の映像も『マルコヴィッチの穴』の心の中に似ている。

ケイレブ・ランドリー・ジョーンズは、『バリー・シール アメリカをはめた男』でもダメな弟役を演じており、『アンチヴァイラル』など、落ちこぼれ役が多い。

アリソン・ウィリアムズは、出世作のTVドラマ『GIRLS/ガールズ』でアートギャラリーに勤務している真面目で他者の失敗や欠点には容赦しない役を演じている。

リルレル・ハウリーは、いくつかのTVドラマで友人役で知られている。

つまり、キャスティングが映画の記憶を取り戻させるのだ。

記号性を逆手にとって笑わせている。 

これは、『キャビン』でも同様の手を使っていた。

そして、ダニエル・カルーヤは、その記号性から抜け出し、あくまでも冷静に、危険ことからは遠ざかり、すぐに逃げようとする。勘も鋭いし、簡単に感情的にならないし、目の前のことにとらわれず、やるべきことをやろうとする。その上、その眼が印象的で彼の眼なら欲しいと思わせる。

 

 

 

 

 

 

 

ネタバレ。

珍しいのは、主人公のクリスがホラー映画の主人公にしては冷静で、慌てふためき、叫ぶことが少ない。

これは映画における黒人のステロタイプの破壊、ホラー映画のパロディとして、そういうキャラ造形をしたそう。

それを際立たせるために、定型のオモシロ黒人としての友人キャラを対比として配置している。

 

 

車の運転中に流れる歌『Sikiliza Kwa Wahenga』は、スワヒリ語で、「立ち去れ」という内容を歌っており、祖先の警告の意味なんだとか。

 

アメリカ映画のホラーの系統で、『ステップフォード・ワイフ』などで田舎で人の中身入れ替えものがいくつかある。

ホラーでは体を欲しがるのは定番で、最近作でも、『インシディアス』シリーズ、『アナベル 死霊人形の誕生』、『ウィジャ・ビギニング』があるし、『リング2』のサマラがいい例ですね。SFでも『セルフレス/覚醒した記憶』がありました。

韓国映画『ザ・ゲーム』 (2008)(原作は新田たつおの漫画)も入れ替えものでした。藤子・F・不二雄先生の『換身』や『未来ドロボウ』も。

『セコンド/アーサー・ハミルトンからトニー・ウィルソンへの転身』なんてのもありましたね。

 

 

黒人の恋人を連れて白人の娘が実家に挨拶に行くのは、『招かれざる客』(1967)だが、これはコメディ。しかも、黒人の恋人が医師で、ここら辺も今作の笑いのポイント。

リメイクされた『ゲス・フー/招かれざる恋人』(2005)は白人の彼氏を黒人一家に紹介すると入れ替えている。

『最高の花婿』(2014)はフランス映画だが、白人の娘が婚約者が黒人だと知らせずに実家に戻る話で、相手の黒人一家でも同じ反応が起こるので、二つ分の話が一つに入っている。

 

 

綿で耳栓?とか言う人がいますが、唾で濡らして詰めるとけっこう密閉されます。

乾いていたのは時間が経ったからでしょう。

あんなに簡単には取れないでしょうが、そこは映画の嘘でいいかなと。

あと、大声で拒否したのも考慮していいかと思います。

催眠術がかかっているとうぬぼれて、あの部屋は監視が甘いですしね。

 

 

 

元々のエンディングは、多くのホラー映画のようにバッドエンドだったそうですが、トランプ政権の政策やヘイトや人種差別を軸にした事件から、現在のエンディングにしたそうです。

 

 

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