「無駄な抵抗」 世田谷パブリックシアター 2023.11.23 13:00~
世田谷パブリックシアターと、イキウメの前川さんがタッグを組んだ作品。
「終わりのない」や「遠野物語」を見ているので、楽しみ。
今回はギリシャ悲劇の「オイディプス王」のテーマ「運命」を原点とした作品だそうで。。。
話の内容は
「その駅は半年前に電車が停まらなくなった。どの電車も通過するだけ。住民は困惑しながらも、隣の駅まで行くなり、他の交通手段を使うなりして日常を守っていた。駅ビルは寂れ、駅前の広場は活気を失った。
占い師として活躍していた桜(松雪泰子)は地元に戻ってカウンセラーとして再出発する。クライアントとして現れたのは、同級生の芽衣(池谷のぶえ)だった。
芽衣は、かつて桜に言われた言葉に強く影響を受けていた。その言葉が自分の性格と人生を決定づけ、苦しんでいると言う。あれは予言であり、呪いだったと。
駅前広場で始まる対話は、次第に芽衣を取り巻く奇妙な運命を明らかにしていく。
幼い頃の父の態度、叔父との関係、予言を避けるためにした選択、母の残した手紙、芽衣の入れ込むホストの出生の秘密。叔父が探偵まで雇い、芽衣を監視していたこと。
二人は、芽衣を苦しめているものが何なのか、そして芽衣の心に深く刺さった桜の予言をどうするべきなのか、考える。
広場では、関係者たちが二人の会話に聞き耳を立てている。」(公式より)
舞台は、ギリシャの劇場のようなすり鉢状の広場・・・ここがその駅の駅前広場
半年前から突然電車が止まらなくなった駅。ときどき「電車が通過します」というアナウンスと電車の通過音がする。
広場には、大道芸人(浜田さん)や、カフェの店長(大窪さん)、警備員(森下さん)が。ときどき会話をしたり、サビれたことを憂いている。
占い師として活躍していた桜(松雪さん)はカウンセラーを始めているが、クライアントの芽衣(池谷さん)のカウンセリングを
ここの広場で始める。桜と芽衣は同級生であった。
芽衣は小学生のときに桜に「あなたは人を殺す」と言われて、その予言を実現しないように、自分を律して生きてきたという。
その言葉が呪いのようにつきささり、その予言にあらがい続けて、自分の性格をも変えてしまい、それに苦しんでいるという。
桜は全く覚えていなく、自分の言葉が人の人生に影響を与えていたことに驚く。
芽衣の家では、父親が家族に暴力をふるっていたのだった。それも、母親と兄にだけ。
カウンセリングをしている二人の話を、周りのひとたちは、何気なくきいている。
広場には、探偵(安井さん)もやってくる。また、疎遠であった芽衣の兄(盛さん)も現れる。
芽衣のカウンセリングは続いていく。
父は借金を残して、家を出て、母も亡くなったとのこと。
そんな芽衣は今は、ホスト(渡邊くん)に入れあげていた。
彼は養護施設育ちで、生まれてすぐに施設の前に捨てられてたという。
広場に来ていた探偵は、芽衣の叔父が雇ったもので、芽衣とホストを引き離そうとしていたのだった。
父親の暴力を防ごうと家にきていた叔父は、母とできていた。
探偵は叔父から預かっていた、母の残した手紙を芽衣に渡す。
それによると、芽衣の実の父親はその叔父だったのだ。
そして、芽衣はその叔父に犯されて、子供を妊娠。中学のときに出産したのだった。
芽衣が生んだ子がホストの理人だった。
電車は通過していくだけ、その状況に憤慨していたカフェの店長は、とうとう線路に置き石をして、電車を脱線させる。
この状況に強硬手段で抵抗したのだ。
手紙を読んだ芽衣も、自分の今までの運命を変えるために、叔父を訴えることを決めたのだった。
というような話でしたが、、、なかなか考えさせられる芝居でした。(前川さんの芝居はいつもそうだけど)
「無駄な抵抗」自分の運命にあらがうことは、やっぱり無駄なんだろうか?
そもそも、運命って何?自分の運命ってわかるの?なんて、考えると。。。
どうがんばっても、結局は、なるようにしかならないってことなんだろうか。
芽衣の過去は、厳しいもので、これも運命なんだろうか。そして抗えないのだろうか。
でも、最後に芽衣は、自分の未来を変えようと、叔父を訴えるという抵抗をする。
きっとこの「抵抗」は無駄にはならないだろうという、希望が見える。
電車が止まらないという状況に抵抗したのは、カフェの店長だけ。
電車は脱線したけど、町の人の反応は、薄いもので、、、抵抗しても無駄ということなんだろうか。
うーーーーん。
自分の実の父親だった叔父に犯されて、生んだ子供が、今自分が入れ込んでいるホストだった。
これはまさしく「ギリシャ悲劇」のような展開なんだけど。
こんな運命を背負わされている芽衣は、どうすればいいんだろう。
そして「父を殺す」という予言をされていた芽衣。。。
最終的には、実際に殺すとうことではなく、訴えるということで叔父を成敗するという手段は
ある意味美しかったし、希望が持てる終わり方だったと思う。
でも、、、辛い話だったな。基本会話劇なんだけど、
会場の集中力。お客さんがみんな一言も聞き漏らさないぞという感じがすさまじい芝居だなと
思いました。会場の空気が研ぎ覚まされている感覚でした。
キャストの感想
芽衣ののぶえさん
のぶえさんって、どんな役でも、そのものになっちゃいますよね。
去年のイキウメの芝居でもそうだったけど。
私のボキャブラリーが乏しくて申し訳ないけど、とにかく、素晴らしいの一言でした。
桜の松雪さん
自然体な感じ。カウンセラーですもんね、基本聞き役。
でも、存在感が抜群でした。
大道芸人の浜田さん
大道芸人なのに、何もしないという面白い役どころだけど、
ストーリーテラー的なこともやってて、この芝居のキモなんだなと思った。
他のキャストも、みんな素晴らしかった。
自分の場でないときも、舞台の上にはいて、、、、「コロス」のような役割をしてて。
劇場の作りといい、ギリシャ劇だなあと感じた。
ところで、、、、この電車が止まらなくなった駅って、金輪町にあるのかなあとか考えちゃったです。
そして山鳥芽衣さんとか、「外の道」でのぶえさんが演じてた役そのままだったから。。。
もしかして、あのときの芽衣さんの話なのかなとか、考えちゃいました。