夏の終わりのとある日、母があれ作ってよと言う。
明日、お客様がみえるからシフォンケーキでもてなしたいと言うのだ。
どなたか問うと、「私にとっては」全然関係なく正直あまり嬉しくないお客様(…親しみを込めて、こう言わせていただこう;)
えー、いやだ。ぜったいいやだ!
「自分で何か作ったら? 昔シュークリームよく作ってたじゃん」と何度も促すも全く聞いてもらえず、結局いつの間にかキッチンに卵6個がしっかり用意されていたという...
はァァアアー ぜんぜん作りたくない。
が、時間は過ぎ、夕方になってしぶしぶ作り始める私。泡立てて混ぜて型に入れて、えーいとオーブンに投入。ふっーぅ、しんど。
あとは焼き上がるのを待つだけ。ふんふんふん♪
…あり? ありり?
ぜんぜん膨らんでなーい!その上、な、なんかぼろぼろ。
きちんと分量量ったし、きちんと泡立てたのに、なんで? これまで何十回と焼いてきたケーキなんだけど? ショック!
父が邪魔をした? だって父にとっても少々面白くないであろう、この今回のお客様。(親しみを込めて、こう言わせていただ...)
生きていた間はあまり意思表示をしない静かな父でしたが、亡くなってしまってからよく意志を示す父です。こういうことがよくあります。
私、なめてました。何事も心を込めてするべきです。 気のこもらない仕事って、本当にこうなるのですね。びっくりしました。
原因は色々重なったのだと思いますが、植物オイルを使うべきところを、頂き物のいわゆる「健康オイル」というものを代用したのが失敗だと思われます。(でもまぁ、気がこもっていれば素材選びももっと慎重になったはずですから、オイルのせいではなく私が悪いのです)
※これ系のオイルでもレシピによっては上手くいくこともあるようですが。
見るに堪えない、、いや見てはいけない画像ですので白黒で。
ちょっと食べてみると? なんとこれが思いのほか美味しいー!
どこかの国に、ややこしいカタカナの名前のついたこういう伝統菓子、ありそう。
この感じ、二度ともう作れないかも(色々な条件が必要なんでね、やるきの無さとか)って思うと妙に大切に思えてきてしまいます。
でも、やっぱりお客様には出せません。
さて、どうしよ?
明日、ケーキなかったら困るしな。頼まれた責任もあるしなあ。なんだかんだ言って、やっぱり美味しいの食べていただきたいし(あれ? 作っている間に愛情わいてきてる)。
何より、このまま、この原因不明の失敗のまま放置しておくと、私は今後、怖くてシフォンケーキを作れないひとになってしまうのが恐ろしく、夜遅くになって植物オイルを買いに走り、心を込めて焼き上げたのでした。
次の日の朝、お仏壇の横に置かれたケーキ(一応成功)を見て 「わー!パパがシフォンケーキを届けてくれてる!」と大喜びの母...;
当日お昼前にみえた、その初対面のお客さまは(くやしいけれど?)なんとも素敵なご夫婦でした。
私はお茶係。紅茶を準備し…
今回の私の失敗エピソード、「そのお話を聞くと、より美味しいわ!聞けて良かった」と楽しそうに飾りのハーブまで硬い茎ごと食べてくださった奥様。
誰かのために気持ちを込めて作るって、心の潤いをもたらすもの。
自分のためでもあるのね。